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第3章

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 輝に言われた通りに、崇弘のマンションまでやってきた沙樹。高級マンションが建ち並ぶこの街は、何度か来てはいるがドキドキしてしまう。輝のマンションを通りすぎ、更に先の角を曲がると崇弘の住むマンションが見える。
 何度か訪れたことのある崇弘のマンション。輝は、沙樹がここに何度も来ているとは想像もしていない。

「本当に気付いてないのかな」
 崇弘のマンションを見上げて呟く。輝のマンションも凄いが、崇弘のマンションも凄い。
 沙樹はマンションのエントランスに入り、輝から崇弘のマンションのロックナンバーが送られてきていた。
 そのメッセージを見ながら心の中で知ってるよと呟く。

 エレベーターに乗り、崇弘の部屋まで行く。今日はファンがいないのか、マンションの周りにも姿が見えなかった。
 インターホンを鳴らすと、崇弘が顔を出した。
「いらっしゃい」
 微かに笑う崇弘は、目配せをする。
(初めて来たようにしてって言ってるのかな)
 輝にバレたら大変だからという顔をしていた。


「おっ。沙樹」
 リビングからは真司が顔を出す。
「やっと来たか」
 輝もそう言って沙樹を手招きする。輝が座るソファーまで行くと、隣に座るように促された。
 言われるがままに隣に座った沙樹は、部屋の様子を見てびっくりしていた。
 テーブルの上にいろんな料理が並び、ケーキも置いてあった。
「え?なに?」
「ここ最近はちゃんとやってやれなかったしな」
 輝はそう言うと、沙樹の頭を撫でる。
 テーブルの上にあるケーキには、【HAPPY BIRTHDAY】と書かれていた。
「え?え?え?」
「誕生日だろ」
 自分の誕生日をすっかり忘れていた。沙樹は春休み中に誕生日が来る。いつもBRのメンバーたちにはこうしてお祝いしてくれる。
「沙樹ちゃん」
 遅れてやって来た零士が抱えてる大きな袋。それを沙樹に渡す。
「れいちゃん」
 袋を受け取り、満面の笑みを返す。
「みんなありがとう」
 メンバーにとって、沙樹は大切ななのだ。



     ◇◇◇◇◇



「いつまでも子供扱いだな……」
 輝の車に乗り自宅へと戻る沙樹は、ポツリと呟く。
「みんなお前がランドセル背負ってるの、知ってるからな」
 小学校の時の沙樹を知ってるメンバーからすれば、いつまでも子供扱いしてしまうのは仕方ないのかもしれない。
(タカちゃんも今日は子供扱いしてたし……)
 それでもみんなにお祝いしてもらえることは嬉しかったのだ。

「お兄」
 運転してる輝に向かって話しかける。
「ありがと…ね」
 照れたように言う沙樹に、輝は「ん」と頷いた。
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