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第3章
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芽依が勇一に言ったことが原因なのか分からないが、今のところ何も言ってこない。それが不気味で仕方なかった。それでも何も言われないのがこんなにも快適なのかと柚子は思う。
期末試験が終わり、夏休みの話題で持ちきりだった学校。その中でもBRのライブ行ける人と行けない人の差が酷かった。柚子たちはチケット取れたが、クラスの大半は取れなかったと嘆く。他のクラスも同様にそうだ。そのくらいの倍率でのチケット争奪戦なのだ。だからこそ、零士は柚子にチケットを用意しておこうかと言ったのだった。
(例え用意してくれてたとしても申し訳ない感じがあってきっと楽しめないよなぁ)
クラスの子たちを見てるとそう思わずにいられなかった。
◇◇◇◇◇
『最終日は幼馴染みと来るのか』
スマホ越しの声に頷く柚子。
『じゃあ、会うの無理かな』
「私は……、会いたい」
『でも友達いるんだろ?』
「……ん」
『柚子。友達とちゃんと帰った方がいいよ』
「零士さん……」
最終日に会うという約束がなしになってしまったことがショックでならない。それでなくてもなかなか会えないのに、会えるかもという時に会えなくなるのがとても辛かった。
「ごめんなさい……」
思わず口をついて出た言葉に優しい声が降りてくる。
『また調整しよう』
「うん……」
電話を切った後、零士に会いたくて会いたくて胸が苦しくなった。だけど、どうしようもない。
(会いたい……)
会いたい気持ちが涙となる。頬に流れる涙が余計に苦しめる。
分かってる。
なかなか会えないのは。
そういう人と付き合ってるのだから。
分かってるけど、もどかしさが柚子の中に充満するようだった。
◇◇◇◇◇
《駅まで出てきて》
そうメッセージが入ったのは電話ををした日から一週間経った頃だった。
学校帰りだった柚子は芽依と別れて駅へと向かう。制服姿のまま零士に会うのは初めてでドキドキしていた。
バスを降りるといつもの白い車が停まっているのが見えた。窓から中を覗くとキャップを被ってメガネ姿の零士が乗っていた。
零士は中からドアを開けると柚子に乗るように促す。
「どうしたの、急に」
「ちょっと、渡したいものがあってね」
と、ポケットから何かを取り出す。
柚子の手を掴み掌を開いてその上にポトンと何かを置いた。
それを見ると鍵だった。
「マンションの鍵」
「え」
「いつでもうちに来ていいから。いない時が多いけどね」
「零士さん……」
マンションの鍵を握りしめ、胸の奥が暑くなる。
「懐かしいな、その制服」
制服姿の柚子を見て笑う零士は優しい目をしている。零士はどんな高校生活を過ごしていたのか、と柚子は気になる。
彼女はいたのかとか、モテたんだろうなぁとか。
考えてるととても切なくなる。
「柚子」
柚子の頬に触れる。
「キスしていい?」
顔を近付けると軽いキスをした。
「制服姿だから、いけないことしてるみたいだ」
唇を離した零士は少し照れていた。
「零士さん……。ここ、駅……」
見られてると言おうとした柚子のおでこに零士は自分のおでこをつける。
「周りなんか気にするな」
「もう……っ!」
車の中は冷房が効いてるのに熱いのは、ふたりの思いが熱いからだろう。
「柚子。ごめん、時間ないから送っていけない」
申し訳なさそうにする零士に対して首を振る。
「少しでも会えたから。大丈夫」
「俺もまた頑張れる」
もう一度キスをした零士は名残惜しそうにする。それでも時間がない零士は柚子に「悪いな」と言う。
「じゃ、またね」
柚子が車を降りると零士はエンジンをかけて走らせる。それをじっと見ている柚子は貰った鍵を握りしめてバス停に向かった。
期末試験が終わり、夏休みの話題で持ちきりだった学校。その中でもBRのライブ行ける人と行けない人の差が酷かった。柚子たちはチケット取れたが、クラスの大半は取れなかったと嘆く。他のクラスも同様にそうだ。そのくらいの倍率でのチケット争奪戦なのだ。だからこそ、零士は柚子にチケットを用意しておこうかと言ったのだった。
(例え用意してくれてたとしても申し訳ない感じがあってきっと楽しめないよなぁ)
クラスの子たちを見てるとそう思わずにいられなかった。
◇◇◇◇◇
『最終日は幼馴染みと来るのか』
スマホ越しの声に頷く柚子。
『じゃあ、会うの無理かな』
「私は……、会いたい」
『でも友達いるんだろ?』
「……ん」
『柚子。友達とちゃんと帰った方がいいよ』
「零士さん……」
最終日に会うという約束がなしになってしまったことがショックでならない。それでなくてもなかなか会えないのに、会えるかもという時に会えなくなるのがとても辛かった。
「ごめんなさい……」
思わず口をついて出た言葉に優しい声が降りてくる。
『また調整しよう』
「うん……」
電話を切った後、零士に会いたくて会いたくて胸が苦しくなった。だけど、どうしようもない。
(会いたい……)
会いたい気持ちが涙となる。頬に流れる涙が余計に苦しめる。
分かってる。
なかなか会えないのは。
そういう人と付き合ってるのだから。
分かってるけど、もどかしさが柚子の中に充満するようだった。
◇◇◇◇◇
《駅まで出てきて》
そうメッセージが入ったのは電話ををした日から一週間経った頃だった。
学校帰りだった柚子は芽依と別れて駅へと向かう。制服姿のまま零士に会うのは初めてでドキドキしていた。
バスを降りるといつもの白い車が停まっているのが見えた。窓から中を覗くとキャップを被ってメガネ姿の零士が乗っていた。
零士は中からドアを開けると柚子に乗るように促す。
「どうしたの、急に」
「ちょっと、渡したいものがあってね」
と、ポケットから何かを取り出す。
柚子の手を掴み掌を開いてその上にポトンと何かを置いた。
それを見ると鍵だった。
「マンションの鍵」
「え」
「いつでもうちに来ていいから。いない時が多いけどね」
「零士さん……」
マンションの鍵を握りしめ、胸の奥が暑くなる。
「懐かしいな、その制服」
制服姿の柚子を見て笑う零士は優しい目をしている。零士はどんな高校生活を過ごしていたのか、と柚子は気になる。
彼女はいたのかとか、モテたんだろうなぁとか。
考えてるととても切なくなる。
「柚子」
柚子の頬に触れる。
「キスしていい?」
顔を近付けると軽いキスをした。
「制服姿だから、いけないことしてるみたいだ」
唇を離した零士は少し照れていた。
「零士さん……。ここ、駅……」
見られてると言おうとした柚子のおでこに零士は自分のおでこをつける。
「周りなんか気にするな」
「もう……っ!」
車の中は冷房が効いてるのに熱いのは、ふたりの思いが熱いからだろう。
「柚子。ごめん、時間ないから送っていけない」
申し訳なさそうにする零士に対して首を振る。
「少しでも会えたから。大丈夫」
「俺もまた頑張れる」
もう一度キスをした零士は名残惜しそうにする。それでも時間がない零士は柚子に「悪いな」と言う。
「じゃ、またね」
柚子が車を降りると零士はエンジンをかけて走らせる。それをじっと見ている柚子は貰った鍵を握りしめてバス停に向かった。
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