Eternal Chains - 圧政の影

第1章: 抑圧された民

2. 重税と飢饉

湿地の村では、重税と飢饉が民衆の生活を直撃していた。
かつては肥沃な土地で育った作物が、村全体の食卓を賑わせていたが、
今ではその姿は見る影もなく、干からびた畑が広がるばかりだった。

収穫量が減る中で、さらに増税が課せられ、村人たちは日に日に追い詰められていた。

リーシャは、村の長老であるグレゴールの家を訪れていた。

彼女は、この村を何とか救いたいと願い、長老の知恵を借りるために足を運んだのだった。

グレゴールは、白髪の老人で、村人たちから尊敬を集めているが、
最近ではその顔にも疲労が色濃く表れていた。

「リーシャ、来てくれてありがとう。」
グレゴールは、静かに微笑みながら椅子に座るよう促した。

「村の状況を知っているとは思うが…本当に、ひどい有様だ。」


リーシャは頷き、重い気持ちで口を開いた。

「はい、長老。食べ物が足りなくて、多くの家族が飢えています。
父が亡くなった後も、私は村を守ろうと必死でしたが、
何も変わりませんでした。」


グレゴールは深い溜息をつき、壁に掛けられた古びた地図を見つめた。

「国王の命令で、さらに重い税が課せられた。
食べ物だけでなく、薬草や毛皮までも取り上げられている。
それがなければ、我々は冬を越せないというのに…」

リーシャの心に怒りが湧き上がった。

「どうして、これほどまでに私たちを苦しめるのですか？　
国王は一体何を考えているのでしょう？」


「国王は、もう私たちのことなど考えていないのかもしれない…」
グレゴールは静かに言った。

「もはや彼は、セリオンの意のままに動いている。
ただ、民を苦しめるために命令を下しているように思える。」

リーシャは拳を握りしめた。
彼女はセリオンの名前を聞くたびに、怒りと憎しみが込み上げてくるのを感じた。
彼の圧政が、どれだけの人々を苦しめているのかを知っているからだ。

「それだけではありません…」
グレゴールが続けた。

「最近、村の中でも盗みが増えている。
飢えに苦しむ者たちが、必死に生き延びようとして、他人の財産を奪い合うようになっているのだ。」


リーシャは眉をひそめた。
「村の者同士が争うなんて…そんなこと、あってはならない。」


「そうだ、リーシャ。」
グレゴールは悲しそうに頷いた。

「だが、それが現実だ。飢えと絶望が人々を狂わせている。
私たちの村が、内側から崩壊しようとしているんだ。」


リーシャは何とかしてこの状況を変えなければならないと心に誓った。

だが、具体的な方法が思い浮かばず、焦りと無力感が募るばかりだった。


その時、ドアが開き、アンリが息を切らしながら駆け込んできた。
彼の顔は青ざめ、目には恐怖が宿っていた。

「リーシャ、グレゴール長老、大変です…また、徴税官が来ました。
今度は、食料だけでなく、家畜まで取り上げようとしています！」


リーシャの心に再び怒りが込み上げた。

「なんてことだ…これ以上、何を奪えば気が済むんだ！」

グレゴールは静かに首を振った。

「彼らは私たちのすべてを奪い尽くすつもりだ。生きる希望すらも…」


リーシャは立ち上がり、決然とした表情でアンリを見つめた。

「もう、これ以上奪われるわけにはいかない。
私たちが立ち上がらなければ、この村は滅びる。」


「でも、どうやって…？」
アンリの声には不安がにじんでいた。


「私たちは団結するしかない。」
リーシャは力強く答えた。

「村の皆に声をかけて、力を合わせて抵抗しよう。
たとえ武器がなくても、私たちには心がある。
セリオンに立ち向かう勇気がある。」


グレゴールはしばらく考え込んだが、やがてゆっくりと頷いた。

「リーシャ、お前の言う通りだ。
私たちは諦めてはならない。
民が団結すれば、たとえ小さな村でも、力を持つことができる。」


アンリもまた、力強く頷いた。
「俺も、もう黙って耐えるのはごめんだ。
リーシャ、一緒に戦おう。」


リーシャは二人を見つめ、心の中で決意を新たにした。
村人たちが苦しみの中で耐え続けるだけでは、未来は変わらない。

彼女は、この村を救うために、反乱の火を灯すことを心に誓った。


「よし、これから村の者たちを集めて話をしよう。
私たちは一つになって、この圧政に立ち向かうんだ。」


リーシャの言葉に、グレゴールとアンリは力強く応えた。
彼らの目には、再び希望の光が灯り始めていた。

外では、徴税官たちが村の家々を回り、財産を奪っていた。

しかし、リーシャたちの心には、もはや恐怖ではなく、戦うための決意が宿っていた。

これ以上の犠牲を出さないために、彼らは行動を起こす覚悟を決めたのだった。