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「オリヴェル様。……宜しいのです」
「! しかしその腕では……!!」
「私は貴方をお守りする事が出来たのなら、命を落としても構いません。それが私の矜持です」
「だが……!」
「逆に言えば腕一本で済んだのです。もう一本でなんとかなります」
「だってこのままでは!」
主従愛が美しいのはわかるが、見せられているエルヴィは困惑していた。青年の腕を治す方法が無いわけではないのだ。『多分』ではあるが。
ーーどうしよう。話挟んじゃってもいいかなぁ。
「あ、あの!」
二人で言い合うのを見ながらおろおろとしていたエルヴィだったが、意を決して声を張り上げた。途端、二人が口を閉ざしてエルヴィの方を勢いよく向くので思わずビクッとしてしまう。
「えっ、と。 ……腕治したいですか?」
「!! な、治せるのか!?」
もういい、と強がっていた青年も本当は治したいのだろう。当然だ。どうやら利き腕では無いようだが、片腕で貴人の護衛はさせて貰えない筈だ。
ヒールの魔法を使える者は多いが、中級のハイヒールとなると途端に数が減り、使えるのは『回復術師』のスキルを持つ者だけだ。通常のポーションもヒールと同じくらいの回復力しか無い。その上、上級の『エクストラヒール』ともなると聖女のみが使えたと言われている伝説級の魔法だ。
欠損ではないが、怪我の程度からそれくらいの魔法でしか治せないし、魔法をかけるまでの時間が長ければ長い程治りが悪くなる。少なくともマルククセラの領都には回復術師は居なかったから、見て貰うまでに数日はかかるだろう。
その事実を理解している故に諦めていたのだ。それが治るかもしれないとなれば食い付くのは当たり前だ。
「申し訳ありませんが、はっきりと『治せる』とは言えません。理由も今は言えません」
エルヴィは居住いを正し、二人へ顔を向け、静かに問いかけた。彼らが何を目的にこの森に居たのか聞いてみない事には教えられない。何せエルヴィのとっておきの方法なのだ。
「では、改めまして。私の名はエルヴィと申します。お二人にお尋ねします。貴方方はこの森で何をなされたのですか?」
ワイルドボアは夜行性だ。昼間に遭遇する事もあるが、余程の事がない限り人に襲いかかる事などない。ボアの方が人を怖れて逃げ出すからだ。 そのボアがあんなにも興奮して突進するなど珍しい。何かきっかけがある筈だ。
エルヴィの問いに、二人が顔を見合わせた。正直悪い人には見えないが、何か隠していることは確かだ。何なのか正直に話してくれるだろうか。
「! しかしその腕では……!!」
「私は貴方をお守りする事が出来たのなら、命を落としても構いません。それが私の矜持です」
「だが……!」
「逆に言えば腕一本で済んだのです。もう一本でなんとかなります」
「だってこのままでは!」
主従愛が美しいのはわかるが、見せられているエルヴィは困惑していた。青年の腕を治す方法が無いわけではないのだ。『多分』ではあるが。
ーーどうしよう。話挟んじゃってもいいかなぁ。
「あ、あの!」
二人で言い合うのを見ながらおろおろとしていたエルヴィだったが、意を決して声を張り上げた。途端、二人が口を閉ざしてエルヴィの方を勢いよく向くので思わずビクッとしてしまう。
「えっ、と。 ……腕治したいですか?」
「!! な、治せるのか!?」
もういい、と強がっていた青年も本当は治したいのだろう。当然だ。どうやら利き腕では無いようだが、片腕で貴人の護衛はさせて貰えない筈だ。
ヒールの魔法を使える者は多いが、中級のハイヒールとなると途端に数が減り、使えるのは『回復術師』のスキルを持つ者だけだ。通常のポーションもヒールと同じくらいの回復力しか無い。その上、上級の『エクストラヒール』ともなると聖女のみが使えたと言われている伝説級の魔法だ。
欠損ではないが、怪我の程度からそれくらいの魔法でしか治せないし、魔法をかけるまでの時間が長ければ長い程治りが悪くなる。少なくともマルククセラの領都には回復術師は居なかったから、見て貰うまでに数日はかかるだろう。
その事実を理解している故に諦めていたのだ。それが治るかもしれないとなれば食い付くのは当たり前だ。
「申し訳ありませんが、はっきりと『治せる』とは言えません。理由も今は言えません」
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「では、改めまして。私の名はエルヴィと申します。お二人にお尋ねします。貴方方はこの森で何をなされたのですか?」
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エルヴィの問いに、二人が顔を見合わせた。正直悪い人には見えないが、何か隠していることは確かだ。何なのか正直に話してくれるだろうか。
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