大人初恋

星河琉嘩

文字の大きさ
上 下
28 / 50

28

しおりを挟む
「よし、あれ行こう!」
 晴斗はかよの肩に手を置いて笑った。その先にはお化け屋敷。
 かよが苦手なことを知っていて行こうとする。他の女性陣たちも嫌がっていてもドンドン突き進む晴斗に、平然とした顔をしている菜々美。
「菜々美は平気なの?」
「作り物だしね」
 と言いつつも、菜々美も実は苦手。作り物と分かっていても内心は怖いのだ。
「どうした?」
 振り返る翔に「大丈夫」と答えた。


 お化け屋敷には男女ペアで入ろうとなった。かよは晴斗と。菜々美は翔と。他の面々もそれぞれペアとなって入った。かよたちが先頭になって入っていく。
 かよは嫌がっていたが、入ろうと言い出しっぺの晴斗がグイグイと連れて行ったのだ。
(怖い……)
 菜々美と翔の番になって入って行く。菜々美は平気だというようにしていたが、やっぱり怖くて翔の後ろに隠れるように歩いていく。

「あれ?もしかしてダメ?」
 気付いた翔は菜々美の肩を抱いて歩いていく。
「大丈夫。おれがいるだろ」
 耳元で囁かれても、怖いものは怖い。どこかでかよたちのキャーキャーいう声が響く。それが更に怖さを増す。
「翔……。ほんとに……私………」
 涙目の菜々美が可愛いと思ってしまった翔は笑っていた。
「なんで笑ってるの……」
「可愛いから」
 お化け屋敷でそんなことを言われても嬉しくないと思いつつ、何かを言うことが出来ない菜々美は翔にしがみついて歩いていた。
 友人たちの後ろ姿を追いながら、怖さに耐えていた菜々美。そんな菜々美をやっぱり可愛いと思う翔は、菜々美に惚れ込んでしまっているのだろう。


 お化け屋敷を出た女性陣たちは、本当に怖かったようで「もう、嫌っ!」と喚いていたり半泣きになっていたりした。
 中には霊感がある人もいて「ホンモノいた……」と言って更にみんなをビビらせていた。
 菜々美はというと、みんなのように怖いと言えなかったが、翔にはバレバレ。菜々美の手をしっかりと握って離さなかった。
「大丈夫?」
「ん……」
 プイッと別の方を向いた菜々美が強がっているのを感じ取った。

「よし、じゃ次はあれな」
 コーヒーカップへと向かう男性陣。
「ほら、女共。早くしろー」
「もうっ。少しは休憩させてー」
「いいじゃん。それともあっち行く?」
 ジェットコースターを指す晴斗に呆れる女性陣。
「私、喉渇いたからー」
 ひとりが言ったことで、時間を見た。
「もう昼じゃん」
「え、マジ?」
「メシ食おうか」
「売店あっちだったよー」
 ゾロゾロと遊園地を歩く集団は、回りから見たらどんなメンバーに見えるのだろう。その中に菜々美がいることが不思議だった。



     ◇◇◇◇◇



「楽しかったー!」
 夕方まで遊んで地元に戻ってきた。これから呑みに行こうとなって、居酒屋へ。
 高校のメンバーとこうして遊んだりするのも悪くないと感じていた。
「気分転換になった?」
 隣に座る翔は菜々美に言った。
「まぁ……ね」
「良かった。根詰めてると書けなくなるだろ」
(あ……。もしかして、私の為?)
 翔を見た菜々美は、今回のこれは菜々美の為にみんなに声をかけたのだと気付いた。

「ありがとう」
 そう言うと「ん?」と惚けた感じで返ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

溺愛婚〜スパダリな彼との甘い夫婦生活〜

鳴宮鶉子
恋愛
頭脳明晰で才徳兼備な眉目秀麗な彼から告白されスピード結婚します。彼を狙ってた子達から嫌がらせされても助けてくれる彼が好き

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...