夜霧市の影

夜霧市の影

影町の秘密

夜霧市の中でも、特に霧が濃く立ち込める場所がある。

それが、影町だ。

地元の人々は、その場所に近づくことを避け、古い伝承を囁くばかりだった。

影町には、夜霧市の暗部が潜んでいるとされ、誰もがその秘密に触れることを恐れている。


蓮は、影町に足を踏み入れていた。

街の中心部から外れた場所にあるその町は、薄暗い建物が立ち並び、まるで時間が止まったかのような静けさが漂っている。

霧が一層濃くなり、視界がわずかに閉ざされる。


この町は、かつて影人たちが集まっていた場所であった。

影狩りから身を隠すため、また互いに情報を交換し合うために、影人たちはここに集まり、密かなコミュニティを築いている。

だが、影町は今や廃墟と化している。


蓮が向かう先は、かつての集会所だった場所だ。

古びた建物が並ぶ一角に、その集会所はひっそりと佇んでいた。

扉は朽ち果て、壁にはひびが入り、長い年月の経過がそのまま刻まれている。



「ここに何が隠されているのか…」


集会所の扉を押し開けた。

扉が軋む音が霧の中に響き、冷たい風が通り抜ける感覚が広がる。

内部は薄暗く、かすかな光が床に差し込む。


慎重に足を踏み入れ、周囲を見回した。


集会所の中には、古びた家具や破れた布が散乱している。

かつてここで交わされたであろう話し声や笑い声の残響が、今はただの静寂に取って代わられているが、
仲間たちとの記憶が蘇るのを感じていた。


その時、蓮の目にあるものが映り込んだ。

部屋の片隅にある壁に、薄暗い光が反射している場所があった。

蓮は近づき、手を伸ばしてその壁を触れる。

冷たい感触が指先に伝わり、微かに湿り気を帯びた壁がわずかに震えている。


「ここに何かが…」


力を入れて壁を押すと、その部分が少しだけ動いた。

隠し扉のようだ。


蓮は慎重にその扉を開け、内部を覗き込んだ。
薄暗い隙間の中には、小さな箱が置かれていた。


その箱を手に取り、慎重に開ける。


箱の中には、古びた手紙と一冊のノートが収められていた。

手紙の封を解くと、そこには影人たちが交わした秘密のメッセージが書かれいるようである。


その内容は、影町に隠された謎や、影人たちの過去についてのものであった。

蓮はその手紙を読み進めるにつれ、次第にこの町に隠された真実が浮かび上がってくるのを感じた。


「このノートも…」


蓮は続いてノートを手に取り、中を開く。


そこには、影人たちの記録や、彼らが長年にわたって守り続けた秘密が詳細書かれている。
この町がただの廃墟ではないことが記されていた。


影町には、まだ解き明かされていない秘密が眠っている。
それは、影狩りとの戦いを続ける蓮にとって、重要な手がかりとなるかもしれないものだった。


ノートを閉じ、しっかりと持ち直した。

影町に隠された秘密を解き明かすことで、自分たち影人の未来を切り開く手がかりが得られるかもしれない。。。



蓮は静かに立ち上がり、再び外の霧の中に身を投じた。