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足腰ガクブル★死神の吐息編

ルークショック再来

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※ちょっとグロ注意。一時的な死人が出ます。




「ガレさん…そのガキが…」

「ガキじゃねェコージだ。俺の嫁だからな。丁重に扱え。ただし手ェ出したら存在から消す」

「うっす。他の団員にも伝えておきます」

…説明しよう!
現在、コージこと俺は、世界共通認識の凶悪盗賊団『死神の吐息』の頭、ガレにお姫様抱っこされて、強面のおじさんお兄さん方の間を進んでいるのだ!

…………ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!?

何この状況!!?
狂ってるよ! カオスだよ!
いぃぃぃやぁぁぁぁぁぁムリムリムリ恐い恐い恐い!!
興味とか嫌悪とか感謝とか色んな視線が突き刺さってるぅぅぅ!!

「んな怯えんなって。顔はアレだが…悪い奴らじゃねェから…な?」

はん!? 盗賊だろ!? 盗賊に良い奴とかいるわけ!?

「…まぁ、気持ちは分からんでもないぜ。少しずつ慣れりゃあ良いさ」

エスパー!! エスパーがいるよぉぉぉ…!!
リイサスさんとルークさんに次ぐ第三のエスパー爆誕だよぉ…ふぇぇ…。

「…何か可愛いこと考えてやがるな?」

………………………………………………………………………………………………………………。
それにしても…今日は肌寒いなーー。あー寒い寒い。ヘックションッ!
上とやらは暖かいと良いなー。

「着いたぞ」

ガレの声にずっと上げられなかった顔を上げると、白いドアが目の前にあった。
えーっと、あれだ。ベルサイユ風? ゴシック? ロココ? そんな感じのデザインのドア。
ガレは俺を抱えたまま器用にそのドアを開けた。
中を覗いて5秒…。

「…………………」

絶句した。
少女趣味。変態。ロリコン。ペド野郎。犯罪。
数秒間のうちに色んなワードが頭の中を飛び交った。

「可愛いだろ? コージのイメージに合わせて強奪品の中から見繕うように指示したんだ」

「良い笑顔浮かべてんじゃねーよっ! んだよコレ!! 俺精神的には17だっつったよな!!? 見た目は15でも中身は17なんだよ!! もうお人形さんでお遊びする年じゃねーの!! つか15でも遊ばねェよ! オイコレ見繕った奴出てこい!! どこのどいつだ!!」

もうダメだった。限界だった。
緊張とストレスと不安で何かしら叫びたかった。
そんな時にふわっふわのぬいぐるみと宝石で埋め尽くされた天蓋ベッドのある部屋に住めと言われてみろ。
……………爆発するよな。うん。誰だってそうだ。異論は認めん。

突然強気になった俺に、強面のおじさんお兄さん方はビックリ仰天している。
しかし俺はそんなこと気にする余裕もなく、ただガレの腕の中で怒鳴り続けた。

「??? ギルマスの耳ずっと触ってたんだろ? じゃあモフモフだって…」

「限度ぉぉぉぉ!! モフモフは好きだけどこれはあんまりだろ!! これじゃお金持ちの幼女の部屋と大差ないぞ!!? 頼む!! 頼むからぬいぐるみ宝石類共に8割減らして!! つか宝石に関しては要らん!!」

俺は鎖で拘束された腕でガレの胸倉を掴み、前後にゆっさゆっさ。
団員達が青ざめたけど、俺は知らん。殺れるもんなら殺ってみろ! 俺にはジズが付いている!! 愛情ゆえの殺意はどうしようもないがな!!

「…気に入らなかったか……。そうか、残念だ…。おい。部屋を作った奴。出てこい」

…………え?

…ガレの雰囲気がガラリと変わった。
鳥肌が立つような声音に、糸が限界まで張り詰めたような緊張が走る。
わぁ………ルークショック…ガレver…。
(※ルークショック…ワーナー求婚騒動の際にルークが行った独裁的で理不尽な空間作りのこと。コージ命名)

強面達の中から、2人のお兄さんが恐る恐るといった様子で出てきた。
どちらも尋常じゃない程の冷や汗をかいていて、カタカタと震えている。

「……言い訳くらいは聞いといてやる。何でこんな部屋にした?」

部屋の気温が氷点下まで下がったような気がした。

「あ……その…獣人の耳を触るのが好きだと聞いていたので…その、女と同じ趣味のお方なのかと…」

頭に黒い布を巻いた体格の良いお兄さんが震えた声で答える。
布のお兄さんの言葉に、隣の狐? の獣人のお兄さんもコクコクと必死に頷いた。
……いや、罪悪感とか威圧感とかでスルーしそうになったけど…この世界の男って、モフモフ好きじゃないの…? え、男でも動物好きとかモフモフ好きとかいるよな…?
もしかして、モフモフ好き=軟弱者って公式出来上がっちゃってる…?

「…ほぉーーー……。俺のコージが…女みてェな趣味したカマ野郎だとでも…?」

……………。心外だ…けど……ガレが恐すぎて…何も言えない…。

「すみませんっ!!」

「すみませんでしたっ!!」

2人のお兄さんは同時に頭を下げた。
ガレは俺をゆっくりと床に降ろして、じぃっとお兄さん達の頭を見つめる。
……何秒、何分、何時間経ったのか、分からなくなってきた。緊張で体内時計が狂ったのだ。

シャッ

金属音が、聞こえた。
…そこから十数秒間、俺はまったく動けなかった。
まるで映画を見ているような、そんな錯覚に囚われていた。どうか、この景色が全て夢や作り物でありますようにと心の底から願った。
しかし、現実は無情なのだ。
血飛沫が四方八方に飛び散り、今まで目の前に立っていた2人のお兄さんは床に倒れ込んでピクリとも動かない。周りの盗賊達が一歩後退って、ガレは血塗れの剣を握って無表情で立っていた。

「……ぁ…」

状況が完全に理解出来る頃には、ガレは剣を鞘に納め、俺の顔を心配そうに覗き込んでいた。

「…人が死ぬのを見るのは初めてか…? まいったな。俺の怪我を見ても動揺してなかったから精神耐性があるとばかり思っていたが…」

俺の世界は比較的平和だったって言ったよな…?とは言えない。というか、まともな声が出ない。
目の前で人が死んだこと、親しい人が人を殺したこと、……しかも、それは俺のせい。
目の前が暗くなるような感覚に襲われた。

____あぁあ…死んじゃった……。どうしよう…。もう立たない。もう喋らない。もう…息をしない…。
受け入れられない。
…は、はは…何当たり前のこと言ってんだよ俺……死人は生き返らないなんて…………あ。
………いやちょっと待て……。

あ、ああああ!! 生き返る!! この世界なら!!


そうだよ!! 蘇生魔法!!!


こういう時の魔法だ!! って、ああ!!? 鎖付いてるし!!!
ちょ、ヤバい!蘇生魔法って確か死んで10分以内じゃないと効かないんじゃ…!!

「………コージ、その、大丈夫か? 嫌なもん見せて悪かtt「鎖解いて!!!」え?」

呆然としていた俺のいきなりの大声に、ガレを含めた盗賊達全員がビクッと反応した。

「は、鎖? 残念だがそれは無理だ。逃げるだろ。魔法使って」

「魔法は使うけど逃げないからさっさと解いて!! つか解け!! 解かないと一生口利かないからな!!?」

「えっ!?」

ガレは俺の脅しと必死の形相にしばらく唸り考え込んで、諦めたかのように鎖の鍵を懐から取り出し、俺の足首をがっしりと掴んだ状態で鎖を外した。
俺はガレに掴まれた足を引きずりながら2人のお兄さんだった死体に近付き、手をかざす。
そして深呼吸…。


___神聖魔法の神様!!
お兄さん達を生き返らせてください!! お願いします!!

精一杯、魔力を込めて願った。
しかし、2人の傷が治る様子も、むくりと起き上がる様子もない。

「へ、な、何で…? 鎖は解いたのに…!?」

何度も試すが、魔法は一向に起こってくれない。
それでも、何度も、何度も泣きそうになりながら試す。
20回目を超えた辺りで、ガレが声を掛けてきた。

「…コージ。言ってなかったが、俺の攻撃で死んだ奴に蘇生魔法は効かない。俺が暗黒属性だからだ。そいつらは諦めろ」

~~~~~~っっっっ!!!?
無情で非情な鬼!! 悪魔!! もっと早く言えっ!!
くそっ……!! こうなりゃ最終手段だ…!!

俺は両手を胸の前で絡め、世に言う、お祈りポーズをとった。頼みの綱を、しっかりと握るように。
そして目を見開き、この世の頂点の存在に助けを求める。


───ゼロア!! どうせいるんだろ!! 2人を返してくれ!! 頼むから!! 天界行ったときは話し相手でも何でもなってやるから!!




『──……言ったな? 前言撤回は無しぞ』




…後に、このときの光景は【神による奇跡】と語り継がれるのだが、この時の俺はまだ知らない。
2人の血が溢れ出ている傷口が金色に輝き、皮膚がみるみると再生していった。
周囲の息を呑む音が聞こえる。
完全に2人の傷が治る頃に、お兄さん達の身体がビクンと跳ね上がり、溜まった死体の淀みを吐き出すように呼吸を始めた。

2人が生き返ったことを実感した俺は、全身の力が抜けるのを感じながら一安心の意味のため息を吐く。


「……ぅ…ぁ、あ…?」

獣人のお兄さんが目を覚ました。
しばらくの間、ポケーっとしていたけど、ガレの顔を見たお兄さんは青くなった後、自分の身体をペタペタと触って、「…あれ?」といった顔をした。

「……………コージに感謝しろよ」

ガレの言葉に、お兄さんはますますハテナを浮かべ、次に俺を見た。
うん、そうだよな。その反応が普通だよな。いやー…マジで申し訳ないことをした…。一度死を経験させてしまうなんて……危うくガレを殺人犯にしてしまうところだった…。……ん? 一度死んだからやっぱ殺人になるのか? 結果的に生きれば殺人未遂…? …………まぁ、謝んなきゃいけないことには変わりないよな。
俺は意を決し、獣人のお兄さんに話しかけた。

「あの、部屋、気に入りました。ありがとうございました。その、ごめんなさい」

「え、あ、はい…?」

「……テメェ…。コージに気を使わせやがって……」

「あーいいから!! もういいから!! 2連続は疲れるしこの人も恐いだろうからやめて!!」

「いや、でも…」

「うっさい!! ほら、俺を喘がせたいんだろ!!? さっさとヤるぞ!!」

「!!!!!」

俺の勇気を振り絞った言葉によって、ガレは機嫌を180度変え、さっさと俺を白いドアの部屋に連れ込もうとした。

「うわっ、ちょ、落ち着け…! あ、すみません、獣人のお兄さん! 黒い布のお兄さんが起きたら、『ごめんなさい。部屋、ありがとうございました』って伝えておいてくださっ…。ま、ガ、ガレ!! マジ落ち着け!!」

部屋の中でいきなり脱ぎ始めたガレを何とか抑えながら、獣人のお兄さん、その他の盗賊の人達にペコリと頭を下げ、ドアを閉じる。
ガレと2人きりの空間になったことに少し安心し、振り返ると、上半身裸でムッキムキに割れた筋肉を見せつけながら両手を広げ、おいでのポーズをしているガレが視界に入り、泣きたくなった。









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