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【6】記憶の共有
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輪廻會舘に戻り、田中さんご家族を丁寧に
送り出す。本日の私の任務は終了だ。
後は幸栄達がうまくやってくれるだろう。
それにしても…先程の出来事はなんだったのか?凄く貴重な体験をしてしまったような
気がするし、みんなに言いたいが…事故で
頭を打っておかしくなったのでは?と思われそうで気が引ける。
お客様が帰ったのを見計らうように、冷蔵庫に入れておいた寿郎君の分のケーキを嬉しそうに出してきて食べ始めようとしている幸栄。目でコーヒーマシンを見つめ、私に淹れるように合図しているようだ。
「みんな、お疲れ様でした。今コーヒー淹れるから待っててね、幸栄は待ちきれずもう
ケーキを食べてるみたいだけどー。」
『ちゃんと仕事したんだからいいでしょ?
やっぱり仕事の後の甘いものは、胃に染み
渡りますね~!寿郎も一口食べる?』
フォークにケーキを少しとり寿郎君の口元へと運んでいく幸栄。うちも仲はいいほうだと思っているが人前でこんなことはしない。
『あー、寿郎ばっかりイチャイチャして
ずるい!翼?俺にはしてくれないの?』
「あなた…自分の分のケーキ買うの忘れてたでしょ?やるやらないの問題ではなく物理的に無理なんです。」
『…本当だ、忘れてたぁ!!俺の頭の中にさ
幸栄さんと寿郎と翼の三人しかいなかったんだよね。まさか自分を忘れてるとは…。』
みんなのくだらない会話を聞いていながらも
先ほどの体験が頭の中から離れない。
家に帰ったら、匠君に話してみよう。
彼はこういうことを笑わずに聞いてくれるはずだ。その後は依頼の電話もこなかったので
会場の後片付けをして夕方には帰宅。
山田夫婦は本日は予定があるということで
焼肉はまた後日になった。
帰宅後、軽い夕食を作り二人で
ビールを飲みながら晩酌をする。
彼が寝てしまう前に聞かなければ…。
「……ねぇ、匠君?私ずっと聞きたいことがあったんだけどさ、…本当バカみたいなことなんだけど…聞いてもいいかな?」
『何?翼がバカなこと言うの?それは
是非とも聞いてみたいですな。で、何よ?』
「二人で車に轢かれたじゃない?あの時さ、私、宙に浮かんで匠君と手を繋いで自分が倒れている姿見てたんだよね。で、気づいたら病院のベッドに寝かされてたの。」
飲んでいたビールをテーブルに置き
真剣な表情で私の話を聞いている彼。
『……!そうそう、それ!俺も飛んでた!
あぁもう死ぬのかな~?と思ったんだけどさ隣に翼いたから、まぁそれでもいっか~って思ってたの。一緒に幽体離脱したとか、どれだけ仲良いんだよ俺ら!』
やはりあれは夢ではなかったのか。
ということは、匠君にも私のような体験を
する可能性があるということ…
私は今日の出来事を彼に話すことにした。
「実は私ね、今日霊柩車で火葬場まで行ったでしょ?その時に不思議な体験をしたの…」
いきなり霧が濃くなり故人であるはずの
田中のお婆さんが現れて思い残したことを
果たすために手伝ってくれと言われたこと。
気づくと戦時中の沖縄にいて、お婆さんの
元婚約者に会いに行ったこと。
お婆さんの目的が果たされ、気づくと元の
火葬場へと戻ってきたことを事細かに説明した。
話を聞き終えると匠君は涙を浮かべていた。
『……翼、ヤバい、涙が止まらないや。』
「本当、涙もろいよね~。まぁ、私も
号泣したんだけどさ。匠君?もしもよ?
私が亡くなって田中のお婆さんみたいに、
匠君以外の人に会いに行ったらどうする?」
本当はそんな人いないし、少し意地悪な
質問だと思うが匠君の口から否定の言葉を
聞きたくなった。
『…ちょっと、ちょっと!聞き捨てならないよ~翼!そんな事あり得ません!それにね、翼が俺より先に居なくなる事は、俺が許さないよ~?こんな頼りない男を一人残してたら、翼は心配であの世に行けないから!』
確かにそうかもしれない。
人間が大好きで、一人でいては死んでしまう寂しがり屋のうさぎみたいな性格の彼を残して死ぬことは考えられない。
「意地悪な質問してごめんね?私が死ぬときは匠君も連れて行くから安心してね?」
『勿論そうしてよね~?その時がきたら
会社は寿郎達にくれてやろぜ~!』
「ふふっ、そうだね。さて、そろそろお風呂に入って寝ましょうかね~。まだ少し片付け残っているし、明日も頑張らないと!匠君?真面目に話きいてくれて、ありがとう。」
『いやいや、こちらこそ凄く深い話を聞かせてくれて感謝してますよ!……というかさ?
俺も幽体離脱したってことは、もしかしたら同じ経験するかもしれないよな?…どうしたらいいんだったっけ?一応頭に入れておかないと!』
…匠君、自分もしてみたいのか。
本当好奇心旺盛で少年のような人だな。
「…確か、故人に何かお願いをされたら左手で手を繋いで右手でハンドルを握るの。そして目を閉じて"残夢の元へ"と唱える。
…何か恥ずかしくなってきたから先お風呂入るね…。」
『よ~し、一緒に入っちゃおっと!
いざ、翼の元へ~!!(笑)』
送り出す。本日の私の任務は終了だ。
後は幸栄達がうまくやってくれるだろう。
それにしても…先程の出来事はなんだったのか?凄く貴重な体験をしてしまったような
気がするし、みんなに言いたいが…事故で
頭を打っておかしくなったのでは?と思われそうで気が引ける。
お客様が帰ったのを見計らうように、冷蔵庫に入れておいた寿郎君の分のケーキを嬉しそうに出してきて食べ始めようとしている幸栄。目でコーヒーマシンを見つめ、私に淹れるように合図しているようだ。
「みんな、お疲れ様でした。今コーヒー淹れるから待っててね、幸栄は待ちきれずもう
ケーキを食べてるみたいだけどー。」
『ちゃんと仕事したんだからいいでしょ?
やっぱり仕事の後の甘いものは、胃に染み
渡りますね~!寿郎も一口食べる?』
フォークにケーキを少しとり寿郎君の口元へと運んでいく幸栄。うちも仲はいいほうだと思っているが人前でこんなことはしない。
『あー、寿郎ばっかりイチャイチャして
ずるい!翼?俺にはしてくれないの?』
「あなた…自分の分のケーキ買うの忘れてたでしょ?やるやらないの問題ではなく物理的に無理なんです。」
『…本当だ、忘れてたぁ!!俺の頭の中にさ
幸栄さんと寿郎と翼の三人しかいなかったんだよね。まさか自分を忘れてるとは…。』
みんなのくだらない会話を聞いていながらも
先ほどの体験が頭の中から離れない。
家に帰ったら、匠君に話してみよう。
彼はこういうことを笑わずに聞いてくれるはずだ。その後は依頼の電話もこなかったので
会場の後片付けをして夕方には帰宅。
山田夫婦は本日は予定があるということで
焼肉はまた後日になった。
帰宅後、軽い夕食を作り二人で
ビールを飲みながら晩酌をする。
彼が寝てしまう前に聞かなければ…。
「……ねぇ、匠君?私ずっと聞きたいことがあったんだけどさ、…本当バカみたいなことなんだけど…聞いてもいいかな?」
『何?翼がバカなこと言うの?それは
是非とも聞いてみたいですな。で、何よ?』
「二人で車に轢かれたじゃない?あの時さ、私、宙に浮かんで匠君と手を繋いで自分が倒れている姿見てたんだよね。で、気づいたら病院のベッドに寝かされてたの。」
飲んでいたビールをテーブルに置き
真剣な表情で私の話を聞いている彼。
『……!そうそう、それ!俺も飛んでた!
あぁもう死ぬのかな~?と思ったんだけどさ隣に翼いたから、まぁそれでもいっか~って思ってたの。一緒に幽体離脱したとか、どれだけ仲良いんだよ俺ら!』
やはりあれは夢ではなかったのか。
ということは、匠君にも私のような体験を
する可能性があるということ…
私は今日の出来事を彼に話すことにした。
「実は私ね、今日霊柩車で火葬場まで行ったでしょ?その時に不思議な体験をしたの…」
いきなり霧が濃くなり故人であるはずの
田中のお婆さんが現れて思い残したことを
果たすために手伝ってくれと言われたこと。
気づくと戦時中の沖縄にいて、お婆さんの
元婚約者に会いに行ったこと。
お婆さんの目的が果たされ、気づくと元の
火葬場へと戻ってきたことを事細かに説明した。
話を聞き終えると匠君は涙を浮かべていた。
『……翼、ヤバい、涙が止まらないや。』
「本当、涙もろいよね~。まぁ、私も
号泣したんだけどさ。匠君?もしもよ?
私が亡くなって田中のお婆さんみたいに、
匠君以外の人に会いに行ったらどうする?」
本当はそんな人いないし、少し意地悪な
質問だと思うが匠君の口から否定の言葉を
聞きたくなった。
『…ちょっと、ちょっと!聞き捨てならないよ~翼!そんな事あり得ません!それにね、翼が俺より先に居なくなる事は、俺が許さないよ~?こんな頼りない男を一人残してたら、翼は心配であの世に行けないから!』
確かにそうかもしれない。
人間が大好きで、一人でいては死んでしまう寂しがり屋のうさぎみたいな性格の彼を残して死ぬことは考えられない。
「意地悪な質問してごめんね?私が死ぬときは匠君も連れて行くから安心してね?」
『勿論そうしてよね~?その時がきたら
会社は寿郎達にくれてやろぜ~!』
「ふふっ、そうだね。さて、そろそろお風呂に入って寝ましょうかね~。まだ少し片付け残っているし、明日も頑張らないと!匠君?真面目に話きいてくれて、ありがとう。」
『いやいや、こちらこそ凄く深い話を聞かせてくれて感謝してますよ!……というかさ?
俺も幽体離脱したってことは、もしかしたら同じ経験するかもしれないよな?…どうしたらいいんだったっけ?一応頭に入れておかないと!』
…匠君、自分もしてみたいのか。
本当好奇心旺盛で少年のような人だな。
「…確か、故人に何かお願いをされたら左手で手を繋いで右手でハンドルを握るの。そして目を閉じて"残夢の元へ"と唱える。
…何か恥ずかしくなってきたから先お風呂入るね…。」
『よ~し、一緒に入っちゃおっと!
いざ、翼の元へ~!!(笑)』
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