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第15話 優遇措置
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白熱した。
女性陣と男性陣、そりゃあもう特別ポイントをガンガン割り振っていったよ。
……あー。こりゃ、トップランキング帯に踊り出すこと確定だな、と遠い目になった。
俺は、白熱している教官たちをいったん宥めた。
「待ってください、お願いがあるんです」
教官たちが俺を見る。
「……俺たちを、ランキングから外してください」
教官たちは、絶句して俺たちを見た。
いや、察している教官もいる。明日の他の生徒たちの反応と、これからの影響がわかったんだろう。俺たちを、同情するような顔で見ていた。
「……俺もエドウィンも、ランキングに興味がありません。でも、レアドロップアイテムは貴重で、それを通常ドロップアイテムと同列で扱ってほしくはありません。そして、アイテムハンターという職位に反感を持たれたくもありません」
教官たちは静かに俺たちを見つめた。
「ポイントは振ってほしいです。というか、俺は振ってもらうよう交渉します。それは、アイテムハンターを目指しているからです。プロになるなら、レアドロップアイテムを安値で与えるような真似はしたくない。市場価値に影響するだろうから」
俺たちが安値で与えたために、他のアイテムハンターが苦労して手に入れたレアドロップアイテムまで買い叩かれるようになったら、絶対に怨まれる。ただでさえ、アイテムハンターって怨まれやすい職位だろうし、さらに敵を作りたくない。
「なので、特別ポイントはブラックボックスで、通常ポイントのみの発表、そしてランキング外をお願いします。もしも、アイテムハンターとしての素質がない、あるいはランキングから外すことは出来ない、ということでしたら、任務は通常に戻してください。レアドロップアイテムは納品しないようにします。トラブルの元ですから」
「いや、ランキングから外すことは私も賛成だ。むしろ、君たちが同意しないかと考えていたよ。……ワーストからトップに躍り出たんだ、見返したいと思わないのか?」
フィッシャー教官が言ったので、俺をエドウィンは顔を見合わせ、俺は首を横に振り、エドウィンは肩を竦めた。
「ものすげーどーでもいいな」
「トラブルに遭う方が御免です」
二人してキッパリと言い切った。
「……なら、それでいいが……。君たちが不利じゃないか? 特別ポイントを隠すんだろう? どちらにしろ何か言われるぞ」
「トップになった方がもっと言われます。教官たちから特別措置、と通達していただけますか。『アイテムハンターはその性質上、努力では成し得ないめにランキングから外した』、と」
フィッシャー教官が頷いた。
――俺たちだって、努力している奴らの心を折りたいわけじゃない。そもそも、エドウィンと組んだらたまたまフィーバーし始めただけだし。なら、二人揃って圏外に行った方がマシだよ。
「あと、その不利の分、優遇措置がほしいんです。確かに、今納品したレアドロップアイテムも、かなりの市場価値なんでしょう? 確かにドロップ率は努力の賜物ではないけれど、レアドロップアイテムを得るためには通常よりたくさん狩らなくてはならない。効率のいい狩りの方法を模索したりすべてのドロップアイテムを拾い集めたり、それなりに努力はしています。それと、俺たちだからこそ獲ってこれる、ってことを評価してもらいたいんです」
ここまで言うと、教官たちが顔を見合わせた。
「……ちなみに、どんなことを優遇してほしいのかな?」
シモンズ教官に尋ねられたので、俺の要望を言った。
「アイテムハンターとして、必要な資料や参考になることについて用意してほしいです。……今回、レアドロップアイテムについて調べましたが、アカデミーの図書室にある資料では足りませんでした。俺たちはレア中のレアまでドロップします。そこについて書かれている文献はないですか? あと、現役で働いているアイテムハンターについて、基本はセイバーズと変わらないのかとか、交渉の仕方とか、ドロップアイテムの市場価値とかも調べたいのですが……とにかく資料が足りません」
エドウィンが啞然としているぞ。いやお前、なんで口を開けてコッチ見てるんだよ。アイテムハンターに関してはお前の方が乗り気じゃねーか。本気で目指すなら調べるだろうが。
「……いい子ちゃんかよ……」
「お前、本気で目指してんのかよ? むしろお前が言い出せよ」
エドウィンの呟きを聴いて的確に言い返した。
フィッシャー教官とシモンズ教官は俺の肩を叩いた。
「よし! 私も協力しよう。確かにそうだな、今までいなかったから文献が足りなかった」
「よく言った、さすがだ。もちろんその優遇なら大歓迎だ。わからないことがあったらどんどん聞きに来い、教官で総力を挙げて調べよう」
他の教官も頷いてくれた。……良かった、これで『知らずに買い叩かれる』ということはなくなるし、アイテムハンターの現状もわかるようになるだろう。
「お前は何かないのか?」
俺がエドウィンに尋ねると、エドウィンは顎に手を置いて考える。
「……アレだな。俺がなんかやらかした時、俺だけを罰してくれ」
全員の視線がエドウィンに集中した。
「俺はバカだし、コイツみてーに優等生じゃねぇ。絶対になんかやらかす。そんとき、コイツを巻き込みたくねーんだ。やったのは俺なんだから、俺だけの責任にしてくれ」
「残念だが、それは呑めない」
フィッシャー教官が間髪入れず言った。
「セイバーズは、チームの協力が不可欠だ。特にアイテムハンターともなればもっとだろう。なのに、逆の提案を呑むわけにはいかない。君がジミー・モーガンに迷惑をかけないようにしたいのならば、君自身の態度を改めるべきだ」
フィッシャー教官が正論を言う。そして俺も同意するように頷く。
俺に迷惑をかけたくないのなら、まずやるな。
俺たちから同意を得られなかったエドウィンは、しぶしぶ提案を引っ込め、代替案を出してきた。
「…………わーった。じゃ、せめて罰則はポイントから引くってので勘弁してくれ」
フィッシャー教官はしばし考えたが、頷いた。
「…………まぁ、いいだろう。ただし、通常ポイントから差し引く」
別に構わないので頷く。構うのは……。
「じゃあ、俺からもう一つお願いします。コイツが何かやらかしたときの俺の反省文は、俺がコイツに対してみっちりと指導を行ったその内容にしてほしいです」
「ハァ!?」
エドウィンの声が裏返った。
俺はニッコリ笑ってエドウィンを見る。
「俺が、何時間もかけて指導してやるからなー。お前が心から反省文を心から書けるようになー」
「ならば、私がそれを見届けることでジミー・モーガンの反省文を免除することにしよう」
フィッシャー教官もニッコリと笑顔になった。
「ざけんなよ! 俺だけめっちゃくちゃ損してんじゃねーかよ!」
エドウィンが叫んだが、俺も教官たちも「それは素晴らしい」「いいですね」と拍手していて気に止めなかった。
結局、エドウィンの優遇措置は「市場調査で外出するときには制限がない」となった。『無制限の外出許可証』を教官が出すってことだ。俺にも出る。
もちろん良識の範囲内での市場調査となっているし、エーギルアカデミーの品位を落とす行動はしない、問題行動は論外だ。
もともとは暗黙の了解で外出は見逃されていたが、大手を振って外に出ることが出来るのはありがたい。
エドウィンは微妙に納得していないようだが……。
「俺たち、難癖つけられる率が異常に上がってるんだ。お前の無断外出も絶対に難癖つけられて、下手すると退学まで追い込まれる可能性だってあったんだよ。優遇措置、ってのはその辺もある」
それを教官もわかっている。だから、優遇措置をお願いしたんだ。
「……お前はどんだけいい子ちゃんなんだよ……」
とエドウィンが愚痴っている。
「お前が言ったんだろう、俺は最悪の展開ばかり考えている、って。その通りだ、俺はアカデミー初のアイテムハンター候補生になり、その存在さえ知らなかった連中が俺たちを妬み努力を無下にされ恨み、報復として退学に追い込まれるのを恐れている」
「大げさな……」
呆れたように言われた。
そうかもしれない。
だけど、呑気なバディが退学の危機にあるかもしれないのなら、考えられる対策をする、それがチームなんだろう?
女性陣と男性陣、そりゃあもう特別ポイントをガンガン割り振っていったよ。
……あー。こりゃ、トップランキング帯に踊り出すこと確定だな、と遠い目になった。
俺は、白熱している教官たちをいったん宥めた。
「待ってください、お願いがあるんです」
教官たちが俺を見る。
「……俺たちを、ランキングから外してください」
教官たちは、絶句して俺たちを見た。
いや、察している教官もいる。明日の他の生徒たちの反応と、これからの影響がわかったんだろう。俺たちを、同情するような顔で見ていた。
「……俺もエドウィンも、ランキングに興味がありません。でも、レアドロップアイテムは貴重で、それを通常ドロップアイテムと同列で扱ってほしくはありません。そして、アイテムハンターという職位に反感を持たれたくもありません」
教官たちは静かに俺たちを見つめた。
「ポイントは振ってほしいです。というか、俺は振ってもらうよう交渉します。それは、アイテムハンターを目指しているからです。プロになるなら、レアドロップアイテムを安値で与えるような真似はしたくない。市場価値に影響するだろうから」
俺たちが安値で与えたために、他のアイテムハンターが苦労して手に入れたレアドロップアイテムまで買い叩かれるようになったら、絶対に怨まれる。ただでさえ、アイテムハンターって怨まれやすい職位だろうし、さらに敵を作りたくない。
「なので、特別ポイントはブラックボックスで、通常ポイントのみの発表、そしてランキング外をお願いします。もしも、アイテムハンターとしての素質がない、あるいはランキングから外すことは出来ない、ということでしたら、任務は通常に戻してください。レアドロップアイテムは納品しないようにします。トラブルの元ですから」
「いや、ランキングから外すことは私も賛成だ。むしろ、君たちが同意しないかと考えていたよ。……ワーストからトップに躍り出たんだ、見返したいと思わないのか?」
フィッシャー教官が言ったので、俺をエドウィンは顔を見合わせ、俺は首を横に振り、エドウィンは肩を竦めた。
「ものすげーどーでもいいな」
「トラブルに遭う方が御免です」
二人してキッパリと言い切った。
「……なら、それでいいが……。君たちが不利じゃないか? 特別ポイントを隠すんだろう? どちらにしろ何か言われるぞ」
「トップになった方がもっと言われます。教官たちから特別措置、と通達していただけますか。『アイテムハンターはその性質上、努力では成し得ないめにランキングから外した』、と」
フィッシャー教官が頷いた。
――俺たちだって、努力している奴らの心を折りたいわけじゃない。そもそも、エドウィンと組んだらたまたまフィーバーし始めただけだし。なら、二人揃って圏外に行った方がマシだよ。
「あと、その不利の分、優遇措置がほしいんです。確かに、今納品したレアドロップアイテムも、かなりの市場価値なんでしょう? 確かにドロップ率は努力の賜物ではないけれど、レアドロップアイテムを得るためには通常よりたくさん狩らなくてはならない。効率のいい狩りの方法を模索したりすべてのドロップアイテムを拾い集めたり、それなりに努力はしています。それと、俺たちだからこそ獲ってこれる、ってことを評価してもらいたいんです」
ここまで言うと、教官たちが顔を見合わせた。
「……ちなみに、どんなことを優遇してほしいのかな?」
シモンズ教官に尋ねられたので、俺の要望を言った。
「アイテムハンターとして、必要な資料や参考になることについて用意してほしいです。……今回、レアドロップアイテムについて調べましたが、アカデミーの図書室にある資料では足りませんでした。俺たちはレア中のレアまでドロップします。そこについて書かれている文献はないですか? あと、現役で働いているアイテムハンターについて、基本はセイバーズと変わらないのかとか、交渉の仕方とか、ドロップアイテムの市場価値とかも調べたいのですが……とにかく資料が足りません」
エドウィンが啞然としているぞ。いやお前、なんで口を開けてコッチ見てるんだよ。アイテムハンターに関してはお前の方が乗り気じゃねーか。本気で目指すなら調べるだろうが。
「……いい子ちゃんかよ……」
「お前、本気で目指してんのかよ? むしろお前が言い出せよ」
エドウィンの呟きを聴いて的確に言い返した。
フィッシャー教官とシモンズ教官は俺の肩を叩いた。
「よし! 私も協力しよう。確かにそうだな、今までいなかったから文献が足りなかった」
「よく言った、さすがだ。もちろんその優遇なら大歓迎だ。わからないことがあったらどんどん聞きに来い、教官で総力を挙げて調べよう」
他の教官も頷いてくれた。……良かった、これで『知らずに買い叩かれる』ということはなくなるし、アイテムハンターの現状もわかるようになるだろう。
「お前は何かないのか?」
俺がエドウィンに尋ねると、エドウィンは顎に手を置いて考える。
「……アレだな。俺がなんかやらかした時、俺だけを罰してくれ」
全員の視線がエドウィンに集中した。
「俺はバカだし、コイツみてーに優等生じゃねぇ。絶対になんかやらかす。そんとき、コイツを巻き込みたくねーんだ。やったのは俺なんだから、俺だけの責任にしてくれ」
「残念だが、それは呑めない」
フィッシャー教官が間髪入れず言った。
「セイバーズは、チームの協力が不可欠だ。特にアイテムハンターともなればもっとだろう。なのに、逆の提案を呑むわけにはいかない。君がジミー・モーガンに迷惑をかけないようにしたいのならば、君自身の態度を改めるべきだ」
フィッシャー教官が正論を言う。そして俺も同意するように頷く。
俺に迷惑をかけたくないのなら、まずやるな。
俺たちから同意を得られなかったエドウィンは、しぶしぶ提案を引っ込め、代替案を出してきた。
「…………わーった。じゃ、せめて罰則はポイントから引くってので勘弁してくれ」
フィッシャー教官はしばし考えたが、頷いた。
「…………まぁ、いいだろう。ただし、通常ポイントから差し引く」
別に構わないので頷く。構うのは……。
「じゃあ、俺からもう一つお願いします。コイツが何かやらかしたときの俺の反省文は、俺がコイツに対してみっちりと指導を行ったその内容にしてほしいです」
「ハァ!?」
エドウィンの声が裏返った。
俺はニッコリ笑ってエドウィンを見る。
「俺が、何時間もかけて指導してやるからなー。お前が心から反省文を心から書けるようになー」
「ならば、私がそれを見届けることでジミー・モーガンの反省文を免除することにしよう」
フィッシャー教官もニッコリと笑顔になった。
「ざけんなよ! 俺だけめっちゃくちゃ損してんじゃねーかよ!」
エドウィンが叫んだが、俺も教官たちも「それは素晴らしい」「いいですね」と拍手していて気に止めなかった。
結局、エドウィンの優遇措置は「市場調査で外出するときには制限がない」となった。『無制限の外出許可証』を教官が出すってことだ。俺にも出る。
もちろん良識の範囲内での市場調査となっているし、エーギルアカデミーの品位を落とす行動はしない、問題行動は論外だ。
もともとは暗黙の了解で外出は見逃されていたが、大手を振って外に出ることが出来るのはありがたい。
エドウィンは微妙に納得していないようだが……。
「俺たち、難癖つけられる率が異常に上がってるんだ。お前の無断外出も絶対に難癖つけられて、下手すると退学まで追い込まれる可能性だってあったんだよ。優遇措置、ってのはその辺もある」
それを教官もわかっている。だから、優遇措置をお願いしたんだ。
「……お前はどんだけいい子ちゃんなんだよ……」
とエドウィンが愚痴っている。
「お前が言ったんだろう、俺は最悪の展開ばかり考えている、って。その通りだ、俺はアカデミー初のアイテムハンター候補生になり、その存在さえ知らなかった連中が俺たちを妬み努力を無下にされ恨み、報復として退学に追い込まれるのを恐れている」
「大げさな……」
呆れたように言われた。
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だけど、呑気なバディが退学の危機にあるかもしれないのなら、考えられる対策をする、それがチームなんだろう?
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