Eternal Chains - 圧政の影

第6章: 神殿の呼び声

3. 霧の戦い

反乱軍が神殿への道を進む中、彼らは広大な湿地帯に差し掛かった。

湿地の中には濃い霧が立ち込め、道は不明瞭で、足元も不安定だった。

グレタの導きに従いながら進んでいたが、その時、王国軍が待ち伏せしていることに気づかされた。


「止まれ！」
前方からアンリの声が響いた。

「何かが近づいてくる…！」


リーシャは足を止め、霧の中を慎重に見渡した。

周囲は一面、白い霧に包まれ、敵の姿は見えない。

しかし、彼女の心には何か不穏な気配が漂っているのを感じた。


「王国軍か…？」
ガロンが鋭く言った。

「霧の中に隠れているとは、あいつらも狡猾だ。」


「この霧を利用しない手はない。」
グレタが冷静に言った。


「私たちは古代の戦術を習得しました。
霧の中での戦いでは、私たちが有利に立つことができるはずです。」


「でも、どうやって…？」
アンドレが不安げに尋ねた。

「敵がどこにいるかも分からない。」


「まずは霧をもっと濃くします。」
グレタが静かに呪文を唱え始めた。


彼女の手がゆっくりと上がり、周囲の霧がさらに濃くなり始めた。

霧は厚くなり、まるで手に触れることができるかのように感じられた。

視界はほとんどなくなり、敵味方の区別がつかないほどだった。


「これで私たちの姿は完全に見えなくなるわ。」
グレタは力強く言った。


「次は、敵を誘導するための罠を仕掛けます。
皆、各自の持ち場について。」


リーシャは全員に指示を出し、それぞれが霧の中に散らばった。

彼女は自分の剣を握りしめ、心を静めながら、敵の動きを待った。


霧の中での静寂が続いた後、遠くからかすかな足音が聞こえてきた。

それは次第に近づき、重い甲冑が湿地のぬかるみを踏みしめる音が響き渡った。


「気をつけろ、敵は近いぞ…」
アンリが囁いた。


突然、霧の中から王国軍の兵士が現れた。

彼らは明らかに視界を失い、何度も周囲を確認しながら慎重に進んでいた。


「ここだ！」
ガロンが叫び、最初の敵兵に突進した。


ガロンの剣が敵の甲冑を貫き、兵士はその場に倒れた。
だが、それと同時に別の兵士たちがガロンに向かって突進してきた。


「囲まれるな！霧を使って姿を隠せ！」
リーシャが叫び、ガロンに援護を送った。


シエラは霧の中で素早く動き、敵兵に狙いを定めて矢を放った。

矢は静かに、しかし確実に敵を貫き、次々と兵士たちを倒していった。


「よし、いいぞシエラ！」
アンリが霧の中で声を上げた。

「そのまま俺たちが仕留めていく！」


アンドレも自分の位置から突撃し、敵をかく乱した。
「この霧の中でなら、俺たちが有利だ！」

しかし、敵も反撃に出た。

王国軍の指揮官が声を張り上げ、兵士たちに命令を出していた。

「霧を恐れるな！敵はすぐ近くにいるはずだ、周囲を囲め！」


反乱軍は、霧の中で巧みに移動しながら、敵の攻撃をかわして反撃を続けた。

グレタはさらに霧を濃くし、敵の視界を完全に奪った。

その結果、王国軍は次第に混乱し、統制が取れなくなっていった。


「今だ！敵を一気に叩き潰せ！」
リーシャが叫び、全員が一斉に攻撃を開始した。


ガロンが前に出て、敵の指揮官に向かって突進した。
「お前たちの指揮官を倒せば、全てが終わる！」

指揮官はガロンの猛攻を受け、一瞬で戦意を失った。
「引け！このままでは全滅だ！」


王国軍は退却を始め、霧の中で混乱した兵士たちは次々と後退していった。

反乱軍は彼らを追い詰め、最後まで攻撃を仕掛けた。


やがて、霧が晴れ、戦場には静寂が戻った。

王国軍は完全に撤退し、反乱軍は勝利を収めた。


「やったぞ！」
アンドレが歓喜の声を上げた。
「俺たちが勝った！」


「この霧の戦術が功を奏したな。」
ガロンが満足げに言った。


「グレタ、君のおかげだ。」


グレタは微笑んで答えた。
「皆が力を合わせたからこそ、この勝利を手にすることができたのです。」


リーシャは仲間たちを見渡し、感謝の気持ちを込めて言った。

「全員、本当にお疲れ様でした。
私たちはこの試練を乗り越え、さらに強くなりました。
これからも力を合わせて、セリオンに立ち向かいましょう。」


全員がその言葉に頷き、再び団結を強めた。

彼らは神殿にたどり着くための最後の試練を乗り越え、これからも共に戦う決意を新たにした。


湿地の戦いで得た勝利は、彼らに新たな希望と自信をもたらし、次なる戦いへの準備が整ったことを示していた。

彼らは共に、この戦いを最後まで戦い抜くために進み続けるのだった。