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文化祭 2
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調理担当だったため仕事でクラスに行くことはなく、かつ、わざわざ自分のクラスに顔を出す意味も感じなかったので、当日の教室の様子は知らない。
感心するようなまなざしでその女子の動きを追う。
「カレーはおいくつですか?」
完璧な営業スマイルの彼女と目が合い、思わずそらす。
それに続いて雅也と裕貴、順番に目が合う。
これは誰が言うかの探り合いだ。
「……み、3つで」
ぎこちなくそう答える俺の事などウェイトレスの女子は全く気にならないようで、そのままの笑顔をキープしたまま「600円です」と言った。
どうやら支払いはこのタイミングでするみたいだ。
俺たちはちょうど1人200円ずつ出した。
お金を受け取ったそのウェイトレスは「カレーすぐにお持ちします」と言って去っていった。
「裕貴ってホント見かけによらず女子が苦手だよな」
雅也の言葉に裕貴が口に入れたばかりの水を吹きそうになる。
「う、うるせぇ! 女子はそういうギャップに萌えるんだろ!?
──っていうか、苦手じゃねぇから!」
それで萌えるのは2次元だけだと思うが。
でもまぁ、裕貴がただのチャラ男だったらきっと俺はこんなに仲良くしていない。
見た目は確かにチャラい高校生って感じだが、実は結構優しくて思いやりがあって、それは女子に対してなら尚更で。
俺たちが初めて会ったサッカー部の入部説明会。
俺の右側に座っていたのが裕貴だった。
裕貴の雰囲気を見るなり俺は、サッカー部ってのはこういうチャラい人たちの集まりだよなーなんて思っていたが、説明会の最後、裕貴の女子に対する丁寧な接し方を見て、俺のイメージは一瞬で覆った。
本格的に仲良くなって入部してからは、例えば女子マネージャーには絶対重いものを持たせないし、大変そうにしているのを見つけたら必ず声をかけている。
なんかたまにやりすぎというか、気を使いすぎな気もするが、それでも裕貴なりに女子に優しくしようと努力していて、そこを俺は尊敬している。
最初はチャラいし、仲のいい女子や、なんなら彼女がいてもおかしくないと思っていたが、どうやら彼女いない歴=年齢らしい。
あんなに思いやりがあって、困っている女子には躊躇わずに声をかけに行くような優しい奴なのに、いざ普通の会話をしようとするとあからさまに緊張しておどおどしだす。
男子とはいくらでもふざけたりできるのに。
ほんとに、普通に女子と話すことが出来たらめっちゃモテると思うのだが……
なんて褒めるような事を言ったら調子に乗るだけだから本人には絶対言わない。
「っていうか雅也は見た目通り女子が苦手じゃねぇか!」
随分遅いツッコミだこと。
「あの~……カレーをお持ちしました」
裕貴の声量に驚き、横から恐る恐る近づいてくるウェイトレス。
「あ、はい……」
雅也が目を逸らしながらそう言う。
裕貴は雅也以上にダメージを負っているらしく、何も言えずにそっぽを向いていた。
「……いただきます」
感心するようなまなざしでその女子の動きを追う。
「カレーはおいくつですか?」
完璧な営業スマイルの彼女と目が合い、思わずそらす。
それに続いて雅也と裕貴、順番に目が合う。
これは誰が言うかの探り合いだ。
「……み、3つで」
ぎこちなくそう答える俺の事などウェイトレスの女子は全く気にならないようで、そのままの笑顔をキープしたまま「600円です」と言った。
どうやら支払いはこのタイミングでするみたいだ。
俺たちはちょうど1人200円ずつ出した。
お金を受け取ったそのウェイトレスは「カレーすぐにお持ちします」と言って去っていった。
「裕貴ってホント見かけによらず女子が苦手だよな」
雅也の言葉に裕貴が口に入れたばかりの水を吹きそうになる。
「う、うるせぇ! 女子はそういうギャップに萌えるんだろ!?
──っていうか、苦手じゃねぇから!」
それで萌えるのは2次元だけだと思うが。
でもまぁ、裕貴がただのチャラ男だったらきっと俺はこんなに仲良くしていない。
見た目は確かにチャラい高校生って感じだが、実は結構優しくて思いやりがあって、それは女子に対してなら尚更で。
俺たちが初めて会ったサッカー部の入部説明会。
俺の右側に座っていたのが裕貴だった。
裕貴の雰囲気を見るなり俺は、サッカー部ってのはこういうチャラい人たちの集まりだよなーなんて思っていたが、説明会の最後、裕貴の女子に対する丁寧な接し方を見て、俺のイメージは一瞬で覆った。
本格的に仲良くなって入部してからは、例えば女子マネージャーには絶対重いものを持たせないし、大変そうにしているのを見つけたら必ず声をかけている。
なんかたまにやりすぎというか、気を使いすぎな気もするが、それでも裕貴なりに女子に優しくしようと努力していて、そこを俺は尊敬している。
最初はチャラいし、仲のいい女子や、なんなら彼女がいてもおかしくないと思っていたが、どうやら彼女いない歴=年齢らしい。
あんなに思いやりがあって、困っている女子には躊躇わずに声をかけに行くような優しい奴なのに、いざ普通の会話をしようとするとあからさまに緊張しておどおどしだす。
男子とはいくらでもふざけたりできるのに。
ほんとに、普通に女子と話すことが出来たらめっちゃモテると思うのだが……
なんて褒めるような事を言ったら調子に乗るだけだから本人には絶対言わない。
「っていうか雅也は見た目通り女子が苦手じゃねぇか!」
随分遅いツッコミだこと。
「あの~……カレーをお持ちしました」
裕貴の声量に驚き、横から恐る恐る近づいてくるウェイトレス。
「あ、はい……」
雅也が目を逸らしながらそう言う。
裕貴は雅也以上にダメージを負っているらしく、何も言えずにそっぽを向いていた。
「……いただきます」
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