上 下
57 / 72

第57話・千夜一夜物語 14[もう俺の決心は鈍ってしまった。]

しおりを挟む
白い靄の先から皆んなが見えてくる。
皆んなの想い、気持ち、夢・・・・欲望を知った。
何だか皆んなへの見方が違う気がする。
俺はどうしたら良い?最初の思った通りにシンドバッドさんの願いを優先するべきか。
そもそも願いに違いはないハズ。この人を虜にする魔法が解ければ全てが元通りになるんだから。
皆んなの俺への想いは全部偽物なんだから。
俺がまたこの異世界で一人になるだけなんだから。前の世界と同じ様に。
それだけなんだから。
努力しよう。前の世界みたいにならない様に。
この世界を少しは知った状態から0スタートするんだから。前の世界の失敗を知ってるんだから。アドバンテージは十分ある。
この世界では上手くやろう。
早く、皆んながこっちに気づく前に。
「ジンさん。願いを叶えてもらうにはどうしたら良いですか?」
「願い決まったん?」
「・・・はい。俺の願いは俺が皆んなにかけた魔法を解く事です」
「ホンマにそれでええん?」
「・・・はい」
ジンさんはそのまま黙る。
俺はじっとジンさんの目をみる。
ダメなのか?これは本当に俺の心から願いだ。これ以上はない!これが・・・皆んなの為なんだ。俺はいらないんだから。
早くしてくれ!早く!決めてくれ!どんな条件でも飲むから!
早く早く早く早く早く早く!!
服の下にじんわり汗が滲んでくる。息がし辛くなる。数秒が何時間にも感じる。目の前にいるハズのジンさんがとても、遠く感じる。
視線の中心に気持ちが吸い込まれる感じがする。熱が上がる。頭がクラクラする。
脳みそが空に流れ出てる様だ。
耳も遠くなる。何か音がする。
ジンさんお願いします!
何も聴こえない。何も聴きたくない。何も聴かない!
「マスター!!」
「我が君!!」
「ご主人様!!」 
「天使!!」
皆んなが駆け寄ってくる。
やめてよ。ダメだ。俺はもう決めたんだ。そうするって!早くしてくれ!ここから消えたいんだ!いなくなりたいんだ!
その感情は偽物なんだよ、俺が今その偽物をなくすからさ。やめてよ。
偽物の感情に振り回されるのはもう懲り懲りだろ。前の世界でそうだったじゃないか。
頼むよ。このまま、このまま消えさせてくれ。
皆んなが俺の周りに集まる。
皆んなの顔を見る。
何だよその顔。そんな顔しないでよ。
バイコさん、アーズさん、バイオさん、アラジンさん。
ごめんなさい・・・・。
もう俺の決心は鈍ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

教室ごと転移したのに陽キャ様がやる気ないのですが。

かーにゅ
BL
公開日増やしてからちょっと減らしました(・∀・)ノ ネタがなくて不定期更新中です…… 陽キャと陰キャ。そのくくりはうちの学校では少し違う。 陰キャと呼ばれるのはいわゆるオタク。陽キャはそれ以外。 うちのオタクたちは一つに特化していながら他の世界にも精通する何気に万能なオタクであった。 もちろん、異世界転生、異世界転移なんてものは常識。そこにBL、百合要素の入ったものも常識の範疇。 グロものは…まあ人によるけど読めなくもない。アニメ系もたまにクソアニメと言うことはあっても全般的に見る。唯一視聴者の少ないアニメが女児アニメだ。あれはハマるとやばい。戻れなくなる。現在、このクラスで戻れなくなったものは2人。1人は女子で妹がいるためにあやしまれないがもう1人のほうは…察してくれ。 そんな中僕の特化する分野はBL!!だが、ショタ攻め専門だ!!なぜかって?そんなの僕が小さいからに決まっているじゃないか…おかげで誘ってもネコ役しかさせてくれないし…本番したことない。犯罪臭がするって…僕…15歳の健全な男子高校生なのですが。 毎週月曜・水曜・金曜・更新です。これだけパソコンで打ってるのでいつもと表現違うかもです。ショタなことには変わりありません。しばらくしたらスマホから打つようになると思います。文才なし。主人公(ショタ)は受けです。ショタ攻め好き?私は受けのが好きなので受け固定で。時々主人公が女に向かいますがご心配なさらず。

目が覚めたら異世界で魔法使いだった。

いみじき
BL
ごく平凡な高校球児だったはずが、目がさめると異世界で銀髪碧眼の魔法使いになっていた。おまけに邪神を名乗る美青年ミクラエヴァに「主」と呼ばれ、恋人だったと迫られるが、何も覚えていない。果たして自分は何者なのか。 《書き下ろしつき同人誌販売中》

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

暴君王子の顔が良すぎる!

すももゆず
BL
気がついたら異世界で生きていたジェード。現実世界での記憶はあるものの、特に困ることなく平和に過ごしていた。 とある日、王族のパレードで王子を見た瞬間ジェードは全てを理解した。 あの王子の顔……! 見たことがある……! その王子はジェードが現実世界で顔に一目惚れした、BLゲームの登場人物、イーディス王子そのものだった。 ここが異世界じゃなくてBLゲームの世界だと気づいたジェードは超ド好みのイーディス王子の顔面を拝むため、城の従者として働くことを決意する。 ……が、イーディス王子は見た目からは想像できないほど傲慢でえらそうな暴君王子だった……!? でも顔がいいから許す!!! 恥ずかしくてゲームは未プレイだったジェードがなんだかんだ初見プレイで王子を攻略していく話。(予定)

嫌われ者だった俺が転生したら愛されまくったんですが

夏向りん
BL
小さな頃から目つきも悪く無愛想だった篤樹(あつき)は事故に遭って転生した途端美形王子様のレンに溺愛される!

異世界に転移したショタは森でスローライフ中

ミクリ21
BL
異世界に転移した小学生のヤマト。 ヤマトに一目惚れした森の主のハーメルンは、ヤマトを溺愛して求愛しての毎日です。 仲良しの二人のほのぼのストーリーです。

どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~

黒飴細工
BL
京 凛太郎は突然異世界に飛ばされたと思ったら、そこで出会った超絶イケメンに「この世界は本来、君が生まれるべき世界だ」と言われ……?どうやら生まれる世界を間違えたらしい。幼い頃よりあまりいい人生を歩んでこれなかった凛太郎は心機一転。人生やり直し、自分探しの旅に出てみることに。しかし、次から次に出会う人々は一癖も二癖もある人物ばかり、それが見た目が良いほど変わった人物が多いのだから困りもの。「でたよ!ファンタジー!」が口癖になってしまう凛太郎がこれまでと違った濃ゆい人生を送っていくことに。 ※こちらの作品第10回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけましたら幸いです。 ※こちらの作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しております。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

処理中です...