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目が覚めたら縛られてた
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目が覚めて、天井、に・・・カーテン?
いや、天蓋ってやつだ。これは、ものすごく豪華なベッドだ。
「今日は起きているのか」
ギィ、とベッドの軋む音がする。反射的にそっちを見れば大きな男が1人、ガウン1枚でベッドに登ろうとしているところだった。着崩した胸元から形のいい胸の筋肉が見える。
部屋が暗いのでよくわからないが、日本人ではない。欧米の人だ。それもかなり美形だ。キラキラ光る髪が動きに合わせてさらりと揺れている。鼻筋がすっきりと整っているのが暗くてもよく分かる。
あ、ここあなたのベッドですか、すみません。なんか俺も何が何だか。とりあえずどきますね――
ベッドから降りようとして。動かない。え?動かない。
両手は後ろでガチガチに縛られている。ぐっと引っ張ってみると両肩にぐっと固定されてる縄を感じる。
ん?
しばられている。
それも、なんか本格的に。
だって上半身、動かないもん。なんか関節ホールドされてる感ある。痛くはないのに、無理に抵抗したら関節に食い込む感じがする。
プロだよ。プロの縛り方だよ。
縛られたことないけど!
「睡眠薬を飲むのはやめたのか」
男の手が伸びてきた。大きく筋肉質な手は俺の頬を撫でて顎を押さえるように固定した。
「逃れられないならせめて意識を手放したいと言っていたのに。気が変わったのか?」
男の顔が近づいてくる。
ベッドで、2人で、ガウン1枚で、夜・・・縛られた、俺。
まさか、と思った瞬間。
唇が重なった。しかも間髪入れず、ぬるりと舌が入ってくる。男の手は逃れるのを許さずしっかりと顔を掴んでいる。
「ん、んあっ!んむ・・・!」
ちょっと待って、とかなんとか言おうとしてたも、全く言葉にならない。それどころか男の舌はますます俺の舌を絡めるように動き、どちらのともわからない唾液が溢れ落ちる。うまく息もできなくて、苦しくて、身を捩ろうとしてむせこんだ。
「ごほっ、ごっ、あ、あの・・・、ちょっと、まって!」
かろうじてそれだけ言っても、男は手を離そうとしなかった。
「ちゃんと飲み込まないと後がつらいぞ。わかってるだろう?体液を交換しなければここが――」
そう言って男はつ、とお尻の方へ手を滑らせた。
「開かない」
まって!開かないよ?そんなところ、開いたことないよ!
「待って、ちょっと待ってください!いやいや、とにかく一旦、ちょっと、離れて・・・!」
男は一瞬怪訝な顔をしたが、それも一瞬だった。
「作戦を変えたのか?何をしても、やめてやることはできないぞ」
「なにをしても・・・」
だめだ。何を言っていいのかわからない。頭が回らない。
拘束されて、大の男に乗っかられたら、頭が真っ白。
「暴れ回り封じられ、逃げ回って捕獲され」
つつ、と男の指が頬をつたい、首筋へ移動する。
「何十人もの怪我人を出し、結局騎士隊まで動員する大騒ぎを起こしたかと思ったら、今度は人を蠱惑し謀略により私を消そうとして」
かけられていた上掛けがするりと男の手によって腰までずらされる。
あ、ちょっと、俺、裸!
「どう足掻いても無駄だと悟ったからこそ、毎夜眠って済ませていたのではないのか」
「あ、ちょっ・・・」
ついに上掛けをすべて剥ぎ取れられ、反射的に体を丸めようとして、すかさず男に馬乗りに乗られた。
嘘だろ・・・。
全裸に、体格のいい男に馬乗りにされると、怖い。
「暴れるなよ。眠っているから下半身の拘束を解いていたのに。また以前のように全身をベッドに縛り付けられたくはないだろう。怪我をさせたくないんだ」
男の手が唇をなぞり、もう一方の手が胸の突起にたどり着く。
びくり、と身体がはねた。
「・・・・・・!?」
なんだ今の。
自分の身体の反応が信じられなくて、恐怖とは別の驚きで身体が固まる。
「足りないということは、なかったようだな」
男がその反応を見てか、確認するようにその突起を指の腹で押す。
「――んっ、あ」
なんだこの声。
自分の声とは思えない声が出た。
でも男に触られるたびに、今まで感じたことのない快感が、ぞわぞわと全身を駆け回る。
すぐに熱が下半身に集中していくのがわかる。
体から力が抜けていく。それなのに体中が熱くて、その熱をどう逃していいのかわからず、ひざをすり合わせていた。
その反応を見た男が身をかがめ、胸に舌を這わせる。その動きが妙にゆっくりで、見ているだけで呼吸が荒くなっているのを感じた。
「は、ああっ・・・!」
濡れた舌が突起を転がし、そのぬめついた初めての感触に声が上がる。もう片方の突起も指でいじられ、熱がさらに一気に上がる。
「や、ちょっ・・・、それ、やば!」
「どうした、今日はよく鳴く――」
「やだやだやだ、そこでしゃべらないで――!」
身をよじってたまらず声を上げると、男は得ているといったようにそこを強く吸った。
「んっ・・・あ、ああ・・・!」
電流が全身を駆け巡った。その衝撃と、自分の下半身から熱を放った感覚が同時。
それでも熱が冷めなくて。熱くて苦しくて、必死で息を整えるしかない。視界がかすむから、きっと涙も出ているのだろう。
嘘でしょ・・・胸なんでいじったことないのに、なめられて、いった?
人影が揺らめいて、自分の上から離れる。
衣擦れの音に、男が服を脱いだのだろうと頭の片隅で思う。
放たれた精がお腹にある、それを掬いとられて恥ずかしいと思う間もなく、その手で前を握りこまれた。
くちゅ、くちゅと卑猥な音をして動かされる。その手は俺がどうすれば気持ちいいのか知りつくしていた。慣れた手つきで2度目の絶頂を無理やり促されているようだ。
全体をしごかれ、上下に動かしたかと思ったら先端を握るように動かされ、どんどんあふれてくるぬめりに緩急つけて、早くいけと突き上げられる。
「ふっ、う・・・」
2度目は、なんとか声を我慢することができた。身体の熱はこもったままだが、2度も射精すればわずかに頭はさえてくる。
「はっ、あ、あの・・・ちょっと、はなし――」
話を聞いて、という言葉は再び男の唇によってふさがれた。
最初の口づけと違って、ゆっくりと強く、俺の舌を余すことなく味わうように吸い上げ、動き回って深く深く絡み合う。合間に、男の熱く荒い息が漏れ、その興奮が伝わってくる。
男の手が後ろへと周り、その窄みに触れた瞬間、びくりと身体が逃れようと前へ動く。するとより一層口づけは深くなり、自分の放ったもので濡れた指が入ってくる。
逃れようとして、自分の腹に男の固くなったそれが当たっているのを感じる。
――こ、興奮していらっしゃる・・・!
一瞬血の気が引いた。でもそれも一瞬で、男の指が奥へ奥へと入るにつれて、頭はすぐに真っ白になっていった。
指は初めから迷いもなくそこを広げるように動いた。時折重く深い快感のようなものを感じる場所をかすめながら、指はすぐに増やされ、さらに動く頃にはもう何も考えられなくなっていた。
もどかしい。このたまらなくつらい熱の放ち方を、この身体は知っている。
体は自然と揺れていた。その指では足りない。早く、早くそれを・・・。
「は、やく・・・」
自然と口をでていた。
男が一瞬固まったが、それもほんの一瞬のこと。
すぐにうなるように身を起こし、俺の腰を抱え込んで――。
ずず、と入ってくる。ものすごい質量の固いものが。圧迫感に、ひっ、と息をつめたが、男はそれも遠慮なく推し進めてくる。
声にならない、喉で止まった息が、ぐ、と変な音を上げる。
「息を、しろ・・・食いちぎられそうだ」
男の声が余裕なく苦しそうだ。こっちだって余裕なんてないのに。
息?息って言われても。
「息を吐け、ゆっくり・・・大丈夫だ。待つから。――久しぶりで、忘れたか?」
手が伸びてきて額、髪と触れられる。その手が自分より温かくてなんだかほっとする。
すがるように、その手に顔を摺り寄せて、次の瞬間。
男ががばりと抱き寄せてきた。さらに深まったそれにまた息をのみこみそうになって――男が腰をゆするものだから、それもできず、男に必死でしがみつく。
「あ、あっ、あああ――――!!」
自然と声が出た。下の方から次上がってくる快感が、全身を駆け回っていく。
今まで精を放っていたのとはまるで違う感覚。体中の血管が沸き立つ。頭が真っ白になる。
絶頂は尾を引いて、身体を小刻みに震わせた。男の放ったものがじわりと腹の中を満たしているのを遠い意識で感じる。それと同時に、あれほど行き場を求めていた熱が、心地よく収まっていくのを感じた。
ずるり、とそれが抜かれる。
「ふぁっ・・・」
思わず声が漏れて、恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じる。
まじまじと男がこちらを見てくる。
ないよね、今の声。俺もそう思うよ。だから見ないで・・・。
「今日は何を企んでいるんだ?」
汗か涙かに張り付いた髪を梳かれて、終わったんだとやっと思える。
そう思うと、べたついた身体も、少し寒い空気も、冷たいシーツの上で横たわる自分も思いだされて、何よりさっきから。
「・・・たい・・・」
「ん?」
「痛い・・・いたいよぅ・・・うう・・・」
縛られた手が、肩が。初めての行為がこんな縛られてだなんて。縛られたときに無理に動いたから、もうバキバキにあちこち痛くてもう耐えられない。
恥ずかしいけど涙が止まらなかった。
「う。うう・・・痛い・・・う、うう・・・」
「泣いているのか・・・?」
俺を犯した男が、慌てている。そんなのいいからとにかくこの縄をほどいてほしい。
「とって。この縄・・・取ってよう」
男は一瞬の逡巡ののち、手慣れた手つきで縄を触った。
あんなにがちがちに絞められていたのに。驚くほどあっさりと解かれた。
その解放感に全身の力が抜けて、行為の疲労感もあってとりあえずベッドに横たわる。
しびれが徐々に緩んでいくのをうつぶせて感じる。もう指一本動かしたくない。
「では、私は行く」
男は上掛けをかけてくれる。その手つきは優しいのに、言った台詞はとんでもなかった。
サイドボードにある呼び鈴を少し近づけて、ガウンを拾う。
そんな気遣いまでするのに、本当にそのまま出ていこうとする。
思わずガウンの裾を握った。
「・・・・・・」
男は止まった。文字通り立ち上がりかけた身体をそのまま制止させた。
「・・・・・・」
俺が何も言わないからか。男はそのまま固まっている。
顔だけこちらを向いているのはわかる。
沈黙が流れ、それを破ったのは男の方だった。なぜって俺は声を出すのもつらかったから。
「・・・どうした」
どうした?
こっちがどうしたですよ。
縛ってやって終わりですか。いやいや、なにかあるでしょう、もう少し。
「いかないで」
なんといっていいものかわからずとりあえず声をかけた。
男は心底信じられない、という声音で俺に向き直った。
「私に言っているのか?ここにいろと?」
そうです。説明をしてほしいから。されたことは驚愕だけど、終始優しそうな物腰だったので、とりあえず話だけでもできると思って。でもちょっと待って。しびれてるし痛いし。
「いて。いかないで・・・」
何とかそれだけを言う。涙はシーツで拭きとった。ぐず、と鼻水をすする。
男は信じられないものを見るように俺を見ながら、ベッドにすとん、と腰かけた。
そしてはっと思いなおし、少し離れた椅子に腰かけた。こちらから視線を外さないままに。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
長い沈黙が流れた。
いや、天蓋ってやつだ。これは、ものすごく豪華なベッドだ。
「今日は起きているのか」
ギィ、とベッドの軋む音がする。反射的にそっちを見れば大きな男が1人、ガウン1枚でベッドに登ろうとしているところだった。着崩した胸元から形のいい胸の筋肉が見える。
部屋が暗いのでよくわからないが、日本人ではない。欧米の人だ。それもかなり美形だ。キラキラ光る髪が動きに合わせてさらりと揺れている。鼻筋がすっきりと整っているのが暗くてもよく分かる。
あ、ここあなたのベッドですか、すみません。なんか俺も何が何だか。とりあえずどきますね――
ベッドから降りようとして。動かない。え?動かない。
両手は後ろでガチガチに縛られている。ぐっと引っ張ってみると両肩にぐっと固定されてる縄を感じる。
ん?
しばられている。
それも、なんか本格的に。
だって上半身、動かないもん。なんか関節ホールドされてる感ある。痛くはないのに、無理に抵抗したら関節に食い込む感じがする。
プロだよ。プロの縛り方だよ。
縛られたことないけど!
「睡眠薬を飲むのはやめたのか」
男の手が伸びてきた。大きく筋肉質な手は俺の頬を撫でて顎を押さえるように固定した。
「逃れられないならせめて意識を手放したいと言っていたのに。気が変わったのか?」
男の顔が近づいてくる。
ベッドで、2人で、ガウン1枚で、夜・・・縛られた、俺。
まさか、と思った瞬間。
唇が重なった。しかも間髪入れず、ぬるりと舌が入ってくる。男の手は逃れるのを許さずしっかりと顔を掴んでいる。
「ん、んあっ!んむ・・・!」
ちょっと待って、とかなんとか言おうとしてたも、全く言葉にならない。それどころか男の舌はますます俺の舌を絡めるように動き、どちらのともわからない唾液が溢れ落ちる。うまく息もできなくて、苦しくて、身を捩ろうとしてむせこんだ。
「ごほっ、ごっ、あ、あの・・・、ちょっと、まって!」
かろうじてそれだけ言っても、男は手を離そうとしなかった。
「ちゃんと飲み込まないと後がつらいぞ。わかってるだろう?体液を交換しなければここが――」
そう言って男はつ、とお尻の方へ手を滑らせた。
「開かない」
まって!開かないよ?そんなところ、開いたことないよ!
「待って、ちょっと待ってください!いやいや、とにかく一旦、ちょっと、離れて・・・!」
男は一瞬怪訝な顔をしたが、それも一瞬だった。
「作戦を変えたのか?何をしても、やめてやることはできないぞ」
「なにをしても・・・」
だめだ。何を言っていいのかわからない。頭が回らない。
拘束されて、大の男に乗っかられたら、頭が真っ白。
「暴れ回り封じられ、逃げ回って捕獲され」
つつ、と男の指が頬をつたい、首筋へ移動する。
「何十人もの怪我人を出し、結局騎士隊まで動員する大騒ぎを起こしたかと思ったら、今度は人を蠱惑し謀略により私を消そうとして」
かけられていた上掛けがするりと男の手によって腰までずらされる。
あ、ちょっと、俺、裸!
「どう足掻いても無駄だと悟ったからこそ、毎夜眠って済ませていたのではないのか」
「あ、ちょっ・・・」
ついに上掛けをすべて剥ぎ取れられ、反射的に体を丸めようとして、すかさず男に馬乗りに乗られた。
嘘だろ・・・。
全裸に、体格のいい男に馬乗りにされると、怖い。
「暴れるなよ。眠っているから下半身の拘束を解いていたのに。また以前のように全身をベッドに縛り付けられたくはないだろう。怪我をさせたくないんだ」
男の手が唇をなぞり、もう一方の手が胸の突起にたどり着く。
びくり、と身体がはねた。
「・・・・・・!?」
なんだ今の。
自分の身体の反応が信じられなくて、恐怖とは別の驚きで身体が固まる。
「足りないということは、なかったようだな」
男がその反応を見てか、確認するようにその突起を指の腹で押す。
「――んっ、あ」
なんだこの声。
自分の声とは思えない声が出た。
でも男に触られるたびに、今まで感じたことのない快感が、ぞわぞわと全身を駆け回る。
すぐに熱が下半身に集中していくのがわかる。
体から力が抜けていく。それなのに体中が熱くて、その熱をどう逃していいのかわからず、ひざをすり合わせていた。
その反応を見た男が身をかがめ、胸に舌を這わせる。その動きが妙にゆっくりで、見ているだけで呼吸が荒くなっているのを感じた。
「は、ああっ・・・!」
濡れた舌が突起を転がし、そのぬめついた初めての感触に声が上がる。もう片方の突起も指でいじられ、熱がさらに一気に上がる。
「や、ちょっ・・・、それ、やば!」
「どうした、今日はよく鳴く――」
「やだやだやだ、そこでしゃべらないで――!」
身をよじってたまらず声を上げると、男は得ているといったようにそこを強く吸った。
「んっ・・・あ、ああ・・・!」
電流が全身を駆け巡った。その衝撃と、自分の下半身から熱を放った感覚が同時。
それでも熱が冷めなくて。熱くて苦しくて、必死で息を整えるしかない。視界がかすむから、きっと涙も出ているのだろう。
嘘でしょ・・・胸なんでいじったことないのに、なめられて、いった?
人影が揺らめいて、自分の上から離れる。
衣擦れの音に、男が服を脱いだのだろうと頭の片隅で思う。
放たれた精がお腹にある、それを掬いとられて恥ずかしいと思う間もなく、その手で前を握りこまれた。
くちゅ、くちゅと卑猥な音をして動かされる。その手は俺がどうすれば気持ちいいのか知りつくしていた。慣れた手つきで2度目の絶頂を無理やり促されているようだ。
全体をしごかれ、上下に動かしたかと思ったら先端を握るように動かされ、どんどんあふれてくるぬめりに緩急つけて、早くいけと突き上げられる。
「ふっ、う・・・」
2度目は、なんとか声を我慢することができた。身体の熱はこもったままだが、2度も射精すればわずかに頭はさえてくる。
「はっ、あ、あの・・・ちょっと、はなし――」
話を聞いて、という言葉は再び男の唇によってふさがれた。
最初の口づけと違って、ゆっくりと強く、俺の舌を余すことなく味わうように吸い上げ、動き回って深く深く絡み合う。合間に、男の熱く荒い息が漏れ、その興奮が伝わってくる。
男の手が後ろへと周り、その窄みに触れた瞬間、びくりと身体が逃れようと前へ動く。するとより一層口づけは深くなり、自分の放ったもので濡れた指が入ってくる。
逃れようとして、自分の腹に男の固くなったそれが当たっているのを感じる。
――こ、興奮していらっしゃる・・・!
一瞬血の気が引いた。でもそれも一瞬で、男の指が奥へ奥へと入るにつれて、頭はすぐに真っ白になっていった。
指は初めから迷いもなくそこを広げるように動いた。時折重く深い快感のようなものを感じる場所をかすめながら、指はすぐに増やされ、さらに動く頃にはもう何も考えられなくなっていた。
もどかしい。このたまらなくつらい熱の放ち方を、この身体は知っている。
体は自然と揺れていた。その指では足りない。早く、早くそれを・・・。
「は、やく・・・」
自然と口をでていた。
男が一瞬固まったが、それもほんの一瞬のこと。
すぐにうなるように身を起こし、俺の腰を抱え込んで――。
ずず、と入ってくる。ものすごい質量の固いものが。圧迫感に、ひっ、と息をつめたが、男はそれも遠慮なく推し進めてくる。
声にならない、喉で止まった息が、ぐ、と変な音を上げる。
「息を、しろ・・・食いちぎられそうだ」
男の声が余裕なく苦しそうだ。こっちだって余裕なんてないのに。
息?息って言われても。
「息を吐け、ゆっくり・・・大丈夫だ。待つから。――久しぶりで、忘れたか?」
手が伸びてきて額、髪と触れられる。その手が自分より温かくてなんだかほっとする。
すがるように、その手に顔を摺り寄せて、次の瞬間。
男ががばりと抱き寄せてきた。さらに深まったそれにまた息をのみこみそうになって――男が腰をゆするものだから、それもできず、男に必死でしがみつく。
「あ、あっ、あああ――――!!」
自然と声が出た。下の方から次上がってくる快感が、全身を駆け回っていく。
今まで精を放っていたのとはまるで違う感覚。体中の血管が沸き立つ。頭が真っ白になる。
絶頂は尾を引いて、身体を小刻みに震わせた。男の放ったものがじわりと腹の中を満たしているのを遠い意識で感じる。それと同時に、あれほど行き場を求めていた熱が、心地よく収まっていくのを感じた。
ずるり、とそれが抜かれる。
「ふぁっ・・・」
思わず声が漏れて、恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じる。
まじまじと男がこちらを見てくる。
ないよね、今の声。俺もそう思うよ。だから見ないで・・・。
「今日は何を企んでいるんだ?」
汗か涙かに張り付いた髪を梳かれて、終わったんだとやっと思える。
そう思うと、べたついた身体も、少し寒い空気も、冷たいシーツの上で横たわる自分も思いだされて、何よりさっきから。
「・・・たい・・・」
「ん?」
「痛い・・・いたいよぅ・・・うう・・・」
縛られた手が、肩が。初めての行為がこんな縛られてだなんて。縛られたときに無理に動いたから、もうバキバキにあちこち痛くてもう耐えられない。
恥ずかしいけど涙が止まらなかった。
「う。うう・・・痛い・・・う、うう・・・」
「泣いているのか・・・?」
俺を犯した男が、慌てている。そんなのいいからとにかくこの縄をほどいてほしい。
「とって。この縄・・・取ってよう」
男は一瞬の逡巡ののち、手慣れた手つきで縄を触った。
あんなにがちがちに絞められていたのに。驚くほどあっさりと解かれた。
その解放感に全身の力が抜けて、行為の疲労感もあってとりあえずベッドに横たわる。
しびれが徐々に緩んでいくのをうつぶせて感じる。もう指一本動かしたくない。
「では、私は行く」
男は上掛けをかけてくれる。その手つきは優しいのに、言った台詞はとんでもなかった。
サイドボードにある呼び鈴を少し近づけて、ガウンを拾う。
そんな気遣いまでするのに、本当にそのまま出ていこうとする。
思わずガウンの裾を握った。
「・・・・・・」
男は止まった。文字通り立ち上がりかけた身体をそのまま制止させた。
「・・・・・・」
俺が何も言わないからか。男はそのまま固まっている。
顔だけこちらを向いているのはわかる。
沈黙が流れ、それを破ったのは男の方だった。なぜって俺は声を出すのもつらかったから。
「・・・どうした」
どうした?
こっちがどうしたですよ。
縛ってやって終わりですか。いやいや、なにかあるでしょう、もう少し。
「いかないで」
なんといっていいものかわからずとりあえず声をかけた。
男は心底信じられない、という声音で俺に向き直った。
「私に言っているのか?ここにいろと?」
そうです。説明をしてほしいから。されたことは驚愕だけど、終始優しそうな物腰だったので、とりあえず話だけでもできると思って。でもちょっと待って。しびれてるし痛いし。
「いて。いかないで・・・」
何とかそれだけを言う。涙はシーツで拭きとった。ぐず、と鼻水をすする。
男は信じられないものを見るように俺を見ながら、ベッドにすとん、と腰かけた。
そしてはっと思いなおし、少し離れた椅子に腰かけた。こちらから視線を外さないままに。
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