13 / 15
第2章 大聖女は愛憎をまだ知らない
第11話 メイドは秘密を話しすぎる
しおりを挟む
「はい???」
セオドアの愛を思い知れ??
レレさんの会話が急カーブにさしかかって、私の脳内は事故った。乗っていた馬車が谷底に落ちた気分だ。
「そうなのでっ、すぅ!! いっぱい、あいされてくだしゃい、ルチアさまぁ!!」
「は、はあ、セオドアの愛を……?」
泣きじゃくるレレさんに気のない返事をする。
「監禁はだめなことですけど、だって、放っておいたら、ルチアさまが死のうとするのが悪いんですッ」
「死のうとするわけじゃないよ。結果的に神の元に昇るだけ。全然違うよ」
「レレには学がないので、違いが分かりません!!」
二つ結びの髪をぷるぷる振って、ヘッドレストのフリルが揺れた。
泣きながら怒る姿も可愛くて、頭をつい撫でる。微笑みが浮かんだ。
そしたら、なぜかレレさんの丸い瞳から、じわっと大粒の涙が滲んでいった。
「その、その笑顔、なんです……ご主人さまが嫌いなお顔は、…………なんで嫌いなのかも、ようやくわかりました」
「ルチアさまは、ルチアさまは、ぜんぜん女の子してないんです、女の子なのに、神さまやってるんです……だから、レレはかなしい……」
「悲しい……? 女の子……? とにかく、レレさん悲しまないで。私は自分の役割に満足してるから」
レレさんが私を見あげる。ぱちんと視線があった。さっきまでの元気さが打って変わって、私をぎゅっと抱きしめる。
「……やっぱり、…………やっぱり……ルチアさまには、ご主人さまが必要なのですね……」
ぽつりと、確信したみたいに口を開いた。
「ご主人さまの愛があれば、ルチアさまも女の子になれるはずなんです」
「いや、だってあいつ、そもそも会いにも来ないじゃん」
「それは、ルチアさまのことでじょーおー陛下とお話してるからです!」
いきなり出てきた単語に、私の頭の中から女の子のくだりが吹っ飛んだ。
「何この監禁、国家規模の話だったの??」
「はっ! 今のは聞かなかったことにしてください……! ご主人さまは、女王さまに許してもらおうって、ずっと寝ないで頑張ってるんです!!」
寝ないで……? 徹夜とか効率悪いって、何度もバカにしてきたのはあの宰相なのに??
小さな身体全体で縋り付くように、彼女の両腕が私を包み込む。
「レレと一緒で、寝られないんです。ご主人さまも悲しいんです、怖いんです……!」
「こわい、ってあのセオドアが……、」
ここで聞く話はいつだって信じられない。
レレさんを宥めるのも忘れた私が、何とか言葉を続けようとしたときだった。
「話しすぎですよ、レレ」
彼女のぬくもりさえ凍りつかせるように、セオドアは私を遮ったのだ。
セオドアの愛を思い知れ??
レレさんの会話が急カーブにさしかかって、私の脳内は事故った。乗っていた馬車が谷底に落ちた気分だ。
「そうなのでっ、すぅ!! いっぱい、あいされてくだしゃい、ルチアさまぁ!!」
「は、はあ、セオドアの愛を……?」
泣きじゃくるレレさんに気のない返事をする。
「監禁はだめなことですけど、だって、放っておいたら、ルチアさまが死のうとするのが悪いんですッ」
「死のうとするわけじゃないよ。結果的に神の元に昇るだけ。全然違うよ」
「レレには学がないので、違いが分かりません!!」
二つ結びの髪をぷるぷる振って、ヘッドレストのフリルが揺れた。
泣きながら怒る姿も可愛くて、頭をつい撫でる。微笑みが浮かんだ。
そしたら、なぜかレレさんの丸い瞳から、じわっと大粒の涙が滲んでいった。
「その、その笑顔、なんです……ご主人さまが嫌いなお顔は、…………なんで嫌いなのかも、ようやくわかりました」
「ルチアさまは、ルチアさまは、ぜんぜん女の子してないんです、女の子なのに、神さまやってるんです……だから、レレはかなしい……」
「悲しい……? 女の子……? とにかく、レレさん悲しまないで。私は自分の役割に満足してるから」
レレさんが私を見あげる。ぱちんと視線があった。さっきまでの元気さが打って変わって、私をぎゅっと抱きしめる。
「……やっぱり、…………やっぱり……ルチアさまには、ご主人さまが必要なのですね……」
ぽつりと、確信したみたいに口を開いた。
「ご主人さまの愛があれば、ルチアさまも女の子になれるはずなんです」
「いや、だってあいつ、そもそも会いにも来ないじゃん」
「それは、ルチアさまのことでじょーおー陛下とお話してるからです!」
いきなり出てきた単語に、私の頭の中から女の子のくだりが吹っ飛んだ。
「何この監禁、国家規模の話だったの??」
「はっ! 今のは聞かなかったことにしてください……! ご主人さまは、女王さまに許してもらおうって、ずっと寝ないで頑張ってるんです!!」
寝ないで……? 徹夜とか効率悪いって、何度もバカにしてきたのはあの宰相なのに??
小さな身体全体で縋り付くように、彼女の両腕が私を包み込む。
「レレと一緒で、寝られないんです。ご主人さまも悲しいんです、怖いんです……!」
「こわい、ってあのセオドアが……、」
ここで聞く話はいつだって信じられない。
レレさんを宥めるのも忘れた私が、何とか言葉を続けようとしたときだった。
「話しすぎですよ、レレ」
彼女のぬくもりさえ凍りつかせるように、セオドアは私を遮ったのだ。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる