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取り調べは公平に行いましょう
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「そ、そんな事はどうでもいい。貴様がラウラにした事は言い逃れ出来んぞ!!」
自分が言い出したにも関わらず越権の件は自分に不利とみて、どうでもいいと言い出したエーベルハルトに、クラウディアの頬が軽く引きつるが、自分の正義に酔っているエーベルハルトは、まるで気付かない。
「まるで身に覚えがございませんね」
「嘘をつくな!捕らえた暴漢共が貴様に頼まれたと自供しているのだぞ!」
「そうですか。では『その暴漢が嘘をついていない』という裏付けは?」
「なんだと?」
どういう事だと視線で問いかければ、もう取り繕う気も失せたのかクラウディアは呆れた様に溜め息を吐く。その様子を見て馬鹿にされたと感じたエーベルハルトの頭に血が昇るが、クラウディアは額に手を当てながら、呟くように答えた。
「『下賎な平民の言う事など信用ならん』と普段からおっしゃっていたのは殿下ではありませんでしたかしら? なのに、今回の事は随分と素直にお信じになられたのですね」
「……っ」
気位いの高い王妃の影響か、エーベルハルトはやや選民思想が強かった。王やクラウディアが何度か諫めるものの、一度ついた思想はなかなか変える事が出来ず、王の頭を悩ます原因の一つであった。故にそのエーベルハルトが下級貴族である男爵令嬢に入れ込むようになったのは、クラウディアにとっては意外に感じていたのだ。一体どんな手管を使えばここまで意見を曲げさせられるのか、男爵令嬢に聞いてみたい気もするが、その辺りは王家の暗部で調べるべき事案だろう。
「以前何かの小説で読みましたわねぇ。破落戸にお金を少額渡して誰かを襲わせる振りをさせ、捕まった時に誰々に命令されたと証言しろ、その通りやり遂げる事が出来たなら、自分の権限で釈放してやるし、残りの依頼金を渡してやる、などと取引する描写を。そういうのを『やらせ』というんでしたかしら? それとも『捏造』?」
「!? 俺がそんな事をしたと思っているのかっ!?」
「殿下が指示したとは一言も申しておりませんわ。似たような話、と思っただけですもの。……ああそういえば同じ様な話で『自称被害者の自作自演』、というのも何処かで読んだかしら」
「い、言うに事欠いてラウラの自作自演だと言うのかっ!? もう我慢ならん! その様に卑しく品性の劣る輩を俺の婚約者として認める訳にはいかぬ! 本日をもって貴様との婚約を破棄する!! 無論生徒会役員の任もだ! さっさとここから出ていけ!!」
「畏まりました」
「その生意気な口を利いた事を後悔し、泣いて縋っても遅……え?」
「婚約破棄と役員解任、確かに承りました。こちらも今書類を用意致しますので少々お待ち下さい」
「こ、婚約破棄ですよ!? 王太子妃にも王妃にもなれなくなるのですよ!? 良いのですか!?」
クラウディアは新たに机から白紙を取り出すと、直ぐ様何か書き始めた。その様子をどういうことかと驚きの表情で見ていた会計ーー宰相子息のユリウスが慌てて口を出すが、クラウディアは顔を上げることなく手を動かしながら答える。
「構いませんわ。元よりわたくしが望んだ婚約ではありませんでしたし。それでもなんとか殿下のお心に添えるよう努力はしてきたつもりでしたが、認めていただけないのでしたら仕方ありません」
「な、何だと?望んでないとはどういう事だ!?」
「言葉通りの意味ですわ。殿下との婚約は王家よりの勅命によるものでしたもの。当家に拒否する術はありませんでした。……その時は」
自分が言い出したにも関わらず越権の件は自分に不利とみて、どうでもいいと言い出したエーベルハルトに、クラウディアの頬が軽く引きつるが、自分の正義に酔っているエーベルハルトは、まるで気付かない。
「まるで身に覚えがございませんね」
「嘘をつくな!捕らえた暴漢共が貴様に頼まれたと自供しているのだぞ!」
「そうですか。では『その暴漢が嘘をついていない』という裏付けは?」
「なんだと?」
どういう事だと視線で問いかければ、もう取り繕う気も失せたのかクラウディアは呆れた様に溜め息を吐く。その様子を見て馬鹿にされたと感じたエーベルハルトの頭に血が昇るが、クラウディアは額に手を当てながら、呟くように答えた。
「『下賎な平民の言う事など信用ならん』と普段からおっしゃっていたのは殿下ではありませんでしたかしら? なのに、今回の事は随分と素直にお信じになられたのですね」
「……っ」
気位いの高い王妃の影響か、エーベルハルトはやや選民思想が強かった。王やクラウディアが何度か諫めるものの、一度ついた思想はなかなか変える事が出来ず、王の頭を悩ます原因の一つであった。故にそのエーベルハルトが下級貴族である男爵令嬢に入れ込むようになったのは、クラウディアにとっては意外に感じていたのだ。一体どんな手管を使えばここまで意見を曲げさせられるのか、男爵令嬢に聞いてみたい気もするが、その辺りは王家の暗部で調べるべき事案だろう。
「以前何かの小説で読みましたわねぇ。破落戸にお金を少額渡して誰かを襲わせる振りをさせ、捕まった時に誰々に命令されたと証言しろ、その通りやり遂げる事が出来たなら、自分の権限で釈放してやるし、残りの依頼金を渡してやる、などと取引する描写を。そういうのを『やらせ』というんでしたかしら? それとも『捏造』?」
「!? 俺がそんな事をしたと思っているのかっ!?」
「殿下が指示したとは一言も申しておりませんわ。似たような話、と思っただけですもの。……ああそういえば同じ様な話で『自称被害者の自作自演』、というのも何処かで読んだかしら」
「い、言うに事欠いてラウラの自作自演だと言うのかっ!? もう我慢ならん! その様に卑しく品性の劣る輩を俺の婚約者として認める訳にはいかぬ! 本日をもって貴様との婚約を破棄する!! 無論生徒会役員の任もだ! さっさとここから出ていけ!!」
「畏まりました」
「その生意気な口を利いた事を後悔し、泣いて縋っても遅……え?」
「婚約破棄と役員解任、確かに承りました。こちらも今書類を用意致しますので少々お待ち下さい」
「こ、婚約破棄ですよ!? 王太子妃にも王妃にもなれなくなるのですよ!? 良いのですか!?」
クラウディアは新たに机から白紙を取り出すと、直ぐ様何か書き始めた。その様子をどういうことかと驚きの表情で見ていた会計ーー宰相子息のユリウスが慌てて口を出すが、クラウディアは顔を上げることなく手を動かしながら答える。
「構いませんわ。元よりわたくしが望んだ婚約ではありませんでしたし。それでもなんとか殿下のお心に添えるよう努力はしてきたつもりでしたが、認めていただけないのでしたら仕方ありません」
「な、何だと?望んでないとはどういう事だ!?」
「言葉通りの意味ですわ。殿下との婚約は王家よりの勅命によるものでしたもの。当家に拒否する術はありませんでした。……その時は」
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