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割れた破片
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イヴは人がドアをノックしなくても感じる事が出来るのだろうか。
突然立ち上がって行くと、そこには誰かがいる。
俺には気配とかそういうのは全く分からない。
イヴが部屋を出て行って、俺は休憩する前に全て終わらせようと書類の整理をした。
全部終わってから休憩した方が、ゆっくり休める。
紙が揺れていて、軽く飛ばされそうになり押さえる。
窓が少し開いていて、そこから風が入ってきていた。
さっきまでは気にならなかったけど、風が強くなってきたな。
また書類が散らばったら大変だから立ち上がった。
窓を閉めようとしていたら、近くに花瓶があった。
この花、漫画で出てきたな…漫画では結構大切な話に出てきたものだから覚えている。
エマがイヴの誕生日にあげた花だよな。
家で見た事なかったが、こんなところにあったんだな。
でも、なんか元気ないな…葉っぱの色も変だ。
イヴも全然帰ってきてなかったからな、水を変えていないのかも…
水を変えようと思って、花瓶に触れた。
手が滑って床に落としてしまった。
じゅうたんではなく、硬い床の上に落としてしまい割れてしまった。
慌ててしゃがんでガラス片で花が傷付かないように手に持った。
その時、イヴが慌てたように部屋に入ってきた。
「大丈夫か!?ユーリ!」
「………え?」
イヴは何故か俺の心配をしていた。
怪我はしてないから大丈夫だけど、俺より花の心配が先ではないのか?
大切な花なのは俺も分かっている、だから早く新しい花瓶を用意しないと…
その前に割れた花瓶を掃除しないとと、触れようとしたがイヴに腕を掴まれた。
「怪我をするから俺がやる」と言っていた。
いや、怪我をしてるのはイヴなんだからイヴに頼めない。
それに、イヴの大切な花の花瓶を壊してしまった。
俺が悪いんだから、イヴは手伝わなくていいんだ。
俺が花の事を謝るとイヴは何故か嫌そうな顔をする。
そこまで怒らせてしまったのか、だったら尚更自分でやるしかない。
花にとって長時間このままにしているわけにもいかない。
そんな言い合いを続けていたら、花が可哀想だ。
すぐに水を与えてあげないと…
「イヴ、花瓶ある?」
「花瓶?」
「新しい花瓶にこの花を入れてあげたいんだ」
「……使用人に聞けばあると思うけど」
「じゃあお願いしていい?俺はこれを掃除するから」
「危ない事は俺が…」
「大丈夫だって、掃除も使用人の役目なんだから…それよりもこの花元気なさそうだから早く水をあげたいんだ」
「……」
お互い一歩も引かないなら、役割分担をした方が納得するだろう。
俺一人でしたかったけど、イヴはそうさせてもらえない。
この部屋も花瓶もイヴのものだ、イヴに従うのが一番だ。
イヴに言うと、ガラス片を集める。
指先に気を付ければなんて事はない。
イヴは心配性なんだ、前は慣れない事ばかりあって怪我をした事もあったけど今はもう大丈夫だ。
花瓶なら片手で持てるだろうから怪我をしたイヴでも重くない筈だ。
その後に一緒に休憩しようと言った。
「ユーリに危ない事をさせたくないけど、外には出せないから…分かった俺がやる…でもその前に…」
イヴは俺の手を持って唇に近付けた。
まだ怪我をしていないから治療してもらう必要はないよ?
そう思っていたら、小さく息を吹き掛けられた。
それは見えない手袋みたいになって俺の手を包んだ。
見た目では見えないけど、触ると何となく分かる。
イヴを見ると、満足そうに微笑んでいた。
「これは風の魔術の結界だ、ユーリを危ないものから守ってくれる」
「ありがとう」
「守ってくれるが、あまり無茶はしないでくれ」
「うん、大丈夫…ガラス片を掃除するだけだから……掃除道具は…」
部屋を見渡して、いつも使っているほうきを探した。
そして、ある場所を見て驚きで固まった。
イヴも一点を見つめる俺の視線の先を見て、思い出したかのように眉を寄せていた。
部屋の入り口にエマがいて、そこだけ時が止まったかのように動かなかった。
訪問者はエマだったのか、でもこの状況っていろいろマズイんじゃないか?
エマは俺の魔騎士の紋様を見ている。
それは誤魔化したからいいけど、エマの中では俺は魔騎士のファンに見えているだろう。
それだけで、印象は最悪なので…イヴの家が破壊された時とハルフィリアとイヴが戦った現場にもいた。
他の俺を疑う騎士よりも、魔騎士のファンだと思っているエマの印象は最悪だ。
使用人とはいえ、エマの家にいたら嫌だよな。
「イヴ、なんで…この人がここに?」
「俺の、使用人です」
イヴは「俺の」という言葉を強調させて言っていた。
エマはイヴのところに行こうと一歩部屋に入ろうとしていた。
イヴは手を伸ばしてエマが入る事を止めた。
ガラス片があるから危ないと言って、俺から花を受け取って立ち上がっていた。
危ないと言っても、花瓶は小さいから広範囲には広がっていない。
でも、エマはお姫様だからどんな些細な事でもダメなんだろう。
エマは使用人でも俺は危ないとイヴに言っている。
それを無視してイヴは部屋を出て行った。
危ないのは自分でも分かってる、俺は疑惑ではなく魔物そのものだからだ。
ほうきでかき集めて、それをゴミ箱に捨てる。
エマの治療で俺が人に戻れたらいいのにな。
病気じゃないから、無理なのかな。
もし、人に戻れる方法があったら俺は何でもする。
…それがたとえ危ない事であっても、俺はいつ人でなくなるかビクビクして過ごしたくない。
イヴとも、普通にずっと一緒にいたい……これが俺の本音だ。
突然立ち上がって行くと、そこには誰かがいる。
俺には気配とかそういうのは全く分からない。
イヴが部屋を出て行って、俺は休憩する前に全て終わらせようと書類の整理をした。
全部終わってから休憩した方が、ゆっくり休める。
紙が揺れていて、軽く飛ばされそうになり押さえる。
窓が少し開いていて、そこから風が入ってきていた。
さっきまでは気にならなかったけど、風が強くなってきたな。
また書類が散らばったら大変だから立ち上がった。
窓を閉めようとしていたら、近くに花瓶があった。
この花、漫画で出てきたな…漫画では結構大切な話に出てきたものだから覚えている。
エマがイヴの誕生日にあげた花だよな。
家で見た事なかったが、こんなところにあったんだな。
でも、なんか元気ないな…葉っぱの色も変だ。
イヴも全然帰ってきてなかったからな、水を変えていないのかも…
水を変えようと思って、花瓶に触れた。
手が滑って床に落としてしまった。
じゅうたんではなく、硬い床の上に落としてしまい割れてしまった。
慌ててしゃがんでガラス片で花が傷付かないように手に持った。
その時、イヴが慌てたように部屋に入ってきた。
「大丈夫か!?ユーリ!」
「………え?」
イヴは何故か俺の心配をしていた。
怪我はしてないから大丈夫だけど、俺より花の心配が先ではないのか?
大切な花なのは俺も分かっている、だから早く新しい花瓶を用意しないと…
その前に割れた花瓶を掃除しないとと、触れようとしたがイヴに腕を掴まれた。
「怪我をするから俺がやる」と言っていた。
いや、怪我をしてるのはイヴなんだからイヴに頼めない。
それに、イヴの大切な花の花瓶を壊してしまった。
俺が悪いんだから、イヴは手伝わなくていいんだ。
俺が花の事を謝るとイヴは何故か嫌そうな顔をする。
そこまで怒らせてしまったのか、だったら尚更自分でやるしかない。
花にとって長時間このままにしているわけにもいかない。
そんな言い合いを続けていたら、花が可哀想だ。
すぐに水を与えてあげないと…
「イヴ、花瓶ある?」
「花瓶?」
「新しい花瓶にこの花を入れてあげたいんだ」
「……使用人に聞けばあると思うけど」
「じゃあお願いしていい?俺はこれを掃除するから」
「危ない事は俺が…」
「大丈夫だって、掃除も使用人の役目なんだから…それよりもこの花元気なさそうだから早く水をあげたいんだ」
「……」
お互い一歩も引かないなら、役割分担をした方が納得するだろう。
俺一人でしたかったけど、イヴはそうさせてもらえない。
この部屋も花瓶もイヴのものだ、イヴに従うのが一番だ。
イヴに言うと、ガラス片を集める。
指先に気を付ければなんて事はない。
イヴは心配性なんだ、前は慣れない事ばかりあって怪我をした事もあったけど今はもう大丈夫だ。
花瓶なら片手で持てるだろうから怪我をしたイヴでも重くない筈だ。
その後に一緒に休憩しようと言った。
「ユーリに危ない事をさせたくないけど、外には出せないから…分かった俺がやる…でもその前に…」
イヴは俺の手を持って唇に近付けた。
まだ怪我をしていないから治療してもらう必要はないよ?
そう思っていたら、小さく息を吹き掛けられた。
それは見えない手袋みたいになって俺の手を包んだ。
見た目では見えないけど、触ると何となく分かる。
イヴを見ると、満足そうに微笑んでいた。
「これは風の魔術の結界だ、ユーリを危ないものから守ってくれる」
「ありがとう」
「守ってくれるが、あまり無茶はしないでくれ」
「うん、大丈夫…ガラス片を掃除するだけだから……掃除道具は…」
部屋を見渡して、いつも使っているほうきを探した。
そして、ある場所を見て驚きで固まった。
イヴも一点を見つめる俺の視線の先を見て、思い出したかのように眉を寄せていた。
部屋の入り口にエマがいて、そこだけ時が止まったかのように動かなかった。
訪問者はエマだったのか、でもこの状況っていろいろマズイんじゃないか?
エマは俺の魔騎士の紋様を見ている。
それは誤魔化したからいいけど、エマの中では俺は魔騎士のファンに見えているだろう。
それだけで、印象は最悪なので…イヴの家が破壊された時とハルフィリアとイヴが戦った現場にもいた。
他の俺を疑う騎士よりも、魔騎士のファンだと思っているエマの印象は最悪だ。
使用人とはいえ、エマの家にいたら嫌だよな。
「イヴ、なんで…この人がここに?」
「俺の、使用人です」
イヴは「俺の」という言葉を強調させて言っていた。
エマはイヴのところに行こうと一歩部屋に入ろうとしていた。
イヴは手を伸ばしてエマが入る事を止めた。
ガラス片があるから危ないと言って、俺から花を受け取って立ち上がっていた。
危ないと言っても、花瓶は小さいから広範囲には広がっていない。
でも、エマはお姫様だからどんな些細な事でもダメなんだろう。
エマは使用人でも俺は危ないとイヴに言っている。
それを無視してイヴは部屋を出て行った。
危ないのは自分でも分かってる、俺は疑惑ではなく魔物そのものだからだ。
ほうきでかき集めて、それをゴミ箱に捨てる。
エマの治療で俺が人に戻れたらいいのにな。
病気じゃないから、無理なのかな。
もし、人に戻れる方法があったら俺は何でもする。
…それがたとえ危ない事であっても、俺はいつ人でなくなるかビクビクして過ごしたくない。
イヴとも、普通にずっと一緒にいたい……これが俺の本音だ。
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