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第2章 魔術書争奪編
第24話 一方その頃、暁の旅団は (5)
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「なんで私がこんなシャワーもないような、小汚い宿に泊まらなきゃいけないのよ!」
「しょうがねえだろ。俺たちゃお尋ね者なんだよ。王都まで逃げて来てはいるが、一般の宿に泊まっちまったら足がついてしまうかもしれねえだろが!」
狭い部屋の中で、メンバーのエリーとエディが言い争いをしているのを、ランドルフはうるさく聞いていた。
暁の旅団は現在、カラカス地方で自分たちの手配書が出された事。
及び、マクルーハン卿が王都へ移動したのもあって、潜伏の為に王都の貧民街スラムの安宿に泊まっている。
現在、王都では祭というのが開催されているはずだ。
そして祭が開催されれば専属冒険者のランスたちは、マクルーハン卿の元を離れて行動するはずだった。
祭の開始予定からしばらく経つ。そろそろ王城に様子を見に行ってみるか。
「……だからぁ!」
「おい、出発するぞ。祭が開催されて、しばらく経つから、ランスの野郎どもがマクルーハン卿から離れるかもしれねえ」
「……ああ、わかった」
メンバーのそれぞれが黒のフードを目深くかぶり、安宿から出発する。
前はわずかな移動であっても馬車を利用していたが、現在は資金も厳しい為、歩きでむかった。
「おい、あれランスたちだろう」
城の東端のワイバーン発着場にランスたちの姿はあった。
やつら、この国から出るらしい。
ワイバーンを利用してまでの移動だ。
最短でも今日中には帰ってこないだろう。
都合よくマクルーハン卿も見送りに来ていた。
「おい、この後、マクルーハン卿の後をつけて殺るぞ。」
メンバーたちは無言で頷く。
二人は一気に緊張した面持ちとなった。
この中で対人戦で殺った経験があるのは俺だけか。
できれば、罪をかぶせるためにも二人のうち、どちらかに殺らせたかったが。
確実性を期すために、俺が殺るか。
今回は絶対に失敗はできない。
ランスたちが羽ばたくワイバーンに乗って、大空の彼方へ消えていくのを確認する。
「よし、荷馬車の発着場ではるぞ。マクルーハン卿は一旦邸宅に戻るはずだ」
そう言って進んでいくランドルフの後ろを、強張った表情をしたエリーとエディがついていった。
「よし今だ! やれ!」
『アイスランス』
ランドルフの指示で、エリーは氷槍を馬車の馬に発射する。
「ぶひぃいーーんッ!!」
見事命中し、馬車を引いていた馬は絶命した。
馬車を運転していた、運転者は恐怖の悲鳴を上げながらその場から逃げていった。
ガチャっと馬車のドアが開き。
マクルーハン卿の若い女性と老人の執事が現れた。
「誰?」
「悪いが死んでもらうぞ、マクルーハン卿」
そう言ってランドルフは前に進み出る。
するとマクルーハン卿の若い女性は、腰の細剣を引き抜いて前に出てきた。
意外だ。てっきり泣き叫びながら、逃げ出すと思っていたが……。
「お嬢様……」
「大丈夫よ。ハーバードにも分かるでしょ、大した刺客じゃないことを」
大した刺客じゃないだと?
小娘が勘違いしやがって。
その細剣ごと斬って捨ててやる。
ランドルフは腰の片手剣を引き抜き、視界を確保する為、フードを脱ぐ。
「あら、あなた……暁の旅団のランドルフね。という事は、後にいるのは、エリーとエディでよかったらかしら」
「ああ、そうだ。まあそれを知られても、これからお前らは死ぬんだから、問題はないがな」
ランドルフはそういうと剣を振りかぶりながら一気に間合いを詰める。
移動スピードを活かしながら、上段に構えた剣を一気に力強く振り下ろす。
(殺った!)
そう思った瞬間、突然、目の前にマクルーハン卿の剣閃が煌めいた。
彼女の細剣と自身の剣が衝突して火花を散らした思ったら、自身の剣の軌道が変えられ、検討違いの方向へ剣は進んでいった。
なんだ? 彼女の剣は始動が全く分からなかった。
これは…………ランドルフの額に冷や汗が落ちる。
「やっぱり、腕はよくないわね。これじゃ剣士としては精々贔屓目にみても、冒険者ランクCだわ。あなたたち、ランスにパーティーに寄生しているって言ったらしいわね。この程度でBランクパーティー、って寄生してたのはあなたたちでしょ」
「うるせぇ! このアマ!」
袈裟斬り、水平斬り、突き技。
ランドルフは連続で攻撃を行うが、すべて目にもとまらぬスピードで弾かれ、剣の軌道を変えられてしまう。
「あなた私が、貴族の小娘だと思って襲ってきたんでしょ。残念だけど私は雷神流剣術の免許皆伝よ。ちなみにそこにいるハーバードは師範代の腕前、元Aランク冒険者。襲撃先の情報収集なんて基本中の基本でしょ。呆れるほど無能ね、あなたたち」
「くそぉーーーお゛ッ!!」
『斬空波!』
ランドルフは自身の最強剣スキルで起死回生の剣撃波を放つ。
しかし、それに合わせるようにマクルーハン卿も剣撃波を放ち――
ランドルフの剣撃波を相殺してしまった。
バカな……
「これで敵わないって分かったかしら。怪我したくなかったら降参しなさい。これ以上、抵抗を……」
ランドルフはマクルーハン卿が話している間、ジリジリと後ろに下がる。
そして、腰の短剣をこっそり引き抜き、エリーに――
「エリー、奴らにスロウをかけろ!」
『スロウ!』
スピードダウンの魔法を奴らにかけさせるとすぐに、踵を返し。
「ぐぁあ! ランドルフ、てめぇ何を!」
「エリー逃げるぞ!」
ランドルフはエディの太ももを短剣で突き刺し、囮にして逃げた。
今度はエリーにその所業はみられたが…………エリーは迷った末にランドルフを追って逃げる。
「お嬢様」
「追わなくていいわ。スロウをかけられている状態で深追いしても危険。万が一の可能性で罠という事もあるし」
エディは、ランドルフに刺された出血箇所を手で抑えながら、顔を痛みと憎しみで歪めている。
「呆れたリーダーね。あろうことかメンバーに傷を負わせて、囮にして逃げるなんて」
「ランドルフの野郎! あいつ、ゴブリンから逃げる時もきっとカルカスを……ちきしょう!」
「ランスを追放しなければ、こんな事にならなかったでしょうに」
「くそー! そうだ、あいつが言ってた事は正しかった! 俺が……バカだった…………」
「反省は牢屋の中でじっくりすることね。ハーバード、後はお願い。私は歩いて邸宅に戻るわ」
「はい、後はお任せください」
こうしてエディはその数々の罪によって牢屋行きになり、暁の旅団の罪状は更に加算されることとなった。
「しょうがねえだろ。俺たちゃお尋ね者なんだよ。王都まで逃げて来てはいるが、一般の宿に泊まっちまったら足がついてしまうかもしれねえだろが!」
狭い部屋の中で、メンバーのエリーとエディが言い争いをしているのを、ランドルフはうるさく聞いていた。
暁の旅団は現在、カラカス地方で自分たちの手配書が出された事。
及び、マクルーハン卿が王都へ移動したのもあって、潜伏の為に王都の貧民街スラムの安宿に泊まっている。
現在、王都では祭というのが開催されているはずだ。
そして祭が開催されれば専属冒険者のランスたちは、マクルーハン卿の元を離れて行動するはずだった。
祭の開始予定からしばらく経つ。そろそろ王城に様子を見に行ってみるか。
「……だからぁ!」
「おい、出発するぞ。祭が開催されて、しばらく経つから、ランスの野郎どもがマクルーハン卿から離れるかもしれねえ」
「……ああ、わかった」
メンバーのそれぞれが黒のフードを目深くかぶり、安宿から出発する。
前はわずかな移動であっても馬車を利用していたが、現在は資金も厳しい為、歩きでむかった。
「おい、あれランスたちだろう」
城の東端のワイバーン発着場にランスたちの姿はあった。
やつら、この国から出るらしい。
ワイバーンを利用してまでの移動だ。
最短でも今日中には帰ってこないだろう。
都合よくマクルーハン卿も見送りに来ていた。
「おい、この後、マクルーハン卿の後をつけて殺るぞ。」
メンバーたちは無言で頷く。
二人は一気に緊張した面持ちとなった。
この中で対人戦で殺った経験があるのは俺だけか。
できれば、罪をかぶせるためにも二人のうち、どちらかに殺らせたかったが。
確実性を期すために、俺が殺るか。
今回は絶対に失敗はできない。
ランスたちが羽ばたくワイバーンに乗って、大空の彼方へ消えていくのを確認する。
「よし、荷馬車の発着場ではるぞ。マクルーハン卿は一旦邸宅に戻るはずだ」
そう言って進んでいくランドルフの後ろを、強張った表情をしたエリーとエディがついていった。
「よし今だ! やれ!」
『アイスランス』
ランドルフの指示で、エリーは氷槍を馬車の馬に発射する。
「ぶひぃいーーんッ!!」
見事命中し、馬車を引いていた馬は絶命した。
馬車を運転していた、運転者は恐怖の悲鳴を上げながらその場から逃げていった。
ガチャっと馬車のドアが開き。
マクルーハン卿の若い女性と老人の執事が現れた。
「誰?」
「悪いが死んでもらうぞ、マクルーハン卿」
そう言ってランドルフは前に進み出る。
するとマクルーハン卿の若い女性は、腰の細剣を引き抜いて前に出てきた。
意外だ。てっきり泣き叫びながら、逃げ出すと思っていたが……。
「お嬢様……」
「大丈夫よ。ハーバードにも分かるでしょ、大した刺客じゃないことを」
大した刺客じゃないだと?
小娘が勘違いしやがって。
その細剣ごと斬って捨ててやる。
ランドルフは腰の片手剣を引き抜き、視界を確保する為、フードを脱ぐ。
「あら、あなた……暁の旅団のランドルフね。という事は、後にいるのは、エリーとエディでよかったらかしら」
「ああ、そうだ。まあそれを知られても、これからお前らは死ぬんだから、問題はないがな」
ランドルフはそういうと剣を振りかぶりながら一気に間合いを詰める。
移動スピードを活かしながら、上段に構えた剣を一気に力強く振り下ろす。
(殺った!)
そう思った瞬間、突然、目の前にマクルーハン卿の剣閃が煌めいた。
彼女の細剣と自身の剣が衝突して火花を散らした思ったら、自身の剣の軌道が変えられ、検討違いの方向へ剣は進んでいった。
なんだ? 彼女の剣は始動が全く分からなかった。
これは…………ランドルフの額に冷や汗が落ちる。
「やっぱり、腕はよくないわね。これじゃ剣士としては精々贔屓目にみても、冒険者ランクCだわ。あなたたち、ランスにパーティーに寄生しているって言ったらしいわね。この程度でBランクパーティー、って寄生してたのはあなたたちでしょ」
「うるせぇ! このアマ!」
袈裟斬り、水平斬り、突き技。
ランドルフは連続で攻撃を行うが、すべて目にもとまらぬスピードで弾かれ、剣の軌道を変えられてしまう。
「あなた私が、貴族の小娘だと思って襲ってきたんでしょ。残念だけど私は雷神流剣術の免許皆伝よ。ちなみにそこにいるハーバードは師範代の腕前、元Aランク冒険者。襲撃先の情報収集なんて基本中の基本でしょ。呆れるほど無能ね、あなたたち」
「くそぉーーーお゛ッ!!」
『斬空波!』
ランドルフは自身の最強剣スキルで起死回生の剣撃波を放つ。
しかし、それに合わせるようにマクルーハン卿も剣撃波を放ち――
ランドルフの剣撃波を相殺してしまった。
バカな……
「これで敵わないって分かったかしら。怪我したくなかったら降参しなさい。これ以上、抵抗を……」
ランドルフはマクルーハン卿が話している間、ジリジリと後ろに下がる。
そして、腰の短剣をこっそり引き抜き、エリーに――
「エリー、奴らにスロウをかけろ!」
『スロウ!』
スピードダウンの魔法を奴らにかけさせるとすぐに、踵を返し。
「ぐぁあ! ランドルフ、てめぇ何を!」
「エリー逃げるぞ!」
ランドルフはエディの太ももを短剣で突き刺し、囮にして逃げた。
今度はエリーにその所業はみられたが…………エリーは迷った末にランドルフを追って逃げる。
「お嬢様」
「追わなくていいわ。スロウをかけられている状態で深追いしても危険。万が一の可能性で罠という事もあるし」
エディは、ランドルフに刺された出血箇所を手で抑えながら、顔を痛みと憎しみで歪めている。
「呆れたリーダーね。あろうことかメンバーに傷を負わせて、囮にして逃げるなんて」
「ランドルフの野郎! あいつ、ゴブリンから逃げる時もきっとカルカスを……ちきしょう!」
「ランスを追放しなければ、こんな事にならなかったでしょうに」
「くそー! そうだ、あいつが言ってた事は正しかった! 俺が……バカだった…………」
「反省は牢屋の中でじっくりすることね。ハーバード、後はお願い。私は歩いて邸宅に戻るわ」
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