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第19話 住民を作ろう
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「次はどうするのですか? ご主人様!」
ギルドを出て真っ先にケルちゃんがそう問いかける。
「まあ、次は街の住人だな」
「ですよね。これだけ大きい街ですから、やはり街人の存在は欠かせませんよね!」
ケルちゃんの言う通り、この街の大きさはかなりのものだ。
恐らく人口一万人はゆうに暮らせるだろう。
故にそれに見合った金額で街の人達を創造しなければならない。
オレは街を作った時と同じ十円を取り出し、それを街の方へ向け、投げる。
一瞬、街全体がまばゆい光に覆われたかと思うと、次の瞬間、そこには街を行き交う無数の人々で溢れていた。
「うわぁ」
「すごい……」
先ほどまで無人の街が一気に活気にあふれる街へと変貌した。
老若男女問わず、様々な人が行き交う街の中心にてオレもケルちゃんも思わず見惚れる。
やがて、そんなオレ達に気づいたのか何人かの街人が親しげな笑みを浮かべて近づいてくる。
「! これは領主様!」
「なに、領主様だと?」
「確かに、ありゃ領主様だぞ!」
「領主様! 領主様ー!」
「おお、あれが我々を生み出してくれたお方か」
次々とオレとケルちゃんを取り囲むように大勢の人達で溢れる。
「うおお」
「ち、ちょっとー! ストップストップー! 皆、ご主人様に感謝するのは分かるけれど、近すぎー! それじゃあ、ご主人様が苦しいでしょー!」
「あっ」
「た、確かにそうですね。申し訳ありません。領主様」
しかし、すぐさまケルちゃんがストップをかけてくれたおかげで街人達も理解し、離れてくれた。
「全くもー。挨拶なら、離れても出来るでしょうー。それにご主人様に用がある場合はちゃんと館の方に来てよね」
「は、ははっ、そうですね」
ケルちゃんからの説教に苦笑いを浮かべる街の人達。
とりあえずはこれで街の人達も無事に創作出来た。街という形体はこれで出来上がりと言える。
問題はここからどうのように街を改良し、より良い街へと進化させるか。それが難題だ。
「それでご主人様。次はどうするのですか?」
無論、それはケルちゃんも気づいているようであり、次なるオレの一手を聞いて来る。
「ああ、次はいよいよこの街を進化させる要を生み出そうと思う」
「要、ですか?」
「ああ、施設……とは少し違うが、それみたいなものだ」
「なるほど。でも、いくらで生み出すんですか? やっぱりギルドや街の時と同じ十円で……」
「いや」
問いかけるケルちゃんにオレは手のひらに残った七十円を見せる。
「この残った七十円全部を使う」
「え……えええええええええええええええええ!?」
オレの宣言を前にさすがのケルちゃんも驚きに絶叫を上げた。
◇ ◇ ◇
「あーもー、なんで私達がセバスと同じ組なんっすかー」
「贅沢を言わないの、アクア。これもトオル様にお仕えする一環ですわ」
一方でトオル達が制作している街から数キロほど離れた平野にて執事のセバスチャンと彼と行動を共にしているメイドのガーネット、アクアマンの姿があった。
すでにその場所にはトオルが制作した街と同じ、いやそれ以上の堅牢な街が広がっていた。
「それにしても……セバス様の采配には驚きましたわ。いきなり渡された神の通貨の半分――『五十円』を街とそこに住む街人達の制作にあてるとは」
眼前に広がる首都と呼んでいい壮観な街並みを前にガーネットは感嘆するように呟く。
それを聞いてセバスは静かにかけていた眼鏡を指で持ち上げながら、説明する。
「こうした創造の際は、小分けに創造するのではなく土台となるものに大きく消費するべきです。特に街は土台そのもの。そこに金額を消費すれば後の発展にも影響が出ます。余計な建物や施設に通貨を割く必要はありません」
「なるほどっすねー」
セバスの説明に頷くアクア。
確かに彼の言うとおり、街の人々は既に様々な生産を行い始め、一人一人の能力や練度もまるで熟練の職人のように高かった。
「けど、最終的にはやっぱご主人様に勝ちを譲るんでしょうー? 適当なところで手を抜いておいたらどうっすかー?」
しかし、これらが茶番であると呟くアクアであったが、それを聞いたセバスはこれまでにない真剣な表情をする。
「アクア。勘違いしているようだから言いますが、ここで手を抜く行為は主様に対する一番の不忠に繋がりますよ」
「へ?」
思わぬ返しに呆気に取られるアクアだが、それに構わずセバスは続ける。
「いいですか。仮にわざと負けたとして、それを主様が知れば必ず失望なされます。なによりもあのお方は真剣な勝負を求めているのです。で、あるならばそれに応えるのが部下というもの」
「でも万が一、私達が勝ったら主様、ガッカリしませんか?」
「確かに。ですが、あの方の性格を考えれば全力での勝負で負けたのならば、納得するでしょう。それに考え方を変えてみてください。もし、我々が勝利した場合はあのお方が住まう首都を作る栄誉を与えられるということ。ならば、あの方が住むに相応しい理想的な街を作り上げるのは部下としてなによりの至福でしょう」
「あ、なるほどっす!」
セバスの説明に納得したように両手を合わせるアクア。
それを聞いていたガーネットも思わず頷く。
「そういうわけで我々は全力で街を作ることに集中するのです。仮にここが首都になった際は我らが主様を迎えるに相応しい街並みにするのです」
「了解っす!」
「心得ました。ですが、セバス様。残る神の通貨は何に使うのですか?」
問いかけるガーネット。それに対し、セバスは唇に笑みを浮かべ告げる。
「残る五十はこの街の『要』に使用します」
そう言って手に握る五十円を弾くセバス。
やがて、それが地面に落ちると同時にそこから光り輝くあるものが生まれるのであった――。
残り通貨:12388円
【創造物】
豪邸×1
村×1
野菜畑×1
りんごの樹×1
魚達がいる川×1
動物達の森×1
聖剣×1
ケルベロス×1
執事×1
メイド×9
塔×6
牧場×1
稲作×1
街×1
ギルド館×1
住民×10050
ギルドを出て真っ先にケルちゃんがそう問いかける。
「まあ、次は街の住人だな」
「ですよね。これだけ大きい街ですから、やはり街人の存在は欠かせませんよね!」
ケルちゃんの言う通り、この街の大きさはかなりのものだ。
恐らく人口一万人はゆうに暮らせるだろう。
故にそれに見合った金額で街の人達を創造しなければならない。
オレは街を作った時と同じ十円を取り出し、それを街の方へ向け、投げる。
一瞬、街全体がまばゆい光に覆われたかと思うと、次の瞬間、そこには街を行き交う無数の人々で溢れていた。
「うわぁ」
「すごい……」
先ほどまで無人の街が一気に活気にあふれる街へと変貌した。
老若男女問わず、様々な人が行き交う街の中心にてオレもケルちゃんも思わず見惚れる。
やがて、そんなオレ達に気づいたのか何人かの街人が親しげな笑みを浮かべて近づいてくる。
「! これは領主様!」
「なに、領主様だと?」
「確かに、ありゃ領主様だぞ!」
「領主様! 領主様ー!」
「おお、あれが我々を生み出してくれたお方か」
次々とオレとケルちゃんを取り囲むように大勢の人達で溢れる。
「うおお」
「ち、ちょっとー! ストップストップー! 皆、ご主人様に感謝するのは分かるけれど、近すぎー! それじゃあ、ご主人様が苦しいでしょー!」
「あっ」
「た、確かにそうですね。申し訳ありません。領主様」
しかし、すぐさまケルちゃんがストップをかけてくれたおかげで街人達も理解し、離れてくれた。
「全くもー。挨拶なら、離れても出来るでしょうー。それにご主人様に用がある場合はちゃんと館の方に来てよね」
「は、ははっ、そうですね」
ケルちゃんからの説教に苦笑いを浮かべる街の人達。
とりあえずはこれで街の人達も無事に創作出来た。街という形体はこれで出来上がりと言える。
問題はここからどうのように街を改良し、より良い街へと進化させるか。それが難題だ。
「それでご主人様。次はどうするのですか?」
無論、それはケルちゃんも気づいているようであり、次なるオレの一手を聞いて来る。
「ああ、次はいよいよこの街を進化させる要を生み出そうと思う」
「要、ですか?」
「ああ、施設……とは少し違うが、それみたいなものだ」
「なるほど。でも、いくらで生み出すんですか? やっぱりギルドや街の時と同じ十円で……」
「いや」
問いかけるケルちゃんにオレは手のひらに残った七十円を見せる。
「この残った七十円全部を使う」
「え……えええええええええええええええええ!?」
オレの宣言を前にさすがのケルちゃんも驚きに絶叫を上げた。
◇ ◇ ◇
「あーもー、なんで私達がセバスと同じ組なんっすかー」
「贅沢を言わないの、アクア。これもトオル様にお仕えする一環ですわ」
一方でトオル達が制作している街から数キロほど離れた平野にて執事のセバスチャンと彼と行動を共にしているメイドのガーネット、アクアマンの姿があった。
すでにその場所にはトオルが制作した街と同じ、いやそれ以上の堅牢な街が広がっていた。
「それにしても……セバス様の采配には驚きましたわ。いきなり渡された神の通貨の半分――『五十円』を街とそこに住む街人達の制作にあてるとは」
眼前に広がる首都と呼んでいい壮観な街並みを前にガーネットは感嘆するように呟く。
それを聞いてセバスは静かにかけていた眼鏡を指で持ち上げながら、説明する。
「こうした創造の際は、小分けに創造するのではなく土台となるものに大きく消費するべきです。特に街は土台そのもの。そこに金額を消費すれば後の発展にも影響が出ます。余計な建物や施設に通貨を割く必要はありません」
「なるほどっすねー」
セバスの説明に頷くアクア。
確かに彼の言うとおり、街の人々は既に様々な生産を行い始め、一人一人の能力や練度もまるで熟練の職人のように高かった。
「けど、最終的にはやっぱご主人様に勝ちを譲るんでしょうー? 適当なところで手を抜いておいたらどうっすかー?」
しかし、これらが茶番であると呟くアクアであったが、それを聞いたセバスはこれまでにない真剣な表情をする。
「アクア。勘違いしているようだから言いますが、ここで手を抜く行為は主様に対する一番の不忠に繋がりますよ」
「へ?」
思わぬ返しに呆気に取られるアクアだが、それに構わずセバスは続ける。
「いいですか。仮にわざと負けたとして、それを主様が知れば必ず失望なされます。なによりもあのお方は真剣な勝負を求めているのです。で、あるならばそれに応えるのが部下というもの」
「でも万が一、私達が勝ったら主様、ガッカリしませんか?」
「確かに。ですが、あの方の性格を考えれば全力での勝負で負けたのならば、納得するでしょう。それに考え方を変えてみてください。もし、我々が勝利した場合はあのお方が住まう首都を作る栄誉を与えられるということ。ならば、あの方が住むに相応しい理想的な街を作り上げるのは部下としてなによりの至福でしょう」
「あ、なるほどっす!」
セバスの説明に納得したように両手を合わせるアクア。
それを聞いていたガーネットも思わず頷く。
「そういうわけで我々は全力で街を作ることに集中するのです。仮にここが首都になった際は我らが主様を迎えるに相応しい街並みにするのです」
「了解っす!」
「心得ました。ですが、セバス様。残る神の通貨は何に使うのですか?」
問いかけるガーネット。それに対し、セバスは唇に笑みを浮かべ告げる。
「残る五十はこの街の『要』に使用します」
そう言って手に握る五十円を弾くセバス。
やがて、それが地面に落ちると同時にそこから光り輝くあるものが生まれるのであった――。
残り通貨:12388円
【創造物】
豪邸×1
村×1
野菜畑×1
りんごの樹×1
魚達がいる川×1
動物達の森×1
聖剣×1
ケルベロス×1
執事×1
メイド×9
塔×6
牧場×1
稲作×1
街×1
ギルド館×1
住民×10050
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