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私は泣きながら鉱に電話して瑞穂に連絡を取ってもらった。
でも瑞穂は、会わない方が良いといって会ってくれない。
そうだよね。私のせいだ。
瑞穂を深く傷つけたんだ。それなのに私、積極的に何もしなかった。
仲直りしたいって思いつつも、瑞穂から何か言ってくれる事を待ってた。
卑怯者! どうして、本当に。瑞穂の気持ちに甘えてばかり。
今更、なに? って思われても……。
私は今度こそちゃんと言わなきゃ。うんん、言いたい。
長く離れていた年月の分。取り戻せなくても、あの時の瑞穂に謝りたい。
何度、携帯へかけても出てくれない。
鉱から私の番号だと伝えてもらったのに。
避けられている。嫌がられている。
わかってる。自分勝手な行為だ。わかってても、どうしても。
お願い、瑞穂。
諦めたくない。
もう一度、許されるなら瑞穂と友達にもどりたい。
意を決して、瑞穂の実家へひとりできた。
小学校からもう、ずっと来ていなかった。
小さい神社の横にある赤い屋根の一戸建て。
マンションの私には憧れだったな。
懐かしく思うも、心臓が飛び出しそうなくらいバクバクと音をたてる。
瑞穂、会ってくれるだろうか? 急にきて迷惑だったよね。
どうしよう。怖い。
ちゃんと話せるだろうか?
ここまで来て怖気づいても……これまでと変わらない。
一呼吸おいて、呼び鈴を震えた手で押す。
『はい』
瑞穂! 手をギュウと握りしめる。
「あ、み、瑞穂……あの、私」
いきなり出た瑞穂に心の準備をしていたと思っていたが、ドギマギして何を言えばいいかわからなくなる。
……あれ? なんの返事もない。
瑞穂の声、だった気がしたのに瑞穂じゃなかった? 間違えた?
「あ、すみません、私、小学校の時の……」
『はいはい、確か、なあちゃん?』
え? 瑞穂のお母さん? 声、似てるんだな。恥ずかしい。
「そ、そうです。あの、瑞穂さんは?」
『ちょっと、まってね』
そういって少しすると、玄関が開き細身の女性が出てきた。
「こ、こんにちは」
とりあえず、挨拶をした。久しぶりに会う瑞穂のお母さんは、昔と変わってないように見えた。
「瑞穂ねえ、ええと、今は……いないのよ」と何となく歯切れ悪く言われる。
いない……。そうか。
もう、無理なのかな?
……私は、遅すぎたんだ。
これ以上しつこくしても、もっと嫌われるだけだよね。
涙が出そうなのをこらえて、瑞穂のお母さんにお礼を言って帰ろうと顔をあげた。
小学校以来、遊びに来なかった私を怪訝そうに見つめているように思えた。
責められている気がして曖昧な笑顔を浮かべて会釈だけして、さっさと帰ろうとした。
「まって!」
聞き覚えのあるソプラノの声に、あわてて振り返る。
玄関の奥から人が慌てた様子で出てきた。
え? 瑞穂? 瑞穂だよね? 家に……いたの?
「瑞穂……」
自分がどんだけ情けない声で呼んだのか、どんだけ潤んだ目で見つめたのか。鼻が赤くなっていく速度も。ぐっしゃぐしゃに泣き喚きだすまでの短い空白も。
何もかも後で瑞穂から聞いた。
「部屋に入る?」
聞かれた私は頭をブンブンと振った。
「べ、べーばぐだ、が、ら」
「ええ?」
瑞穂は昔のように困り眉をさらに困らせて笑う。
「めーわく」
「おかーさん、ちょっと神社で話してくるね」
瑞穂が言って、私の肩を優しく押して誘導する。
小さな神社。
3人の帰り道、鉱と別れてからもここで瑞穂と暗くなるまで話をしていた。
くだらない話でも、ずっと話していられた。
この町は、どこへ行っても瑞穂と鉱の思い出ばかり。
私達は境内で横並びに座った。
「ご、ごめん。急に来で、それに急に泣いで、ごめんね」
鼻水をすすりあげながら、自分の足元を見て言う。
「……うん。落ち着いた?」
コクリと頷く。懐かしい優しい声。だけど、あの頃よりもっと落ち着いている。
涙で滲む目で改めてゆっくりと瑞穂を見る。
久しぶりに会う瑞穂はビックリするぐらい綺麗になっていた。
「あ、えっと、み、瑞穂……久しぶり……ご、ごめんね。いきなり、家に来たり、しつこくしちゃって……その」
「いいよ、もう。何回も聞いたよ」
瑞穂は困り眉のまま微笑む。
あの時から変わらない。そう思いながらも、緊張する。
ちゃんと言わなきゃ。思っている事を伝えて……それから瑞穂の気持ちもしっかり聞いて、それから、それから。
それでも、また友達になってもらえるか。
「みずほ」
私は言葉に詰まった。
何か一言でも口にすれば、また涙が止まらなくなりそうだ。
鼻頭がツンと痛い。
「……ご、ごめん。本当にごめんなさい!」
勢いよく頭を下げた。
「……なあ、ちゃん。顔、あげて」
その呼び方で、今も呼んでくれるの?
私はゆっくり顔をあげた。
「私、ほ、本当は瑞穂の気持ちわかってたの。瑞穂も鉱のことが好きだって、わかってたのに……」
「そうなの? なあちゃん」
瑞穂は、それだけ言って何も話さない。
……怒ってる? どうしよう。
どうしようじゃない! 許してもらえるまで謝るしか。
「……私、許さない」
「え……」
私は眉根をよせて震えながら瑞穂を見た。
……ああ、また。私。
謝ったら瑞穂が許しくてもらえると思ってた。
瑞穂なら、許してくれると甘えていた。まただ。また私は……。
私は下唇を噛んで、俯いた。
本当になんて自分勝手なんだろう。どうしていつまでも成長できないの?
嫌い嫌い! 私なんか大嫌い!
でも瑞穂は、会わない方が良いといって会ってくれない。
そうだよね。私のせいだ。
瑞穂を深く傷つけたんだ。それなのに私、積極的に何もしなかった。
仲直りしたいって思いつつも、瑞穂から何か言ってくれる事を待ってた。
卑怯者! どうして、本当に。瑞穂の気持ちに甘えてばかり。
今更、なに? って思われても……。
私は今度こそちゃんと言わなきゃ。うんん、言いたい。
長く離れていた年月の分。取り戻せなくても、あの時の瑞穂に謝りたい。
何度、携帯へかけても出てくれない。
鉱から私の番号だと伝えてもらったのに。
避けられている。嫌がられている。
わかってる。自分勝手な行為だ。わかってても、どうしても。
お願い、瑞穂。
諦めたくない。
もう一度、許されるなら瑞穂と友達にもどりたい。
意を決して、瑞穂の実家へひとりできた。
小学校からもう、ずっと来ていなかった。
小さい神社の横にある赤い屋根の一戸建て。
マンションの私には憧れだったな。
懐かしく思うも、心臓が飛び出しそうなくらいバクバクと音をたてる。
瑞穂、会ってくれるだろうか? 急にきて迷惑だったよね。
どうしよう。怖い。
ちゃんと話せるだろうか?
ここまで来て怖気づいても……これまでと変わらない。
一呼吸おいて、呼び鈴を震えた手で押す。
『はい』
瑞穂! 手をギュウと握りしめる。
「あ、み、瑞穂……あの、私」
いきなり出た瑞穂に心の準備をしていたと思っていたが、ドギマギして何を言えばいいかわからなくなる。
……あれ? なんの返事もない。
瑞穂の声、だった気がしたのに瑞穂じゃなかった? 間違えた?
「あ、すみません、私、小学校の時の……」
『はいはい、確か、なあちゃん?』
え? 瑞穂のお母さん? 声、似てるんだな。恥ずかしい。
「そ、そうです。あの、瑞穂さんは?」
『ちょっと、まってね』
そういって少しすると、玄関が開き細身の女性が出てきた。
「こ、こんにちは」
とりあえず、挨拶をした。久しぶりに会う瑞穂のお母さんは、昔と変わってないように見えた。
「瑞穂ねえ、ええと、今は……いないのよ」と何となく歯切れ悪く言われる。
いない……。そうか。
もう、無理なのかな?
……私は、遅すぎたんだ。
これ以上しつこくしても、もっと嫌われるだけだよね。
涙が出そうなのをこらえて、瑞穂のお母さんにお礼を言って帰ろうと顔をあげた。
小学校以来、遊びに来なかった私を怪訝そうに見つめているように思えた。
責められている気がして曖昧な笑顔を浮かべて会釈だけして、さっさと帰ろうとした。
「まって!」
聞き覚えのあるソプラノの声に、あわてて振り返る。
玄関の奥から人が慌てた様子で出てきた。
え? 瑞穂? 瑞穂だよね? 家に……いたの?
「瑞穂……」
自分がどんだけ情けない声で呼んだのか、どんだけ潤んだ目で見つめたのか。鼻が赤くなっていく速度も。ぐっしゃぐしゃに泣き喚きだすまでの短い空白も。
何もかも後で瑞穂から聞いた。
「部屋に入る?」
聞かれた私は頭をブンブンと振った。
「べ、べーばぐだ、が、ら」
「ええ?」
瑞穂は昔のように困り眉をさらに困らせて笑う。
「めーわく」
「おかーさん、ちょっと神社で話してくるね」
瑞穂が言って、私の肩を優しく押して誘導する。
小さな神社。
3人の帰り道、鉱と別れてからもここで瑞穂と暗くなるまで話をしていた。
くだらない話でも、ずっと話していられた。
この町は、どこへ行っても瑞穂と鉱の思い出ばかり。
私達は境内で横並びに座った。
「ご、ごめん。急に来で、それに急に泣いで、ごめんね」
鼻水をすすりあげながら、自分の足元を見て言う。
「……うん。落ち着いた?」
コクリと頷く。懐かしい優しい声。だけど、あの頃よりもっと落ち着いている。
涙で滲む目で改めてゆっくりと瑞穂を見る。
久しぶりに会う瑞穂はビックリするぐらい綺麗になっていた。
「あ、えっと、み、瑞穂……久しぶり……ご、ごめんね。いきなり、家に来たり、しつこくしちゃって……その」
「いいよ、もう。何回も聞いたよ」
瑞穂は困り眉のまま微笑む。
あの時から変わらない。そう思いながらも、緊張する。
ちゃんと言わなきゃ。思っている事を伝えて……それから瑞穂の気持ちもしっかり聞いて、それから、それから。
それでも、また友達になってもらえるか。
「みずほ」
私は言葉に詰まった。
何か一言でも口にすれば、また涙が止まらなくなりそうだ。
鼻頭がツンと痛い。
「……ご、ごめん。本当にごめんなさい!」
勢いよく頭を下げた。
「……なあ、ちゃん。顔、あげて」
その呼び方で、今も呼んでくれるの?
私はゆっくり顔をあげた。
「私、ほ、本当は瑞穂の気持ちわかってたの。瑞穂も鉱のことが好きだって、わかってたのに……」
「そうなの? なあちゃん」
瑞穂は、それだけ言って何も話さない。
……怒ってる? どうしよう。
どうしようじゃない! 許してもらえるまで謝るしか。
「……私、許さない」
「え……」
私は眉根をよせて震えながら瑞穂を見た。
……ああ、また。私。
謝ったら瑞穂が許しくてもらえると思ってた。
瑞穂なら、許してくれると甘えていた。まただ。また私は……。
私は下唇を噛んで、俯いた。
本当になんて自分勝手なんだろう。どうしていつまでも成長できないの?
嫌い嫌い! 私なんか大嫌い!
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