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〈サーチ・オブ・ザターナ編〉
76. 愛
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「ザターナ様っ!!」
私が叫んだ時には、親衛隊の四人が疾風のごとく動いていた。
「ライラァーーッ!!」
「ちっ!」
アルウェン様がライラへと斬りかかる。
ライラは彼女の剣を受け流すや、わき目もふらずに穴の開いた壁へと走った。
そこへ――
「逃がすかよ!」
――アトレイユ様の剣が飛んできて、彼女の手前へと突き刺さった。
とっさに足を止めるライラ。
次いで、ハリー様が彼女の前へと回り込む。
ライラが剣を構えるより早く、ハリー様は彼女の手から剣を叩き落した。
「あなたはライラさんじゃありませんね!?」
「くっ」
ライラはすぐに身をひるがえして、別の逃げ場所を探そうとしたけど――
「貴様、何者だ?」
――ルーク様に首元へ剣を突きつけられて、動きを止めた。
「……はは、さすが親衛隊。もはや逃げることは不可能か」
ライラは観念したように両手を上げた。
一方、ザターナ様は……。
「ぐうぅっ」
「ザターナ様!」
「意識が……朦朧としてきたわ……。ど、毒ね……?」
「毒!?」
私がザターナ様に駆け寄った時、彼女はお腹を押さえてうめいていた。
その手の内側からは、赤い血が滝のように流れ出てくる。
傷はとても深い。
それに、毒だなんて……!
「おどきっ」
フラメール様が慌てた様子で私を押し退け、ザターナ様の軍服をめくり上げた。
お腹の傷を見て、私は思わず目を背けてしまった。
「……こりゃバジリコックの毒だね。傷口の血の凝固を妨げる質の悪い猛毒だよ」
「フラメール様! お願いします、ザターナ様を助けて!!」
「これほどの毒、吸い出すことなど無茶じゃ。ちゃんとした毒抜きの設備がなければ助けられん。かと言って、この出血では動かすことも……」
「そんな!」
「今の時代にこんな扱いづらい毒を使うとは……。あんた、殺し屋にしても見かけ通りの歳じゃないね!?」
フラメール様が睨みつける先で、ライラが笑う。
それを見て、アルウェン様が激昂する。
「なぜだ! なぜ、きみがこんな真似を!?」
「そう怒鳴らないで、アルウェン。……そうだな。もう隠し立てする必要もないから教えてあげよう」
「何!?」
「マンティコア、とでも名乗っておこうか。セントレイピアへ潜入してから、私はずっと聖女と出会う機会をうかがっていたのさ」
マンティコア?
ライラが?
そんな……嘘でしょう?
「マンティコアだと! ヘルモーズの言っていたバトラックスの間者か!?」
「なぁんだ。私のことはすでにご存じだったのね」
「だが、そうだとしても……いつライラにすり替わったんだ!?」
「二年前よ」
「ライラは……本物のライラはどこにいる!? まさか、殺……」
「いいえ。私は殺していないわ」
「嘘をつけ! なら、どうしてライラにすり替わることができた!?」
「当時、北の国境近くの雪山で、騎士学院の候補生が登山訓練をしていたでしょう。その時、滑落死した彼女の遺体を見つけたの。体格も近かったから、これ幸いにと顔と身分をいただいたのよ」
ライラが首筋の皮を少しめくりあげた。
それを見た私は、嫌な光景を想像して吐き気を催してしまった。
「この怪物め、私の友人をよくも!」
「誤解しないてアルウェン。あなたの友人は私よ」
「な……に……っ」
「ライラに成り代わった後、私はあなたと親しくなったのよ。同期で同性なのはあなただけだったしね」
「貴様……」
「気づいていたわよ、あなたの秘密。間者なんて洞察力がなければ務まらないもの」
アルウェン様はライラを後ろ手に掴んで、その場に組み敷いた。
その時のアルウェン様の苦悶の顔ときたら……。
「マンティコア! 貴様の目的は聖女の拉致ではなかったのか!?」
「今朝まではね。でも、瓦礫の下で話を聞いていて、聖女は生かしておくべきではないと考えを改めたのよ」
「よくも抜け抜けと!」
「私だってこの二年間苦労したのよ。ようやく騎士になって聖女様に会えたと思ったら、今度は偽物。本物の行方を捜そうにも、まるで手がかり無しときたもんだ」
ライラ――いいえ。マンティコア。
彼女も私の正体を見抜いていたのね……。
「〈聖声の儀〉まで様子をうかがうつもりだった。けれどその矢先、極秘会談とバプティス聖山への山籠もりが行われると聞いて、何かが起きると思った」
「それで貴様は護衛役として、この場にやってきたわけか」
「こっち側にきて正解だった。おかげであいつに先んじることができたからね」
「あいつ?」
「……グリーンドラゴンと言えばわかる?」
「もう一人の間者か! そいつはどこにいる!? 言わないと――」
「し、知らないわよ。やつとは一緒にこっちへ送られたけど、十年前に別れてからは手紙のやり取りだけ。お互い顔も身分も変わっているのよ!」
「それを信じろと!?」
「お互いどっちが先にの競争だったからね。最低限の情報交換しかしてないわ」
アルウェン様がやるせないお顔で、私を見つめる。
……グリーンドラゴンの行方なんて今はどうでもいいわ。
何よりも重要なのは、ザターナ様の命が脅かされているこの現実よ。
「フラメール様。応急処置でいいですから、治療の準備を」
「何言っとるんじゃ。毒が体内に残っていては治療も何も……」
「私が毒を吸い出します」
そう言った直後、その場の視線を一身に集めてしまった。
旦那様は私の肩を掴むや、激しく揺さぶってくる。
「何を言っている、ダイアナ! そんなことをすれば死んでしまうぞ!?」
「構いません。ザターナ様を助けられるなら、私が代わりに死にます」
「馬鹿な! ダメだ、ならば私が……」
私は、そっと旦那様の頬へと口づけをした。
旦那様はそれに驚いて、唖然としたまま私を見つめている。
それがおかしくて、私は自然と微笑んでしまった。
「私を娘と言ってくれて、ありがとう」
「ダイアナ……」
「私、聖女様を演じてきて、ひとつだけ思い違いをしていたことに気づきました」
「思い違い?」
「みんなが私へ向けてくれた想い。すべて私が演じる聖女様へのものだろうと、いつも他人事のように感じていました。でもそれは違った――」
私は、旦那様を。
そして、親衛隊のみんなを見渡しながら続けた。
「――みんな私を見ていてくれた。聖女という配役ではなく、私という人間を」
「当然だろう、ダイアナ。おまえは……皆に愛されているのだ」
「愛……」
「おまえのようながんばり屋は他にいない。そのがんばりが報われずに、この世を去られてなるものか!」
「……今、報われました」
私は旦那様を押し退けて、うなされるザターナ様のお顔を覗き込んだ。
もう意識もないみたい。
でも、私が必ずお助けします。
「みんなには使命があります。旦那様には、外交官としてセントレイピアとバトラックスを取り持つ使命が。親衛隊のみんなには、これからザターナ様をお守りしていく使命が。この場で使命を終えたのは私だけ――」
毒抜きをしなければ、ザターナ様は死んでしまう。
そして、毒抜きをした者は死んでしまう。
ならば、ザターナ様をお助けするために命を投げ出す者が必要。
今この場でその役目を担う資格があるのは、使命を終えた私だけ。
「――だから、命を懸けるのは私だけでいいんです」
私は腕に抱いていたカーバンクルちゃんを床へ下ろすと、額の石にキスをした。
彼は不思議そうな目をして、じっと私を見上げている。
「今までありがとう」
その言葉を最後に。
私は、ザターナ様のお腹へと顔を近づけていく。
「ダメだ、ダイアナッ」
「ダイアナ、よせ!」
「ダイアナ!」
「ダイアナ……」
「偽聖女っ」
背中へとかけられる親衛隊の声。
それを聞き、私の心に後ろ髪を引かれるような思いが募っていく。
ルーク様。
プロポーズの返事ができなくて、ごめんなさい。
アトレイユ様。
私の騎士となって身を尽くしてくれて、ありがとう。
ハリー様。
告白の機会を作ってあげられなくて、ごめんね。
アルウェン様。
あなたの想いを打ち明けて、ザターナ様を幸せにしてあげて。
アスラン様。
お父様を大切に。
……そうか。
これが、愛されるということ。
私はこれまでずっと、多くの人から無償の愛を受けてきた。
それを今になって認識するなんて。
……私って本当にドジですね、ザターナ様。
「聖女の名、今こそお返しいたします」
私の唇が、ザターナ様の傷口に触れようかと言う時――
「同意する」
――誰かの指先が、突然私の顎をすくい上げた。
「使命が終わったというなら、わしもじゃ」
「トールくん?」
「ザターナの毒抜きはわしがしよう」
「そんな、ダメですっ。死んでしまいますよ!?」
「心配せんでよい。わしは不死身の体を持つ男じゃぞ。毒をたらふく飲んだところで、死にはせん」
「でも、私の使命はもう終わって……」
「人間が一生に背負う使命はひとつだけか? もっと欲張ってもよかろう」
「……」
「おぬしの生き様は美しい。替え玉とはいえ、おぬしは紛れもなく聖女じゃった」
「トールくん……」
「そんなおぬしの生き様、ここで散らすにはちと惜しい」
「……ありがとう」
トールくんは私にほほ笑むと、ザターナ様の傷口へと顔を近づけ――
◇
「……よし。これで傷口も塞ぐことができたわい」
「フラメール様、まるでお医者様のよう」
「錬金術師ともなれば、様々な業種の技術をかじっておるものよ。しかし、ラグナレクの吐き出した糸があって幸いしたのう。おかげで傷口を縫うことができた」
「トールくんは……」
彼は、物陰で浴びるようにポーションをがぶ飲みしていた。
さすがに不死身の体でも、バジリコックの毒にはただでは済まなかったみたい。
太陽も傾き始めた。
気絶していた騎士団や親衛騎団の面々も目を覚まし始めている。
一方、将軍や配下の兵士さん達はしっかりと縄で縛ってある。
「ザターナ様のご様子は?」
「呼吸も落ち着いた。ひとまずは大丈夫じゃ」
「よかった」
「じゃが、すぐにでも医療院へ運び入れた方がよい。こんな汚い場所に置いておいては、感染症になりかねんからのう」
私は、腕の中に戻っていたカーバンクルちゃんを再び床に置いた。
そして――
「また私のお願いを聞いてくれる?」
「クルルッ」
――彼は私の意図を察して、戦闘形態に早変わり。
「これより、ザターナ様を最寄りの医療院へお運びします。その場所はセントレイピアになりますが……」
私は途中で言葉を切って、こちらを見つめている赤い軍服の女性へ目を向けた。
彼女の名は、たしかロヴン。
このまま黙って私達を送り出してくれるかしら。
「ダイアナ様」
彼女は私の名を呼ぶや、私の前まで歩いてきて片膝をついた。
その様子にちょっと驚いたけど、私は黙って彼女の言葉を待った。
「我々はザナ様を――いいえ。ザターナ様をお待ちしております。バトラックスの新時代には、そのお方が必要なのです」
「あなた達のもとへ戻るかは、ザターナ様次第ですよ」
「はい。私達は信じて待ちます。我らが指導者のご帰還を」
「彼女を私に預けてくれますか?」
「あなたにならば」
「ありがとう。ロヴンさん」
私がほほ笑むと、彼女も笑い返してくれた。
そして。
「親衛騎団に命じる。我々はこのまま賊を連れてミョルニアへ帰還する! 総統がお戻りになられるまで、バトラックスの双肩は我々の手にあると考えよ!!」
ロヴンさんの号令に、親衛騎団のみんなが声を上げる。
砦を去る際、ロヴンさんがトールくんへと訊ねた。
「トール殿。あなたはこれからどうなされる?」
「バトラックスは飽いた。北の地にでも渡って、農業にでも精を出してみるかのう」
「新たな時代を総統と共に創っていきませんか?」
「それなら尚更、わしのような古い人間は去るべきじゃろうて。新時代は若人によって創られるから価値があるんじゃ」
「……では、お達者で」
ロヴンさんはそう言い残して、砦から去っていった。
「ダイアナよ」
「はい」
「これから時代は変わる。おぬしにとって、自分自身の道を開くいい機会になるじゃろう」
「自分自身の道?」
「新たな使命は、自分で見つけても良いということじゃよ」
そう言うや、トールくんは砦の外へと飛び降りた。
私が外を覗いた時には、彼は丘陵を下って遥か先へと走り去った後だった。
「軍神の農業とは興味深いな」
「そう……ですね」
「して、この事態。まだ気絶しておられる第一王子殿下にはどう伝える?」
ルーク様に言われて、私はハッとした。
新総統もロムルス王子殿下も無事だったものの、極秘会談はメチャクチャ。
国交の話も決着していないわよね。
これから両国はどうなるのかしら……。
「この事態を滞りなく治めるのが、外交官たる私の使命だな」
「旦那様」
「幸い、騎士団の連中もまだほとんど眠っている。聖女役の少女もな。王子殿下には、私の方から虚実織り交ぜて話しておこう」
「では、私達は先に聖都へ」
「ザターナを頼んだぞ。ダイアナ」
「はい!」
私はザターナ様をおんぶして、カーバンクルちゃんの背に登った。
それを支えてくれたのは、親衛隊のみんな。
「みんな、もうしばらく私についてきてくれますか?」
ルーク様。
アトレイユ様。
ハリー様。
アルウェン様。
アスラン様。
五人とも、全員が笑顔で応えてくれた。
聖女ではない私のことも、変わらずに支えてくれる彼らの愛。
それを感じて、私は感激している。
「帰りましょう。私達のセントレイピアへ!」
白いドラゴンが翼をはためかせ、私達は空を舞った。
国境砦が見る見るうちに小さくなるのを見て、私はまた感激した。
過ぎ行くバトラックス。
近づくセントレイピア。
空から見ると、世界はこんなにも小さい。
私は、ふと自分の未来を思った。
聖女という仮の姿を脱ぎ捨てた私の未来は、白紙。
ならば、私は未来に何を望む?
……私は、もっと世界を知りたい……。
◇
そして、〈聖声の儀〉が始まる。
私が叫んだ時には、親衛隊の四人が疾風のごとく動いていた。
「ライラァーーッ!!」
「ちっ!」
アルウェン様がライラへと斬りかかる。
ライラは彼女の剣を受け流すや、わき目もふらずに穴の開いた壁へと走った。
そこへ――
「逃がすかよ!」
――アトレイユ様の剣が飛んできて、彼女の手前へと突き刺さった。
とっさに足を止めるライラ。
次いで、ハリー様が彼女の前へと回り込む。
ライラが剣を構えるより早く、ハリー様は彼女の手から剣を叩き落した。
「あなたはライラさんじゃありませんね!?」
「くっ」
ライラはすぐに身をひるがえして、別の逃げ場所を探そうとしたけど――
「貴様、何者だ?」
――ルーク様に首元へ剣を突きつけられて、動きを止めた。
「……はは、さすが親衛隊。もはや逃げることは不可能か」
ライラは観念したように両手を上げた。
一方、ザターナ様は……。
「ぐうぅっ」
「ザターナ様!」
「意識が……朦朧としてきたわ……。ど、毒ね……?」
「毒!?」
私がザターナ様に駆け寄った時、彼女はお腹を押さえてうめいていた。
その手の内側からは、赤い血が滝のように流れ出てくる。
傷はとても深い。
それに、毒だなんて……!
「おどきっ」
フラメール様が慌てた様子で私を押し退け、ザターナ様の軍服をめくり上げた。
お腹の傷を見て、私は思わず目を背けてしまった。
「……こりゃバジリコックの毒だね。傷口の血の凝固を妨げる質の悪い猛毒だよ」
「フラメール様! お願いします、ザターナ様を助けて!!」
「これほどの毒、吸い出すことなど無茶じゃ。ちゃんとした毒抜きの設備がなければ助けられん。かと言って、この出血では動かすことも……」
「そんな!」
「今の時代にこんな扱いづらい毒を使うとは……。あんた、殺し屋にしても見かけ通りの歳じゃないね!?」
フラメール様が睨みつける先で、ライラが笑う。
それを見て、アルウェン様が激昂する。
「なぜだ! なぜ、きみがこんな真似を!?」
「そう怒鳴らないで、アルウェン。……そうだな。もう隠し立てする必要もないから教えてあげよう」
「何!?」
「マンティコア、とでも名乗っておこうか。セントレイピアへ潜入してから、私はずっと聖女と出会う機会をうかがっていたのさ」
マンティコア?
ライラが?
そんな……嘘でしょう?
「マンティコアだと! ヘルモーズの言っていたバトラックスの間者か!?」
「なぁんだ。私のことはすでにご存じだったのね」
「だが、そうだとしても……いつライラにすり替わったんだ!?」
「二年前よ」
「ライラは……本物のライラはどこにいる!? まさか、殺……」
「いいえ。私は殺していないわ」
「嘘をつけ! なら、どうしてライラにすり替わることができた!?」
「当時、北の国境近くの雪山で、騎士学院の候補生が登山訓練をしていたでしょう。その時、滑落死した彼女の遺体を見つけたの。体格も近かったから、これ幸いにと顔と身分をいただいたのよ」
ライラが首筋の皮を少しめくりあげた。
それを見た私は、嫌な光景を想像して吐き気を催してしまった。
「この怪物め、私の友人をよくも!」
「誤解しないてアルウェン。あなたの友人は私よ」
「な……に……っ」
「ライラに成り代わった後、私はあなたと親しくなったのよ。同期で同性なのはあなただけだったしね」
「貴様……」
「気づいていたわよ、あなたの秘密。間者なんて洞察力がなければ務まらないもの」
アルウェン様はライラを後ろ手に掴んで、その場に組み敷いた。
その時のアルウェン様の苦悶の顔ときたら……。
「マンティコア! 貴様の目的は聖女の拉致ではなかったのか!?」
「今朝まではね。でも、瓦礫の下で話を聞いていて、聖女は生かしておくべきではないと考えを改めたのよ」
「よくも抜け抜けと!」
「私だってこの二年間苦労したのよ。ようやく騎士になって聖女様に会えたと思ったら、今度は偽物。本物の行方を捜そうにも、まるで手がかり無しときたもんだ」
ライラ――いいえ。マンティコア。
彼女も私の正体を見抜いていたのね……。
「〈聖声の儀〉まで様子をうかがうつもりだった。けれどその矢先、極秘会談とバプティス聖山への山籠もりが行われると聞いて、何かが起きると思った」
「それで貴様は護衛役として、この場にやってきたわけか」
「こっち側にきて正解だった。おかげであいつに先んじることができたからね」
「あいつ?」
「……グリーンドラゴンと言えばわかる?」
「もう一人の間者か! そいつはどこにいる!? 言わないと――」
「し、知らないわよ。やつとは一緒にこっちへ送られたけど、十年前に別れてからは手紙のやり取りだけ。お互い顔も身分も変わっているのよ!」
「それを信じろと!?」
「お互いどっちが先にの競争だったからね。最低限の情報交換しかしてないわ」
アルウェン様がやるせないお顔で、私を見つめる。
……グリーンドラゴンの行方なんて今はどうでもいいわ。
何よりも重要なのは、ザターナ様の命が脅かされているこの現実よ。
「フラメール様。応急処置でいいですから、治療の準備を」
「何言っとるんじゃ。毒が体内に残っていては治療も何も……」
「私が毒を吸い出します」
そう言った直後、その場の視線を一身に集めてしまった。
旦那様は私の肩を掴むや、激しく揺さぶってくる。
「何を言っている、ダイアナ! そんなことをすれば死んでしまうぞ!?」
「構いません。ザターナ様を助けられるなら、私が代わりに死にます」
「馬鹿な! ダメだ、ならば私が……」
私は、そっと旦那様の頬へと口づけをした。
旦那様はそれに驚いて、唖然としたまま私を見つめている。
それがおかしくて、私は自然と微笑んでしまった。
「私を娘と言ってくれて、ありがとう」
「ダイアナ……」
「私、聖女様を演じてきて、ひとつだけ思い違いをしていたことに気づきました」
「思い違い?」
「みんなが私へ向けてくれた想い。すべて私が演じる聖女様へのものだろうと、いつも他人事のように感じていました。でもそれは違った――」
私は、旦那様を。
そして、親衛隊のみんなを見渡しながら続けた。
「――みんな私を見ていてくれた。聖女という配役ではなく、私という人間を」
「当然だろう、ダイアナ。おまえは……皆に愛されているのだ」
「愛……」
「おまえのようながんばり屋は他にいない。そのがんばりが報われずに、この世を去られてなるものか!」
「……今、報われました」
私は旦那様を押し退けて、うなされるザターナ様のお顔を覗き込んだ。
もう意識もないみたい。
でも、私が必ずお助けします。
「みんなには使命があります。旦那様には、外交官としてセントレイピアとバトラックスを取り持つ使命が。親衛隊のみんなには、これからザターナ様をお守りしていく使命が。この場で使命を終えたのは私だけ――」
毒抜きをしなければ、ザターナ様は死んでしまう。
そして、毒抜きをした者は死んでしまう。
ならば、ザターナ様をお助けするために命を投げ出す者が必要。
今この場でその役目を担う資格があるのは、使命を終えた私だけ。
「――だから、命を懸けるのは私だけでいいんです」
私は腕に抱いていたカーバンクルちゃんを床へ下ろすと、額の石にキスをした。
彼は不思議そうな目をして、じっと私を見上げている。
「今までありがとう」
その言葉を最後に。
私は、ザターナ様のお腹へと顔を近づけていく。
「ダメだ、ダイアナッ」
「ダイアナ、よせ!」
「ダイアナ!」
「ダイアナ……」
「偽聖女っ」
背中へとかけられる親衛隊の声。
それを聞き、私の心に後ろ髪を引かれるような思いが募っていく。
ルーク様。
プロポーズの返事ができなくて、ごめんなさい。
アトレイユ様。
私の騎士となって身を尽くしてくれて、ありがとう。
ハリー様。
告白の機会を作ってあげられなくて、ごめんね。
アルウェン様。
あなたの想いを打ち明けて、ザターナ様を幸せにしてあげて。
アスラン様。
お父様を大切に。
……そうか。
これが、愛されるということ。
私はこれまでずっと、多くの人から無償の愛を受けてきた。
それを今になって認識するなんて。
……私って本当にドジですね、ザターナ様。
「聖女の名、今こそお返しいたします」
私の唇が、ザターナ様の傷口に触れようかと言う時――
「同意する」
――誰かの指先が、突然私の顎をすくい上げた。
「使命が終わったというなら、わしもじゃ」
「トールくん?」
「ザターナの毒抜きはわしがしよう」
「そんな、ダメですっ。死んでしまいますよ!?」
「心配せんでよい。わしは不死身の体を持つ男じゃぞ。毒をたらふく飲んだところで、死にはせん」
「でも、私の使命はもう終わって……」
「人間が一生に背負う使命はひとつだけか? もっと欲張ってもよかろう」
「……」
「おぬしの生き様は美しい。替え玉とはいえ、おぬしは紛れもなく聖女じゃった」
「トールくん……」
「そんなおぬしの生き様、ここで散らすにはちと惜しい」
「……ありがとう」
トールくんは私にほほ笑むと、ザターナ様の傷口へと顔を近づけ――
◇
「……よし。これで傷口も塞ぐことができたわい」
「フラメール様、まるでお医者様のよう」
「錬金術師ともなれば、様々な業種の技術をかじっておるものよ。しかし、ラグナレクの吐き出した糸があって幸いしたのう。おかげで傷口を縫うことができた」
「トールくんは……」
彼は、物陰で浴びるようにポーションをがぶ飲みしていた。
さすがに不死身の体でも、バジリコックの毒にはただでは済まなかったみたい。
太陽も傾き始めた。
気絶していた騎士団や親衛騎団の面々も目を覚まし始めている。
一方、将軍や配下の兵士さん達はしっかりと縄で縛ってある。
「ザターナ様のご様子は?」
「呼吸も落ち着いた。ひとまずは大丈夫じゃ」
「よかった」
「じゃが、すぐにでも医療院へ運び入れた方がよい。こんな汚い場所に置いておいては、感染症になりかねんからのう」
私は、腕の中に戻っていたカーバンクルちゃんを再び床に置いた。
そして――
「また私のお願いを聞いてくれる?」
「クルルッ」
――彼は私の意図を察して、戦闘形態に早変わり。
「これより、ザターナ様を最寄りの医療院へお運びします。その場所はセントレイピアになりますが……」
私は途中で言葉を切って、こちらを見つめている赤い軍服の女性へ目を向けた。
彼女の名は、たしかロヴン。
このまま黙って私達を送り出してくれるかしら。
「ダイアナ様」
彼女は私の名を呼ぶや、私の前まで歩いてきて片膝をついた。
その様子にちょっと驚いたけど、私は黙って彼女の言葉を待った。
「我々はザナ様を――いいえ。ザターナ様をお待ちしております。バトラックスの新時代には、そのお方が必要なのです」
「あなた達のもとへ戻るかは、ザターナ様次第ですよ」
「はい。私達は信じて待ちます。我らが指導者のご帰還を」
「彼女を私に預けてくれますか?」
「あなたにならば」
「ありがとう。ロヴンさん」
私がほほ笑むと、彼女も笑い返してくれた。
そして。
「親衛騎団に命じる。我々はこのまま賊を連れてミョルニアへ帰還する! 総統がお戻りになられるまで、バトラックスの双肩は我々の手にあると考えよ!!」
ロヴンさんの号令に、親衛騎団のみんなが声を上げる。
砦を去る際、ロヴンさんがトールくんへと訊ねた。
「トール殿。あなたはこれからどうなされる?」
「バトラックスは飽いた。北の地にでも渡って、農業にでも精を出してみるかのう」
「新たな時代を総統と共に創っていきませんか?」
「それなら尚更、わしのような古い人間は去るべきじゃろうて。新時代は若人によって創られるから価値があるんじゃ」
「……では、お達者で」
ロヴンさんはそう言い残して、砦から去っていった。
「ダイアナよ」
「はい」
「これから時代は変わる。おぬしにとって、自分自身の道を開くいい機会になるじゃろう」
「自分自身の道?」
「新たな使命は、自分で見つけても良いということじゃよ」
そう言うや、トールくんは砦の外へと飛び降りた。
私が外を覗いた時には、彼は丘陵を下って遥か先へと走り去った後だった。
「軍神の農業とは興味深いな」
「そう……ですね」
「して、この事態。まだ気絶しておられる第一王子殿下にはどう伝える?」
ルーク様に言われて、私はハッとした。
新総統もロムルス王子殿下も無事だったものの、極秘会談はメチャクチャ。
国交の話も決着していないわよね。
これから両国はどうなるのかしら……。
「この事態を滞りなく治めるのが、外交官たる私の使命だな」
「旦那様」
「幸い、騎士団の連中もまだほとんど眠っている。聖女役の少女もな。王子殿下には、私の方から虚実織り交ぜて話しておこう」
「では、私達は先に聖都へ」
「ザターナを頼んだぞ。ダイアナ」
「はい!」
私はザターナ様をおんぶして、カーバンクルちゃんの背に登った。
それを支えてくれたのは、親衛隊のみんな。
「みんな、もうしばらく私についてきてくれますか?」
ルーク様。
アトレイユ様。
ハリー様。
アルウェン様。
アスラン様。
五人とも、全員が笑顔で応えてくれた。
聖女ではない私のことも、変わらずに支えてくれる彼らの愛。
それを感じて、私は感激している。
「帰りましょう。私達のセントレイピアへ!」
白いドラゴンが翼をはためかせ、私達は空を舞った。
国境砦が見る見るうちに小さくなるのを見て、私はまた感激した。
過ぎ行くバトラックス。
近づくセントレイピア。
空から見ると、世界はこんなにも小さい。
私は、ふと自分の未来を思った。
聖女という仮の姿を脱ぎ捨てた私の未来は、白紙。
ならば、私は未来に何を望む?
……私は、もっと世界を知りたい……。
◇
そして、〈聖声の儀〉が始まる。
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恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。
ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。
前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。
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