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【1話】小鳥遊砂羽

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「本日からこちらに配属されました、
小鳥遊砂羽(たかなしさわ)と申します。
皆様の不安や悩みを少しでも取り除けるように精一杯努めますので気軽にカウンセリングルームまで連絡してください。歩けるという方は気晴らしに部屋まで来ていただいても構いませんので、よろしくお願い致します。」

念願の国家公務員になり初めて配属された謎の多いこの施設。入居者は全て余命一ヶ月を医師に言い渡された身寄りのない単身者。
俗に言う、終の棲家で入居者達の話を聞くカウンセラーの仕事をすることになった私は館内カメラを前に入居者への挨拶を終え、用意されたカウンセリングルームへと荷物を運びこんだ。

(死が確定している人しかいないと思うと責任重大だ…。私なんかでいいのかな…。)

備え付けられたコーヒーマシンで入れたコーヒーを飲みながら一息ついていると扉を叩く音が部屋に響いた。

「はーい!すぐ開けます!!」

急いでコーヒーを飲み干し、ドアに駆けよる。そこに立っていたのは確かこの施設で一番偉い人?名前はなんだったかな…。
ヤバい思い出せない…。柔らかな印象の紳士という外見とは裏腹に凄く怖そうな名前だったような気がするが。

『たかなしさん、こんにちは。気負わなくても大丈夫ですので、丁寧に話を聞いてあげてくださいね。なんせ、ここの人達には時間がありませんので。過去を振り返るくらいしか話すこともないのですよ。私もたまに相談にくるかもしれませんので、よろしくお願いしますね。それでは。』

一人で喋って去っていってしまった。
見えた名札の名字は【施設長  閻魔】と記載してあった。
死を迎える人達の施設長が閻魔とは、中々パンチが効いているな。

閻魔様が去ったのを見計らったように
机に置いてあった内線電話がなる。
【1106】11階の住人からだ。

「はい、カウンセリングルーム小鳥遊です。カウンセリングの予約でしょうか?
……はい、では15時に伺いますね。
よろしくお願い致します。」

電話を切り、11階の入居者名簿を
パソコンで調べてみる。

[1106号室  中村恵美子(仮)(53歳)]
病名  肺癌
経歴  医大卒業後、都内大学病院に就職。
        職場結婚をするが子供に恵まれず離婚。
        父母共に他界し、身近な親戚はなし。

最初の依頼者は私の母親と同じ年の女性。
末期の癌患者ということは食欲はあまりないだろうな。冷たい氷菓なら食べられると聞いたこともあるしそれを持って行こう。
バックに、小型の録音機と自分の飲み物を
入れ保冷バックに用意した氷菓を入れる。
自分ではトレードマークと思っている一度も染髪したことのない腰まで伸びる黒髪をポニーテールに結い上げて気合を入れると約束の五分前に部屋を出発した。いよいよカウンセラーとして初めての仕事が始まる。

丁寧に丁寧に…閻魔様に言われた言葉を繰り返しながら【1106】の呼び鈴を押した。
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