上 下
1 / 14

目が覚めたら縛られてた

しおりを挟む
目が覚めて、天井、に・・・カーテン?
 いや、天蓋ってやつだ。これは、ものすごく豪華なベッドだ。
「今日は起きているのか」
 ギィ、とベッドの軋む音がする。反射的にそっちを見れば大きな男が1人、ガウン1枚でベッドに登ろうとしているところだった。着崩した胸元から形のいい胸の筋肉が見える。
 部屋が暗いのでよくわからないが、日本人ではない。欧米の人だ。それもかなり美形だ。キラキラ光る髪が動きに合わせてさらりと揺れている。鼻筋がすっきりと整っているのが暗くてもよく分かる。
 あ、ここあなたのベッドですか、すみません。なんか俺も何が何だか。とりあえずどきますね――
 ベッドから降りようとして。動かない。え?動かない。
 両手は後ろでガチガチに縛られている。ぐっと引っ張ってみると両肩にぐっと固定されてる縄を感じる。
 ん?
 しばられている。
 それも、なんか本格的に。
 だって上半身、動かないもん。なんか関節ホールドされてる感ある。痛くはないのに、無理に抵抗したら関節に食い込む感じがする。
 プロだよ。プロの縛り方だよ。
 縛られたことないけど!
「睡眠薬を飲むのはやめたのか」
 男の手が伸びてきた。大きく筋肉質な手は俺の頬を撫でて顎を押さえるように固定した。
「逃れられないならせめて意識を手放したいと言っていたのに。気が変わったのか?」
 男の顔が近づいてくる。
 ベッドで、2人で、ガウン1枚で、夜・・・縛られた、俺。
 まさか、と思った瞬間。
 唇が重なった。しかも間髪入れず、ぬるりと舌が入ってくる。男の手は逃れるのを許さずしっかりと顔を掴んでいる。
「ん、んあっ!んむ・・・!」
 ちょっと待って、とかなんとか言おうとしてたも、全く言葉にならない。それどころか男の舌はますます俺の舌を絡めるように動き、どちらのともわからない唾液が溢れ落ちる。うまく息もできなくて、苦しくて、身を捩ろうとしてむせこんだ。
「ごほっ、ごっ、あ、あの・・・、ちょっと、まって!」
 かろうじてそれだけ言っても、男は手を離そうとしなかった。
「ちゃんと飲み込まないと後がつらいぞ。わかってるだろう?体液を交換しなければここが――」
 そう言って男はつ、とお尻の方へ手を滑らせた。
「開かない」
 まって!開かないよ?そんなところ、開いたことないよ!
「待って、ちょっと待ってください!いやいや、とにかく一旦、ちょっと、離れて・・・!」
 男は一瞬怪訝な顔をしたが、それも一瞬だった。
「作戦を変えたのか?何をしても、やめてやることはできないぞ」
「なにをしても・・・」
 だめだ。何を言っていいのかわからない。頭が回らない。
 拘束されて、大の男に乗っかられたら、頭が真っ白。
「暴れ回り封じられ、逃げ回って捕獲され」
 つつ、と男の指が頬をつたい、首筋へ移動する。
「何十人もの怪我人を出し、結局騎士隊まで動員する大騒ぎを起こしたかと思ったら、今度は人を蠱惑し謀略により私を消そうとして」
 かけられていた上掛けがするりと男の手によって腰までずらされる。
 あ、ちょっと、俺、裸!
「どう足掻いても無駄だと悟ったからこそ、毎夜眠って済ませていたのではないのか」
「あ、ちょっ・・・」
 ついに上掛けをすべて剥ぎ取れられ、反射的に体を丸めようとして、すかさず男に馬乗りに乗られた。
 嘘だろ・・・。
 全裸に、体格のいい男に馬乗りにされると、怖い。
「暴れるなよ。眠っているから下半身の拘束を解いていたのに。また以前のように全身をベッドに縛り付けられたくはないだろう。怪我をさせたくないんだ」
 男の手が唇をなぞり、もう一方の手が胸の突起にたどり着く。
 びくり、と身体がはねた。
「・・・・・・!?」
 なんだ今の。
 自分の身体の反応が信じられなくて、恐怖とは別の驚きで身体が固まる。
「足りないということは、なかったようだな」
 男がその反応を見てか、確認するようにその突起を指の腹で押す。
「――んっ、あ」
 なんだこの声。
 自分の声とは思えない声が出た。
 でも男に触られるたびに、今まで感じたことのない快感が、ぞわぞわと全身を駆け回る。
 すぐに熱が下半身に集中していくのがわかる。
 体から力が抜けていく。それなのに体中が熱くて、その熱をどう逃していいのかわからず、ひざをすり合わせていた。
 その反応を見た男が身をかがめ、胸に舌を這わせる。その動きが妙にゆっくりで、見ているだけで呼吸が荒くなっているのを感じた。
「は、ああっ・・・!」
 濡れた舌が突起を転がし、そのぬめついた初めての感触に声が上がる。もう片方の突起も指でいじられ、熱がさらに一気に上がる。
「や、ちょっ・・・、それ、やば!」
「どうした、今日はよく鳴く――」
「やだやだやだ、そこでしゃべらないで――!」
 身をよじってたまらず声を上げると、男は得ているといったようにそこを強く吸った。
「んっ・・・あ、ああ・・・!」
 電流が全身を駆け巡った。その衝撃と、自分の下半身から熱を放った感覚が同時。
 それでも熱が冷めなくて。熱くて苦しくて、必死で息を整えるしかない。視界がかすむから、きっと涙も出ているのだろう。
 嘘でしょ・・・胸なんでいじったことないのに、なめられて、いった?
 人影が揺らめいて、自分の上から離れる。
 衣擦れの音に、男が服を脱いだのだろうと頭の片隅で思う。
 放たれた精がお腹にある、それを掬いとられて恥ずかしいと思う間もなく、その手で前を握りこまれた。
 くちゅ、くちゅと卑猥な音をして動かされる。その手は俺がどうすれば気持ちいいのか知りつくしていた。慣れた手つきで2度目の絶頂を無理やり促されているようだ。
 全体をしごかれ、上下に動かしたかと思ったら先端を握るように動かされ、どんどんあふれてくるぬめりに緩急つけて、早くいけと突き上げられる。
「ふっ、う・・・」
 2度目は、なんとか声を我慢することができた。身体の熱はこもったままだが、2度も射精すればわずかに頭はさえてくる。
「はっ、あ、あの・・・ちょっと、はなし――」
 話を聞いて、という言葉は再び男の唇によってふさがれた。
 最初の口づけと違って、ゆっくりと強く、俺の舌を余すことなく味わうように吸い上げ、動き回って深く深く絡み合う。合間に、男の熱く荒い息が漏れ、その興奮が伝わってくる。
 男の手が後ろへと周り、その窄みに触れた瞬間、びくりと身体が逃れようと前へ動く。するとより一層口づけは深くなり、自分の放ったもので濡れた指が入ってくる。
 逃れようとして、自分の腹に男の固くなったそれが当たっているのを感じる。
 ――こ、興奮していらっしゃる・・・!
 一瞬血の気が引いた。でもそれも一瞬で、男の指が奥へ奥へと入るにつれて、頭はすぐに真っ白になっていった。
 指は初めから迷いもなくそこを広げるように動いた。時折重く深い快感のようなものを感じる場所をかすめながら、指はすぐに増やされ、さらに動く頃にはもう何も考えられなくなっていた。
 もどかしい。このたまらなくつらい熱の放ち方を、この身体は知っている。
 体は自然と揺れていた。その指では足りない。早く、早くそれを・・・。
「は、やく・・・」
 自然と口をでていた。
 男が一瞬固まったが、それもほんの一瞬のこと。
 すぐにうなるように身を起こし、俺の腰を抱え込んで――。
 ずず、と入ってくる。ものすごい質量の固いものが。圧迫感に、ひっ、と息をつめたが、男はそれも遠慮なく推し進めてくる。
 声にならない、喉で止まった息が、ぐ、と変な音を上げる。
「息を、しろ・・・食いちぎられそうだ」
 男の声が余裕なく苦しそうだ。こっちだって余裕なんてないのに。
 息?息って言われても。
「息を吐け、ゆっくり・・・大丈夫だ。待つから。――久しぶりで、忘れたか?」
 手が伸びてきて額、髪と触れられる。その手が自分より温かくてなんだかほっとする。
 すがるように、その手に顔を摺り寄せて、次の瞬間。
 男ががばりと抱き寄せてきた。さらに深まったそれにまた息をのみこみそうになって――男が腰をゆするものだから、それもできず、男に必死でしがみつく。
「あ、あっ、あああ――――!!」
 自然と声が出た。下の方から次上がってくる快感が、全身を駆け回っていく。
 今まで精を放っていたのとはまるで違う感覚。体中の血管が沸き立つ。頭が真っ白になる。
 絶頂は尾を引いて、身体を小刻みに震わせた。男の放ったものがじわりと腹の中を満たしているのを遠い意識で感じる。それと同時に、あれほど行き場を求めていた熱が、心地よく収まっていくのを感じた。
 ずるり、とそれが抜かれる。
「ふぁっ・・・」
 思わず声が漏れて、恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じる。
 まじまじと男がこちらを見てくる。
 ないよね、今の声。俺もそう思うよ。だから見ないで・・・。
「今日は何を企んでいるんだ?」
 汗か涙かに張り付いた髪を梳かれて、終わったんだとやっと思える。
 そう思うと、べたついた身体も、少し寒い空気も、冷たいシーツの上で横たわる自分も思いだされて、何よりさっきから。
「・・・たい・・・」
「ん?」
「痛い・・・いたいよぅ・・・うう・・・」
 縛られた手が、肩が。初めての行為がこんな縛られてだなんて。縛られたときに無理に動いたから、もうバキバキにあちこち痛くてもう耐えられない。
 恥ずかしいけど涙が止まらなかった。
「う。うう・・・痛い・・・う、うう・・・」
「泣いているのか・・・?」
 俺を犯した男が、慌てている。そんなのいいからとにかくこの縄をほどいてほしい。
「とって。この縄・・・取ってよう」
 男は一瞬の逡巡ののち、手慣れた手つきで縄を触った。
 あんなにがちがちに絞められていたのに。驚くほどあっさりと解かれた。
 その解放感に全身の力が抜けて、行為の疲労感もあってとりあえずベッドに横たわる。
 しびれが徐々に緩んでいくのをうつぶせて感じる。もう指一本動かしたくない。
「では、私は行く」
 男は上掛けをかけてくれる。その手つきは優しいのに、言った台詞はとんでもなかった。
 サイドボードにある呼び鈴を少し近づけて、ガウンを拾う。
 そんな気遣いまでするのに、本当にそのまま出ていこうとする。
 思わずガウンの裾を握った。
「・・・・・・」
 男は止まった。文字通り立ち上がりかけた身体をそのまま制止させた。
「・・・・・・」
 俺が何も言わないからか。男はそのまま固まっている。
 顔だけこちらを向いているのはわかる。
 沈黙が流れ、それを破ったのは男の方だった。なぜって俺は声を出すのもつらかったから。
「・・・どうした」
 どうした?
 こっちがどうしたですよ。
 縛ってやって終わりですか。いやいや、なにかあるでしょう、もう少し。
「いかないで」
 なんといっていいものかわからずとりあえず声をかけた。
 男は心底信じられない、という声音で俺に向き直った。
「私に言っているのか?ここにいろと?」
 そうです。説明をしてほしいから。されたことは驚愕だけど、終始優しそうな物腰だったので、とりあえず話だけでもできると思って。でもちょっと待って。しびれてるし痛いし。
「いて。いかないで・・・」
 何とかそれだけを言う。涙はシーツで拭きとった。ぐず、と鼻水をすする。
 男は信じられないものを見るように俺を見ながら、ベッドにすとん、と腰かけた。
 そしてはっと思いなおし、少し離れた椅子に腰かけた。こちらから視線を外さないままに。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 長い沈黙が流れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛され副団長の愛欲性活

彩月野生
BL
マウウェル国の騎士団、副団長であるヴァレオは、自国の王と騎士団長、オーガの王に求婚されてしまう。 誰も選べないと話すも納得されず、3人が結託し、誰も選ばなくていい皆の嫁になれと迫られて渋々受け入れてしまう。 主人公 28歳 副団長 ヴァレオ 柔らかな栗毛に黒の目 騎士団長を支え、王を敬愛している。 真面目で騎士である事に誇りをもっているため、性には疎い。 騎士団長 35歳 エグバート 長い赤褐色の髪に緑の目。 豪快なセックスで言葉責め。 数多の男女を抱いてきたが、ヴァレオに夢中になる。 マウウェル国の王 43歳 アラスタス 長い金髪に青の目。紳士的だがねちっこいセックスで感想を言わせる。 妻がいるが、愛人を作ったため追い出した。 子供がおらずヴァレオに産ませようと目論む。 イール オーガの若い王だが一番の巨漢。180歳 朱色の肌に黒髪。シャイで優しいが、甘えたがりで乳首を執拗に吸う。 (誤字脱字報告不要)

無垢な王子は淫欲で花ひらく

彩月野生
BL
魔族の血を引く王子ジークに強制的に娶られる無垢な王子。 (オーク×王子・凌辱・精液風呂有り) シークレット作品として公開していましたが、シークレット作品ページをやめますので公開致します。

童顔商人は聖騎士に見初められる

彩月野生
BL
美形騎士に捕まったお調子者の商人は誤って媚薬を飲んでしまい、騎士の巨根に翻弄される。

ご主人様に幸せにされた奴隷

よしゆき
BL
産まれたときから奴隷だったエミルは主人に散々体を使われて飽きられて奴隷商館に売られた。そんな中古のエミルをある日やって来た綺麗な青年が購入した。新しい主人のノルベルトはエミルを奴隷のように扱わず甘やかしどろどろに可愛がってくれた。突然やって来た主人の婚約者を名乗る女性に唆され逃げ出そうとするが連れ戻され、ノルベルトにどろどろに愛される話。 穏やかS攻め×健気受け。

異世界転移した男子高校生だけど、騎士団長と王子に溺愛されて板挟みになってます

彩月野生
BL
陰キャ男子高校生のシンヤは、寝て起きたら異世界の騎士団長の寝台に寝ていた。 騎士団長ブライアンに求婚され、強制的に妻にされてしまったが、ある日王太子が訪ねて来て、秘密の交流が始まり……騎士団長と王子の執着と溺愛にシンヤは翻弄される。ダークエルフの王にまで好かれて、嫉妬に狂った二人にさらにとろとろに愛されるように。 後に男性妊娠、出産展開がありますのでご注意を。 ※が性描写あり。 (誤字脱字報告には返信しておりませんご了承下さい)

転生先のパパが軽くヤンデレなので利用します

ミクリ21
BL
転生したら王子でした。しかも王族の中で一番低い地位です。しかし、パパ(王様)が溺愛してきます。更にヤンデレ成分入ってるみたいです。なので、少々利用しましょう。ちょっと望みを叶えるだけですよ。ぐへへ♪

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

愛がないと子供ができない世界で、何故あなたと子供ができたんでしょうか?

飛鷹
BL
愛情がない夫婦(夫夫)の間には子供は授かれない世界で、政略結婚をしたマグとキラ。 学生の頃からマグを嫌う様子を見せるキラに、マグはこの政略結婚は長くは続かないと覚悟を決める。 いつも何故が睨んで、まともに会話をしようとしないキラを、マグは嫌いになれなくて……。 子供を授かれないまま3年が経つと離婚ができる。 大切な人がいるらしいキラは、きっと離婚を希望する。その時はちゃんと応じよう。例え、どんなに辛くても………。 両片思いの2人が幸せになるまでのお話。

処理中です...