上 下
18 / 21

大地の玉、争奪戦Ⅳ

しおりを挟む
「この俺が負けるか!!」

 バロガンはそう言うとさらに魔力を込めて、デストロイ・ライトニングフラッシュのパワーを底上げした。

「なに!?」

 クルーデスのアビス・ダークフラッシュがみるみる押されていく。

「まだ足りんか! くれてやる!」

 バロガンはニヤリと笑みを浮かべたそのときだった。魔力はさらに膨張し、そのままクルーデスに魔法が直撃。

 直撃した瞬間、太陽のような眩い光が大地に降り注ぎ、響き渡る轟音は雲を揺るがしているかのよう。徐々に上がる茸雲は次第に空を覆う。

「これで生きていたらなかなかの化け物だがな――」

 衣服が破れ、褐色の素肌を晒しているクルーデスはそのまま地面へと落ちてきた。

 同時に四つの魔力を感じたバロガンは上を見上げた。

「やっぱり蒼雷だったか」

 蒼雷、玲、夜炎、雪菜は空から飛び降りてきた。そして彼がいたであろう空は飛行船が通過して行く。

「お前たち飛行船から飛び降りてきたのか」

「そうですよ! それにしてもさっきのデストロイ・ライトニングフラッシュえげつなかったですね。もうちょっと手加減してもよかったのに」

 蒼雷がバロガンに向かって話をしているのが、三人のなかでは違和感しかなかった。特に、玲と雪菜はナチュラルにビビっているようで、馬鹿デカい魔力に葬られた、倒れたクルーデスに視線を向けたり、バロガンに戻したり、見るからに不自然な行動を取っていた。

「で、何しにきたんだ蒼雷。それにまあまあ大きい魔力を持った奴等を連れてきたじゃないか」

「属性玉を探しに来たんですよ。それに、もう 闇の支配者ダークルーラー来ていますよね?」

「ああ――デカい魔力を持ったのが他に四人いたな。残りは雑魚だったが」

「成程。バロガンさんもついてきてください。五人で一緒に森へ入りましょう」

 蒼雷がバロガンの腕を引っ張り、森の中へ入ろうとしたその時だった。

 玲と雪菜が「えっ――」と声を漏らしていた。

 二人は、顔を青ざめながら口元を覆っている。その視線の先には、全身から流血をさせながらゆらゆらと歩くクルーデスの姿が。

「また心音が上がってきたな。奴は不死身か」

 夜炎は見えていないものの、どういう状況なのかはすぐに理解できる。降り立った時にはあれほど心音が小さかったのに、徐々に上がっていく。

「いい技だったぞバロガン・パウワ」

「お前マジか」

 バロガンはそう言って、額から汗が流れ始める。

 玲と雪菜は、流石の 七色の雷操者アルレーズのバロガン・パウワといえど少し怖気づいた――と思ったが。

「パウワさん。もしかしてワクワクしていますか?」

 夜炎がそう言うと、バロガンは怪訝な表情を浮かべながら夜炎を見る。

「なんで分かったんだ?」

「俺は普段、炎神の瞳ディスティハーダアイのハンデで、目が見えないのです。なので、訓練をしているうちに、異常聴覚を会得し、心音や脈の音まで聞こえるのです」

「蒼雷――お前、面白い友達できたな!」

 バロガンはそう言って蒼雷の背中をポンと叩くと、蒼雷は「いてっ」と言いながら躓く。

「もうちょい加減をしてくださいよ。それに敵さん置いてけぼりにしているし」

 蒼雷はそう言いながらクルーデスを指す。大分落ち着いてきたのか、荒かった呼吸が整ってきている。しかし、バロガンに焦る様子は無い。

「来るなら来い」

「いいだろう。本気を見せてあげよう。俺の本当の力を知る者は闇の支配者ダークルーラーにも少ない。でなければ俺の序列がNO.6イルービなわけ無かろう」

「数字が若いほど強いってことでいいんだよな? レイゾンとザギロスのNO.は?」

「レイゾンが 2ルサンで ザギロスが4ジェンだ」

「なるほど。しかし、あの二人ならそのNO.が妥当ではあると思うが」

「包帯を取れば分かるさ」

 クルーデスはそう言って顔の包帯を取り始めた。

 その正体が気になり、蒼雷、玲、雪菜は思わず固唾を飲む。

 俯きながらゆっくりと剝がれていく包帯――。

 全ての包帯が取れるとクルーデスの素顔を露わになると、玲と雪菜の顔を蒼白になっていく。

 蒼雷も「マジか――」と声を漏らす。

 無理も無い。クルーデスの素顔は、頭部に毛は無く、削げ落ちた鼻。そして薄い青色の目は、光の無い黄色の目に変色した。

「醜き顔と引き換えに、悪魔の力を一部を我に与え給え。発動、悪魔の顔イビルマスク

「おいおい、能力って聖霊と契約を交わして発動するじゃなかったのか? あいつ、聖霊の名前を出していないぞ」

 蒼雷の発言にバロガンも頷く。

「確かに――」

 クルーデスはその詠唱と共にみるみる大きくなっていく。200cm以上あった体は、600cmを越え、魔力も先程とは比較にならない程増幅した。

 魔力の嵐が土煙を巻き上げながら、石礫いしつぶてを飛ばす。禍々しい邪気で空気が一気に冷えたようだ。

「なかなかの魔力量だな。楽しめそうだ。蒼雷、ここ俺に任せてくれ、というか邪魔になる」

「もっと暴れるんですね」

「そうだ」

 バロガンのドスの利いた低い声が迫力が増す。

 蒼雷が森の中へ駆け込むと、夜炎、玲、雪菜も続く。それを確認したバロガンは首を左右に振って鳴らした後、右手でターバンを取った。

 朱色の髪の毛をオールバックにしているバロガンは口角を吊り上げてクルーデスを見上げた。


 




















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

ああ、もういらないのね

志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。 それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。 だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥ たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子
ファンタジー
公爵家の娘である私は死にました。 何故か休学中で婚約者が浮気をし、「真実の愛」と宣い、浮気相手の男爵令嬢を私が虐めたと馬鹿げた事の言い放ち、学園祭の真っ最中に婚約破棄を発表したそうです。残念ながら私はその時、ちょうど息を引き取ったのですけれど……。その後の展開?さぁ、亡くなった私は知りません。 世間では悲劇の令嬢として死んだ公爵令嬢は「大聖女フラン」として数百年を生きる。 長生きの先輩、ゴールド枢機卿との出会い。 公爵令嬢だった頃の友人との再会。 いつの間にか家族は国を立ち上げ、公爵一家から国王一家へ。 可愛い姪っ子が私の二の舞になった挙句に同じように聖女の道を歩み始めるし、姪っ子は王女なのに聖女でいいの?と思っていたら次々と厄介事が……。 海千山千の枢機卿団に勇者召喚。 第二の人生も波瀾万丈に包まれていた。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

処理中です...