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第5章
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その事件を知ったのは大学病院でだった──……。
「──……え?」
実習の為に来ていた大学病院。そのロビーに置いてある大きなテレビから流れてきたのは、BRのREIJIが刺されたというものだった。
「愛川くん!」
優奈がロビーにいる湊に気付き、走ってきた。
「先輩が呼んでる!」
と慌てる優奈にも分かってるらしい。
この大学病院には湊たちの大学を卒業した先輩がいる。その先輩が呼んでいるのだ。
優奈と一緒に救命救急に向かう。
そこには慌ただしい現場があった。
「先輩!」
先輩と呼ばれた男は湊を見る。
「愛川」
慌ただしい中、湊に近寄ると言った。
「REIJIってお前の友人だよな。BRのREIJIの……」
そこまで聞いて湊が目にした光景に驚いた。零士が血塗れで運ばれて処置中だったのだ。
「家族の連絡先、知ってるかと思って呼んだ」
「あ……あぁ……」
湊は震えていた。まさか、親友が運ばれてくるなんて……。
まだ学生の自分が救命に来ることなんてないのに、呼ばれて来てみれば親友が運び込まれている。
(一体、何が……)
茫然としている湊に先輩が叫ぶ。
「早く、連絡を……!」
はっとしてスマホから零士の兄の清士の番号を探す。零士のひとつ上の清士は同じ高校の卒業生。湊にとっては先輩なのだ。
その清士の番号をなかなか探し出せないでいた。
「落ち着いて」
救命救急のスタッフが湊に近付きそう言った。
大きく息を吸った湊は震える手でどうにか清士の名前を探し出して番号をスタッフに教えていた。
◇◇◇◇◇
事が起こったのは、病院に運び込まれる一時間前。
その日も酒を飲んで現場入りしていた零士に、優樹菜は呆れていた。
どうにもならないことも知ってる。
酒を飲まなきゃやってられない零士の心境を理解している。このままじゃダメなことも分かってる。どうにかしたいという思いは、空回りしていた。
「大槻くん!」
音楽番組のリハーサルが終わった頃、一度外に出てきた零士。
優樹菜の小言から逃げるようにテレビ局を出ていく零士を、優樹菜は追いかけていた。
他のメンバーも零士を追っていた。
「零士!」
「待てって!」
バタバタとテレビ局の外へと出るメンバーたちが、どうにか話をしようとして集まっていた。
テレビ局の回りにはたくさんのファンがいるのに、それすら見えてなかった。
端から見たら揉めているようにも見えるその光景に、ファンがザワザワとする。それでも零士はお構いなしで歩いて行こうとしていた。
「零士!」
輝が零士の肩をグイッと掴んだその時、一人の女性が走ってくるのを視界の端に捉えていた。それよりも零士とのことでいっぱいで、女性のことは気にも止めなかった。
零士が輝の方を振り返ったその時には、零士が崩れていくのをメンバーとその場にいたファンたちが目撃していた。
「れ……いじ?」
誰の声だか分からない声を上げた輝。他のメンバーも優樹菜も茫然としていた。
「キャー……っ!」
ファンの悲鳴でメンバーたちは、はっとした。
「零士!」
「大槻くん!」
「救急車!誰か!」
◇◇◇◇◇
零士はそのまま救急車に運ばれて湊がいる大学病院へとやってきたのだ。
「──……じ」
その声が自分のじゃない感じだった。立ち尽くす湊は邪魔だと言われ、優奈と一緒に外に出される。
中で何が起こってるのか、なぜこんなことになってしまったのか、分からずに不安になる。
「──……と、湊っ!」
後ろから声が聞こえ振り返る。
そこには真司たちが走ってくる。
「真司……輝……崇弘……」
仲間の名前を呼び、そして真司の肩を強く掴み「何があった!」と叫んだ。
揺さぶり、何があったのかを聞き出そうとする。
「落ち着け!」
崇弘が真司から湊を引き剥がす。本当は崇弘も動揺している筈なのに、湊を落ち着かせなければいけなかった。
「一体なにが……」
「ファンらしき女の子に刺されたんだ」
輝はゆっくりと話し出した。
いつも冷静な輝も、動揺している。それが分かる。
「優樹菜は……?」
「事務所に戻ってマスコミの対応」
優樹菜も動揺しているに違いない。優樹菜は産まれた時から零士と一緒だった幼馴染みだ。幼稚園も小学校も中学校も高校もずっと一緒だった。
子供の頃の習い事も一緒だったと聞いたことがあった。
優樹菜はこの中で一番、動揺しているに違いない。
「零士は……どうなる……?」
真司のその言葉に、震えが止まらなくなる。信じたくない文字が、頭に浮かぶ。
(あいつが……、零士が死ぬわけねー……)
医者になる筈の湊が、身体に震えが止まらなく位、その言葉は考えたくないことだった。
「──……え?」
実習の為に来ていた大学病院。そのロビーに置いてある大きなテレビから流れてきたのは、BRのREIJIが刺されたというものだった。
「愛川くん!」
優奈がロビーにいる湊に気付き、走ってきた。
「先輩が呼んでる!」
と慌てる優奈にも分かってるらしい。
この大学病院には湊たちの大学を卒業した先輩がいる。その先輩が呼んでいるのだ。
優奈と一緒に救命救急に向かう。
そこには慌ただしい現場があった。
「先輩!」
先輩と呼ばれた男は湊を見る。
「愛川」
慌ただしい中、湊に近寄ると言った。
「REIJIってお前の友人だよな。BRのREIJIの……」
そこまで聞いて湊が目にした光景に驚いた。零士が血塗れで運ばれて処置中だったのだ。
「家族の連絡先、知ってるかと思って呼んだ」
「あ……あぁ……」
湊は震えていた。まさか、親友が運ばれてくるなんて……。
まだ学生の自分が救命に来ることなんてないのに、呼ばれて来てみれば親友が運び込まれている。
(一体、何が……)
茫然としている湊に先輩が叫ぶ。
「早く、連絡を……!」
はっとしてスマホから零士の兄の清士の番号を探す。零士のひとつ上の清士は同じ高校の卒業生。湊にとっては先輩なのだ。
その清士の番号をなかなか探し出せないでいた。
「落ち着いて」
救命救急のスタッフが湊に近付きそう言った。
大きく息を吸った湊は震える手でどうにか清士の名前を探し出して番号をスタッフに教えていた。
◇◇◇◇◇
事が起こったのは、病院に運び込まれる一時間前。
その日も酒を飲んで現場入りしていた零士に、優樹菜は呆れていた。
どうにもならないことも知ってる。
酒を飲まなきゃやってられない零士の心境を理解している。このままじゃダメなことも分かってる。どうにかしたいという思いは、空回りしていた。
「大槻くん!」
音楽番組のリハーサルが終わった頃、一度外に出てきた零士。
優樹菜の小言から逃げるようにテレビ局を出ていく零士を、優樹菜は追いかけていた。
他のメンバーも零士を追っていた。
「零士!」
「待てって!」
バタバタとテレビ局の外へと出るメンバーたちが、どうにか話をしようとして集まっていた。
テレビ局の回りにはたくさんのファンがいるのに、それすら見えてなかった。
端から見たら揉めているようにも見えるその光景に、ファンがザワザワとする。それでも零士はお構いなしで歩いて行こうとしていた。
「零士!」
輝が零士の肩をグイッと掴んだその時、一人の女性が走ってくるのを視界の端に捉えていた。それよりも零士とのことでいっぱいで、女性のことは気にも止めなかった。
零士が輝の方を振り返ったその時には、零士が崩れていくのをメンバーとその場にいたファンたちが目撃していた。
「れ……いじ?」
誰の声だか分からない声を上げた輝。他のメンバーも優樹菜も茫然としていた。
「キャー……っ!」
ファンの悲鳴でメンバーたちは、はっとした。
「零士!」
「大槻くん!」
「救急車!誰か!」
◇◇◇◇◇
零士はそのまま救急車に運ばれて湊がいる大学病院へとやってきたのだ。
「──……じ」
その声が自分のじゃない感じだった。立ち尽くす湊は邪魔だと言われ、優奈と一緒に外に出される。
中で何が起こってるのか、なぜこんなことになってしまったのか、分からずに不安になる。
「──……と、湊っ!」
後ろから声が聞こえ振り返る。
そこには真司たちが走ってくる。
「真司……輝……崇弘……」
仲間の名前を呼び、そして真司の肩を強く掴み「何があった!」と叫んだ。
揺さぶり、何があったのかを聞き出そうとする。
「落ち着け!」
崇弘が真司から湊を引き剥がす。本当は崇弘も動揺している筈なのに、湊を落ち着かせなければいけなかった。
「一体なにが……」
「ファンらしき女の子に刺されたんだ」
輝はゆっくりと話し出した。
いつも冷静な輝も、動揺している。それが分かる。
「優樹菜は……?」
「事務所に戻ってマスコミの対応」
優樹菜も動揺しているに違いない。優樹菜は産まれた時から零士と一緒だった幼馴染みだ。幼稚園も小学校も中学校も高校もずっと一緒だった。
子供の頃の習い事も一緒だったと聞いたことがあった。
優樹菜はこの中で一番、動揺しているに違いない。
「零士は……どうなる……?」
真司のその言葉に、震えが止まらなくなる。信じたくない文字が、頭に浮かぶ。
(あいつが……、零士が死ぬわけねー……)
医者になる筈の湊が、身体に震えが止まらなく位、その言葉は考えたくないことだった。
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