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第1章
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湊から零士を紹介されてから数日後。柚子のスマホにメッセージが入った。
《今度遊びに行かない?》
メッセージの主は零士だった。そのメッセージを見た柚子は心臓が止まるかと思った。なぜ、自分の連絡先を知ってるのかと。
《なんで私の知ってるんですか》
柚子はそう返した。零士からは当たり前のように《湊のスマホ見た》と返ってくる。その零士の行動にびっくりしてしまった柚子は思わず笑いが出た。でもどう返していいのか分からずとりあえず湊にメッセージを送る。
《零士さんからメッセージ来てる!お兄ちゃんのスマホ勝手に見て登録したみたいなんだけどー!》
柚子のメッセージに湊はすぐに返信をしてきた。
《アイツ……いつの間に。絶対許さねぇ》
《どうしたらいい?》
《なんて入ってきたんだ》
《遊びに行かない?って》
《あんにゃろ……》
メッセージの最後には怒りマークが付いててもおかしくはない。ただ湊は絵文字など使わないからシンプルに文章だけだった。
《ねぇ、どうしたらいい?》
再度そう送った柚子のメッセージに湊からの返信はなかった。バイト中にやり取りしていたのならすぐに返信出来ないんだろうと柚子は諦めた。だが、それから5分くらいしてから湊からメッセージが届く。
《柚子は零士のこと好きか?》
ドキンっ!と胸の鼓動が跳ねた。その一文が柚子を動揺させていた。
(好き……?)
湊のメッセージにどう返していいのか分からなかった。考え込んでいると、湊から再びメッセージがくる。
《零士はいいやつだ。零士のことが嫌だと思ったなら断ればいい。柚子がしたいようにすればいい》
あの日、湊のアパートで零士に「妹に手を出すなよ」と言っていたのにこのメッセージ。柚子は混乱するばかりだった。どうすればいいのか考えているところに零士からメッセージがきた。
《湊になんか言われた?》
(どうしよう……。なんて返そう)
困ってると今度は電話が鳴り出した。
「きゃっ!」
驚いて思わず叫び声を出す。スマホの画面を見ては登録されていない番号が映し出される。それがきっと零士の番号。おそるおそる通話ボタンを押す。
『出てくれた』
「あ……」
『湊になんか言われたんでしょ』
「えっと……」
耳元で零士の声が響く。恥ずかしくて何も言えない。それを分かってるのか零士はくくくっと笑い出す。
『緊張しないで』
「……はい」
『敬語もなし』
「でも……」
『なしね』
「はい……」
零士の言葉に頷く。柚子は顔が熱くなっていく。顔も真っ赤に染まっていく。こんなにも恥ずかしいと思うなんて。
『でね、遊びに行かない?』
今度は電話口で遊びの誘い。声で聞くと本当に誘ってるんだと実感する。
「でもなんで私?」
『柚子ちゃんがいいんだ。遊びいこう』
そう言われたら「うん」と頷くしかなかった。
◇◇◇◇◇
零士と遊ぶ約束をしたことを芽依や煌太には言えなかった。零士が湊の友達だということも。
「どうしよう……」
クローゼットを開けて考え込む。
(こういう時って何を着ていけばいいんだろう)
柚子が考え込んでしまうのも無理はない。今まで異性とふたりで出かけたことは一度もない。彼氏がいたこともない柚子はこういうことには慣れていなかった。
芽依ならなんかアドバイスしてくれるだろうけど、話すことは出来ない。だからといって母親に聞くなんてことも出来ない。
「ん~、これ……かな」
クローゼットから出したのは淡い水色のワンピース。それに合わせて髪留めも淡い色にしてみた。白い斜め掛けのショルダーバッグに白いサンダル。
「出掛けてくる」
そう母親に言って家を出た。駅まで行ってスマホを取り出す。画面には「零」と出ていた。零士とは入れられなかった。ましてや「REIJI」とも入れることは出来ない。芽依たちに見られたらなんて言えばいいの分からないからだった。
「もしもし」
電話に出ると『着いたよ』と声が聞こえる。あたりをキョロキョロして零士を探す。だけど、それらしき人が見当たらなく困ってると、柚子の真横に車が停まった。
「柚子ちゃん」
窓から顔を覗かせたその人は零士だった。ただあのREIJIだとは思えない風貌。髪の毛は茶髪なのはいつものことだけど、眼鏡に黒いキャップを被って服装は白いTシャツにジーンズ。どこから見てもその辺にいる人だった。そして乗ってきた車もごく普通の車。柚子は車には詳しくないから車種までは分からない。
「乗って」
車の中から助手席のドアを開けた零士は優しく笑う。その姿はごく普通の青年にしか見えない。
「あの、どこに?」
「ん。そうだなー。あまり人が多いとこんな格好しててもバレそうだからなぁ」
笑う零士は柚子にシートベルトをするように促してから車を走らせた。
《今度遊びに行かない?》
メッセージの主は零士だった。そのメッセージを見た柚子は心臓が止まるかと思った。なぜ、自分の連絡先を知ってるのかと。
《なんで私の知ってるんですか》
柚子はそう返した。零士からは当たり前のように《湊のスマホ見た》と返ってくる。その零士の行動にびっくりしてしまった柚子は思わず笑いが出た。でもどう返していいのか分からずとりあえず湊にメッセージを送る。
《零士さんからメッセージ来てる!お兄ちゃんのスマホ勝手に見て登録したみたいなんだけどー!》
柚子のメッセージに湊はすぐに返信をしてきた。
《アイツ……いつの間に。絶対許さねぇ》
《どうしたらいい?》
《なんて入ってきたんだ》
《遊びに行かない?って》
《あんにゃろ……》
メッセージの最後には怒りマークが付いててもおかしくはない。ただ湊は絵文字など使わないからシンプルに文章だけだった。
《ねぇ、どうしたらいい?》
再度そう送った柚子のメッセージに湊からの返信はなかった。バイト中にやり取りしていたのならすぐに返信出来ないんだろうと柚子は諦めた。だが、それから5分くらいしてから湊からメッセージが届く。
《柚子は零士のこと好きか?》
ドキンっ!と胸の鼓動が跳ねた。その一文が柚子を動揺させていた。
(好き……?)
湊のメッセージにどう返していいのか分からなかった。考え込んでいると、湊から再びメッセージがくる。
《零士はいいやつだ。零士のことが嫌だと思ったなら断ればいい。柚子がしたいようにすればいい》
あの日、湊のアパートで零士に「妹に手を出すなよ」と言っていたのにこのメッセージ。柚子は混乱するばかりだった。どうすればいいのか考えているところに零士からメッセージがきた。
《湊になんか言われた?》
(どうしよう……。なんて返そう)
困ってると今度は電話が鳴り出した。
「きゃっ!」
驚いて思わず叫び声を出す。スマホの画面を見ては登録されていない番号が映し出される。それがきっと零士の番号。おそるおそる通話ボタンを押す。
『出てくれた』
「あ……」
『湊になんか言われたんでしょ』
「えっと……」
耳元で零士の声が響く。恥ずかしくて何も言えない。それを分かってるのか零士はくくくっと笑い出す。
『緊張しないで』
「……はい」
『敬語もなし』
「でも……」
『なしね』
「はい……」
零士の言葉に頷く。柚子は顔が熱くなっていく。顔も真っ赤に染まっていく。こんなにも恥ずかしいと思うなんて。
『でね、遊びに行かない?』
今度は電話口で遊びの誘い。声で聞くと本当に誘ってるんだと実感する。
「でもなんで私?」
『柚子ちゃんがいいんだ。遊びいこう』
そう言われたら「うん」と頷くしかなかった。
◇◇◇◇◇
零士と遊ぶ約束をしたことを芽依や煌太には言えなかった。零士が湊の友達だということも。
「どうしよう……」
クローゼットを開けて考え込む。
(こういう時って何を着ていけばいいんだろう)
柚子が考え込んでしまうのも無理はない。今まで異性とふたりで出かけたことは一度もない。彼氏がいたこともない柚子はこういうことには慣れていなかった。
芽依ならなんかアドバイスしてくれるだろうけど、話すことは出来ない。だからといって母親に聞くなんてことも出来ない。
「ん~、これ……かな」
クローゼットから出したのは淡い水色のワンピース。それに合わせて髪留めも淡い色にしてみた。白い斜め掛けのショルダーバッグに白いサンダル。
「出掛けてくる」
そう母親に言って家を出た。駅まで行ってスマホを取り出す。画面には「零」と出ていた。零士とは入れられなかった。ましてや「REIJI」とも入れることは出来ない。芽依たちに見られたらなんて言えばいいの分からないからだった。
「もしもし」
電話に出ると『着いたよ』と声が聞こえる。あたりをキョロキョロして零士を探す。だけど、それらしき人が見当たらなく困ってると、柚子の真横に車が停まった。
「柚子ちゃん」
窓から顔を覗かせたその人は零士だった。ただあのREIJIだとは思えない風貌。髪の毛は茶髪なのはいつものことだけど、眼鏡に黒いキャップを被って服装は白いTシャツにジーンズ。どこから見てもその辺にいる人だった。そして乗ってきた車もごく普通の車。柚子は車には詳しくないから車種までは分からない。
「乗って」
車の中から助手席のドアを開けた零士は優しく笑う。その姿はごく普通の青年にしか見えない。
「あの、どこに?」
「ん。そうだなー。あまり人が多いとこんな格好しててもバレそうだからなぁ」
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