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第2章

10 新年の祝い

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 雪が深まった頃。年が明けて新しい年が始まる。
 街は新年の祝いで賑わっていた。
 エレンの森では、変わらずの生活。だが、ユリアーナに新年の賑わいを味合わせたくて、街までユリアーナを連れてきた。


「エレン。あれは?」
 さっきから目をキラキラさせて歩くユリアーナにニコニコと笑顔を向けるエレンは、今までのエレンとは違っていた。
 今まではこんな風に笑うことはなかった。穏やかな気持ちになることもなかった。
 
 雪の中、街中を歩くるふたりは異様な光景に見えてるのかもしれない。
 魔女が人間の子を連れて歩くなんて異様だ。
 だけど、ふたりはそんな視線はお構い無しだった。
「エレンに必要なものを買おう」
 エレンには僅かな金貨コインしかないが、今までは必要はなかった。だが、これからはユリアーナの為に必要なのかもしれないと、考え始めていた。

「エレン!」
 街を歩いていると、ジェニファーに遭遇した。ジェニファーにはまだユリアーナのことは話してなかった。
「あらその子は……?」
 ユリアーナに気付いたジェニファーに説明すると、ぱぁと顔色が変わった。
「では、一緒にお買い物しましょ」
 と一緒に歩き出した。
「息子はどうした」
「今日はジェイが見てくれているんです。ああ見えても子煩悩らしいわ」
 この夫婦は乳母に預けず自分たちで子供を育てている。
 そんな3人が街をブラブラしてユリアーナの為に洋服やら勉強道具やらを揃えた。

「学校はどうするのかしら」
 ジェニファーはエレンに聞いた。
「あ、やっぱり行かせるべき?」
「そうねぇ」
「人間の世界のことはあまりよく分からないからさぁ」
 学費だって出せない。だからこそ学校のことは見て見ぬふりだった。
「学費は私に出させて。こうみえても支援をしているのよ」
 ジェニファーの父親も母親もジェニファー自身も昔から支援の方に力を入れていたという。
 学校が通えない子供たちの為の学校も設立していたという。
「ジェニファー。いいのか」
「お金のことは気にしないで。子供たちの将来のためだもの。父も母も大切なことだと思ってるわ」
 そしてユリアーナに目線を合わせて、「学校へ行ってみない?」と言った。
「今は新年の休みだから学校には誰もいないわ。今度、見学にいらっしゃいな」
 ユリアーナはコクンと頷いた。



     ◇◇◇◇◇



「じゃあとは新年らしくちょっと豪華な食事でも作ろうかな」
 そう言って食材を買うために歩いて行く。
「ユリアーナ。食べたいものは何?」
 聞いてみるけど首を横に振る。この子は食に関して何も言わない。明るい子だった筈が母を亡くして随分と大人しくなってしまった。それ程ショックが大きい。
「じゃ好きなものを言ってね」
 ユリアーナと手を繋ぎ人混みを歩いて行く。
 
 ユリアーナのこれからをエレンはちゃんと見てられるのか、エレン自身が不安に思う。
 だけど見捨てられないのだ。
 

 新年の街を歩いていて、エレンがこの子にしてあげられることは何かと考えていた。
 それをちゃんと考えて導いてあげなければいけない。
 何れ、森を出ていく子なのただから。
 そうでなければいけない。


 新年の祝いで賑わっているその中で、エレンだけは不安で苦しかった……。
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