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第9話 当然、物議を醸すランキング表
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翌日。
昼休みに貼り出されたランキング表は、物議を醸し出すのがわかっていたので、俺は見に行くのをやめた。絶対トラブルに巻き込まれる。
エドウィンは見に行くらしい。
というか、エドウィンは『俺ら、アイテムハンターに適性があるってよ!』と言いふらしている。
なんだそりゃとみんなが尋ねれば、エドウィンはざっくりと「ドロップアイテムは必ず拾わなきゃなんねーって肩書きらしいぜ!」と、説明になってないことを言い出してけむに巻いていた。
俺に『説明求ム』という顔を向けられたが、知らないフリをした。エドウィンの説明でも間違ってない。的を射ていないだけで!
……案の定、遠くから叫び声やら怒鳴り声やら泣き声やらが聴こえてきた。
知らん。俺は巻き込まれたくない。自ら火に飛び込む勇者エドウィンが、意気揚々と『アイテムハンターとして期待されているからだ』と説明するだろう。
実際、あの教官の言いっぷりじゃ、お世辞じゃなくて期待されているだろう。
なりたくてなれる職位ではなく、それだけに普通のセイバーズとは別待遇のようだ。
普通のセイバーズは魔物の脅威から守ることを期待されているのに対し、アイテムハンターはそこから得られるドロップアイテムを目当てとした、いわば物欲で期待されている。
「正義の味方を志したセイバーズからは、ちょっと嫌われるかもな……」
建て前としては、エドウィンに対して説得した『これを必要とする人に届けなくてはならない』なのだが、とってつけた理由、と吐き捨てるセイバーズもいるだろう。
あと、これも恐らくだが、ほぼ確定事項として、アイテムハンターは実入りがいい。
今回の肉の件で既にそうなっている。
アカデミーの教官たちですらあのざまなのだから、外に出たらもっと持て囃されるだろう。エドウィンのバカは間違いなく騙され安く買い叩かれるだろうが、俺の交渉の腕なら数年経たず大金持ちになる。父をも超えそうだ。
そしてそれを教官たちもわかっている。だから俺たちの手腕に『期待している』んだ。
十中八九、期待値に達していると判断したら推薦してもらえるだろうな。
それを、周りがどう思うか……特にユーノ。義母に報告するのは間違いない。他の連中だって、ワーストワンツーが唐突に教官たちのお気に入りになったら面白くないだろうし。
揉め事が増えるな……。
「……それはそれとして、レアドロップアイテムについて、きちんと調べないと」
レアドロップがどの程度の価値かを頭に叩き込み、一般の価値より低い依頼の場合はキャンセル、一般と同程度を提示されたのなら難易度に応じて交渉、は、これからデフォだ。
こういうのはユーノが得意そう。そしてユーノ、ありがとう。お前を間近で見ていたから、やり方を押さえられたよ。
フフフ……よーし、エドウィンにも教え込もう。あの手この手であの面倒臭がりに教え込むんだ。楽しいなぁ……。
「……おい、不気味に笑ってるけど大丈夫か? つか、ちょっと来てくれよ。ランキング表前がカオスになった」
現実逃避をしていたら、ジャン・ロバーツに呼び出された。
行きたくないと駄々を捏ねたがダメだった。
引っ張って連れていかれたから、カオス。
しゃがみこみ手で顔を覆って泣いている女子、天を仰いでいる男子、怒鳴り合う複数人とエドウィン、現場を煽る周囲。
「……さようなら」
「待て。俺も仲良い女子に調整を頼まれたから、お前に逃げられたら困る」
「エエカッコしいで俺を呼び出したのかよ! 放せ! 俺を生贄に捧げるな!」
ジャン・ロバーツと言い合いしていたら見つかった。
「……あっ、いたぞ!」
一斉に注目されたのでジャン・ロバーツの背後に回り両肩をつかんだ。
「せめて俺の盾になれ。これも仲良い子にイイトコ見せるためだ」
「お前って、そういう奴なのな……」
ジャン・ロバーツがまあまあと迫ってきた連中を宥める。
「なんでお前らが二十位なんだよ!」
「おかしいだろ、不正だ!」
だいたい言うことは同じ。
「……俺もエドウィンも知らなかったしお前らも知らなかっただろうが、セイバーズには特殊というか、特別な職位があるらしい。昨日、俺とエドウィンのチームにその適性があることを教官から告げられた。あの点数は、その期待値も籠められているらしい。詳しい話は教官から聞いてくれ」
弁解したが、全然収まらない。
「それにしたって酷すぎるだろこの順位は! どんだけポイントつけられたんだよ!? だから不正だっつってんだよ!」
俺はため息をついた。
「……俺とエドウィンはポイントにこだわっていない。今までの成績でもそれはわかるだろ? そのポイントは俺たちにそれだけの適性があったからだ。……と、思う。もう一度言うけど、つけた教官たちに聞け。俺たちだって、こんなにポイントがもらえると思わなかったんだ」
繰り返すと、何人かは悔しそうに黙る。
教官に聞くために憤って去る奴もいる。
残って嚙みつく奴は、教官に聞けないが納得できないから俺たちに絡む奴だ。
「絶対、お前らがなんか不正をしたに決まってる! 吐けよ!」
俺は首を傾げた。
「もしも教官を出し抜いて順位を上げたのなら、むしろそれは俺たちの才能だろ? なんで俺たちがお前に教えなきゃなんないんだよ? それこそ、チーム外の奴にポイントを恵んでやるような行為じゃないか」
「な……!?」
突っかかってきた奴が真っ赤になった。
「……ざけんじゃねぇぞ不正野郎!」
殴りかかってくる。ジャン・ロバーツごとだ。
「うわっ!」
ジャン・ロバーツが身を竦めたが、俺は肩を引っ張りジャン・ロバーツごと躱した。
そして、殴りかかってきた奴に宣告した。
「校則違反だ。反省文及び罰則だな。ちなみにチーム対象となるのでバディも巻きこまれて適用される」
「お前、教官かよ!」
ジャン・ロバーツが叫んだ。
殴りかかってきた男は勢いでよろけたがふんばり、俺を睨んでくる。
「……この……!」
「ちょっと、やめてよ! 私まで罰則を喰らうじゃない!」
と、近くにいた女子が声を裏返して叫んだ。
また殴りかかろうとした男は止まり、愕然としてその女子を見た。
「……ドナだって、コイツらが不正したって言ってただろ!? 俺はそれを暴いてやろうと……」
「それと校則違反は関係ないじゃん! なんでアンタが違反したことで私まで罰則を受けなきゃなんないのよ!」
「……俺、もっと関係ないんだけど。『コイツら』って言ってるけどさぁ……俺のバディ、コイツじゃねーよ?」
ジャン・ロバーツがツッコむ。
さっきまで憤り殴りかかってきた男は一気に意気消沈した。
「……え、コイツも女子にエエカッコしたいんで俺に絡んできたの? マジで勘弁してほしいんだけど……」
そんなのに俺を利用しないでほしい。
俺が不機嫌になっていると、エドウィンが人混みをかきわけてやってきた。
「テメェ! 俺の相棒に殴りかかってたなゴラァ!」
と、さっき食ってかかってきた男に、事もあろうに殴りかからんばかりに迫っていったので、俺は自分でも最速だと思うくらい素早くエドウィンに近寄り顔面を掴んだ。
「……お前、まさか暴力行為を行う気じゃないだろうな?」
「~~~~」
「俺は、お前と違って反省文や罰則とは無縁の生活を送ってきたんだ。そして、お前もよーく知っているとおり、違反をしたことがない。だよな?」
周り中が静まっている。
「なのに、お前はまさか校則違反を公衆の面前でやらかして、俺を巻き込むなんてことはしないよな? な?」
必死で頷こうとしているので、俺はエドウィンの顔面から手を放した。
「~~~~」
顔面を押さえながら蹲るエドウィン。
「ちょうど良かった。探していたんだよエドウィン、我が相棒。お前がやたら自慢げに話しているアイテムハンターってのは、魔物とそのレアドロップアイテム、それの市場価値を全部覚えなきゃなんないんだ。俺も調べるが、お前にもみっちり、徹底的に覚えさせるから、よろしくな? 次の依頼までにアカデミー周辺のレアドロップアイテムを覚えような? さぁ行こうぜ……」
エドウィンの襟首を掴むとズルズルと引きずっていく。
「……ま、待て! 俺は悪くねぇだろ! キレんなよ! あと、俺をストレス発散に使うんじゃねぇ!」
「さぁ、楽しいお勉強の時間だぞ……」
「お前、怖ぇんだよ! ……誰か助けてくれー!」
エドウィンが誰かに助けを求めているが、誰もが聞かないフリをしていた。
昼休みに貼り出されたランキング表は、物議を醸し出すのがわかっていたので、俺は見に行くのをやめた。絶対トラブルに巻き込まれる。
エドウィンは見に行くらしい。
というか、エドウィンは『俺ら、アイテムハンターに適性があるってよ!』と言いふらしている。
なんだそりゃとみんなが尋ねれば、エドウィンはざっくりと「ドロップアイテムは必ず拾わなきゃなんねーって肩書きらしいぜ!」と、説明になってないことを言い出してけむに巻いていた。
俺に『説明求ム』という顔を向けられたが、知らないフリをした。エドウィンの説明でも間違ってない。的を射ていないだけで!
……案の定、遠くから叫び声やら怒鳴り声やら泣き声やらが聴こえてきた。
知らん。俺は巻き込まれたくない。自ら火に飛び込む勇者エドウィンが、意気揚々と『アイテムハンターとして期待されているからだ』と説明するだろう。
実際、あの教官の言いっぷりじゃ、お世辞じゃなくて期待されているだろう。
なりたくてなれる職位ではなく、それだけに普通のセイバーズとは別待遇のようだ。
普通のセイバーズは魔物の脅威から守ることを期待されているのに対し、アイテムハンターはそこから得られるドロップアイテムを目当てとした、いわば物欲で期待されている。
「正義の味方を志したセイバーズからは、ちょっと嫌われるかもな……」
建て前としては、エドウィンに対して説得した『これを必要とする人に届けなくてはならない』なのだが、とってつけた理由、と吐き捨てるセイバーズもいるだろう。
あと、これも恐らくだが、ほぼ確定事項として、アイテムハンターは実入りがいい。
今回の肉の件で既にそうなっている。
アカデミーの教官たちですらあのざまなのだから、外に出たらもっと持て囃されるだろう。エドウィンのバカは間違いなく騙され安く買い叩かれるだろうが、俺の交渉の腕なら数年経たず大金持ちになる。父をも超えそうだ。
そしてそれを教官たちもわかっている。だから俺たちの手腕に『期待している』んだ。
十中八九、期待値に達していると判断したら推薦してもらえるだろうな。
それを、周りがどう思うか……特にユーノ。義母に報告するのは間違いない。他の連中だって、ワーストワンツーが唐突に教官たちのお気に入りになったら面白くないだろうし。
揉め事が増えるな……。
「……それはそれとして、レアドロップアイテムについて、きちんと調べないと」
レアドロップがどの程度の価値かを頭に叩き込み、一般の価値より低い依頼の場合はキャンセル、一般と同程度を提示されたのなら難易度に応じて交渉、は、これからデフォだ。
こういうのはユーノが得意そう。そしてユーノ、ありがとう。お前を間近で見ていたから、やり方を押さえられたよ。
フフフ……よーし、エドウィンにも教え込もう。あの手この手であの面倒臭がりに教え込むんだ。楽しいなぁ……。
「……おい、不気味に笑ってるけど大丈夫か? つか、ちょっと来てくれよ。ランキング表前がカオスになった」
現実逃避をしていたら、ジャン・ロバーツに呼び出された。
行きたくないと駄々を捏ねたがダメだった。
引っ張って連れていかれたから、カオス。
しゃがみこみ手で顔を覆って泣いている女子、天を仰いでいる男子、怒鳴り合う複数人とエドウィン、現場を煽る周囲。
「……さようなら」
「待て。俺も仲良い女子に調整を頼まれたから、お前に逃げられたら困る」
「エエカッコしいで俺を呼び出したのかよ! 放せ! 俺を生贄に捧げるな!」
ジャン・ロバーツと言い合いしていたら見つかった。
「……あっ、いたぞ!」
一斉に注目されたのでジャン・ロバーツの背後に回り両肩をつかんだ。
「せめて俺の盾になれ。これも仲良い子にイイトコ見せるためだ」
「お前って、そういう奴なのな……」
ジャン・ロバーツがまあまあと迫ってきた連中を宥める。
「なんでお前らが二十位なんだよ!」
「おかしいだろ、不正だ!」
だいたい言うことは同じ。
「……俺もエドウィンも知らなかったしお前らも知らなかっただろうが、セイバーズには特殊というか、特別な職位があるらしい。昨日、俺とエドウィンのチームにその適性があることを教官から告げられた。あの点数は、その期待値も籠められているらしい。詳しい話は教官から聞いてくれ」
弁解したが、全然収まらない。
「それにしたって酷すぎるだろこの順位は! どんだけポイントつけられたんだよ!? だから不正だっつってんだよ!」
俺はため息をついた。
「……俺とエドウィンはポイントにこだわっていない。今までの成績でもそれはわかるだろ? そのポイントは俺たちにそれだけの適性があったからだ。……と、思う。もう一度言うけど、つけた教官たちに聞け。俺たちだって、こんなにポイントがもらえると思わなかったんだ」
繰り返すと、何人かは悔しそうに黙る。
教官に聞くために憤って去る奴もいる。
残って嚙みつく奴は、教官に聞けないが納得できないから俺たちに絡む奴だ。
「絶対、お前らがなんか不正をしたに決まってる! 吐けよ!」
俺は首を傾げた。
「もしも教官を出し抜いて順位を上げたのなら、むしろそれは俺たちの才能だろ? なんで俺たちがお前に教えなきゃなんないんだよ? それこそ、チーム外の奴にポイントを恵んでやるような行為じゃないか」
「な……!?」
突っかかってきた奴が真っ赤になった。
「……ざけんじゃねぇぞ不正野郎!」
殴りかかってくる。ジャン・ロバーツごとだ。
「うわっ!」
ジャン・ロバーツが身を竦めたが、俺は肩を引っ張りジャン・ロバーツごと躱した。
そして、殴りかかってきた奴に宣告した。
「校則違反だ。反省文及び罰則だな。ちなみにチーム対象となるのでバディも巻きこまれて適用される」
「お前、教官かよ!」
ジャン・ロバーツが叫んだ。
殴りかかってきた男は勢いでよろけたがふんばり、俺を睨んでくる。
「……この……!」
「ちょっと、やめてよ! 私まで罰則を喰らうじゃない!」
と、近くにいた女子が声を裏返して叫んだ。
また殴りかかろうとした男は止まり、愕然としてその女子を見た。
「……ドナだって、コイツらが不正したって言ってただろ!? 俺はそれを暴いてやろうと……」
「それと校則違反は関係ないじゃん! なんでアンタが違反したことで私まで罰則を受けなきゃなんないのよ!」
「……俺、もっと関係ないんだけど。『コイツら』って言ってるけどさぁ……俺のバディ、コイツじゃねーよ?」
ジャン・ロバーツがツッコむ。
さっきまで憤り殴りかかってきた男は一気に意気消沈した。
「……え、コイツも女子にエエカッコしたいんで俺に絡んできたの? マジで勘弁してほしいんだけど……」
そんなのに俺を利用しないでほしい。
俺が不機嫌になっていると、エドウィンが人混みをかきわけてやってきた。
「テメェ! 俺の相棒に殴りかかってたなゴラァ!」
と、さっき食ってかかってきた男に、事もあろうに殴りかからんばかりに迫っていったので、俺は自分でも最速だと思うくらい素早くエドウィンに近寄り顔面を掴んだ。
「……お前、まさか暴力行為を行う気じゃないだろうな?」
「~~~~」
「俺は、お前と違って反省文や罰則とは無縁の生活を送ってきたんだ。そして、お前もよーく知っているとおり、違反をしたことがない。だよな?」
周り中が静まっている。
「なのに、お前はまさか校則違反を公衆の面前でやらかして、俺を巻き込むなんてことはしないよな? な?」
必死で頷こうとしているので、俺はエドウィンの顔面から手を放した。
「~~~~」
顔面を押さえながら蹲るエドウィン。
「ちょうど良かった。探していたんだよエドウィン、我が相棒。お前がやたら自慢げに話しているアイテムハンターってのは、魔物とそのレアドロップアイテム、それの市場価値を全部覚えなきゃなんないんだ。俺も調べるが、お前にもみっちり、徹底的に覚えさせるから、よろしくな? 次の依頼までにアカデミー周辺のレアドロップアイテムを覚えような? さぁ行こうぜ……」
エドウィンの襟首を掴むとズルズルと引きずっていく。
「……ま、待て! 俺は悪くねぇだろ! キレんなよ! あと、俺をストレス発散に使うんじゃねぇ!」
「さぁ、楽しいお勉強の時間だぞ……」
「お前、怖ぇんだよ! ……誰か助けてくれー!」
エドウィンが誰かに助けを求めているが、誰もが聞かないフリをしていた。
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