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第5章
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柚子が暴行されたと聞いたのは、その日の夜だった。まだスタジオに籠っていた零士は、何が起こってるのか理解出来なかった。
だが、湊が冷静に怒りを鎮めてる声が聞こえてくると、ヤバい状況なのかと感じ取った。
柚子はあれから目を覚ましていて、身体の方も打撲だけで済んだ。
その話を聞いて零士は自分を責めた。
(俺と付き合ってるからだ)
だけど離れることなんか想像も出来ない。離れた方が柚子の為なんだろうが、それが出来そうもない。
そんな葛藤が生じる。
「零士」
崇弘がそんな零士に声をかける。
「覚悟……、するしかないんじゃない?」
「……別れろってことか」
「それだけが覚悟じゃねぇだろ」
崇弘は別れる以外の覚悟があると言った。その意味が零士には分かってはいたが、その覚悟が出来ない。
(柚子はまだ大学生だぞ。そんなこと……)
それでも一緒にいたい。離れられない。
それに今はプライベートなことを優先には出来ない。
「今は無理なこと、分かってるだろ」
零士の言葉に崇弘は「まぁな」と答えた。
◇◇◇◇◇
柚子と会えたのはそれから一週間経ってからだった。
本当はすぐにでも会いに行きたかった。だがなかなかそうはさせてくれなかった。
優樹菜も湊も「無理!」と言って会わせてはくれない。優樹菜なんか、ここぞとばかりに仕事を入れてくる。雑誌のインタビューだったり、CM撮影だったり。
急にそんな仕事入るのかと思うくらいだった。きわめつけは「今行ったら余計に柚子ちゃんが苦しい思いするよ!」とかなんとか言われてしまう始末。
「ちくしょー……」
散々、仕事を入れられて不機嫌な零士に、湊から連絡が入った。
『うちに来い』
その声に一安心した零士は、仕事を終わらせた後、車を走らせて行く。
夜の街は好きだと思う。だけど、こんな状態だとそんなことを思ってもいられない。湊のアパートまで急いで走らせる。
ピンポーン!ピンポーン!
少し乱暴にインターフォンを鳴らす零士。暫くして玄関のドアが開く。
「お前ぇ、もっと静かに鳴らせよ」
呆れた顔の湊がドアを開けて睨んで来る。
「柚子は!?」
湊の言葉に答えないで柚子のことを聞いてくる。もうずっと柚子のことが頭から離れなかった。心配で心配でならなかった。
「部屋にいる」
湊が言い終わらないうちにドカドカとアパートに上がり込み、乱暴に靴を脱ぎ捨てた。
柚子の部屋のドアを開けると、エアコンの冷気が廊下へ流れ込んでくる。
「柚子?」
声をかけて部屋に入ると柚子が振り向いた。
顔や身体のあちこちに包帯やガーゼなどが貼られていた。そんな痛々しい姿を見て、零士はまた自分を責める。
柚子に近寄り左手を取ると「すまない……」と泣く。
しゃがみ込んでしまった零士の髪の毛に、指を絡ませる。そしてそのまま抱きしめた。
「私は……、大丈夫だから」
ふたりは暫くそうやって抱きしめていた。
(この手を離したくない……)
強く強く願った。
顔を上げると柚子は柔らかい笑顔を零士に向けていた。不安げな表情の零士を包み込むように、柚子は零士にキスをする。軽く当たるくらいのキス。それでも柚子からは初めてのキスだった。
「柚子……」
目を見開き、柚子を見る。照れたように笑う柚子が堪らなく愛しい。
柚子もまた零士を愛しく感じていた。
だが、湊が冷静に怒りを鎮めてる声が聞こえてくると、ヤバい状況なのかと感じ取った。
柚子はあれから目を覚ましていて、身体の方も打撲だけで済んだ。
その話を聞いて零士は自分を責めた。
(俺と付き合ってるからだ)
だけど離れることなんか想像も出来ない。離れた方が柚子の為なんだろうが、それが出来そうもない。
そんな葛藤が生じる。
「零士」
崇弘がそんな零士に声をかける。
「覚悟……、するしかないんじゃない?」
「……別れろってことか」
「それだけが覚悟じゃねぇだろ」
崇弘は別れる以外の覚悟があると言った。その意味が零士には分かってはいたが、その覚悟が出来ない。
(柚子はまだ大学生だぞ。そんなこと……)
それでも一緒にいたい。離れられない。
それに今はプライベートなことを優先には出来ない。
「今は無理なこと、分かってるだろ」
零士の言葉に崇弘は「まぁな」と答えた。
◇◇◇◇◇
柚子と会えたのはそれから一週間経ってからだった。
本当はすぐにでも会いに行きたかった。だがなかなかそうはさせてくれなかった。
優樹菜も湊も「無理!」と言って会わせてはくれない。優樹菜なんか、ここぞとばかりに仕事を入れてくる。雑誌のインタビューだったり、CM撮影だったり。
急にそんな仕事入るのかと思うくらいだった。きわめつけは「今行ったら余計に柚子ちゃんが苦しい思いするよ!」とかなんとか言われてしまう始末。
「ちくしょー……」
散々、仕事を入れられて不機嫌な零士に、湊から連絡が入った。
『うちに来い』
その声に一安心した零士は、仕事を終わらせた後、車を走らせて行く。
夜の街は好きだと思う。だけど、こんな状態だとそんなことを思ってもいられない。湊のアパートまで急いで走らせる。
ピンポーン!ピンポーン!
少し乱暴にインターフォンを鳴らす零士。暫くして玄関のドアが開く。
「お前ぇ、もっと静かに鳴らせよ」
呆れた顔の湊がドアを開けて睨んで来る。
「柚子は!?」
湊の言葉に答えないで柚子のことを聞いてくる。もうずっと柚子のことが頭から離れなかった。心配で心配でならなかった。
「部屋にいる」
湊が言い終わらないうちにドカドカとアパートに上がり込み、乱暴に靴を脱ぎ捨てた。
柚子の部屋のドアを開けると、エアコンの冷気が廊下へ流れ込んでくる。
「柚子?」
声をかけて部屋に入ると柚子が振り向いた。
顔や身体のあちこちに包帯やガーゼなどが貼られていた。そんな痛々しい姿を見て、零士はまた自分を責める。
柚子に近寄り左手を取ると「すまない……」と泣く。
しゃがみ込んでしまった零士の髪の毛に、指を絡ませる。そしてそのまま抱きしめた。
「私は……、大丈夫だから」
ふたりは暫くそうやって抱きしめていた。
(この手を離したくない……)
強く強く願った。
顔を上げると柚子は柔らかい笑顔を零士に向けていた。不安げな表情の零士を包み込むように、柚子は零士にキスをする。軽く当たるくらいのキス。それでも柚子からは初めてのキスだった。
「柚子……」
目を見開き、柚子を見る。照れたように笑う柚子が堪らなく愛しい。
柚子もまた零士を愛しく感じていた。
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