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イヴ視点6

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あれからしばらくして、リーン帝国の姫であるエマ様は誕生日を迎え俺はパーティーに呼ばれた。
浮ついた奴らが大勢いる場所は好きではない。
でも、今日の俺はとても機嫌が良かった。

当然ユーリの姿を見たからだ。

ユーリは母親の手伝いをしていた。
重い紙袋を運んでよろけていて、とても危なっかしい。
手伝いの邪魔をしてしまうのは可哀想だから、こうして少し離れた物陰からユーリを見守っている。

転げそうになっていたから、風の魔術でユーリの足元に風を送るとフワッと体が浮いた。
転がる事なく地面に足が付いてホッと一安心した。

「母さん!凄い!俺浮いたよ!」

「あら、風の魔力レベル上がったのかしら」

「うーん、でも俺まだそよ風くらいしか操れないよ」

ユーリは嬉しそうに、後ろから付いて来ていた母親に話していた。
俺の魔術でユーリはあんなに喜んでくれる…それがとても嬉しい。

ユーリは紙袋を風で浮かせようとしていたが、全然浮いていない。
なんて愛しいんだ、ユーリが望むならどんな魔術でも見せてあげるのに…

俺は足元にあるものを踏みつけながら、ユーリを見守っていた。
ユーリに近付く奴は俺が排除する、だから安心してていいからね。

踏み潰すと、足元に砂が溜まっていて砂は風に乗って何処かに飛んでいった。
毎日ユーリと会う度に魔物がユーリを狙う。
俺のユーリに近付ける存在だとでも思っているのか。

魔物で不快な気分になったが、俺がユーリの笑顔を守るために排除する…それだけだ。

ユーリの嬉しそうな顔だけを思い出して歩き出した。

今日はお姫様の誕生日パーティーだと事前に聞かされていた。
俺にとってどうでもいいが、俺は聖騎士だからエマ様を守らないといけない…歳も近いし、俺が直々に選ばれた。

俺が毎日のように自由に外出出来るのは、俺が聖騎士だからだ。
普通の子供が夜遅くまでの外出を許されるわけがない。
聖騎士の俺にしか興味がない両親でさえ、聖騎士になるのを辞めたら俺はただの魔導士として外出を制限されてしまう。
力が強くても、考え方が古い両親は子供が夜遅くまでの外出を許す筈がない。

今は聖騎士だから、何も理由を聞かれずにユーリのところに行ける。

ユーリに会いにいくには、俺は聖騎士になったままの方が効率がいい。

別にお姫様の騎士になったからといって普段の行動は何も変わらない。

いつもと違い、窮屈な正装でパーティー会場にやって来た。

昼間は城の前でエマ様が国民達に祝われていた。
バルコニーから手を振ってニコニコ笑うエマ様が不気味でしょうがない。
自然に笑っている感じではない、だから違和感が拭えず…俺はこのお姫様が苦手だ。

昔の俺だったら、自分と重ねていただろう…俺も昔は不気味なほど人形のような笑みを向けていた。
でも、今の俺は…ユーリというかけがえのない存在に出会い、本当の笑みを知ったんだ。

ユーリが俺を変えてくれた、今があるのはユーリのおかげだ。

エマ様は6歳の誕生日を迎えた日だ。
確かいつの日か、ユーリがエマ様と同じ年齢という話をユーリとユーリの母親が話していた事を思い出した。

年齢が同じという者など、沢山いる…そんなの分かっているが…心がどす黒くざわつく。
俺も同じ日、同じ時間に生まれたかったな。

赤ん坊の時からユーリを見守っていたかった…5年以上ユーリを知らなかったなんて、耐えられない。

大丈夫、大丈夫だ…これからユーリとの思い出を作ればいいんだ、俺しか知らないユーリがいるんだ、それでいい。

ユーリの事を考えながら気持ちを落ち着かせた。

ユーリがいなきゃ、俺の心は壊れていたかもしれない。

俺はユーリに生かされている、とても満たされていく。

パーティーでは、父によりいろんな人への挨拶で振り回されていた。
愛想笑いも疲れる、早く終わらないかな。

エマ様にも顔合わせをしたみたいだが、正直覚えていない。
皆俺にとって同じような顔に見えるから…

挨拶が終わると、逃げるように庭に出た。
賑やかな会場内と違い、庭は風により木の葉が揺れる音のみが耳に届いた。
ベンチに腰を下ろして、窮屈なネクタイを緩めた。
誰も見ていないから、このくらいしても大丈夫だろう。

あんな窮屈な箱の中に長時間いたら窒息死してしまう。
ユーリとなら、指一本も動かない箱に閉じ込められても死ぬまで出たくないんだけどな。
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