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第31話 狙われているの

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 俺たちは、一躍全校生徒から一目を置かれることとなった。
 衆人の注目のさなか、普通は提出するだろ、って戦利品で堂々と肉パをしたのが「アイツらヤベェ」って評価につながったらしい。
 しかも、アカデミー交流対抗戦でだ。お偉いさんも来ている中やった。
 ふだんならやらない。寝不足と疲れで頭が変になっていたのだ。
「優遇とは……?」とも思った。だからやった。これで罰則をくらうのなら本望だ。

 その後、学長たちは、来賓のお偉いさん方からあの惨状になった事情を聞かれ、ベリンダ学長が正直にすべてを話したそうだ。
 ベリンダ学長は巻き込まれた側なので、なんの躊躇いもなく洗いざらい話した。
 結果、イヤミー学長はペナルティ。ペナルティの内容については教えてもらえなかったがそう甘い処分じゃないそうだ。
 ミーミルアカデミーの二人、ティック・キャンベルとタック・グーラートについては、慣れない場所に来て招いた側のアカデミー生に頼るのは間違っていないが、高圧的かつ脅しも加えて従わせていた、ということで、セイバーズ協会への入会試験時の内申に減点として付け加えるということだった。

 ……これは結構厳しいらしい。
 アカデミー代表は選ばれただけでもセイバーズ協会の入会試験時に有利だ。顔と名前を知られるから。よっぽどのヘマをしない限りは入会は確定、しかも高い評価点で入会出来る。
 だが、よっぽどのヘマをやってしまった場合……入会出来たとしても最低点から始まる。
 最低点は、基本給が低く、実入りが少なくあまり好んでやりたくないような依頼ばかりだそうで。

 強く生きろよ、ティック・キャンベルとタック・グーラート。すべてお前らが悪い!

          *

 エドウィンは、もともと人気があったが、ますます人気が出た。
 始終誘われて、誰かと話しているな。
 何人かの女子に告白されたと言っていた。だけど、受けなかったらしい。
「へぇ。なんでだよ?」
 エドウィンは俺と違って堅い性格でもない。
 友達は男ばかりだが、スノウ様やキャル鑑定士と簡単に仲良くなっているので女子が苦手という事もない。

 エドウィンが顔をしかめながら言った。
「……アレだよ。お前がキャルちゃんとおっさんに告られてんのを見て、わかったからだ」
 やめろ。思い出させるな。
 俺も顔をしかめた。
「……なんでそれで?」
 俺が声を低くして尋ねたら、エドウィンが俺を直視した。
「つまりはよ、俺に惚れてんじゃねぇ、俺たちがアイテムハンターだからだろ。レアドロップアイテムほしさに言い寄ってんだよ」

 あ。
 俺はあの二人のプロポーズに合点がいった。
 そういうことか……。俺と結婚したらレアドロップアイテムのおこぼれがもらえる。あるいは、内密に獲ってきてくれと頼める。
 通常は絶対に許されないが、家族ともなればさすがに断り切れないこともあるだろう。

「……大人って汚い……」
 そんなんでプロポーズしてきたのかよ! キャル鑑定士はともかく、おっさんまで!
「大人だけじゃねーだろ。俺たち狙われてんぜ? ただ、お前は弟が好きって公言してるから言い寄られてねーけどな!」
「公言してねーし広めてるのはお前だろ。でもそれで言い寄られないのかありがとよ!」
 エドウィンに怒鳴りながら礼を言った。

 受付室に行くと、キャル鑑定士が「いらっしゃ~い」と、のんびり挨拶してきた。
 キャル鑑定士も、セイバーズ協会からペナルティとして減給されている。
 俺たちが壊れるほど疲れた最初の原因でもあるが、『生徒の相談に親身になって乗った結果で当時最良だと思った指示』のため、情状酌量の余地があった。というか、その通りなので俺たちはキャル鑑定士が悪いとは思ってない。

 一番の問題であった、後手後手に報告をしたフィッシャー教官は大幅減給だ。アカデミーのジェイド学長の判断である。
 最初は俺たちの担当教官を外す、というところまでいったらしい。
 ただ、これもまた情状酌量の余地がある話で、フィッシャー教官は学年取りまとめの役職で、さらに今回、アカデミー交流対抗戦の取りまとめでさらに多忙になり、リアルに時間がなくて後手後手に回ったということだった。
 確かに、専用って言いながらキャル鑑定士しかいないよな、って思ってたんだ。

 よって、キャル鑑定士が俺たち専門の受付担当になるが、キャル鑑定士は教官ではなくセイバーズ協会から派遣されている職員のため、監督としてフィッシャー教官がつく、という形になった。
 もちろん、ジェイド学長自身も減給処分、また、学長自らが俺たちの顧問となり、キャル鑑定士と打ち合わせて依頼を決めていくそうだ。

「預かってた納品の鑑定と査定、終わったよーん。あ、茶葉すごかった! 最高級だよアレ!」
 キャル鑑定士が明るく言う。
 俺たちのせいで減給された、なんて態度にも出さないのが逆に気まずくて、俺とエドウィンはそっと視線を交わし合い、そしてそっとキャル鑑定士に差し出した。
「……ん?」
 キャル鑑定士が俺の手もとをのぞき込み……瞳孔が開いた。
 そのまま固まっている。

 俺とエドウィンは肘で互いをつつきあい、促し合う。
「……ホラ、アレだ。今回、悪ぃことしちまったから、詫びと礼を兼ねてよ……」
「……なんか、すみません。俺たちが頼んだせいで減給になったって聞いて……。お詫びになるかわかりませんけど……」
 俺たちが差し出したのは、スライムのSアイテム、虹色ローションだ。

 キャル鑑定士、号泣した。
「二人と結婚したいよぉー」
 とか叫ぶ。
 なんだよソレ。重婚狙ってんのか。

「悪ぃな、俺は巨乳専門だ」
 エドウィンがものすごいお断りをして、一瞬にして泣きやんだキャル鑑定士が鬼女の形相でカウンターに飛び乗ったと思ったら、
「天誅!」
 と、エドウィンに踵落としを決めてエドウィンに床を舐めさせていた。
 …………キャル鑑定士、すげー強かった。
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