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第2章
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箸を置いた輝は父親を見る。
「もうすぐライブだからあまり帰ってこれないんだよ。ミュージックビデオはその為の新曲のだから」
「そうか」
「今回のは誰が作ったの?」
横から沙樹が言う。沙樹の方を向いて輝は笑う。
「崇弘だよ、珍しいだろ?」
崇弘は滅多に曲を作らない。ギターを弾いていればいいって感じで、メンバーが作った曲を黙々と弾いている。
「これがまたアイツに似合わないキレイな曲なんだよ」
くくくっと可笑しそうに笑う。
「女でも出来たかな」
その言葉にドクン……っと、心臓が跳ねた。
(お兄ちゃん、まさか知って……?)
顔色を伺うが、読み取れない。でも可笑しく笑っているということは、その相手が沙樹だとは気付いてないらしい。この家の住人は、BRのメンバーを知ってる。それもその筈だ。よくこの家に来ていた。ここか、湊の家に集まることが多かった。理由は簡単だ。高校から近いからだった。特に高幡家は、広いから集まる機会が増える。だからこそ、メンバーもこの家の住人をよく知っている。
「崇弘くんが曲作ったの?」
由紀子も驚いていた。そのくらい、崇弘が作曲すると驚くことなのだ。
「本当は才能あんだよ、アイツ」
食事を終えた輝は、食器をキッチンへと持って行く。この家の人は、自分で使った食器は自分でキッチンへと持って行くことが習慣づいている。それは忙しい母の為に、自然と習慣づいたことだった。
「父さん」
既に食べ終わっていた父親に振り向くと、「自分の食器くらい片付けろよな」と告げた。そしてそのまま玄関に向かう。
沙樹はそんな輝にくっ付いて玄関に行くと、輝が笑って立っていた。
ポンと、頭に手を置くと何も言わずに玄関のドアを開けた。そのまま玄関前に停めてある車に乗り込むとゆっくりと走り去っていった。
◇◇◇◇◇
「ほんとに来れるなんて……っ」
ライブ当日。隣にいる凪が泣いて喜んでいる。座席はアリーナの前方。しかもど真ん中。
「しかしよくこんな場所取れたなぁ」
ポツリと沙樹は呟く。
「ほんとだよ」
凪は沙樹の手を取り「ありがとう」と何度も言った。そのくらい、BRが好きなのだ。
会場が暗くなり、爆音が鳴り響く。それと同時に会場に歓声が上がる。
沙樹はこの感覚に鳥肌が立っていた。
(ライブには何回か来たけど、やっぱり凄い)
目の前に広がる世界が、体感する世界が、現実とは思えなかったのだ。
隣にいる凪と結子の歓声が凄い。特に凪はファンだから、それは本当に凄かった。知り合いがここまで熱狂する姿を初めて見たからか、やっぱり兄たちは凄いんだと実感した。
「AKIRA~!」
叫ぶ凪が、いつも見ていた凪とは違って見えた。
(あ……っ)
ステージに立つ、崇弘と目が合った気がした。崇弘は沙樹に気付いていたのか、笑ってウィンクした。ウィンクしたTAKAを見たファンたちは、初めて見るその行動に自分に向けられたと誰もが思って騒いだ。
「TAKA~‼」
あちこちから崇弘を呼ぶ声が響く。その声に仕方ないと分かっていても面白くない沙樹は、ステージ上の崇弘を睨んでしまう。崇弘はそれに気付いてないのか、ギター鳴らしながらステージを走り回っていた。
「もうすぐライブだからあまり帰ってこれないんだよ。ミュージックビデオはその為の新曲のだから」
「そうか」
「今回のは誰が作ったの?」
横から沙樹が言う。沙樹の方を向いて輝は笑う。
「崇弘だよ、珍しいだろ?」
崇弘は滅多に曲を作らない。ギターを弾いていればいいって感じで、メンバーが作った曲を黙々と弾いている。
「これがまたアイツに似合わないキレイな曲なんだよ」
くくくっと可笑しそうに笑う。
「女でも出来たかな」
その言葉にドクン……っと、心臓が跳ねた。
(お兄ちゃん、まさか知って……?)
顔色を伺うが、読み取れない。でも可笑しく笑っているということは、その相手が沙樹だとは気付いてないらしい。この家の住人は、BRのメンバーを知ってる。それもその筈だ。よくこの家に来ていた。ここか、湊の家に集まることが多かった。理由は簡単だ。高校から近いからだった。特に高幡家は、広いから集まる機会が増える。だからこそ、メンバーもこの家の住人をよく知っている。
「崇弘くんが曲作ったの?」
由紀子も驚いていた。そのくらい、崇弘が作曲すると驚くことなのだ。
「本当は才能あんだよ、アイツ」
食事を終えた輝は、食器をキッチンへと持って行く。この家の人は、自分で使った食器は自分でキッチンへと持って行くことが習慣づいている。それは忙しい母の為に、自然と習慣づいたことだった。
「父さん」
既に食べ終わっていた父親に振り向くと、「自分の食器くらい片付けろよな」と告げた。そしてそのまま玄関に向かう。
沙樹はそんな輝にくっ付いて玄関に行くと、輝が笑って立っていた。
ポンと、頭に手を置くと何も言わずに玄関のドアを開けた。そのまま玄関前に停めてある車に乗り込むとゆっくりと走り去っていった。
◇◇◇◇◇
「ほんとに来れるなんて……っ」
ライブ当日。隣にいる凪が泣いて喜んでいる。座席はアリーナの前方。しかもど真ん中。
「しかしよくこんな場所取れたなぁ」
ポツリと沙樹は呟く。
「ほんとだよ」
凪は沙樹の手を取り「ありがとう」と何度も言った。そのくらい、BRが好きなのだ。
会場が暗くなり、爆音が鳴り響く。それと同時に会場に歓声が上がる。
沙樹はこの感覚に鳥肌が立っていた。
(ライブには何回か来たけど、やっぱり凄い)
目の前に広がる世界が、体感する世界が、現実とは思えなかったのだ。
隣にいる凪と結子の歓声が凄い。特に凪はファンだから、それは本当に凄かった。知り合いがここまで熱狂する姿を初めて見たからか、やっぱり兄たちは凄いんだと実感した。
「AKIRA~!」
叫ぶ凪が、いつも見ていた凪とは違って見えた。
(あ……っ)
ステージに立つ、崇弘と目が合った気がした。崇弘は沙樹に気付いていたのか、笑ってウィンクした。ウィンクしたTAKAを見たファンたちは、初めて見るその行動に自分に向けられたと誰もが思って騒いだ。
「TAKA~‼」
あちこちから崇弘を呼ぶ声が響く。その声に仕方ないと分かっていても面白くない沙樹は、ステージ上の崇弘を睨んでしまう。崇弘はそれに気付いてないのか、ギター鳴らしながらステージを走り回っていた。
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