18 / 34
第2章
9 エレンとユリアーナ 後編
しおりを挟む
冬が来た。見渡す限りの銀世界。
そんな冬にエレンの元へと訪れる者はいない。
いつもはひとりで過ごしていたエレン。だが、今年はユリアーナとホエールがいる。
「ユリアーナ」
他の同年代の子に比べて小さいユリアーナを心配して、ここに来てからのユリアーナにたくさんの料理を出していた。
ずっと食べることを抑えていたユリアーナにとって、エレンの料理を見て驚いていた。
「ほら大丈夫だから」
「……いいの?」
「ユリアーナはもっと食べた方がいい」
ユリアーナに食べろと進める。だが、食べることを抑えていたユリアーナはなかなか食べ進められない。
(急には無理か……)
ユリアーナの身体の状況を分かってるのか、エレンはそう感じた。
◇◇◇◇◇
エレンの小屋の隣にはシェリーの家がある。その隣に新しく小屋を建てた。その中にはユリアーナの家のものが置かれていた。
エレンはその中へ入ると、ユリアーナの冬服を探していた。
(ない……。いつもどうしていたのだろう)
そもそも服そのものが少ない。あってもどれも薄いものばかりだった。
「どうしたものか……」
今度はシェリーの家に入る。2階の奥の部屋にはエレンの小さい頃の服が置いてあった筈だ。
シェリーと暮らしていたのは10歳になる頃までだったからそれ以前の服はシェリーがちゃんと仕舞ってあると考えたのだ。
ギィィ……。
2階の奥の部屋。シェリー自身もここに立ち入ることはあまりしなかったのだろう。
埃っぽい部屋にはエレンの子供の頃の自画像などもあった。
子供の玩具も置いてある。
この部屋にはシェリーと過ごしたエレンのものがある。
「記憶にはないな……」
子供の頃のものを見ても記憶はない。着ていたものもそうだ。
魔女の子供はローブなどのものは必要なかった。他の人間と同じような服を着ていた。
部屋に置かれている収納の引き出しから服をいくつか取り出す。魔術によって劣化しないように施されていた洋服たちは、まだまだ着れるものばかりだった。
それらを持って、エレンの小屋へと戻る。
魔術によって劣化を防いでいたとはいえ、埃っぽい。
(一度洗濯しなきゃかな)
この冬に洗濯をするのは大変だと小屋の裏へと向かう。魔法によって洗濯をするのたが、寒さのせいで乾かないだろう。
「乾燥も魔法でやらなきゃかな」
冬の洗濯はちょっと苦労する。使わなくてもいい魔法を使うからだった。
魔法で洋服をいっぺんに洗い出す。
大きな桶に洋服が入りじゃぶじゃぶと洗う。石鹸の泡が桶から出ていくくらいにじゃぶじゃぶと。しばらく洗って、濯いでと全て魔法を使っていた。
夏など天気のいい時は魔法を使わずに洗っていたのだが、冬は魔法が一番いい。
洗い終わった洋服は一気に乾燥させた。乾燥した洋服を魔法で畳みそれらを持って部屋へと入って行く。
「ユリアーナ」
木のソファーに座って絵本を眺めているユリアーナに洋服を差し出す。
「これ、着てみて」
デザインは古くさいものだけど、ないよりはいい。
だが……。
「さすがに古すぎる」
洋服を着替えたユリアーナを見て呟く。
「ほんとに古くさい」
ホエールまで言う。
当たり前だ。何百年も前のものだ。
「魔法でデザイン、変えられねぇのか」
ホエールがそう言うと「う~ん」と考えた。
色んな服を並べて花弁の粉末を服に蒔いて呪文を唱え出した。
パッパッパッと洋服のデザインが色とりどりに変化していく。
「これならどうだ」
とユリアーナに合わせていく。
「お前は本当に魔女か」
とホエール。魔女の感性とはまた違うことに驚いた。
そのあたりが人間との二分の一だと感じる。
「ユリアーナ」
ユリアーナに声をかけると、顔をあげるユリアーナ。その顔は微かに笑みを浮かべていた。
「エレン。ほんとうにいいの……?」
「いいんだよ」
頭を撫でるとにこっと笑った。
ユリアーナがここに来てからエレンの生活は一変した。ユリアーナの為に生活する。
ユリアーナがちゃんと生きていけるように、文字を教え数を教えた。
ユリアーナは魔女の養女となった。
そんな冬にエレンの元へと訪れる者はいない。
いつもはひとりで過ごしていたエレン。だが、今年はユリアーナとホエールがいる。
「ユリアーナ」
他の同年代の子に比べて小さいユリアーナを心配して、ここに来てからのユリアーナにたくさんの料理を出していた。
ずっと食べることを抑えていたユリアーナにとって、エレンの料理を見て驚いていた。
「ほら大丈夫だから」
「……いいの?」
「ユリアーナはもっと食べた方がいい」
ユリアーナに食べろと進める。だが、食べることを抑えていたユリアーナはなかなか食べ進められない。
(急には無理か……)
ユリアーナの身体の状況を分かってるのか、エレンはそう感じた。
◇◇◇◇◇
エレンの小屋の隣にはシェリーの家がある。その隣に新しく小屋を建てた。その中にはユリアーナの家のものが置かれていた。
エレンはその中へ入ると、ユリアーナの冬服を探していた。
(ない……。いつもどうしていたのだろう)
そもそも服そのものが少ない。あってもどれも薄いものばかりだった。
「どうしたものか……」
今度はシェリーの家に入る。2階の奥の部屋にはエレンの小さい頃の服が置いてあった筈だ。
シェリーと暮らしていたのは10歳になる頃までだったからそれ以前の服はシェリーがちゃんと仕舞ってあると考えたのだ。
ギィィ……。
2階の奥の部屋。シェリー自身もここに立ち入ることはあまりしなかったのだろう。
埃っぽい部屋にはエレンの子供の頃の自画像などもあった。
子供の玩具も置いてある。
この部屋にはシェリーと過ごしたエレンのものがある。
「記憶にはないな……」
子供の頃のものを見ても記憶はない。着ていたものもそうだ。
魔女の子供はローブなどのものは必要なかった。他の人間と同じような服を着ていた。
部屋に置かれている収納の引き出しから服をいくつか取り出す。魔術によって劣化しないように施されていた洋服たちは、まだまだ着れるものばかりだった。
それらを持って、エレンの小屋へと戻る。
魔術によって劣化を防いでいたとはいえ、埃っぽい。
(一度洗濯しなきゃかな)
この冬に洗濯をするのは大変だと小屋の裏へと向かう。魔法によって洗濯をするのたが、寒さのせいで乾かないだろう。
「乾燥も魔法でやらなきゃかな」
冬の洗濯はちょっと苦労する。使わなくてもいい魔法を使うからだった。
魔法で洋服をいっぺんに洗い出す。
大きな桶に洋服が入りじゃぶじゃぶと洗う。石鹸の泡が桶から出ていくくらいにじゃぶじゃぶと。しばらく洗って、濯いでと全て魔法を使っていた。
夏など天気のいい時は魔法を使わずに洗っていたのだが、冬は魔法が一番いい。
洗い終わった洋服は一気に乾燥させた。乾燥した洋服を魔法で畳みそれらを持って部屋へと入って行く。
「ユリアーナ」
木のソファーに座って絵本を眺めているユリアーナに洋服を差し出す。
「これ、着てみて」
デザインは古くさいものだけど、ないよりはいい。
だが……。
「さすがに古すぎる」
洋服を着替えたユリアーナを見て呟く。
「ほんとに古くさい」
ホエールまで言う。
当たり前だ。何百年も前のものだ。
「魔法でデザイン、変えられねぇのか」
ホエールがそう言うと「う~ん」と考えた。
色んな服を並べて花弁の粉末を服に蒔いて呪文を唱え出した。
パッパッパッと洋服のデザインが色とりどりに変化していく。
「これならどうだ」
とユリアーナに合わせていく。
「お前は本当に魔女か」
とホエール。魔女の感性とはまた違うことに驚いた。
そのあたりが人間との二分の一だと感じる。
「ユリアーナ」
ユリアーナに声をかけると、顔をあげるユリアーナ。その顔は微かに笑みを浮かべていた。
「エレン。ほんとうにいいの……?」
「いいんだよ」
頭を撫でるとにこっと笑った。
ユリアーナがここに来てからエレンの生活は一変した。ユリアーナの為に生活する。
ユリアーナがちゃんと生きていけるように、文字を教え数を教えた。
ユリアーナは魔女の養女となった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる