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第46話 これが最後の別れだ
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キャル鑑定士は咳払いをすると、俺の顔色をうかがうような感じで告げてきた。
「……ユーノ君に対しては……。正直、庇いきれなかったよ。君の希望通りかどうかはわからない。――彼は懲戒処分でアカデミーを退学。ユーノ君自身は母親と同じ収容所に入ることを希望していたけど、共犯だから同じ収容所に入れることは叶わない。真反対に位置する更生施設に入ることになったわ」
「……そうですか」
マザコンには、結構堪える罰だろうな。
キャル鑑定士はさらに教えてくれた。
「施設を出た後も、監視員がついて行き先は指定され、自由行動は無理。再犯防止のためね。ユーノ君のお母さんの方は……まぁ、たぶん生きては出られないだろうね。ワンチャンで実力でのし上がり収容所の収容員および看守まですべて制圧出来たらいけるかもしれないけど……ないわね!」
「そりゃ、ないでしょう」
俺はそう相づちを打つと、ユーノが言っていたことを思い出し、呟いた。
「ユーノが言ってましたけど、義母は、ほとんど妄執の中で生きている、って……」
自分より下に見ていた俺の母がセイバーズの試験に受かり、密かに愛していた父とバディを組んだどころか結婚して俺を産んだ。
さらに、母の育休中に自分の結婚した男が代理のバディになったために死んだ。
母の息子の俺を憎むしかないだろう……。
って考えてたら。
「そういうふうに見せていただけね。同情を買えるでしょ? 単に、プライドの高い負け犬が君に嫌がらせしてただけよ」
キャル鑑定士が事もなげに返した。
俺は頼んで、ユーノが移送される前に一度だけ会うことにした。
「罵られるかと思ってたけど」
「それはこっちのセリフだ」
互いに言い合った。
俺は俯き息を吐くと、ユーノをまっすぐに見た。
ユーノは、常に俺をまっすぐに見ていた。その目を俺は見返せなかったんだ、ずっと。
「……これでお別れだ。俺は、俺の道を歩く。父さんもお前も義母さんも関係ない、俺の道を行く。お前も、お前の道を行けよ。俺も義母さんも関係ない道を行け。……タマ、ついてんだろ? 自立しろよな」
エドウィン風に最後言ってみたら、ユーノが腐った食べ物を食べたような顔をした。
「……バディが下品だと影響されて下品になるんだね。最悪。――もちろんついてるよ。だから兄さん、僕を好きになってもしょうがないからね。僕、興味ないから」
「知ってるし、好きじゃないし、興味もないから安心しろ」
互いに言いたいことを言い合うと、俺は最後に一言告げた。
「じゃあな。もう二度と会わないし、お前ら親子に振り回されない」
「じゃあね。僕も、もう二度と会いたくないよ」
ユーノも俺に告げ、同時に背を向けて互いの戻る場所へ歩いていった。
※ジミーのユーノへの想いは複雑です。ものすごくねちっこく嫌みを言われて逃げたい気持ち、自分を憎みながらも決して離れていかなかった感謝、兄弟としての愛情、ざっくり文章にするとそんな感じですがもっといろんな感情が入り混じっています。
ユーノはわかりやすくマザコンで、兄にはイジメの対象くらいしか思っていませんが、頭がよく理性的なので、ユーノ自身が言っていたように母親は理不尽だとわかっているしジミーに多少の同情もしています。
最後の罠は、自棄になっていました。ユーノ自身は、よくもまぁこんな穴だらけの杜撰な計画がうまく運んだよな、と、感心したりもしていました。
「……ユーノ君に対しては……。正直、庇いきれなかったよ。君の希望通りかどうかはわからない。――彼は懲戒処分でアカデミーを退学。ユーノ君自身は母親と同じ収容所に入ることを希望していたけど、共犯だから同じ収容所に入れることは叶わない。真反対に位置する更生施設に入ることになったわ」
「……そうですか」
マザコンには、結構堪える罰だろうな。
キャル鑑定士はさらに教えてくれた。
「施設を出た後も、監視員がついて行き先は指定され、自由行動は無理。再犯防止のためね。ユーノ君のお母さんの方は……まぁ、たぶん生きては出られないだろうね。ワンチャンで実力でのし上がり収容所の収容員および看守まですべて制圧出来たらいけるかもしれないけど……ないわね!」
「そりゃ、ないでしょう」
俺はそう相づちを打つと、ユーノが言っていたことを思い出し、呟いた。
「ユーノが言ってましたけど、義母は、ほとんど妄執の中で生きている、って……」
自分より下に見ていた俺の母がセイバーズの試験に受かり、密かに愛していた父とバディを組んだどころか結婚して俺を産んだ。
さらに、母の育休中に自分の結婚した男が代理のバディになったために死んだ。
母の息子の俺を憎むしかないだろう……。
って考えてたら。
「そういうふうに見せていただけね。同情を買えるでしょ? 単に、プライドの高い負け犬が君に嫌がらせしてただけよ」
キャル鑑定士が事もなげに返した。
俺は頼んで、ユーノが移送される前に一度だけ会うことにした。
「罵られるかと思ってたけど」
「それはこっちのセリフだ」
互いに言い合った。
俺は俯き息を吐くと、ユーノをまっすぐに見た。
ユーノは、常に俺をまっすぐに見ていた。その目を俺は見返せなかったんだ、ずっと。
「……これでお別れだ。俺は、俺の道を歩く。父さんもお前も義母さんも関係ない、俺の道を行く。お前も、お前の道を行けよ。俺も義母さんも関係ない道を行け。……タマ、ついてんだろ? 自立しろよな」
エドウィン風に最後言ってみたら、ユーノが腐った食べ物を食べたような顔をした。
「……バディが下品だと影響されて下品になるんだね。最悪。――もちろんついてるよ。だから兄さん、僕を好きになってもしょうがないからね。僕、興味ないから」
「知ってるし、好きじゃないし、興味もないから安心しろ」
互いに言いたいことを言い合うと、俺は最後に一言告げた。
「じゃあな。もう二度と会わないし、お前ら親子に振り回されない」
「じゃあね。僕も、もう二度と会いたくないよ」
ユーノも俺に告げ、同時に背を向けて互いの戻る場所へ歩いていった。
※ジミーのユーノへの想いは複雑です。ものすごくねちっこく嫌みを言われて逃げたい気持ち、自分を憎みながらも決して離れていかなかった感謝、兄弟としての愛情、ざっくり文章にするとそんな感じですがもっといろんな感情が入り混じっています。
ユーノはわかりやすくマザコンで、兄にはイジメの対象くらいしか思っていませんが、頭がよく理性的なので、ユーノ自身が言っていたように母親は理不尽だとわかっているしジミーに多少の同情もしています。
最後の罠は、自棄になっていました。ユーノ自身は、よくもまぁこんな穴だらけの杜撰な計画がうまく運んだよな、と、感心したりもしていました。
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