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20 白縫雪芽
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「これが噂のオレから連載を奪った新人の漫画か……名前はえっと……白縫(しらぬい)雪芽(ゆきめ)? 女性かな? いや、まあ、漫画家ならペンネームを使うのは当然だし、名前の印象から男女を決めれないのが漫画家の世界だからなぁ」
なにやら呟きながら佳祐は今月発売された『月刊アルファ』を手に取り、それを読み始める。
無論、まず最初に読むのは新人・白縫雪芽による新連載『スノーアイドルフェアリー』であった。
「わらわも一緒に読むぞ! こやつの漫画のせいでわらわ達の漫画がおじゃんになったのじゃろう!」
部屋の中心で座禅を組み雑誌を読み始める佳祐の背中から刑部姫がそれを覗くように見る。
内容は妖精と呼ばれる少女が人間に憧れ、人間界でアイドルを目指す話であった。
「作風は女の子を主人公にした明るい話だな。まあ、ここらへんはオレだけでなくいろんな漫画に当てはまる点だが……」
「うむ。掴みはよいな。話もわかりやすくて入りやすい。絵は……た、確かにうまいが、今のわらわならわらわの方が上じゃ!」
そう言って強がる刑部姫であったが、佳祐からすればこの新人漫画家の絵はかなりのレベルであり、担当の言ったとおり確かに新人離れしている。
そして、それは読み進めていく内に絵だけでなく、ストーリーもそうだと思い知る。
「…………面白い」
ペラペラと読み進めていく佳祐。
最初はいかにこの漫画の欠点を見つけて、自分達の漫画の方が優れているのか。そうした浅ましい点を見つけるべく読み出したのだが気づくと佳祐はそんな当初の目的を忘れて目の前の漫画に夢中になり、読み始めていた。そして、それは刑部姫も一緒であった。
「あっ! ちょっと待て、佳祐よ! 読むのが早いぞ! わらわはまださっきのページのコマを全部見ておらぬ!」
「そうは言うけど気になるんだよ! このあとの続きが!」
「ええい、それはわらわもじゃ! だからちゃんと読ませよ!」
「なら、オレが読んだ後で読めばいいじゃないか!」
「それでは我慢できぬのじゃー! ええい、ならば先にわらわに読ませろー!」
「なんでそうなるんだよ!? 今読んでるのオレなんだよー!!」
最終的には二人して先の展開が気になるばかりに雑誌の奪い合いとなる。
そうして、二人が漫画を読み終わる頃、そこにあったのは完全なる敗北感であった。
「……確かにこりゃ編集部の判断は正しい。作風というか、話の流れがオレがこれまで描いてきた漫画に似ている。その上でそれを更に面白く昇華してて、更に絵もオレの数倍上手い……。こりゃオレの方がパチもんだわ」
「うーむ、悔しいがこれは確かに面白いな……。わらわもあの時、持っていった原稿は世界一面白いと思っておったが、これと比べると正直分からぬ。じゃが絵に関して言えばわらわの方が上じゃ。少なくとも今はな」
そう言って強がる刑部姫であったが、後半はセリフはやや自信なさげであり、佳祐も現状この漫画の作者と刑部姫、どちらが上手いかは一概に言えなかった。
そもそも漫画に世界において、誰が誰よりも上手いというのは主観でしかなく、それこそ漫画界で一番絵の上手い人というのは基本決めることができないものである。
なによりも漫画はその絵と内容があっているかあっていないかも重要であり、それを言えばこの新人の漫画家は自分の話に合う作画を見事に表現している。
それを思えば、佳祐と刑部姫の絵と話はまだどこか噛み合っていない部分もあった。
自分達の欠点をこの漫画を通して見せられたようであり、二人は尚の事へこみ床に倒れていた。
「……はあ、とはいえいつまでもこうして負けた気分のまま突っ伏してるわけにもいかないな。逆にオレはこれを見せられてよかったと思うよ。おかげでこの漫画以上の漫画を描きたいと思わされた」
「! 本当か、佳祐!」
そう言って立ち上がる佳祐に対し、刑部姫も思わず上体を起こし尋ねる。
「ああ、今はまだ内容は決めてないけれど近いうちに前に持ち込んだ原稿以上の……いや、この『スノーアイドルフェアリー』以上の話を考えてやる!」
「おおおおおおおおおお!」
そう宣言する佳祐にキラキラとして目を向ける刑部姫。
しかし、そんな彼女からの視線に対し、佳祐は申し訳なさそうに告げる。
「って、言っても……まだそのネタも話も思い浮かばないんだけどな……」
「構わぬ構わぬ! アイディアとやらがそうそう簡単に出てこないことはわらわも知っておる! それに連載会議まではまだ三ヶ月以上もあるのだろう? ならば、それまでに良い話を考えればよいだけじゃ」
そう言って笑って答える刑部姫に佳祐もまた笑みを返す。
「それじゃあ、オレはちょっとネタ探しにそこらへん散歩してくるよ。刑部姫はどうする?」
「そうじゃのぉ……。わらわはもう少しこの漫画を見てみる。そのあとでわらわももう一度自分の絵柄を確認しようと思う」
「そっか、分かった」
刑部姫からの返答を聞き、佳祐はそのまま軽く着替えると玄関へと向かい、外へと出る。
佳祐がいなくなるのを見送った後、刑部姫は再び雑誌を手に新連載の漫画を見るが、その視線は作者・白縫雪芽を見ていた。
「白縫雪芽……しかし、気のせいじゃろうか? こやつの名前、どこかで聞いたような気がするんじゃが……?」
そう言って首をひねる刑部姫であったが、その答えは出ることはなかった。
なにやら呟きながら佳祐は今月発売された『月刊アルファ』を手に取り、それを読み始める。
無論、まず最初に読むのは新人・白縫雪芽による新連載『スノーアイドルフェアリー』であった。
「わらわも一緒に読むぞ! こやつの漫画のせいでわらわ達の漫画がおじゃんになったのじゃろう!」
部屋の中心で座禅を組み雑誌を読み始める佳祐の背中から刑部姫がそれを覗くように見る。
内容は妖精と呼ばれる少女が人間に憧れ、人間界でアイドルを目指す話であった。
「作風は女の子を主人公にした明るい話だな。まあ、ここらへんはオレだけでなくいろんな漫画に当てはまる点だが……」
「うむ。掴みはよいな。話もわかりやすくて入りやすい。絵は……た、確かにうまいが、今のわらわならわらわの方が上じゃ!」
そう言って強がる刑部姫であったが、佳祐からすればこの新人漫画家の絵はかなりのレベルであり、担当の言ったとおり確かに新人離れしている。
そして、それは読み進めていく内に絵だけでなく、ストーリーもそうだと思い知る。
「…………面白い」
ペラペラと読み進めていく佳祐。
最初はいかにこの漫画の欠点を見つけて、自分達の漫画の方が優れているのか。そうした浅ましい点を見つけるべく読み出したのだが気づくと佳祐はそんな当初の目的を忘れて目の前の漫画に夢中になり、読み始めていた。そして、それは刑部姫も一緒であった。
「あっ! ちょっと待て、佳祐よ! 読むのが早いぞ! わらわはまださっきのページのコマを全部見ておらぬ!」
「そうは言うけど気になるんだよ! このあとの続きが!」
「ええい、それはわらわもじゃ! だからちゃんと読ませよ!」
「なら、オレが読んだ後で読めばいいじゃないか!」
「それでは我慢できぬのじゃー! ええい、ならば先にわらわに読ませろー!」
「なんでそうなるんだよ!? 今読んでるのオレなんだよー!!」
最終的には二人して先の展開が気になるばかりに雑誌の奪い合いとなる。
そうして、二人が漫画を読み終わる頃、そこにあったのは完全なる敗北感であった。
「……確かにこりゃ編集部の判断は正しい。作風というか、話の流れがオレがこれまで描いてきた漫画に似ている。その上でそれを更に面白く昇華してて、更に絵もオレの数倍上手い……。こりゃオレの方がパチもんだわ」
「うーむ、悔しいがこれは確かに面白いな……。わらわもあの時、持っていった原稿は世界一面白いと思っておったが、これと比べると正直分からぬ。じゃが絵に関して言えばわらわの方が上じゃ。少なくとも今はな」
そう言って強がる刑部姫であったが、後半はセリフはやや自信なさげであり、佳祐も現状この漫画の作者と刑部姫、どちらが上手いかは一概に言えなかった。
そもそも漫画に世界において、誰が誰よりも上手いというのは主観でしかなく、それこそ漫画界で一番絵の上手い人というのは基本決めることができないものである。
なによりも漫画はその絵と内容があっているかあっていないかも重要であり、それを言えばこの新人の漫画家は自分の話に合う作画を見事に表現している。
それを思えば、佳祐と刑部姫の絵と話はまだどこか噛み合っていない部分もあった。
自分達の欠点をこの漫画を通して見せられたようであり、二人は尚の事へこみ床に倒れていた。
「……はあ、とはいえいつまでもこうして負けた気分のまま突っ伏してるわけにもいかないな。逆にオレはこれを見せられてよかったと思うよ。おかげでこの漫画以上の漫画を描きたいと思わされた」
「! 本当か、佳祐!」
そう言って立ち上がる佳祐に対し、刑部姫も思わず上体を起こし尋ねる。
「ああ、今はまだ内容は決めてないけれど近いうちに前に持ち込んだ原稿以上の……いや、この『スノーアイドルフェアリー』以上の話を考えてやる!」
「おおおおおおおおおお!」
そう宣言する佳祐にキラキラとして目を向ける刑部姫。
しかし、そんな彼女からの視線に対し、佳祐は申し訳なさそうに告げる。
「って、言っても……まだそのネタも話も思い浮かばないんだけどな……」
「構わぬ構わぬ! アイディアとやらがそうそう簡単に出てこないことはわらわも知っておる! それに連載会議まではまだ三ヶ月以上もあるのだろう? ならば、それまでに良い話を考えればよいだけじゃ」
そう言って笑って答える刑部姫に佳祐もまた笑みを返す。
「それじゃあ、オレはちょっとネタ探しにそこらへん散歩してくるよ。刑部姫はどうする?」
「そうじゃのぉ……。わらわはもう少しこの漫画を見てみる。そのあとでわらわももう一度自分の絵柄を確認しようと思う」
「そっか、分かった」
刑部姫からの返答を聞き、佳祐はそのまま軽く着替えると玄関へと向かい、外へと出る。
佳祐がいなくなるのを見送った後、刑部姫は再び雑誌を手に新連載の漫画を見るが、その視線は作者・白縫雪芽を見ていた。
「白縫雪芽……しかし、気のせいじゃろうか? こやつの名前、どこかで聞いたような気がするんじゃが……?」
そう言って首をひねる刑部姫であったが、その答えは出ることはなかった。
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