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第51話 エピローグ
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あの、キマイラの絶品肉を食いまくった会から数日後。
ハムザ・ヘンダーソンが転校した。
別のアカデミーに欠員がいるのでその生徒とのチームを組むように、ということだった。
ハムザ・ヘンダーソンは、エーギルアカデミーへの残留とエドウィンへのバディ代理を望んだそうだが、却下された。
エドウィンがアイテムハンターだからという以前に、元バディの代理は認められないし、エーギルに残っても余りもいないし転入生の予定もなく、同学年ではチームを組めない、留年するよりは転校して心機一転やり直した方が君のためだと諭したら、しばらく黙った後頷いたそうだ。
エドウィンは見送ったらしいが、俺はやめておいた。
たぶん、詰られるのがわかってるから。
戻ってきたエドウィンに、尋ねた。
「なんか言ってたか?」
「俺らを見返すようなチームを組んでやる、とさ」
なんてことないように言った。
「俺らを見返すのはアイテムハンターにならないと無理だけど……」
そういう意味じゃないんだろう。
「――セイバーズって、対人戦闘を想定した護衛任務があるんだ、って伝えたか?」
「忘れた!」
だよな。
ジェイド学長はきっと、エドウィンとハムザ・ヘンダーソンの関係にも気付いていた気がする。
あの後エドウィンのいないところで聞いたが、ハムザ・ヘンダーソンは今のままだとセイバーズの試験には合格しなかっただろう、と言っていた。
エドウィンとチームを組んでいたとき、恐らく戦闘はエドウィンに任せきり、ならば支援魔法で援護をしていたか、というとそうでもないようだ、ユーノはハムザ・ヘンダーソンと組んでから一人で戦っていたようだった、交流対抗戦のときそれがハッキリとわかった、と言っていた。
長らく猪突猛進のエドウィンと組んでいて、変に慣れてしまったのかもしれない。
考える前に動いて敵を倒してしまうエドウィン。しかも魔法も複数使え、槍の召喚などという最強の技も使える。
俺だって最初は驚いた。
そんな奴が幼なじみで、チームを組んでいて、コイツがバディでなけりゃ俺はもっと戦えるのにと思うのは当然――
「あぁ、そうか」
「なんだよ?」
急に声を出したのでエドウィンが訝しんだ。
――エドウィンも、俺と同じだったのか。
俺もエドウィンも幼なじみと組み、張り切った結果、失敗した。
ただ、ハムザ・ヘンダーソンはチームを解消しようとしなかった。俺の幼なじみは解消した。その違いだ。
「……俺はあんまり知らないけど、ハムザ・ヘンダーソンって意外といい奴だったのかな、って」
「悪い奴じゃねぇよ。じゃなきゃ腐れ縁とはいえ、長い間チーム組んでやってねぇだろ」
俺が呟いたら、エドウィンが即座に言い返した。
「そっか。まぁ、悪い奴じゃなくても合わないと、どうしようもないよな」
俺は、チームを解消された自分を責めると同時に、解消した幼なじみを怨んでいた。
だけど合わないのは、どうしようもない。俺はアイツにとって、長い間チームを組んでやっていこう、と思える相手じゃなかった、ってだけだ。
腑に落ちて、笑った。
そして、エドウィンに手を差し出した。
「これからもよろしく」
今まで、手を差し出したことはなかったな。幼なじみにユーノ――いつも差し出された手を握ってばかりだった。
だけど……そうだな、俺はずっとさみしがり屋で臆病な子どもだったんだ。だから、そこから一歩前進しよう。
俺は、コイツとバディを組みたい。だから、俺から手を差し出そう。
「あァん? 唐突な奴だな……。つーか、いろいろと今さらなんだよお前は! よろしくな!」
ぶつくさ文句を言いながらエドウィンが俺の手をガシッと握った。
ハムザ・ヘンダーソンが転校した。
別のアカデミーに欠員がいるのでその生徒とのチームを組むように、ということだった。
ハムザ・ヘンダーソンは、エーギルアカデミーへの残留とエドウィンへのバディ代理を望んだそうだが、却下された。
エドウィンがアイテムハンターだからという以前に、元バディの代理は認められないし、エーギルに残っても余りもいないし転入生の予定もなく、同学年ではチームを組めない、留年するよりは転校して心機一転やり直した方が君のためだと諭したら、しばらく黙った後頷いたそうだ。
エドウィンは見送ったらしいが、俺はやめておいた。
たぶん、詰られるのがわかってるから。
戻ってきたエドウィンに、尋ねた。
「なんか言ってたか?」
「俺らを見返すようなチームを組んでやる、とさ」
なんてことないように言った。
「俺らを見返すのはアイテムハンターにならないと無理だけど……」
そういう意味じゃないんだろう。
「――セイバーズって、対人戦闘を想定した護衛任務があるんだ、って伝えたか?」
「忘れた!」
だよな。
ジェイド学長はきっと、エドウィンとハムザ・ヘンダーソンの関係にも気付いていた気がする。
あの後エドウィンのいないところで聞いたが、ハムザ・ヘンダーソンは今のままだとセイバーズの試験には合格しなかっただろう、と言っていた。
エドウィンとチームを組んでいたとき、恐らく戦闘はエドウィンに任せきり、ならば支援魔法で援護をしていたか、というとそうでもないようだ、ユーノはハムザ・ヘンダーソンと組んでから一人で戦っていたようだった、交流対抗戦のときそれがハッキリとわかった、と言っていた。
長らく猪突猛進のエドウィンと組んでいて、変に慣れてしまったのかもしれない。
考える前に動いて敵を倒してしまうエドウィン。しかも魔法も複数使え、槍の召喚などという最強の技も使える。
俺だって最初は驚いた。
そんな奴が幼なじみで、チームを組んでいて、コイツがバディでなけりゃ俺はもっと戦えるのにと思うのは当然――
「あぁ、そうか」
「なんだよ?」
急に声を出したのでエドウィンが訝しんだ。
――エドウィンも、俺と同じだったのか。
俺もエドウィンも幼なじみと組み、張り切った結果、失敗した。
ただ、ハムザ・ヘンダーソンはチームを解消しようとしなかった。俺の幼なじみは解消した。その違いだ。
「……俺はあんまり知らないけど、ハムザ・ヘンダーソンって意外といい奴だったのかな、って」
「悪い奴じゃねぇよ。じゃなきゃ腐れ縁とはいえ、長い間チーム組んでやってねぇだろ」
俺が呟いたら、エドウィンが即座に言い返した。
「そっか。まぁ、悪い奴じゃなくても合わないと、どうしようもないよな」
俺は、チームを解消された自分を責めると同時に、解消した幼なじみを怨んでいた。
だけど合わないのは、どうしようもない。俺はアイツにとって、長い間チームを組んでやっていこう、と思える相手じゃなかった、ってだけだ。
腑に落ちて、笑った。
そして、エドウィンに手を差し出した。
「これからもよろしく」
今まで、手を差し出したことはなかったな。幼なじみにユーノ――いつも差し出された手を握ってばかりだった。
だけど……そうだな、俺はずっとさみしがり屋で臆病な子どもだったんだ。だから、そこから一歩前進しよう。
俺は、コイツとバディを組みたい。だから、俺から手を差し出そう。
「あァん? 唐突な奴だな……。つーか、いろいろと今さらなんだよお前は! よろしくな!」
ぶつくさ文句を言いながらエドウィンが俺の手をガシッと握った。
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