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第2章
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「零士っ!起きろっ!」
その声にうっすらと目を開ける。
「……んだよぉ」
顔を上げた零士はお怒りモードの湊がいることに気付く。
「朝からなんだよ……」
寝起きの悪い零士は渋々起き上がる。そして隣に柚子がいることに少し嬉しい気持ちになった。
「なんでこの部屋にいる。なんで柚子と同じベッドにいる」
静かに言った湊は相当怒ってるのが分かる。
「あぁ……。お前ベッドに放り込んだ後に戻ったらソファーで寝てたからベッドに連れてきて、面倒くさいから俺もここにいた」
そう説明するとますます怒る湊。
「他の部屋行けよ!」
「面倒……」
頭をかきながらベッドから這い上がる。
「お前、柚子になんかしてねぇだろうな」
「寝てたやつになんかするか」
「本当だろうな」
「しつこい」
このやり取りに柚子が起きないわけがない。ただ起きるタイミングが掴めない。
(どうしよう……)
止めなきゃいけないよねと思いつつ、動けない。
湊があんな風に大声を出して怒鳴るなんてことは滅多にない。いや、柚子の前では見せたことはないだけかもしれない。
「はぁ……」
ため息が聞こえる。湊のため息。
「とにかく、柚子を傷付けるなよ」
今度は情けない声を出して部屋を出ていく。
湊が部屋を出ていったことを確認すると布団を被ってる柚子の方へときて、髪を撫でる。
「起きてるだろ」
ゆっくりと顔を上げて零士を見る。
「おはよう」
「……おはよう……ございます」
不安そうな顔をした柚子にふっと笑うと優しい声で言った。
「お前の兄ちゃん、過保護かよ」
「そう……かも」
湊の心配性はずっと続いていたので、それが当たり前だと思ってる柚子は、過保護とは思ってなかった。でも零士が言う通りなのかもと思っていた。
◇◇◇◇◇
リビングに降りていくと、湊が不機嫌そうな顔でキッチンにいた。
(もう……、仕方ないなぁ)
柚子は呆れながらも湊の隣へ行き夕べの片付けを手伝うことにした。
「いいから座ってろ」
「いいの」
ただ湊の隣にいるだけで機嫌がよくなる。兄というより父親のような思いを持っているのではないかと零士は思う。
「おい。零士」
庭の方から零士を呼んだ真司は零士に庭の方を手伝えと言って連れて行ってしまった。
庭では真司と輝と妹の沙樹が遊びながら片付けをしていたのだ。
「いつもこんなことしてたの?」
「高校ん時からだな。バカばっかりだろ」
庭でふざけ合ってるみんなを見ながら湊は少し寂しそうな顔をしていた。
本当はずっとバンドをやっていたかったのかもしれない。それを聞いても話してはくれないだろうけど、柚子はそう思わずにはいられなかった。
(なぜ、やめたんだろう……)
聞けない理由。でもその理由はきっと話したくないことなのかもしれない。
「よし。ここは片付いたな」
キッチンの方の片付けを終わらせた湊と柚子は庭へと出ていく。こっちも終わるところだった。
「崇弘は?」
「まだ部屋。寝てるよ」
「ありゃ……。相変わらずだな」
どうやら崇弘は飲み過ぎてまだ寝てるらしい。
「メシ、どうすんだよアイツは」
呆れた輝は2階へと上がる。途中振り返って「沙樹はここにいな」と沙樹に告げる。
ここの兄妹も湊と柚子並みに兄は妹に甘々だ。
沙樹は輝に言われた通りにリビングで大人しく待っていた。
「あそこの家はちょっと複雑でな……」
隣に座る零士はポツリと呟いた。
沙樹はソファーに座って本を読んでいた。
ドカドカと上から降りてくる輝は諦めた顔をしていた。
「ありゃ、無理だわ。起きねぇ」
「いつものことじゃんか」
真司も呆れてる。
「あんなに飲んだらなぁ」
昨夜、最後までその酒に付き合ったのは湊。湊も相当飲んではいるが、実は崇弘より酒が強い。どんなに飲んでも次の日にはこうしてケロッとしている。
「お前も相当飲んだだろ」
「付き合わされたんだよ、崇弘に」
「で、ケロッとしてんだもんよー」
輝には理解出来ない。輝は酒は飲まない。最初の一杯だけ飲むが、ほぼ飲まない。
「零士。心配だから帰りはお前運転してやれよ」
「了解」
「平気だっての」
「ダメだ」
輝の少し強い言葉に諦めて「分かったよ」と告げた。
崇弘が起きて来ないから軽く食事を取って帰ろうかという話をしていた時、階段を転げ落ちるように崇弘が降りてきた。
ドカドカドカーン……と、本当に階段から落ちたのだった。
「……痛ぇ」
「お前、バカ?」
輝は崇弘を見下ろして言った。本気でバカかと言っている。
「……うるせぇよ」
メンバーたちはそういう崇弘を見慣れているからなのか、大丈夫かとは聞かない。
「メシ、どうすんだ?食えるのか?」
輝は崇弘に聞いていた。ひっくり返ったままの崇弘は輝を見上げながら「食えねぇ」と答える。
「全く……」
呆れながらこっちを振り返り「コイツ放ってどっか行くか」
「ひでぇなぁ……」
「お前の都合で動けない。沙樹と柚子ちゃんは明日学校だからな」
「……あ」
思い出したかのように立ち上がる。
「シャワー浴びてくる」
ふらふらとした足取りで2階へ上がって行く。
柚子は兄たちのこんな場面を見たのは初めてで、どうしたらいいのか分からずにただ見ていた。
「いつものことだから気にすんな」
隣に座ってる零士は柚子の頭を撫でていた。
その声にうっすらと目を開ける。
「……んだよぉ」
顔を上げた零士はお怒りモードの湊がいることに気付く。
「朝からなんだよ……」
寝起きの悪い零士は渋々起き上がる。そして隣に柚子がいることに少し嬉しい気持ちになった。
「なんでこの部屋にいる。なんで柚子と同じベッドにいる」
静かに言った湊は相当怒ってるのが分かる。
「あぁ……。お前ベッドに放り込んだ後に戻ったらソファーで寝てたからベッドに連れてきて、面倒くさいから俺もここにいた」
そう説明するとますます怒る湊。
「他の部屋行けよ!」
「面倒……」
頭をかきながらベッドから這い上がる。
「お前、柚子になんかしてねぇだろうな」
「寝てたやつになんかするか」
「本当だろうな」
「しつこい」
このやり取りに柚子が起きないわけがない。ただ起きるタイミングが掴めない。
(どうしよう……)
止めなきゃいけないよねと思いつつ、動けない。
湊があんな風に大声を出して怒鳴るなんてことは滅多にない。いや、柚子の前では見せたことはないだけかもしれない。
「はぁ……」
ため息が聞こえる。湊のため息。
「とにかく、柚子を傷付けるなよ」
今度は情けない声を出して部屋を出ていく。
湊が部屋を出ていったことを確認すると布団を被ってる柚子の方へときて、髪を撫でる。
「起きてるだろ」
ゆっくりと顔を上げて零士を見る。
「おはよう」
「……おはよう……ございます」
不安そうな顔をした柚子にふっと笑うと優しい声で言った。
「お前の兄ちゃん、過保護かよ」
「そう……かも」
湊の心配性はずっと続いていたので、それが当たり前だと思ってる柚子は、過保護とは思ってなかった。でも零士が言う通りなのかもと思っていた。
◇◇◇◇◇
リビングに降りていくと、湊が不機嫌そうな顔でキッチンにいた。
(もう……、仕方ないなぁ)
柚子は呆れながらも湊の隣へ行き夕べの片付けを手伝うことにした。
「いいから座ってろ」
「いいの」
ただ湊の隣にいるだけで機嫌がよくなる。兄というより父親のような思いを持っているのではないかと零士は思う。
「おい。零士」
庭の方から零士を呼んだ真司は零士に庭の方を手伝えと言って連れて行ってしまった。
庭では真司と輝と妹の沙樹が遊びながら片付けをしていたのだ。
「いつもこんなことしてたの?」
「高校ん時からだな。バカばっかりだろ」
庭でふざけ合ってるみんなを見ながら湊は少し寂しそうな顔をしていた。
本当はずっとバンドをやっていたかったのかもしれない。それを聞いても話してはくれないだろうけど、柚子はそう思わずにはいられなかった。
(なぜ、やめたんだろう……)
聞けない理由。でもその理由はきっと話したくないことなのかもしれない。
「よし。ここは片付いたな」
キッチンの方の片付けを終わらせた湊と柚子は庭へと出ていく。こっちも終わるところだった。
「崇弘は?」
「まだ部屋。寝てるよ」
「ありゃ……。相変わらずだな」
どうやら崇弘は飲み過ぎてまだ寝てるらしい。
「メシ、どうすんだよアイツは」
呆れた輝は2階へと上がる。途中振り返って「沙樹はここにいな」と沙樹に告げる。
ここの兄妹も湊と柚子並みに兄は妹に甘々だ。
沙樹は輝に言われた通りにリビングで大人しく待っていた。
「あそこの家はちょっと複雑でな……」
隣に座る零士はポツリと呟いた。
沙樹はソファーに座って本を読んでいた。
ドカドカと上から降りてくる輝は諦めた顔をしていた。
「ありゃ、無理だわ。起きねぇ」
「いつものことじゃんか」
真司も呆れてる。
「あんなに飲んだらなぁ」
昨夜、最後までその酒に付き合ったのは湊。湊も相当飲んではいるが、実は崇弘より酒が強い。どんなに飲んでも次の日にはこうしてケロッとしている。
「お前も相当飲んだだろ」
「付き合わされたんだよ、崇弘に」
「で、ケロッとしてんだもんよー」
輝には理解出来ない。輝は酒は飲まない。最初の一杯だけ飲むが、ほぼ飲まない。
「零士。心配だから帰りはお前運転してやれよ」
「了解」
「平気だっての」
「ダメだ」
輝の少し強い言葉に諦めて「分かったよ」と告げた。
崇弘が起きて来ないから軽く食事を取って帰ろうかという話をしていた時、階段を転げ落ちるように崇弘が降りてきた。
ドカドカドカーン……と、本当に階段から落ちたのだった。
「……痛ぇ」
「お前、バカ?」
輝は崇弘を見下ろして言った。本気でバカかと言っている。
「……うるせぇよ」
メンバーたちはそういう崇弘を見慣れているからなのか、大丈夫かとは聞かない。
「メシ、どうすんだ?食えるのか?」
輝は崇弘に聞いていた。ひっくり返ったままの崇弘は輝を見上げながら「食えねぇ」と答える。
「全く……」
呆れながらこっちを振り返り「コイツ放ってどっか行くか」
「ひでぇなぁ……」
「お前の都合で動けない。沙樹と柚子ちゃんは明日学校だからな」
「……あ」
思い出したかのように立ち上がる。
「シャワー浴びてくる」
ふらふらとした足取りで2階へ上がって行く。
柚子は兄たちのこんな場面を見たのは初めてで、どうしたらいいのか分からずにただ見ていた。
「いつものことだから気にすんな」
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