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罰ゲームで告白したら、生涯添い遂げることになった話
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放課後の校舎裏。普段であれば人通りも少ないその場所には、幾人かのギャラリーでひしめき合っている。
「好きです、付き合ってください!」
頭を下げて右手を突き出す男の名は藤岡 賢治(ふじおかけんじ)。明るめの髪は脱色したわけではなく地毛で、よく生徒指導の教員に目を付けられている。野球部に所属している彼はそれなりに体格が良いがあわせて目も大きく、よくよく見てみれば存外可愛らしい顔立ちともいえる。
「……」
右手を突き出された方の男の名は東 海斗(あずまかいと)。
長身で均整の取れた身体付きだが、程よく筋肉もついており女性のそれではなく男性としての美を具現化したような外見をしている。亜麻色の髪に透き通るような白い肌や長いまつ毛、色素が薄いのか目は日本人離れした緑がかった色合いをしており、平たく言うと極上の美形と言って差し支えないだろう。
「わかった。これからよろしくね」
極上のイケメンは、一切の感情を顔に出さず賢治の手を握り握手をした。その刹那、先ほどまで木や校舎の陰として身を潜めていたギャラリー達からは悲鳴のような歓声、いや怒声、もとい形容しがたいしいて言えば断末魔のような、とにかくやかましい声が校舎を振動させる勢いで上がったのだった。
「……フジケンは?」
「東んとこ」
「ああ、ランチデートか」
フジケンこと藤岡賢治が同性の東に告白したのは、罰ゲームというやつだった。
彼らが通う学校は文武両道の進学校で、野球部もその例にもれず強豪であり時代錯誤の厳しいシゴキというものもあった。軍隊のような上下関係や鬼コーチの指導で歪みに歪みまくった高校生男児たちは、ちょっとした良くないストレス解消方法を思いついたのだ。
「ス○ブラで負けた奴が、学校一のイケメンに告白な」
賢治は部内でも実力があり、基本的に気の良い男なので人に好かれやすく敵を作ることもなかったが、とにかくス○ブラだけは壊滅的に弱かった。
また、彼の持ちキャラはカー○ーという最弱もとい玄人向けのキャラであったせいか、野球部一同にはめ殺しのようにされ(あれはゲーム内リンチだと後に賢治は語る)あれよあれよという間に最下位となってしまい、そして今に至る。
「フジケンお帰り、どうだった?」
「だめだ、東良い奴すぎる!! 」
俺の逆アプローチに全く引かねえ! と賢治は頭を抱えている。彼は青いギンガムチェックのランチョンマットで包まれた弁当箱を片手に持ち、そして何故かデカい銀色の水筒をショルダーのように肩に下げている。
「まさか、あれでも駄目だったか! 」
「うん! 普通に感謝された! 」
賢治という男は実に誠実で心優しく、今回の罰ゲーム告白に人一倍胸を痛めていた。なら何故このくだらない行事に参加したのだという話になるが、提案したのは野球部3年のレギュラーお兄様たちであり、賢治たちにとっては上官、人格はともかくとして雲の上の人、逆らうことのできない絶対だった。
また、賢治は先輩たちに可愛がられていたので断っても問題がなかったが、そのしわ寄せが他のメンバーや後輩たちに行くことを何よりも懸念したのだ。先輩方のメンツを立てつつ後輩や同胞を守るためには、そして告白相手にも失礼のないようにするにはどうしたらいいか。
賢治の出した答えは「罰ゲームということを伏せたままのガチ告白」であった。
「ヤマザキのアドバイスと平成初期のギャルゲーを参考に手作りのお弁当と、このご時世にわざわざペットボトルのオレンジジュースをバカでかい水筒(魔法瓶)に移し替えて、コップに入れて渡したというのに……」
一昔もふた昔も前の「健気系尽くす女の子」を、そこそこ屈強な野球男児が上目遣いで熱演したというのに、校内一のイケメンは「ありがとう」と動じることなく受け取り、「藤岡君、気が利くね」とさりげない褒めまで添えてくれたのだという。
「もう、普通にネタ晴らししたら? ごめん罰ゲームでしたって」
クラスメイトのヤマザキの言葉に賢治は首を横に振る。
「駄目だ、東にも失礼だし俺の理念にも反する」
俺が東を好きだという体で全力で好意を伝え、そして全力でフラれなければならない。そうすれば角が立たないと、気遣いのベクトルが壊れたコンパスのように明後日の方向を向いてしまった賢治は、相手からフッてくれるよう次のアプローチを考えることにした。
「東君」
「ん、なあに?」
「今度の日曜日、暇?」
部活がないから良かったらデートしたいな、と賢治がもじもじお願いしてみると「うん、いいよ」と快諾された。ここまでは想定範囲内であった賢治は「やった、嬉しい! 」と東に抱き付く。
「藤岡君、苦しいよ」
そういいながらもギュッとそこそこ屈強な男を抱きとめる東の仕草に一切の隙がなく、少し見ただけではわかりにくい細マッチョと強靭なインナーマッスルのおかげか、体幹がぶれることもなかった。おまけに賢治の腰に手を回し、こつんと自身の額と賢治の額をくっつけてみせる。鼻先もつんと一瞬触れてしまい、猫の挨拶のようだった。
「鼻チュー」
「東君、うっかりキュンとしそうになるからやめてくれるかな」
「ごめんね、人前では控える」
「止める気はなしか、と」
一瞬素に戻りかけた賢治はガラスの仮面をはめ直すと、日曜日おしゃれしてくるから! と手をぶんぶん振ってその場を後にした。野球部の彼は脚力もすさまじく、数秒で賢治の姿は小さな点となる。
「……うん、俺も楽しみ」
東は賢治が消えるまで、ずっと見送り続けていた。
デート当日、賢治は勝負服で待ち合わせ場所に現れた。すでに東が先に来ており、彼の装いはチェスターコートにパーカー、細身のパンツにブーツというシンプルながらも彼の魅力を引き立たせてくれるコーデであった。
そして我らが賢治の本日のファッションは、カーキのジャケットにジーンズ、そこまでは特に問題がない。しかし中に着ているトレーナーの胸部分はスパンコールでぎらっぎらに彩られており、にっこり笑った黄色い球体のキャラクターが光に乱反射して場違いに輝いていた。
「……で、どうだった」
「可愛いねって」
「理想的彼氏ぃ!」
賢治の渾身の勝負服は不発に終わり、ヤマザキはあきれ顔でその報告を聞いていた。デートはふつうかそれ以上に楽しかったとは賢治の談だ。
「……手、握られちゃった」
「はーあぁ!? 」
ヤマザキの奇声が教室内に響き渡る。映画館でポップコーンを取ろうとして東の手に触れてしまい、そのまま手を握り返され、東と賢治は映画が終わるまでずっと手をつなぎ続けていたというわけだ。
「いやー実際やられてみるとドキドキするもんだなおい」
「こっちはバクバクしとるわ」
主に不整脈で。何が悲しくて友人が恋する女子になっていくさまを聞いていなくてはならないのか。ヤマザキは力なく首を横に振る。
「初デートで手つなぐって普通だよね」
「お前相談内容変わってね? 」
お前の悩みは東と付き合ってることで、終了条件は全力でフラれることだったろうがとヤマザキは舵を取りなおす。イケメンとは恐ろしい物で、いかんいかんそうだったと賢治も正気を取り戻したようだ。
「とにかく、奴はお前の外見を気にせずに付き合える胆力をお持ちの様だ」
「だな」
「じゃあ次だ、嗅覚を狙え」
「どういうことだヤマザキ」
ヤマザキの提案はこうだ。次会う時はできるかぎり不潔な恰好で行け。数日間風呂に入らないのが望ましいが、駄目ならせめて部活帰りに汗だくの状態で会え。
「俺の社会的地位が」
「フジケン、何かを無理やり手離すってことはそういうことなのよ」
「どういうことなんだよ」
ヤマザキ曰く「浮気性でろくでもない兄」が、彼女やそれ以下の人と別れる時に使う常套手段なのだという。最初は(少額だが)金を借りて返さなかったり、その金でパチンコに通いつめたりと女性側からフッてもらうように誘導するが、それでも「別れない」という情の深い女性に対して使う最終手段だ。
ヤマザキ兄も本来綺麗好きな性分なので、この手法を取るのは本意ではないが、彼が「これは手強いな」と感じた女性に対してこれをやるらしい。
「ヤマザキお前……兄貴と似たのが顔だけでよかったな」
「まあねと言いたいところだけど、世の中の女は悪い方に惹かれるみたいでな」
ヤマザキもヤマザキ兄もイケメンの部類に入るが、兄の方が圧倒的にモテ、弟のほうはそこまででもないという背景があった。
兄はそんな弟に優越感を抱くこともなく、女性に対してはクズな兄ではあるが自分の弟は可愛いと思っているようだ。あれはいつだったか、ヤマザキと付き合いながらこっそりヤマザキ兄にも手を出そうとした女性に対して、ものすごい剣幕で怒鳴りつけることがあった。
「アイツと穴兄弟になったらマジで最悪だわ、いつかなるんじゃないかと思ってたけど
。そこらへんの倫理だけは辛うじてあるらしい」
「いいお兄さんだな」
「どこが」
「うしっ! とりあえず、先輩に詫び入れて来るわ」
「うん? あ、お前まさか」
その日の部活前、賢治は後輩先輩の前で深々と頭を下げ、野球部で鍛えられたとてつもない声量で謝る。
「これから数日間、一身上の都合により自分は風呂に入りません! 不潔かもしれませんが今しばらくご辛抱ください!」
「……ケガ?」
「いえ、嫌になるぐらい健康です」
「だよな」
どよめくグラウンドの上で、比較的人格者な3年のお兄様先輩の一人が「何で?」とヤマザキの方を向く。耳打ちで説明をすると、比較的もとい野球部内の数少ない人格者な先輩は「あー……」とすべてを理解した顔で「わかった、俺からもそれとなく言っておく」と返答した。
次のデート日。
「東君、お待たせ!」
「藤岡君、ううん全然待ってな……」
東の目の前に、ぱっと見満身創痍の男が現れた。どれだけ滑り込みをしたらこうなるんだというレベルで泥だらけになった野球服、そして顔を近づけてみれば、控えめに表現するなら数日間風呂にも入れずその辺で寝かせた高校球児の臭いもする。
その臭いは彼の家族にも「風呂に入れ」「臭い」と、ある意味高評価なコメントを頂く程度には完成されていた。
熟成に熟成を重ねた賢治だが、彼にも恥じらいや社会的地位がある。私服のまま臭う人にだけはなりたくなかった彼は、苦肉の策として「運動部帰りの高校生(数日間熟成)」のコスプレをすることにした。
「部活帰り?」
「うん! でも、どうしても東君に会いたくなっちゃって!」
こんな格好でごめんねと賢治は心の底から謝る。心の中のもう一人の賢治に「本当だよ」とツッコミを入れられながら。
「っ! 東君?」
東は臆することなく賢治に近寄ると、そのまま彼を抱き寄せた。長身の彼はそこそこ大きめの賢治よりさらに身長が高く、首筋や頭にその美しい顔を埋めている。
「(こいつ臭い耐性があるのか?)」
ポケ○ンにもそんなタイプ相性ねえよと内心思いながら、賢治はされるがままイケメンに抱きしめられていた。
「俺に会いたくなって、着替えもしないでそのまま来ちゃったの? 可愛い……」
ひとしきり抱きしめてスースー賢治の肩や頭部越しに呼吸をした東は、運動部帰りの高校生(コスプレ)の手を引いて歩き出す。
「え、これからどこ行くの?」
「いいところ」
ついてきて。自分の手や制服を汚れることも厭わないといった風で、イケメンは運動部員と指を絡めて恋人つなぎをする。周囲の視線をもろともせず涼しい顔でエスコートするその姿は、どこぞの王子様のようである。
東が賢治を連れてきた場所は、郊外にあるスーパー銭湯であった。
「……完全敗北じゃん」
「いやー丁度日替わり湯の日で、ミント湯だったんだよな。ミストサウナもよかった」
「普通にスーパー銭湯デート楽しんでんじゃねえよ」
「で、海斗の奴」
「ちゃっかり名前呼びで距離縮めてんじゃねえよ」
「すげえ巨根で、しばらく敬語になったわ」
「何畏怖の念抱いてんだよお前は」
距離縮めたいのか遠ざけたいのかはっきりしろとヤマザキが吐き捨てる。裸の付き合いで親睦を深めた二人は、とても楽しくスーパー銭湯デートを満喫したのだった。
5月23日。野球部のお兄様たちが卒業してしばらくし、3年生となった賢治と特にヤマザキにとって衝撃的な事件がおこった。その日もいつものとおり二人は昼ご飯を食べていたが、どこか賢治はぼんやりとしており、心なしか食欲がないようにも見えた。
「どしたフジケン? 腹痛い?」
「海斗とキスしちゃった」
長い長い数秒の沈黙後、きゃぁあとヤマザキから甲高い悲鳴が上がり「なんてこと、アンタなんてこと……」と何故かオネエ口調で彼は静かに身を震わせていた。
「お前突然! 予備動作なしで恐ろしい事言うのやめてくれる!?」
「こないだ夜景を見に行った時に、突然海斗が真面目な顔つきになって……」
「いらんわ細かいディティール。すっかり恋する乙女の顔つきになりおってからに」
例の罰ゲームから早半年が経過している。
賢治はともかくとして、東のほうは最初から罰ゲームだと知っていて仕返しをしているのではないか? でも仕返しにしてはあまりにもやり方が相手にとっても諸刃の剣すぎる。それでは賢治のことが実は好きだったのではないか?
ヤマザキは脳みそで使った糖分を補うべく、苺牛乳をズゾゾと啜りつつ「でも幸せならOKです」と、最終的には現実逃避をキメることにした。
それから次の週、ヤマザキにとって青天の霹靂とも呼べる出来事が起こる。いや、或いは心のどこかで予測できていたことを、現実として受け入れたくなかっただけかもしれない。
「ヤマザキ、実は。俺海斗とやった」
爽やかな初夏の風、昼休みの賑やかな校内を全力疾走するヤマザキと、それを「ちょ、待てよ」とどこかのキムタクの如き台詞を吐いてから後から追う賢治。二人は野球部のレギュラーであり、互いにとって大変なことに、どちらも脚力には自信があった。
「最低、不潔よぉフジケン!! アタイアンタがそんな人だなんて思わなかった!」
「待ってよぉヤマザキ! アタイだってこんなことになるとは思わなかったのよぉ!」
「だって彼優しくて」だの「このアバズレ」だの、場末のオカマバーで繰り広げられるような会話を、野球部の男たちが疾走しながら繰り広げている。
「待てよヤマザキ!」
「……どっち?」
「は?」
「お前はどっちだって聞いてんだよ!! 掘ったのか、掘られたのか!」
「……俺が、掘られた」
「いやぁあああ!!」
何度目になるだろう悲鳴を上げると、ヤマザキはそのまま東のいる教室へ向かった。教室はざわついており、東の周りにはクラスの人気者や美女たちが樹液に群がる虫共(ヤマザキ談)のように集まっている。
「……ヤマザキだ、東ちょっと面貸せ」
軍隊のように厳しい野球部に呼び出され、東は一瞬表情を曇らせる。しかしヤマザキの隣に賢治がいることを見つけると「わかった」と席から立ち上がりこちらへ向かってきた。
校舎裏に呼び出すときは、ヤキ入れか告白と相場が決まっている。今回は前者のようでヤマザキはそれこそ予備動作もなく、突然東の顔面を1発殴りつけた。
「何やってんだヤマザキ!」
まだ興奮冷めやらないヤマザキを後ろから羽交い絞めし、「すまん海斗、無事か?」と少しだけ泣き出しそうな声で気遣う。
「お前どういうつもりなんだよ!!」
殴られた時に口元を切ってしまった東は手の甲で拭いながら鋭くヤマザキを睨み付けるが、彼の目からぼたぼた大粒の涙がこぼれているのを見つけると、ギョッとした表情で握りこぶしを解いた。
「フジケンはオレの親友だ。そりゃもういい奴なんだよ。確かに半年前の告白はやりすぎたかもしれない、悪ふざけにもほどがある。告白される側……東の気持ちを考えてなかった。スマン。そこは野球部を代表して謝る」
あの告白が罰ゲームだったって、お前は知っているんだろうという前提でヤマザキが話す。対して東は「何故突然野球部が? 」という表情を一瞬作るが、彼も聡い人間のためまあそういうことだったのだろうと薄々何かに気づいていたこととあわせて、罰ゲームの主催が野球部であったということを瞬時に理解したようだった。
「あれは酷い悪ふざけだったかもしれないけど、こいつは違うんだ。真面目にお前に向き合って、真剣にお前の恋人して、そんで全力でお前にフラれようとしてたんだ……」
ヤマザキの言葉にさっと顔を青ざめさせたのは賢治だ。吐き出されてしまった言葉を押し込めようとするように、ヤマザキの口を無意識に塞ごうとするが手を払いのけられてしまい、それは叶わなかった。
「こいつも頭悪いわけじゃねえんだけど、ところどころ馬鹿だから。多分最初は普通に友達として東に好意を抱いていたんだと思う。そこで終わればよかったけど、フジケンの話聞いてると東すげー優しいらしいからさ。こいつもどんどん気づかないうちに、無意識に東が気になっていったんだと思うよ」
「……うん」
東は静かにヤマザキの話に耳を傾けている。
「……なんで、フジケンとヤッたんですか」
意趣返しのつもりなら少し酷すぎる。多少の罵詈雑言もしかたないと思うし、手酷くアイツをフッてやればよかったじゃないですか。フジケンは良い奴で多少馬鹿だから、嫌がらせで掘られても「こうなったのも全部自分の責任だ」って受け入れてしまうだろうとヤマザキは言葉を繋げた。
「……お父さん」
「誰がお父さんだ」
「お兄さん」
「同年代だよ」
「お母さん」
「性別を超越させるな」
「ヤマザキさん、俺は賢治君のことが好きです。本気です。一生大切にします」
東は深々と頭を下げる。それから賢治の方に向き直ると彼の近くまで寄り、まるで騎士が姫に忠誠を誓うように跪いた。
「ちゃんと言葉にしていなかったから不安にさせちゃったんだね、ごめんね賢治。大好きだよ。これからもずっと、俺の恋人でいてください。」
「……俺も」
顔を耳まで真っ赤に染めた野球部員は、本人も無自覚なまま実はかなり早い段階で東に落とされており、今回の告白はその決定打となった。
「お父ちゃん」
「誰がお父ちゃんだフジケン。東、そこの息子みたいな娘泣かしたら、もう一発殴りにいくからな」
父役と義理の父役を同時にこなしたヤマザキは、幸せになれよと中指を立てつつその場を後にするのであった。
それからまた時は経ち、高校を卒業し大学を卒業し社会人になっても、彼ら二人は一緒だった。
『出会いですか? 大学時代にサークルで』
『うちは趣味つながりで』
『実は、うちはマッチングアプリから……』
休日にテレビをぼけーと見つつ賢治は「うちは罰ゲームから始まった」と独り言をつぶやく。彼の最愛の恋人は、今では良きパートナーとなった。
付き合っていくうちにわかったことが、東海斗はとても嫉妬深く執着心の強い男で、パートナーシップも養子縁組も早々に結んだ。
それから簡略化した式を挙げて、きらりと左手の薬指に光るシルバーの指輪は愛と執着の証である。そのシンプルなデザインとは裏腹に、給料3か月分なんて金額ではとても払えないぐらい高額なものだった。
「……賢治」
「お、起きたか。はよ。休日なのに早起きだな」
「起きたら賢治がいなかったから」
まだ完全に目覚めていない様子で、海斗はふにゃふにゃしながら元野球部で現野球選手の賢治に抱き付く。彼の引き締まった腹やむっちりした胸筋は海斗のお気に入りで、離れたくないといった様子ですりすり全身を摺り寄せている。
「そういえば、高校時代に俺が数日風呂に入らず海斗をデートに誘ったこと、覚えてる?」
「……あれ、最高だった。またやって?」
「やだよ」
「じゃあ、試合終わったらシャワー浴びないでそのまま汗だくで会いに来て」
「チームのメンバーに何事かと思われるわ」
あの時、賢治の匂いが濃くて最高だった。でも照れくさくってついスーパー銭湯に誘っちゃった。あのまま家に連れ帰ればよかったな。上目づかいでこちらを見て来るイケメンは、高校時代からそこそこの変態でもあったようだ。
「……もしもし、お義父さん。お久しぶりです」
「誰が義父さんだ」
月日が突風のように過ぎ去って、皆いい歳になった。高校時代、いや20代30代の記憶すらもセピアがかった遠い思い出となったある日。旧友で二人を引き合わせてくれた恋のキューピットヤマザキに電話をしているのは、賢治ではなく海斗であった。
「ちょっと話があるんですが」
「どうした、うん。うん賢治が。……まだら認知症?」
孫を膝に乗せてデレデレのお爺ちゃんになっていたヤマザキは、瞬時に表情を引き締める。まだら認知とは物忘れはひどいけれど理解力には問題ない、同じ事ができる時と出来ない時があるといった症状に波があるのがその特徴だ。
「ええ、軽度なんですが。それとたまに、彼が高校時代の賢治君に戻ってしまうんですよ」
普段はしっかりしているが、頭の中でタイムトラベルが起こっているのか、時折賢治は心が高校生に戻ってしまうことがある。また、遡った際はいつもあの罰ゲーム告白をおこなった直後に記憶が巻き戻されてしまうようだ。
「藤岡君」
最愛の男が高校生に戻ってしまう時、海斗はいつも昔の呼び名で彼を呼ぶ。
「東君! お昼一緒に食べない? 俺弁当作って来たんだ」
「嬉しいな、一緒に食べよう」
賢治が作る弁当は二人が付き合って間もない頃に一緒に食べたもので、ラップに包まれたおにぎりと弁当箱に入った卵焼き、タコさんウィンナーにハンバーグ。弁当の隙間を埋めるために添えられた冷凍のブロッコリーと、それから大きい水筒に入ったオレンジジュースだ。
「東君! はい、おしぼり! ジュースもあるよ」
「……ありがとう、藤岡君は気が利くね」
古い映画フィルムを巻き戻すように、何度も何度も過去にあった思い出を繰り返してゆく。この時の彼はまだ海斗のことが恋愛的な意味で好きではなく、それでも全力でフラれるためになりふり構わず好意をぶつけていた。
また、時折賢治は数日風呂に入らなくなることがあった。認知症が進んでしまったのかと医師が懸念するが、それもちがう。
『これから数日間、一身上の都合により自分は風呂に入りません! 不潔かもしれませんが今しばらくご辛抱ください!』
昔、賢治が野球部で宣誓したあの出来事を繰り返しているだけだ。そんな時、海斗はいつも賢治を抱きしめて頭や首に顔を埋める。
「(賢治の匂いがする)」
スースー匂いを嗅いでいるふりをして、時折零れ出そうになる嗚咽を隠す。海斗からフってくれるようにいつも全力だったあの頃の賢治は、可愛くて切ない。
『俺に会いたくなって、着替えもしないでそのまま来ちゃったの? 可愛い……』
あの頃と同じように、自分はできているだろうか。海斗は手を引いて賢治を風呂に連れてゆく。思い出のスーパー銭湯はとっくに無くなってしまったし、二人で風呂に入ることができれば、賢治の症状はいったん落ち着くからだ。
「なあ、東君。君の事名前で呼んでもいい?」
「……うん、いいよ。賢治」
これはいつだったか二人で夜景を見に行った時の思い出だ。この頃から賢治は自分を恋愛対象としてうっすら見ていてくれたんだろうか。あの時と同じようにそっと触れるだけのキスをするが、かさついてしまった唇すらも愛おしい。
夜景のお陰で赤く染まった顔がばれることなく、こっそり安堵したあの夜。賢治も同じ気持ちでいてくれただろうか。
その日の賢治は、海斗も見たことがない賢治だった。一心不乱に何かを書いているが、それは一枚の手紙だった。しばらくして手紙を書き終えた彼は読み返すと、ぽたりと涙を落とす。それからぐしゃぐしゃに握りつぶしてゴミ箱へと捨てた。
海斗の姿が目に見えていないようにしゃがみこんでしまい、微動だにしない賢治が気がかりであったが、海斗は捨てられた手紙を拾って読むことにした。
「東君へ、突然ですが俺は君に酷いことをしました。あの告白は罰ゲームだったのです。本当にごめんなさい。俺はこのことを君に伝えず、ただ君のことが好きで告白したことにしています。そして君に全力で好意を伝えて、全力でフラれるのを待っていました。
でも、今は本当に君のことが好きになってしまいました。自分でも今更か、酷いなと思います。君の優しさが好きです。君の声が好きです、普段は無表情だけど時々困ったように笑う顔が好きです。でも、たまにしか見られないけど顔いっぱいで笑ってる君の顔はもっと好きです。
俺の作った弁当を笑顔で食べてくれてありがとう。わざとダサい恰好でデートしたのに、可愛いって言ってくれて、くすぐったくてでも嬉しかったです。汚い恰好で君の前に現れた時も嫌な顔一つ見せず、抱きしめてくれてありがとう。俺は君が」
最後の『大好きです』という文字が黒く塗りつぶされている。
「……知ってたよ」
海斗は賢治を後ろから抱きしめる。ビクリと怯えた様子で身を震わせる賢治を優しく包み込み、言葉を続ける。
「何だってよかったの」
きっかけなんて些細な事だから。罰ゲームでも本当の告白でも、友達からのお付き合いでもなんでも。俺は君に会えたことが嬉しかった。最初は純粋に仲良くなりたかったんだ。でも、すぐにそんなの吹き飛んじゃって、あっという間に君に惚れていました。そこから先は自分でも笑っちゃうぐらいに必死で、でもそれ以上にどんな君でも好きだった。
「……ああ。ようやくこれで、何の未練も残さず逝けるね」
俺も、賢治も。ぽっかり空いたパズルのピースは二人の心をカチリを埋める。
「……おう、海斗。どうした? お腹痛いのか?」
「……賢治?」
どこか靄がかかったような賢治の視界はクリアになり、彼はタイムトラベルから現在に帰ってきたようだった。
それから不思議なことに、死が二人を分かつまで、賢治が高校時代に戻っていくことはなくなった。
精神的なものだったんですかね、とは医者の談だ。
「好きです、付き合ってください!」
頭を下げて右手を突き出す男の名は藤岡 賢治(ふじおかけんじ)。明るめの髪は脱色したわけではなく地毛で、よく生徒指導の教員に目を付けられている。野球部に所属している彼はそれなりに体格が良いがあわせて目も大きく、よくよく見てみれば存外可愛らしい顔立ちともいえる。
「……」
右手を突き出された方の男の名は東 海斗(あずまかいと)。
長身で均整の取れた身体付きだが、程よく筋肉もついており女性のそれではなく男性としての美を具現化したような外見をしている。亜麻色の髪に透き通るような白い肌や長いまつ毛、色素が薄いのか目は日本人離れした緑がかった色合いをしており、平たく言うと極上の美形と言って差し支えないだろう。
「わかった。これからよろしくね」
極上のイケメンは、一切の感情を顔に出さず賢治の手を握り握手をした。その刹那、先ほどまで木や校舎の陰として身を潜めていたギャラリー達からは悲鳴のような歓声、いや怒声、もとい形容しがたいしいて言えば断末魔のような、とにかくやかましい声が校舎を振動させる勢いで上がったのだった。
「……フジケンは?」
「東んとこ」
「ああ、ランチデートか」
フジケンこと藤岡賢治が同性の東に告白したのは、罰ゲームというやつだった。
彼らが通う学校は文武両道の進学校で、野球部もその例にもれず強豪であり時代錯誤の厳しいシゴキというものもあった。軍隊のような上下関係や鬼コーチの指導で歪みに歪みまくった高校生男児たちは、ちょっとした良くないストレス解消方法を思いついたのだ。
「ス○ブラで負けた奴が、学校一のイケメンに告白な」
賢治は部内でも実力があり、基本的に気の良い男なので人に好かれやすく敵を作ることもなかったが、とにかくス○ブラだけは壊滅的に弱かった。
また、彼の持ちキャラはカー○ーという最弱もとい玄人向けのキャラであったせいか、野球部一同にはめ殺しのようにされ(あれはゲーム内リンチだと後に賢治は語る)あれよあれよという間に最下位となってしまい、そして今に至る。
「フジケンお帰り、どうだった?」
「だめだ、東良い奴すぎる!! 」
俺の逆アプローチに全く引かねえ! と賢治は頭を抱えている。彼は青いギンガムチェックのランチョンマットで包まれた弁当箱を片手に持ち、そして何故かデカい銀色の水筒をショルダーのように肩に下げている。
「まさか、あれでも駄目だったか! 」
「うん! 普通に感謝された! 」
賢治という男は実に誠実で心優しく、今回の罰ゲーム告白に人一倍胸を痛めていた。なら何故このくだらない行事に参加したのだという話になるが、提案したのは野球部3年のレギュラーお兄様たちであり、賢治たちにとっては上官、人格はともかくとして雲の上の人、逆らうことのできない絶対だった。
また、賢治は先輩たちに可愛がられていたので断っても問題がなかったが、そのしわ寄せが他のメンバーや後輩たちに行くことを何よりも懸念したのだ。先輩方のメンツを立てつつ後輩や同胞を守るためには、そして告白相手にも失礼のないようにするにはどうしたらいいか。
賢治の出した答えは「罰ゲームということを伏せたままのガチ告白」であった。
「ヤマザキのアドバイスと平成初期のギャルゲーを参考に手作りのお弁当と、このご時世にわざわざペットボトルのオレンジジュースをバカでかい水筒(魔法瓶)に移し替えて、コップに入れて渡したというのに……」
一昔もふた昔も前の「健気系尽くす女の子」を、そこそこ屈強な野球男児が上目遣いで熱演したというのに、校内一のイケメンは「ありがとう」と動じることなく受け取り、「藤岡君、気が利くね」とさりげない褒めまで添えてくれたのだという。
「もう、普通にネタ晴らししたら? ごめん罰ゲームでしたって」
クラスメイトのヤマザキの言葉に賢治は首を横に振る。
「駄目だ、東にも失礼だし俺の理念にも反する」
俺が東を好きだという体で全力で好意を伝え、そして全力でフラれなければならない。そうすれば角が立たないと、気遣いのベクトルが壊れたコンパスのように明後日の方向を向いてしまった賢治は、相手からフッてくれるよう次のアプローチを考えることにした。
「東君」
「ん、なあに?」
「今度の日曜日、暇?」
部活がないから良かったらデートしたいな、と賢治がもじもじお願いしてみると「うん、いいよ」と快諾された。ここまでは想定範囲内であった賢治は「やった、嬉しい! 」と東に抱き付く。
「藤岡君、苦しいよ」
そういいながらもギュッとそこそこ屈強な男を抱きとめる東の仕草に一切の隙がなく、少し見ただけではわかりにくい細マッチョと強靭なインナーマッスルのおかげか、体幹がぶれることもなかった。おまけに賢治の腰に手を回し、こつんと自身の額と賢治の額をくっつけてみせる。鼻先もつんと一瞬触れてしまい、猫の挨拶のようだった。
「鼻チュー」
「東君、うっかりキュンとしそうになるからやめてくれるかな」
「ごめんね、人前では控える」
「止める気はなしか、と」
一瞬素に戻りかけた賢治はガラスの仮面をはめ直すと、日曜日おしゃれしてくるから! と手をぶんぶん振ってその場を後にした。野球部の彼は脚力もすさまじく、数秒で賢治の姿は小さな点となる。
「……うん、俺も楽しみ」
東は賢治が消えるまで、ずっと見送り続けていた。
デート当日、賢治は勝負服で待ち合わせ場所に現れた。すでに東が先に来ており、彼の装いはチェスターコートにパーカー、細身のパンツにブーツというシンプルながらも彼の魅力を引き立たせてくれるコーデであった。
そして我らが賢治の本日のファッションは、カーキのジャケットにジーンズ、そこまでは特に問題がない。しかし中に着ているトレーナーの胸部分はスパンコールでぎらっぎらに彩られており、にっこり笑った黄色い球体のキャラクターが光に乱反射して場違いに輝いていた。
「……で、どうだった」
「可愛いねって」
「理想的彼氏ぃ!」
賢治の渾身の勝負服は不発に終わり、ヤマザキはあきれ顔でその報告を聞いていた。デートはふつうかそれ以上に楽しかったとは賢治の談だ。
「……手、握られちゃった」
「はーあぁ!? 」
ヤマザキの奇声が教室内に響き渡る。映画館でポップコーンを取ろうとして東の手に触れてしまい、そのまま手を握り返され、東と賢治は映画が終わるまでずっと手をつなぎ続けていたというわけだ。
「いやー実際やられてみるとドキドキするもんだなおい」
「こっちはバクバクしとるわ」
主に不整脈で。何が悲しくて友人が恋する女子になっていくさまを聞いていなくてはならないのか。ヤマザキは力なく首を横に振る。
「初デートで手つなぐって普通だよね」
「お前相談内容変わってね? 」
お前の悩みは東と付き合ってることで、終了条件は全力でフラれることだったろうがとヤマザキは舵を取りなおす。イケメンとは恐ろしい物で、いかんいかんそうだったと賢治も正気を取り戻したようだ。
「とにかく、奴はお前の外見を気にせずに付き合える胆力をお持ちの様だ」
「だな」
「じゃあ次だ、嗅覚を狙え」
「どういうことだヤマザキ」
ヤマザキの提案はこうだ。次会う時はできるかぎり不潔な恰好で行け。数日間風呂に入らないのが望ましいが、駄目ならせめて部活帰りに汗だくの状態で会え。
「俺の社会的地位が」
「フジケン、何かを無理やり手離すってことはそういうことなのよ」
「どういうことなんだよ」
ヤマザキ曰く「浮気性でろくでもない兄」が、彼女やそれ以下の人と別れる時に使う常套手段なのだという。最初は(少額だが)金を借りて返さなかったり、その金でパチンコに通いつめたりと女性側からフッてもらうように誘導するが、それでも「別れない」という情の深い女性に対して使う最終手段だ。
ヤマザキ兄も本来綺麗好きな性分なので、この手法を取るのは本意ではないが、彼が「これは手強いな」と感じた女性に対してこれをやるらしい。
「ヤマザキお前……兄貴と似たのが顔だけでよかったな」
「まあねと言いたいところだけど、世の中の女は悪い方に惹かれるみたいでな」
ヤマザキもヤマザキ兄もイケメンの部類に入るが、兄の方が圧倒的にモテ、弟のほうはそこまででもないという背景があった。
兄はそんな弟に優越感を抱くこともなく、女性に対してはクズな兄ではあるが自分の弟は可愛いと思っているようだ。あれはいつだったか、ヤマザキと付き合いながらこっそりヤマザキ兄にも手を出そうとした女性に対して、ものすごい剣幕で怒鳴りつけることがあった。
「アイツと穴兄弟になったらマジで最悪だわ、いつかなるんじゃないかと思ってたけど
。そこらへんの倫理だけは辛うじてあるらしい」
「いいお兄さんだな」
「どこが」
「うしっ! とりあえず、先輩に詫び入れて来るわ」
「うん? あ、お前まさか」
その日の部活前、賢治は後輩先輩の前で深々と頭を下げ、野球部で鍛えられたとてつもない声量で謝る。
「これから数日間、一身上の都合により自分は風呂に入りません! 不潔かもしれませんが今しばらくご辛抱ください!」
「……ケガ?」
「いえ、嫌になるぐらい健康です」
「だよな」
どよめくグラウンドの上で、比較的人格者な3年のお兄様先輩の一人が「何で?」とヤマザキの方を向く。耳打ちで説明をすると、比較的もとい野球部内の数少ない人格者な先輩は「あー……」とすべてを理解した顔で「わかった、俺からもそれとなく言っておく」と返答した。
次のデート日。
「東君、お待たせ!」
「藤岡君、ううん全然待ってな……」
東の目の前に、ぱっと見満身創痍の男が現れた。どれだけ滑り込みをしたらこうなるんだというレベルで泥だらけになった野球服、そして顔を近づけてみれば、控えめに表現するなら数日間風呂にも入れずその辺で寝かせた高校球児の臭いもする。
その臭いは彼の家族にも「風呂に入れ」「臭い」と、ある意味高評価なコメントを頂く程度には完成されていた。
熟成に熟成を重ねた賢治だが、彼にも恥じらいや社会的地位がある。私服のまま臭う人にだけはなりたくなかった彼は、苦肉の策として「運動部帰りの高校生(数日間熟成)」のコスプレをすることにした。
「部活帰り?」
「うん! でも、どうしても東君に会いたくなっちゃって!」
こんな格好でごめんねと賢治は心の底から謝る。心の中のもう一人の賢治に「本当だよ」とツッコミを入れられながら。
「っ! 東君?」
東は臆することなく賢治に近寄ると、そのまま彼を抱き寄せた。長身の彼はそこそこ大きめの賢治よりさらに身長が高く、首筋や頭にその美しい顔を埋めている。
「(こいつ臭い耐性があるのか?)」
ポケ○ンにもそんなタイプ相性ねえよと内心思いながら、賢治はされるがままイケメンに抱きしめられていた。
「俺に会いたくなって、着替えもしないでそのまま来ちゃったの? 可愛い……」
ひとしきり抱きしめてスースー賢治の肩や頭部越しに呼吸をした東は、運動部帰りの高校生(コスプレ)の手を引いて歩き出す。
「え、これからどこ行くの?」
「いいところ」
ついてきて。自分の手や制服を汚れることも厭わないといった風で、イケメンは運動部員と指を絡めて恋人つなぎをする。周囲の視線をもろともせず涼しい顔でエスコートするその姿は、どこぞの王子様のようである。
東が賢治を連れてきた場所は、郊外にあるスーパー銭湯であった。
「……完全敗北じゃん」
「いやー丁度日替わり湯の日で、ミント湯だったんだよな。ミストサウナもよかった」
「普通にスーパー銭湯デート楽しんでんじゃねえよ」
「で、海斗の奴」
「ちゃっかり名前呼びで距離縮めてんじゃねえよ」
「すげえ巨根で、しばらく敬語になったわ」
「何畏怖の念抱いてんだよお前は」
距離縮めたいのか遠ざけたいのかはっきりしろとヤマザキが吐き捨てる。裸の付き合いで親睦を深めた二人は、とても楽しくスーパー銭湯デートを満喫したのだった。
5月23日。野球部のお兄様たちが卒業してしばらくし、3年生となった賢治と特にヤマザキにとって衝撃的な事件がおこった。その日もいつものとおり二人は昼ご飯を食べていたが、どこか賢治はぼんやりとしており、心なしか食欲がないようにも見えた。
「どしたフジケン? 腹痛い?」
「海斗とキスしちゃった」
長い長い数秒の沈黙後、きゃぁあとヤマザキから甲高い悲鳴が上がり「なんてこと、アンタなんてこと……」と何故かオネエ口調で彼は静かに身を震わせていた。
「お前突然! 予備動作なしで恐ろしい事言うのやめてくれる!?」
「こないだ夜景を見に行った時に、突然海斗が真面目な顔つきになって……」
「いらんわ細かいディティール。すっかり恋する乙女の顔つきになりおってからに」
例の罰ゲームから早半年が経過している。
賢治はともかくとして、東のほうは最初から罰ゲームだと知っていて仕返しをしているのではないか? でも仕返しにしてはあまりにもやり方が相手にとっても諸刃の剣すぎる。それでは賢治のことが実は好きだったのではないか?
ヤマザキは脳みそで使った糖分を補うべく、苺牛乳をズゾゾと啜りつつ「でも幸せならOKです」と、最終的には現実逃避をキメることにした。
それから次の週、ヤマザキにとって青天の霹靂とも呼べる出来事が起こる。いや、或いは心のどこかで予測できていたことを、現実として受け入れたくなかっただけかもしれない。
「ヤマザキ、実は。俺海斗とやった」
爽やかな初夏の風、昼休みの賑やかな校内を全力疾走するヤマザキと、それを「ちょ、待てよ」とどこかのキムタクの如き台詞を吐いてから後から追う賢治。二人は野球部のレギュラーであり、互いにとって大変なことに、どちらも脚力には自信があった。
「最低、不潔よぉフジケン!! アタイアンタがそんな人だなんて思わなかった!」
「待ってよぉヤマザキ! アタイだってこんなことになるとは思わなかったのよぉ!」
「だって彼優しくて」だの「このアバズレ」だの、場末のオカマバーで繰り広げられるような会話を、野球部の男たちが疾走しながら繰り広げている。
「待てよヤマザキ!」
「……どっち?」
「は?」
「お前はどっちだって聞いてんだよ!! 掘ったのか、掘られたのか!」
「……俺が、掘られた」
「いやぁあああ!!」
何度目になるだろう悲鳴を上げると、ヤマザキはそのまま東のいる教室へ向かった。教室はざわついており、東の周りにはクラスの人気者や美女たちが樹液に群がる虫共(ヤマザキ談)のように集まっている。
「……ヤマザキだ、東ちょっと面貸せ」
軍隊のように厳しい野球部に呼び出され、東は一瞬表情を曇らせる。しかしヤマザキの隣に賢治がいることを見つけると「わかった」と席から立ち上がりこちらへ向かってきた。
校舎裏に呼び出すときは、ヤキ入れか告白と相場が決まっている。今回は前者のようでヤマザキはそれこそ予備動作もなく、突然東の顔面を1発殴りつけた。
「何やってんだヤマザキ!」
まだ興奮冷めやらないヤマザキを後ろから羽交い絞めし、「すまん海斗、無事か?」と少しだけ泣き出しそうな声で気遣う。
「お前どういうつもりなんだよ!!」
殴られた時に口元を切ってしまった東は手の甲で拭いながら鋭くヤマザキを睨み付けるが、彼の目からぼたぼた大粒の涙がこぼれているのを見つけると、ギョッとした表情で握りこぶしを解いた。
「フジケンはオレの親友だ。そりゃもういい奴なんだよ。確かに半年前の告白はやりすぎたかもしれない、悪ふざけにもほどがある。告白される側……東の気持ちを考えてなかった。スマン。そこは野球部を代表して謝る」
あの告白が罰ゲームだったって、お前は知っているんだろうという前提でヤマザキが話す。対して東は「何故突然野球部が? 」という表情を一瞬作るが、彼も聡い人間のためまあそういうことだったのだろうと薄々何かに気づいていたこととあわせて、罰ゲームの主催が野球部であったということを瞬時に理解したようだった。
「あれは酷い悪ふざけだったかもしれないけど、こいつは違うんだ。真面目にお前に向き合って、真剣にお前の恋人して、そんで全力でお前にフラれようとしてたんだ……」
ヤマザキの言葉にさっと顔を青ざめさせたのは賢治だ。吐き出されてしまった言葉を押し込めようとするように、ヤマザキの口を無意識に塞ごうとするが手を払いのけられてしまい、それは叶わなかった。
「こいつも頭悪いわけじゃねえんだけど、ところどころ馬鹿だから。多分最初は普通に友達として東に好意を抱いていたんだと思う。そこで終わればよかったけど、フジケンの話聞いてると東すげー優しいらしいからさ。こいつもどんどん気づかないうちに、無意識に東が気になっていったんだと思うよ」
「……うん」
東は静かにヤマザキの話に耳を傾けている。
「……なんで、フジケンとヤッたんですか」
意趣返しのつもりなら少し酷すぎる。多少の罵詈雑言もしかたないと思うし、手酷くアイツをフッてやればよかったじゃないですか。フジケンは良い奴で多少馬鹿だから、嫌がらせで掘られても「こうなったのも全部自分の責任だ」って受け入れてしまうだろうとヤマザキは言葉を繋げた。
「……お父さん」
「誰がお父さんだ」
「お兄さん」
「同年代だよ」
「お母さん」
「性別を超越させるな」
「ヤマザキさん、俺は賢治君のことが好きです。本気です。一生大切にします」
東は深々と頭を下げる。それから賢治の方に向き直ると彼の近くまで寄り、まるで騎士が姫に忠誠を誓うように跪いた。
「ちゃんと言葉にしていなかったから不安にさせちゃったんだね、ごめんね賢治。大好きだよ。これからもずっと、俺の恋人でいてください。」
「……俺も」
顔を耳まで真っ赤に染めた野球部員は、本人も無自覚なまま実はかなり早い段階で東に落とされており、今回の告白はその決定打となった。
「お父ちゃん」
「誰がお父ちゃんだフジケン。東、そこの息子みたいな娘泣かしたら、もう一発殴りにいくからな」
父役と義理の父役を同時にこなしたヤマザキは、幸せになれよと中指を立てつつその場を後にするのであった。
それからまた時は経ち、高校を卒業し大学を卒業し社会人になっても、彼ら二人は一緒だった。
『出会いですか? 大学時代にサークルで』
『うちは趣味つながりで』
『実は、うちはマッチングアプリから……』
休日にテレビをぼけーと見つつ賢治は「うちは罰ゲームから始まった」と独り言をつぶやく。彼の最愛の恋人は、今では良きパートナーとなった。
付き合っていくうちにわかったことが、東海斗はとても嫉妬深く執着心の強い男で、パートナーシップも養子縁組も早々に結んだ。
それから簡略化した式を挙げて、きらりと左手の薬指に光るシルバーの指輪は愛と執着の証である。そのシンプルなデザインとは裏腹に、給料3か月分なんて金額ではとても払えないぐらい高額なものだった。
「……賢治」
「お、起きたか。はよ。休日なのに早起きだな」
「起きたら賢治がいなかったから」
まだ完全に目覚めていない様子で、海斗はふにゃふにゃしながら元野球部で現野球選手の賢治に抱き付く。彼の引き締まった腹やむっちりした胸筋は海斗のお気に入りで、離れたくないといった様子ですりすり全身を摺り寄せている。
「そういえば、高校時代に俺が数日風呂に入らず海斗をデートに誘ったこと、覚えてる?」
「……あれ、最高だった。またやって?」
「やだよ」
「じゃあ、試合終わったらシャワー浴びないでそのまま汗だくで会いに来て」
「チームのメンバーに何事かと思われるわ」
あの時、賢治の匂いが濃くて最高だった。でも照れくさくってついスーパー銭湯に誘っちゃった。あのまま家に連れ帰ればよかったな。上目づかいでこちらを見て来るイケメンは、高校時代からそこそこの変態でもあったようだ。
「……もしもし、お義父さん。お久しぶりです」
「誰が義父さんだ」
月日が突風のように過ぎ去って、皆いい歳になった。高校時代、いや20代30代の記憶すらもセピアがかった遠い思い出となったある日。旧友で二人を引き合わせてくれた恋のキューピットヤマザキに電話をしているのは、賢治ではなく海斗であった。
「ちょっと話があるんですが」
「どうした、うん。うん賢治が。……まだら認知症?」
孫を膝に乗せてデレデレのお爺ちゃんになっていたヤマザキは、瞬時に表情を引き締める。まだら認知とは物忘れはひどいけれど理解力には問題ない、同じ事ができる時と出来ない時があるといった症状に波があるのがその特徴だ。
「ええ、軽度なんですが。それとたまに、彼が高校時代の賢治君に戻ってしまうんですよ」
普段はしっかりしているが、頭の中でタイムトラベルが起こっているのか、時折賢治は心が高校生に戻ってしまうことがある。また、遡った際はいつもあの罰ゲーム告白をおこなった直後に記憶が巻き戻されてしまうようだ。
「藤岡君」
最愛の男が高校生に戻ってしまう時、海斗はいつも昔の呼び名で彼を呼ぶ。
「東君! お昼一緒に食べない? 俺弁当作って来たんだ」
「嬉しいな、一緒に食べよう」
賢治が作る弁当は二人が付き合って間もない頃に一緒に食べたもので、ラップに包まれたおにぎりと弁当箱に入った卵焼き、タコさんウィンナーにハンバーグ。弁当の隙間を埋めるために添えられた冷凍のブロッコリーと、それから大きい水筒に入ったオレンジジュースだ。
「東君! はい、おしぼり! ジュースもあるよ」
「……ありがとう、藤岡君は気が利くね」
古い映画フィルムを巻き戻すように、何度も何度も過去にあった思い出を繰り返してゆく。この時の彼はまだ海斗のことが恋愛的な意味で好きではなく、それでも全力でフラれるためになりふり構わず好意をぶつけていた。
また、時折賢治は数日風呂に入らなくなることがあった。認知症が進んでしまったのかと医師が懸念するが、それもちがう。
『これから数日間、一身上の都合により自分は風呂に入りません! 不潔かもしれませんが今しばらくご辛抱ください!』
昔、賢治が野球部で宣誓したあの出来事を繰り返しているだけだ。そんな時、海斗はいつも賢治を抱きしめて頭や首に顔を埋める。
「(賢治の匂いがする)」
スースー匂いを嗅いでいるふりをして、時折零れ出そうになる嗚咽を隠す。海斗からフってくれるようにいつも全力だったあの頃の賢治は、可愛くて切ない。
『俺に会いたくなって、着替えもしないでそのまま来ちゃったの? 可愛い……』
あの頃と同じように、自分はできているだろうか。海斗は手を引いて賢治を風呂に連れてゆく。思い出のスーパー銭湯はとっくに無くなってしまったし、二人で風呂に入ることができれば、賢治の症状はいったん落ち着くからだ。
「なあ、東君。君の事名前で呼んでもいい?」
「……うん、いいよ。賢治」
これはいつだったか二人で夜景を見に行った時の思い出だ。この頃から賢治は自分を恋愛対象としてうっすら見ていてくれたんだろうか。あの時と同じようにそっと触れるだけのキスをするが、かさついてしまった唇すらも愛おしい。
夜景のお陰で赤く染まった顔がばれることなく、こっそり安堵したあの夜。賢治も同じ気持ちでいてくれただろうか。
その日の賢治は、海斗も見たことがない賢治だった。一心不乱に何かを書いているが、それは一枚の手紙だった。しばらくして手紙を書き終えた彼は読み返すと、ぽたりと涙を落とす。それからぐしゃぐしゃに握りつぶしてゴミ箱へと捨てた。
海斗の姿が目に見えていないようにしゃがみこんでしまい、微動だにしない賢治が気がかりであったが、海斗は捨てられた手紙を拾って読むことにした。
「東君へ、突然ですが俺は君に酷いことをしました。あの告白は罰ゲームだったのです。本当にごめんなさい。俺はこのことを君に伝えず、ただ君のことが好きで告白したことにしています。そして君に全力で好意を伝えて、全力でフラれるのを待っていました。
でも、今は本当に君のことが好きになってしまいました。自分でも今更か、酷いなと思います。君の優しさが好きです。君の声が好きです、普段は無表情だけど時々困ったように笑う顔が好きです。でも、たまにしか見られないけど顔いっぱいで笑ってる君の顔はもっと好きです。
俺の作った弁当を笑顔で食べてくれてありがとう。わざとダサい恰好でデートしたのに、可愛いって言ってくれて、くすぐったくてでも嬉しかったです。汚い恰好で君の前に現れた時も嫌な顔一つ見せず、抱きしめてくれてありがとう。俺は君が」
最後の『大好きです』という文字が黒く塗りつぶされている。
「……知ってたよ」
海斗は賢治を後ろから抱きしめる。ビクリと怯えた様子で身を震わせる賢治を優しく包み込み、言葉を続ける。
「何だってよかったの」
きっかけなんて些細な事だから。罰ゲームでも本当の告白でも、友達からのお付き合いでもなんでも。俺は君に会えたことが嬉しかった。最初は純粋に仲良くなりたかったんだ。でも、すぐにそんなの吹き飛んじゃって、あっという間に君に惚れていました。そこから先は自分でも笑っちゃうぐらいに必死で、でもそれ以上にどんな君でも好きだった。
「……ああ。ようやくこれで、何の未練も残さず逝けるね」
俺も、賢治も。ぽっかり空いたパズルのピースは二人の心をカチリを埋める。
「……おう、海斗。どうした? お腹痛いのか?」
「……賢治?」
どこか靄がかかったような賢治の視界はクリアになり、彼はタイムトラベルから現在に帰ってきたようだった。
それから不思議なことに、死が二人を分かつまで、賢治が高校時代に戻っていくことはなくなった。
精神的なものだったんですかね、とは医者の談だ。
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コメントありがとうございます!
こちらこそ、お時間を割いてくださったうえに、嬉しい感想までありがとうございます!
この作品も面白いし、最後の所 ウルっとなりなした。
読ませて頂きありがとうございました。
こちらも読んでくださって嬉しいです、ありがとうございます!
唐突に感想失礼します!
短編なのに中身ギッシリで時折おもろいギャグが入ってて最後には感動で...最高でした...。
コメントありがとうございます、当方アルファポリスに不慣れで、返信が遅くなりまして申し訳ございません。
感想とても嬉しいです!ギャグが心配だったので、少しでも笑って頂けたなら幸いです笑