上 下
4 / 18
姉妹(カルラ視点)

4

しおりを挟む
「私とアルフレード様の婚約は父と大公殿下との間に結ばれたものです。私の一存ではどうこう出来ません」

「実の妹がこれ程苦しんでいるというのに、君には情というものがないのか!?」

 正論で返せば、論点をすり替えられた。実の妹ではなく半分妹だし、情があるかないかといえば全くありませんが。

「ルーチェ!お前は王太子殿下の婚約者なのだぞ!?このままなら王妃になれるのだぞ!?」

 再び伯爵を見ると、真っ青な顔のままルーチェ達の前へ飛び出してきた。周りの参加者達がざわめく。当たり前だ。今年二十歳になる王太子殿下に今まで婚約者はおらず、候補の噂すらなくどうなっているのかが、夜会でよく話題に上っていた。それが、伯爵位でも下から数えた方が早いくらいの序列のオルシーネ家令嬢が婚約者とはどういうことだと疑問に思うだろう。

「お父様!私は地位よりも名誉よりも愛に生きたいのです!」

 ルーチェが今一番手に入れたいものがアルフレード様である以上、確実に手に入るまでは誰の言うことも聞かないだろう。そういう性格に育てたのは現伯爵夫妻だ。

 伯爵はルーチェを溺愛してはいたが、それはあくまで成り上がる為の駒を大事にしていたにすぎない。それはルーチェにとっても同じだ。自分の感情と利益のみで繋がった似た者親子。今彼は愛娘から強烈なしっぺ返しをくらった形だ。

「私の一存では破棄も解消も白紙にもできませんが、愛し合う二人を引き裂くことも本意ではありません。父は聞かずとも許して下さると思いますので、あとは大公殿下のご意志のみかと」

「何を馬鹿な事を!!私は破棄など認めんぞカルラ!!」

「……オルシーネ伯爵。認めていただく必要はありません」

 伯爵が私に向かって怒鳴り付けるが、私には彼に従わなければならない義理はない。何故なら……

「認めよう」

「はぁっ!?」

 その時、壇上から静かに声がかけられた。そして壇上を見やり先程まで激昂し顔を赤らめていた伯爵が、一瞬で真っ青に戻る。どうやらこの茶番劇の特等席に誰が座っているのか思い出したようだ。

「フォレスタ王国国王、フォルトゥナート・フォレスタの名において、エターリオ大公子息アルフレードの、サテッリテ侯爵令嬢カルラとの婚約破棄を認めよう」
 
「なっ!?サテッ…リテ……!?」

 まあ。私としたことが、最初の間違いを正すのをすっかり忘れていましたわ。自分で思っていた以上に動揺していた様です。

「アルフレード様。私はカルラ・オルシーネではありませんわ。先月ようやくサテッリテ侯爵家に養女として迎えていただきカルラ・サテッリテとなりました。つまり私の父はサテッリテ侯爵。オルシーネ伯爵ではありません」

「なに!?どういうことだオルシーネ伯爵!!」

 あら?忘れていた訳ではなく、アルフレード様はご存知なかったのかしら。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

婚約破棄する王太子になる前にどうにかしろよ

みやび
恋愛
ヤバいことをするのはそれなりの理由があるよねっていう話。 婚約破棄ってしちゃダメって習わなかったんですか? https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/123874683 ドアマットヒロインって貴族令嬢としては無能だよね https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/988874791 と何となく世界観が一緒です。

妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです

hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。

とっても短い婚約破棄

桧山 紗綺
恋愛
久しぶりに学園の門を潜ったらいきなり婚約破棄を切り出された。 「そもそも婚約ってなんのこと?」 ***タイトル通りとても短いです。 ※「小説を読もう」に載せていたものをこちらでも投稿始めました。

追い出された妹の幸せ

瀬織董李
恋愛
『聖女の再来』といわれる姉の影で虐げられてきた妹のエルヴィ。 少しでも家の為にとポーション作りに励んできたが、ある時ついに父から『姉が結婚するで出ていけ』と言われてしまう。 追い出された妹の幸せは何処にあるのか。 7/26 姉のスキルに関する記述を変更しました。ストーリーに変化はありません。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

皆様ごきげんよう。悪役令嬢はこれにて退場させていただきます。

しあ
恋愛
「クラリス=ミクランジェ、君を国宝窃盗容疑でこの国から追放する」 卒業パーティで、私の婚約者のヒルデガルト=クライス、この国の皇太子殿下に追放を言い渡される。 その婚約者の隣には可愛い女の子がーー。 損得重視の両親は私を庇う様子はないーーー。 オマケに私専属の執事まで私と一緒に国外追放に。 どうしてこんなことに……。 なんて言うつもりはなくて、国外追放? 計画通りです!国外で楽しく暮らしちゃいますね! では、皆様ごきげんよう!

処理中です...