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2 事件
しおりを挟む「玉木くん、ゲイってマジなん?」
陽キャでお騒がしものの石田は背後から玉木に勢いよく抱きつく。
彼らの周りには数人の男女グループが取り巻いていた。
「ゲイなんだったらさ、俺にハグされて嬉しかったりすんの?」
「……」
「ちょっと固くなってない?やっばあw」
グループの中の一人のギャルがスマホでパシャパシャ撮影している。
「あほらし」
授業終わりの休憩時間。
廊下で騒ぐ数人の男女の姿を見て、俺の前の席の木本はため息混じりにそう呟いた。
「玉木も色々面倒だな、あんな奴に絡まれて」
金髪で、いかにも陽キャって感じの石田くん。
彼らにとっては遊びなのか分からないが、人の思いを雑に扱う陽キャの悪ノリが、俺はどうも苦手だ。
「ねーねー由美ちゃん何かして欲しいことある?」
「え~じゃあキスしてよw」
「いーよー」
二つ返事でOKを出す石田くん。
さすがに嫌な予感を感じ取った玉木くんは、動揺しつつ石田くんにストップするよう頼む。
「え、ちょっと、やめ…」
手のひらを押し返し抵抗する玉木くんを完全無視して、唇と唇を合わせる石田くん。
ワッと石田グループ達が盛り上がる。
「わ~ガチもんのゲイじゃん」
「ウケる~w」
教室では、多くの男子クラスメイトがその光景にドン引きしていた。
「…っうわ、やっばいね……おいどした?コシタニ」
目の前の光景に興奮を隠せず、頬を上気させる女子達とは裏腹に俺は背筋がゾクリと冷えるのを感じていた。
前髪のすき間から覗く玉木くんの瞳。
さっきまであたふたと動揺していた彼とは別人のように冷たく、闇のように沈んだ瞳。
そこには嫌悪や憎悪といった複雑な感情が取り巻いているようだった。
「…なにしてるんだ?」
そんな状況の中、廊下の向こう側からやってきたのは玉木くんといつも一緒にいる神田くんだ。
2人がキスしているという異様な光景が気になり、ちょうど近くへ来たついでに話しかけたようだった。
彼を見つけるや否や玉木くんは急に顔色を変えた。
さっきの暗い顔はどこへやら、一瞬にして何かに怯えるような、そんな顔色へ変わった。
「あ、神田これは…ちょ、待っ!」
多くの人が目撃したのは、話しかける玉木くんを完全無視してその場を通り過ぎる神田くんの姿。
玉木くんと一番距離が近づいた時に口を小さく動かしていたが、それは教室にいる俺たちには、何を言っていたのか聞こえるはずもなく。
ただ、それを聞いた瞬間玉木くんは顔を引き攣らせ、神田くんはそんな彼に軽蔑するような目を向けていたことだけが見て取れた。
玉木くんは怯えた色を瞳に浮かべながら神田くんへ伸ばす指先は、小刻みに震えていた。
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