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秋晴れの日に

8 あの子の秘密

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 同僚からあの子のSNSを教えてもらって、覗き見る。いつもキラキラとした投稿ばかりだった。

「あれ……?」
 ひとつの投稿を見て私は不信に思った。
(写ってるのはワイン……?それにタバコ……)
 妊娠している人の投稿じゃない。
「じゃ……、あれは嘘?」
 思わず呟いた言葉。それが現実なのかそうでないのか。今となったらどうでもいい。
 私は彼とは別れたんだから。

 それでも彼を騙しているこの女が許せなかった。
 彼は優しい。誰よりも優しい。そんな彼を騙して自分のものにしようとした。それが許せない。


「ねぇ、これ」
 ランチの時間。同僚にその投稿を見せた。
「やっぱりね」
 同僚はそう言う。この同僚は、私と彼の同期。研修の時から一緒に過ごしてきた戦友のような存在。彼女はサバサバとしていて、物事をはっきりと言う。
「怪しいと思っていたのよ」
 スマホ画面を見ながら言う彼女の姿は、嫌悪感満載の顔をしていた。
「彼に妊娠してるって告げたのって、彼がやらかした3ヶ月後なんだよね?」
「……そう聞いてる」
「それから1ヶ月経ってるよね?」
「経ってる……ね」
「あの子、休んだ形跡ないよね。総務部に同じ大学の同期いるんだけど、休んでないって言ってるし。体調悪そうにも見えないって」
 普通ならが始まってる。軽い人だとしても多少なりともある筈だった。
「うちのお姉ちゃん、つわりは軽い方だったって言ってたけど、それでもツラいって」
 私の姉は結婚して子供がひとりいる。その時のつわりは軽い方だったらしいが、それでも気持ち悪い不快感はあったらしい。

「おかしいよね」
 ふたりで顔を見合わせる。
「……嘘だとしても私には何も出来ないよ」
 ポツリと呟いた私に、同僚も「そうだね」と呟く。
 何も出来やしない。私にはもう関係のない話。


 そうは思っても、やっぱり気になるもの。彼が傷付きやしないかと気になってしまう。
「もう気にすることはないんじゃない?」
 彼女はフラれて落ち込んでた私を、支えてくれた大切な人。これ以上私が傷付くのを嫌がる。
 私だって傷付きたくはない。


 だけど……。


 いつまでもと言ってたらダメね。考えても答えが見つからないなら、動かなきゃ!
 私はあの子のいる総務部に、出向くことにした。



     ◇◇◇◇◇



 目の前にスマホを差し出す私に、目を丸くしてこちらに視線を向けない。私のスマホ画面は、あの投稿画面が写し出されている。
「どういうことか、説明してくれるかしら?」
 総務部の人たちはこちらを見ている。私はその視線を無視してまで、彼女に説明を促していた。
「あなた、本当は……っ!」
 そこまで言ったところで、彼女は私を引っ張って屋上誰も使っていない会議室へ入っていく。
「ちょっと!」
 私の声に手を離した彼女は、頭を下げていた。
「みんなの前では……、話さないで……」
 この前の勢いとは違う彼女を見下ろしていた。
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