16 / 71
第1章
13
しおりを挟む
「起きたか」
砂糖を5杯入れた珈琲を片手に、椅子に座りテレビのリモコンを持っていた崇弘は、ようやく起きた真司に言った。
「頭痛ぇ……」
「そりゃそうだろ。お前、俺には散々飲み過ぎるなって言うクセに」
いつもは真司と崇弘の立場は逆だ。
「珈琲飲むか?」
「お前の珈琲はいらん。なんであんなに酒飲むのに、そんなに甘い珈琲飲めるんだよ」
頭の痛みを抱えながらゆっくりと起き上がる真司にあははと笑う。
「なぁ」
ソファーに座った状態の真司は、崇弘を見た。
「お前さ、本当に沙樹のこと」
「分かってんだよ。輝の妹。10も年下。まだ未成年」
「だったら……」
「アイツのあの目から逃れられなくなってしまう。何度もあの目線に気付かないフリしてきた」
「だったら!今回も気付かないフリしろよ!傷付ける気かよ!気付かないフリしてた方が沙樹の為になる!」
叫ぶ度に頭がズキズキする真司は、なんとか止めようとしていた。
恋愛のことだったら百戦錬磨と異名か付くくらいの真司だ。それくらい、いろんな女と付き合って来た。だが、仲間の妹、年下、未成年。真司はその3つは避けていた。だからこそ、崇弘と沙樹の関係に嫌悪に近いものがあった。
「出会ったのはまだ小2だぞ!その時俺らは高校生だ!高校生が小学生に手を出すなんてあり得ないだろ!」
「真司。沙樹はもう15だ」
「まだ15だろうが!」
困った顔をした崇弘に真司はため息を吐く。
「犯罪だぞ、ほんとに……」
真司の言葉に何も言えない。分かっていてもそれはもう止められなかったのだ。
「輝になんて説明すんだよ……」
「言えねぇ」
「だろ?」
「だけどもう……」
「お前は本気なんだな」
「……ああ」
椅子に座ってる崇弘は、手を組みじっとどこかを見ていた。
「はぁ……」
真司はため息を吐いて崇弘に言う。
「傷付けんなよ。輝の一番大事な女の子だ」
「分かってる」
そんな話をしていること。誰も知らない。
輝には話せないふたりの話だった。
◇◇◇◇◇
崇弘と会ったその日。家に送られてる間の車中。沙樹は何も話せなかった。
崇弘のマンションでキスをされた。その意味が分からなくて頭が呆然としていた。
(負けた……って言った。それって……)
頭の中がグルグルしている。家に着いても何がなんだか理解出来ないくらいだった。
ただ、唇にははっきりと感触が残っている。
(あれは……夢じゃない……よね?)
思い出すと顔が熱くなる。ひとり部屋の中にいる沙樹の心の中は、大騒ぎしていた。
「沙樹ちゃん?」
沙樹の様子がおかしいと気付いた高幡の母親は、部屋にいる沙樹に声をかける。
「なにかあった?」
「なんでもないっ」
慌ててそう答える沙樹だが、母親には何かあったんだとバレバレだった。だけどその何かまでは分からないでいたが。
次の日。学校に向かう沙樹の足取りは軽かった。
何度考えてもあれは夢じゃないと思えた沙樹。いつも違う気分で登校することが出来たのだ。
「おはようっ」
結子に会うとそうニコニコと笑う。その笑顔は初めて見るもので、結子を始めとしたクラスメートたちが驚く。
「何かあった?」
結子は沙樹に近付きそう尋ねる。
「うふふ……。ちょっとね」
結子にそう答えた沙樹の笑顔は、本当に恋する乙女だった。
「教えなさいよー」
結子がそう言った時、チャイムが鳴り響き続きを聞くことが出来なかった。
席が前後なふたり。後ろから結子が小声で「あとで話聞くからね!」と言った。
◇◇◇◇◇
昼休み。中庭でふたりがお弁当を広げてる。
「で?」
お弁当のサンドイッチを頬張る結子は沙樹を見た。
「なにがあったの?」
「あ──……」
「秘密にするの?」
沙樹は結子を見て考える。結子のことは信用している。でも話してもいいのかと迷う。
輝は沙樹のことを隠している。なのに勝手に話していいものかと。
崇弘のことを話すと必然的に輝のこともバレてしまうだろう。
「私たち、親友でしょ」
ニコニコと笑う笑顔に、沙樹は持っていた箸を置いた。そして回りを見渡し誰もいないことを確認した。
「誰にも話してはいけないんだけど……」
「約束する。ふたりだけの内緒話ね」
結子はなぜか嬉しそうだった。
「本当に、内緒にしてよ?」
念を押す沙樹に真剣な顔を返して頷いた。
それを見た沙樹はポツリと話し始めた。
「私、好きな人がいるの」
と。
その好きな人は兄の仲間でBRのメンバー。その人にキスをされたこと。そして兄の名前も話した。
「──本当に?」
目を丸くした結子は驚いて、食べていたサンドイッチを落とすところだった。
砂糖を5杯入れた珈琲を片手に、椅子に座りテレビのリモコンを持っていた崇弘は、ようやく起きた真司に言った。
「頭痛ぇ……」
「そりゃそうだろ。お前、俺には散々飲み過ぎるなって言うクセに」
いつもは真司と崇弘の立場は逆だ。
「珈琲飲むか?」
「お前の珈琲はいらん。なんであんなに酒飲むのに、そんなに甘い珈琲飲めるんだよ」
頭の痛みを抱えながらゆっくりと起き上がる真司にあははと笑う。
「なぁ」
ソファーに座った状態の真司は、崇弘を見た。
「お前さ、本当に沙樹のこと」
「分かってんだよ。輝の妹。10も年下。まだ未成年」
「だったら……」
「アイツのあの目から逃れられなくなってしまう。何度もあの目線に気付かないフリしてきた」
「だったら!今回も気付かないフリしろよ!傷付ける気かよ!気付かないフリしてた方が沙樹の為になる!」
叫ぶ度に頭がズキズキする真司は、なんとか止めようとしていた。
恋愛のことだったら百戦錬磨と異名か付くくらいの真司だ。それくらい、いろんな女と付き合って来た。だが、仲間の妹、年下、未成年。真司はその3つは避けていた。だからこそ、崇弘と沙樹の関係に嫌悪に近いものがあった。
「出会ったのはまだ小2だぞ!その時俺らは高校生だ!高校生が小学生に手を出すなんてあり得ないだろ!」
「真司。沙樹はもう15だ」
「まだ15だろうが!」
困った顔をした崇弘に真司はため息を吐く。
「犯罪だぞ、ほんとに……」
真司の言葉に何も言えない。分かっていてもそれはもう止められなかったのだ。
「輝になんて説明すんだよ……」
「言えねぇ」
「だろ?」
「だけどもう……」
「お前は本気なんだな」
「……ああ」
椅子に座ってる崇弘は、手を組みじっとどこかを見ていた。
「はぁ……」
真司はため息を吐いて崇弘に言う。
「傷付けんなよ。輝の一番大事な女の子だ」
「分かってる」
そんな話をしていること。誰も知らない。
輝には話せないふたりの話だった。
◇◇◇◇◇
崇弘と会ったその日。家に送られてる間の車中。沙樹は何も話せなかった。
崇弘のマンションでキスをされた。その意味が分からなくて頭が呆然としていた。
(負けた……って言った。それって……)
頭の中がグルグルしている。家に着いても何がなんだか理解出来ないくらいだった。
ただ、唇にははっきりと感触が残っている。
(あれは……夢じゃない……よね?)
思い出すと顔が熱くなる。ひとり部屋の中にいる沙樹の心の中は、大騒ぎしていた。
「沙樹ちゃん?」
沙樹の様子がおかしいと気付いた高幡の母親は、部屋にいる沙樹に声をかける。
「なにかあった?」
「なんでもないっ」
慌ててそう答える沙樹だが、母親には何かあったんだとバレバレだった。だけどその何かまでは分からないでいたが。
次の日。学校に向かう沙樹の足取りは軽かった。
何度考えてもあれは夢じゃないと思えた沙樹。いつも違う気分で登校することが出来たのだ。
「おはようっ」
結子に会うとそうニコニコと笑う。その笑顔は初めて見るもので、結子を始めとしたクラスメートたちが驚く。
「何かあった?」
結子は沙樹に近付きそう尋ねる。
「うふふ……。ちょっとね」
結子にそう答えた沙樹の笑顔は、本当に恋する乙女だった。
「教えなさいよー」
結子がそう言った時、チャイムが鳴り響き続きを聞くことが出来なかった。
席が前後なふたり。後ろから結子が小声で「あとで話聞くからね!」と言った。
◇◇◇◇◇
昼休み。中庭でふたりがお弁当を広げてる。
「で?」
お弁当のサンドイッチを頬張る結子は沙樹を見た。
「なにがあったの?」
「あ──……」
「秘密にするの?」
沙樹は結子を見て考える。結子のことは信用している。でも話してもいいのかと迷う。
輝は沙樹のことを隠している。なのに勝手に話していいものかと。
崇弘のことを話すと必然的に輝のこともバレてしまうだろう。
「私たち、親友でしょ」
ニコニコと笑う笑顔に、沙樹は持っていた箸を置いた。そして回りを見渡し誰もいないことを確認した。
「誰にも話してはいけないんだけど……」
「約束する。ふたりだけの内緒話ね」
結子はなぜか嬉しそうだった。
「本当に、内緒にしてよ?」
念を押す沙樹に真剣な顔を返して頷いた。
それを見た沙樹はポツリと話し始めた。
「私、好きな人がいるの」
と。
その好きな人は兄の仲間でBRのメンバー。その人にキスをされたこと。そして兄の名前も話した。
「──本当に?」
目を丸くした結子は驚いて、食べていたサンドイッチを落とすところだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~
けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。
秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。
グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。
初恋こじらせオフィスラブ
私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる