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第1章
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トゥルルル……トゥルルル……。
呼び出し音が煩いくらいに響いてる。心臓の音もドクンドクンと煩く響いてる。
スマホを持つ手が震えてるのが分かるくらいだった。
『……はい』
何度目かの呼び出し音で出たその声は眠そうで疲れている声をしていた。
「あ……、柚子です」
『柚子ちゃん……?どうした。電話かけてくるなんて』
「あの……」
緊張で苦しい。言葉が上手く出てこない。
スマホを持つ手に力が入る。
柚子はひとつ深呼吸をすると、思いきって零士に言った。
「会いたいです……」
そう言うのが精一杯だった。
暫く沈黙が続いた後、零士の声が聞こえた。
『一時間後、そっちに行く。出てこれる?』
「……ん」
『じゃまた電話する』
電話を切った後、鏡を見ると酷い顔をしていた。泣いたせいで顔が腫れぼったい。こんな顔では会えないと慌てる。
顔を洗ってみるけど、腫れぼったくなった瞼は落ち着くわけもなく。仕方なく濡れタオルで瞼を抑えた。
服を着替え髪を整えメイクを少しだけした。
そんなことを慌ててしてるうちにもう一時間経っていた。
◇◇◇◇◇
緩やかな音楽が流れる。柚子のスマホだ。柚子の着信音は緩やかな曲に設定されている。
『この前別れた場所に着いたよ』
その声に飛び出すように家を出る。そのまま零士が送ってくれたあの場所まで走り出した。
煌太の家と芽依の家を過ぎてその5軒先の家を曲がった所。その場所に零士の車が停まっていた。
零士は車から出ることなく柚子が来るのを待っていた。
息を切らした柚子に気付くと運転席から助手席のドアを開けた。
パタン……。
車のドアを閉めると車はゆっくりと走り出した。
勢いで「会いたい」と言ってしまった柚子だけど、どう何を言ったらいいのか分からなくて。それでもまた零士に会えたことが嬉しくて涙が出る。
「なんで泣く?」
運転しながらも柚子の様子がおかしいのを感じていて涙が出てしまった柚子に声をかける。
「ごめんなさい……」
「謝って欲しいんじゃないんだよ」
車が停車した時、零士は柚子の頭を撫でた。
その手が温かくてまた涙が出てくる。
「柚子ちゃんは泣き虫なのかな」
「そんなんじゃ……」
ふっと笑うと零士はまた車を走らせた。
「会いたいってことはちゃんと考えてくれたってことかな」
運転する零士の姿を横目でちらちらと見る柚子はこくんと頷いた。
「私……っ」
「でも待って。ちょっと場所を変えたいから」
零士はそのまま黙ってしまった。零士が黙ってしまったせいで、車内は静かだ。この前は音楽をかけていた車内は今日は何もかけてない。微かに聞こえる零士と自分の呼吸する音や動く音が響いてる気がした。
車は一時間は走ったと思う。高層ビルやマンションが建ち並ぶ街へと景色は変わっていた。そのひとつのビルの地下駐車に滑り込んで行く。
「降りて」
無口な零士に促されて車を降りる。地下駐車場は高級な車が並んでいた。
「こっち」
柚子は零士の後を追って行った。地下駐車場からエレベーターに乗ると10階のボタンを押すと静かにエレベーターが動く。
エレベーターに乗ってる間も零士は何も話さなくて柚子は居心地悪くなっていく。
ガタン。
エレベーターが止まり零士は柚子の手を握り歩いて行く。ひとつの扉の前に来ると鍵を開けて中に入る。
「どうぞ」
中へ入ると広い玄関スペースになっていた。
「ここ……」
「俺のマンション」
「え……」
零士は柚子の手を離し、奥の部屋へと入っていく。その後ろ姿を追って柚子も入る。
リビングも広かった。
中央に置かれたテーブルやソファーは本当に高そうな物だった。
「いきなり部屋に連れてきてごめん。ただ、他の場所が思い付かない。こんな話、誰かに聞かれたくないし」
振り返った零士の顔が不安そうにしていた。
「零士さん……」
どう反応したらいいのか戸惑っていると「ほんとごめん!」と頭を下げる。
「部屋に連れてくるなんて、そんなの嫌だろうし、普通はしないだろうし、怖いだろうし……っ!」
テンパった零士は本当に申し訳ないともう一度頭を下げる。
その姿を見てこの人は何かしようとここに連れてきた訳じゃないと思った。
「零士さん」
「ほんと、ごめん……。ただ自分の情けない姿とかを他人に見られたくなくて、それで……」
「情けない姿?」
「あぁ。フラれる覚悟は出来てるから」
ギュッと目を閉じた零士に思わず笑い出す。笑い出した柚子に不思議そうな目を向ける零士の顔を見て思いきって言った。
「私、零士さんが、好き……みたいです」
柚子の告白が終わると同時に、柚子は零士の腕の中にいた。
顔を真っ赤に染めた柚子は目を大きく見開いていた。
「……たぁ」
「え?」
「……良かった。俺、絶対ダメだと思ってた」
抱き締めたままだったから耳元で囁く形になっていた。
「柚子ちゃん……。ありがとう」
零士はぎゅっと柚子を抱いていた。
第1章 END
呼び出し音が煩いくらいに響いてる。心臓の音もドクンドクンと煩く響いてる。
スマホを持つ手が震えてるのが分かるくらいだった。
『……はい』
何度目かの呼び出し音で出たその声は眠そうで疲れている声をしていた。
「あ……、柚子です」
『柚子ちゃん……?どうした。電話かけてくるなんて』
「あの……」
緊張で苦しい。言葉が上手く出てこない。
スマホを持つ手に力が入る。
柚子はひとつ深呼吸をすると、思いきって零士に言った。
「会いたいです……」
そう言うのが精一杯だった。
暫く沈黙が続いた後、零士の声が聞こえた。
『一時間後、そっちに行く。出てこれる?』
「……ん」
『じゃまた電話する』
電話を切った後、鏡を見ると酷い顔をしていた。泣いたせいで顔が腫れぼったい。こんな顔では会えないと慌てる。
顔を洗ってみるけど、腫れぼったくなった瞼は落ち着くわけもなく。仕方なく濡れタオルで瞼を抑えた。
服を着替え髪を整えメイクを少しだけした。
そんなことを慌ててしてるうちにもう一時間経っていた。
◇◇◇◇◇
緩やかな音楽が流れる。柚子のスマホだ。柚子の着信音は緩やかな曲に設定されている。
『この前別れた場所に着いたよ』
その声に飛び出すように家を出る。そのまま零士が送ってくれたあの場所まで走り出した。
煌太の家と芽依の家を過ぎてその5軒先の家を曲がった所。その場所に零士の車が停まっていた。
零士は車から出ることなく柚子が来るのを待っていた。
息を切らした柚子に気付くと運転席から助手席のドアを開けた。
パタン……。
車のドアを閉めると車はゆっくりと走り出した。
勢いで「会いたい」と言ってしまった柚子だけど、どう何を言ったらいいのか分からなくて。それでもまた零士に会えたことが嬉しくて涙が出る。
「なんで泣く?」
運転しながらも柚子の様子がおかしいのを感じていて涙が出てしまった柚子に声をかける。
「ごめんなさい……」
「謝って欲しいんじゃないんだよ」
車が停車した時、零士は柚子の頭を撫でた。
その手が温かくてまた涙が出てくる。
「柚子ちゃんは泣き虫なのかな」
「そんなんじゃ……」
ふっと笑うと零士はまた車を走らせた。
「会いたいってことはちゃんと考えてくれたってことかな」
運転する零士の姿を横目でちらちらと見る柚子はこくんと頷いた。
「私……っ」
「でも待って。ちょっと場所を変えたいから」
零士はそのまま黙ってしまった。零士が黙ってしまったせいで、車内は静かだ。この前は音楽をかけていた車内は今日は何もかけてない。微かに聞こえる零士と自分の呼吸する音や動く音が響いてる気がした。
車は一時間は走ったと思う。高層ビルやマンションが建ち並ぶ街へと景色は変わっていた。そのひとつのビルの地下駐車に滑り込んで行く。
「降りて」
無口な零士に促されて車を降りる。地下駐車場は高級な車が並んでいた。
「こっち」
柚子は零士の後を追って行った。地下駐車場からエレベーターに乗ると10階のボタンを押すと静かにエレベーターが動く。
エレベーターに乗ってる間も零士は何も話さなくて柚子は居心地悪くなっていく。
ガタン。
エレベーターが止まり零士は柚子の手を握り歩いて行く。ひとつの扉の前に来ると鍵を開けて中に入る。
「どうぞ」
中へ入ると広い玄関スペースになっていた。
「ここ……」
「俺のマンション」
「え……」
零士は柚子の手を離し、奥の部屋へと入っていく。その後ろ姿を追って柚子も入る。
リビングも広かった。
中央に置かれたテーブルやソファーは本当に高そうな物だった。
「いきなり部屋に連れてきてごめん。ただ、他の場所が思い付かない。こんな話、誰かに聞かれたくないし」
振り返った零士の顔が不安そうにしていた。
「零士さん……」
どう反応したらいいのか戸惑っていると「ほんとごめん!」と頭を下げる。
「部屋に連れてくるなんて、そんなの嫌だろうし、普通はしないだろうし、怖いだろうし……っ!」
テンパった零士は本当に申し訳ないともう一度頭を下げる。
その姿を見てこの人は何かしようとここに連れてきた訳じゃないと思った。
「零士さん」
「ほんと、ごめん……。ただ自分の情けない姿とかを他人に見られたくなくて、それで……」
「情けない姿?」
「あぁ。フラれる覚悟は出来てるから」
ギュッと目を閉じた零士に思わず笑い出す。笑い出した柚子に不思議そうな目を向ける零士の顔を見て思いきって言った。
「私、零士さんが、好き……みたいです」
柚子の告白が終わると同時に、柚子は零士の腕の中にいた。
顔を真っ赤に染めた柚子は目を大きく見開いていた。
「……たぁ」
「え?」
「……良かった。俺、絶対ダメだと思ってた」
抱き締めたままだったから耳元で囁く形になっていた。
「柚子ちゃん……。ありがとう」
零士はぎゅっと柚子を抱いていた。
第1章 END
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