8 / 51
第8話 将来……
しおりを挟む
俺が物思いに沈んでいたら、いきなり背中を強く叩かれた。
「イテッ!」
「何暗い顔してんだよ! 喜ぶところだろココはよ!」
浮かれた顔のエドウィンがこちらを見ている。
「俺ら、〝アイテムハンター〟っつーカッコいいチームになれるんだぜ? お前の言う通り、これからは真面目に拾うからよ! でもって、お前のその空間魔法にバンバンしまってくれよな!」
「ソコは他力本願かよ」
「別にいいだろ? お前と組んでんだからよ! 俺ら、チームだろ?」
「……まぁ、確かにそうだけどさ。……それにしても、良かったのか? ポイント」
エドウィンは今回、俺がエドウィンと同位に上がるようにポイントを割り振ってくれ、と頼んだ。
俺は断ろうとしたが、エドウィンが怒鳴ったのだ。
「お前に荷物持たせて、交渉させて、こんだけポイントもらって、そんでも半々は俺のプライドが許さねぇんだよ! お前だって、逆だったら嫌だろうが!」
俺はそれで頷いた。エドウィンのプライドを傷つけるつもりはない。
同位に上がることでエドウィンが納得してくれるのなら、そうするべきだ。
「……お前は、前、自分が好きに動いているんだから、俺にも好きなように動け、って言ったよな?」
エドウィンが頷いた。
「俺はたぶん、世話をするのが好きなんだ。いろいろ尽くすのが好きなんだと思う。だから俺、弟に対してそこまで悪感情はないんだ、アイツは尽くす俺に対して何も思うことはなかったから」
俺は、エドウィンを見た。
「俺はこれからも、お前のプライドを傷つけるようなことをするだろう。いつか耐えられなくなって、チーム解消をするかもしれない。……そうなったら、アイテムハンターを目指したとしても意味が無い。俺とお前が組まなけりゃ、レアドロップは発生しないんだから。だったら、最初から目指さず普通にセイバーズとして卒業するべきだ……イテッ!」
最後まで言いきったらエドウィンに頭を叩かれた。
そしてエドウィンが盛大なため息をつく。
「あのなー……。テメーが異常なまでの世話好き綺麗好きなのなんざ、とっくに知ってるわ! 女子か、って思うわ! んでもって、そのネガティブ思考やめろ! なんでそう、暗ーく物事を最悪な展開に考えんだよ!? 第一、俺は耐えねーよ! なんで俺様がテメーに気兼ねして耐えなきゃなんねーんだよ!? 嫌なことは嫌だっつうわ! テメーだってさんざん俺に言ってんだろうが! なんで俺だけ耐える前提なんだよ!?」
エドウィンに怒鳴られて、俺は口を開けて呆けた。
……確かにそうだ。俺は耐えてない。だって、ちょっとでも耐えたら爆発しそうだから。
なのに、エドウィンに耐えろ、っつってんのか。
エドウィンがジロリと睨む。
「やなこった! 誰が耐えるかボケ。俺は俺のやりたいようにやるし、言いたいことを言う。ドロップアイテムを拾うのは、俺が納得したからだ。俺のやりたいことを阻止する気なら、俺を説得してみろってんだよ! あと、アイテムハンターになるのは決定だ! 理由はカッコいいからだ! レア、ってのもそそる! 嫌なら俺を説得してみろ!」
一気にまくし立ててきた。
俺は逡巡する。
……理由は言っても理解してもらえないか、理解したら即解消されるかの二択で、ただ……エドウィンはそもそもセイバーズとしても合格ラインにいるはずなので、アイテムハンターとしての依頼を受けていたとしても、卒業後に俺とバディを解消して普通のセイバーズになったとしても大丈夫だろう。
「……プライドが傷つけられたって言っただろう?」
「傷ついた、なんて言ってねーよ。俺のプライドが許さねぇ、っつったんだ! そんで、お前が俺を納得させる理由を言えば、納得するかもしんねぇ。こないだみたく、『教官命令に逆らったら反省文書かされるぜ』ってよ」
……え、そんなんでよかったのか?
ていうか、そんなに反省文が嫌なのか……。
ハァ、と俺はため息をつく。
「……なら、いいよ。俺の世話好きのせいでプライドをへし折られた、って奴がいたから、お前もそうかって考えただけだ。……あと、お前が俺と同位で納得したからいいけど、俺、一般教養の試験は全科目満点で、純粋にポイント差分で穴埋めしたら、俺はもっと上位に入ってるから」
俺が付け加えた、みたいな感じで呟いたらエドウィンは愕然としていた。
「だから、半々にしときゃよかっただろ? 次の一般教養の試験で満点取らないとお前、俺より下位に転落だよ」
「……テメェ! それこそ俺のプライドを傷つけてきたじゃねーかよ! 泣くぞ!」
エドウィンが情けない声で怒鳴ってきたので、俺は声を出して笑った。
そして空を見上げた。
……将来のことどころか、卒業した後もわからなくなる。
だけど……俺とアイテムハンターを目指そうと言ってくれるバディが、横にいる。
今は、その現状に甘えたい。俺を憎む義母と弟のことを、忘れていたい。
顔を戻すと、エドウィンに言った。
「疲れたし、早く寮に戻ろうぜ。衣類は出しとけ、一緒に洗ってやるから。あと、シャワーを浴びて歯磨きしてから寝ろ、わかったな」
「さっそくうぜーんだよ。わーったわーった、荷物は全部お前に預けてあっから、全部任せた」
「お前もやれよ! 他人任せにするな!」
「お前がやった方が確実だろ。俺は向いてねぇ」
「じゃあ、向くようになるまで徹底的にしごいてやるから。部屋に戻ったら衣類のたたみ方をみっちり教えてやる」
「やめろ、お前マジでやりそう」
マジで言ってるからな。教育してやるわ。
「イテッ!」
「何暗い顔してんだよ! 喜ぶところだろココはよ!」
浮かれた顔のエドウィンがこちらを見ている。
「俺ら、〝アイテムハンター〟っつーカッコいいチームになれるんだぜ? お前の言う通り、これからは真面目に拾うからよ! でもって、お前のその空間魔法にバンバンしまってくれよな!」
「ソコは他力本願かよ」
「別にいいだろ? お前と組んでんだからよ! 俺ら、チームだろ?」
「……まぁ、確かにそうだけどさ。……それにしても、良かったのか? ポイント」
エドウィンは今回、俺がエドウィンと同位に上がるようにポイントを割り振ってくれ、と頼んだ。
俺は断ろうとしたが、エドウィンが怒鳴ったのだ。
「お前に荷物持たせて、交渉させて、こんだけポイントもらって、そんでも半々は俺のプライドが許さねぇんだよ! お前だって、逆だったら嫌だろうが!」
俺はそれで頷いた。エドウィンのプライドを傷つけるつもりはない。
同位に上がることでエドウィンが納得してくれるのなら、そうするべきだ。
「……お前は、前、自分が好きに動いているんだから、俺にも好きなように動け、って言ったよな?」
エドウィンが頷いた。
「俺はたぶん、世話をするのが好きなんだ。いろいろ尽くすのが好きなんだと思う。だから俺、弟に対してそこまで悪感情はないんだ、アイツは尽くす俺に対して何も思うことはなかったから」
俺は、エドウィンを見た。
「俺はこれからも、お前のプライドを傷つけるようなことをするだろう。いつか耐えられなくなって、チーム解消をするかもしれない。……そうなったら、アイテムハンターを目指したとしても意味が無い。俺とお前が組まなけりゃ、レアドロップは発生しないんだから。だったら、最初から目指さず普通にセイバーズとして卒業するべきだ……イテッ!」
最後まで言いきったらエドウィンに頭を叩かれた。
そしてエドウィンが盛大なため息をつく。
「あのなー……。テメーが異常なまでの世話好き綺麗好きなのなんざ、とっくに知ってるわ! 女子か、って思うわ! んでもって、そのネガティブ思考やめろ! なんでそう、暗ーく物事を最悪な展開に考えんだよ!? 第一、俺は耐えねーよ! なんで俺様がテメーに気兼ねして耐えなきゃなんねーんだよ!? 嫌なことは嫌だっつうわ! テメーだってさんざん俺に言ってんだろうが! なんで俺だけ耐える前提なんだよ!?」
エドウィンに怒鳴られて、俺は口を開けて呆けた。
……確かにそうだ。俺は耐えてない。だって、ちょっとでも耐えたら爆発しそうだから。
なのに、エドウィンに耐えろ、っつってんのか。
エドウィンがジロリと睨む。
「やなこった! 誰が耐えるかボケ。俺は俺のやりたいようにやるし、言いたいことを言う。ドロップアイテムを拾うのは、俺が納得したからだ。俺のやりたいことを阻止する気なら、俺を説得してみろってんだよ! あと、アイテムハンターになるのは決定だ! 理由はカッコいいからだ! レア、ってのもそそる! 嫌なら俺を説得してみろ!」
一気にまくし立ててきた。
俺は逡巡する。
……理由は言っても理解してもらえないか、理解したら即解消されるかの二択で、ただ……エドウィンはそもそもセイバーズとしても合格ラインにいるはずなので、アイテムハンターとしての依頼を受けていたとしても、卒業後に俺とバディを解消して普通のセイバーズになったとしても大丈夫だろう。
「……プライドが傷つけられたって言っただろう?」
「傷ついた、なんて言ってねーよ。俺のプライドが許さねぇ、っつったんだ! そんで、お前が俺を納得させる理由を言えば、納得するかもしんねぇ。こないだみたく、『教官命令に逆らったら反省文書かされるぜ』ってよ」
……え、そんなんでよかったのか?
ていうか、そんなに反省文が嫌なのか……。
ハァ、と俺はため息をつく。
「……なら、いいよ。俺の世話好きのせいでプライドをへし折られた、って奴がいたから、お前もそうかって考えただけだ。……あと、お前が俺と同位で納得したからいいけど、俺、一般教養の試験は全科目満点で、純粋にポイント差分で穴埋めしたら、俺はもっと上位に入ってるから」
俺が付け加えた、みたいな感じで呟いたらエドウィンは愕然としていた。
「だから、半々にしときゃよかっただろ? 次の一般教養の試験で満点取らないとお前、俺より下位に転落だよ」
「……テメェ! それこそ俺のプライドを傷つけてきたじゃねーかよ! 泣くぞ!」
エドウィンが情けない声で怒鳴ってきたので、俺は声を出して笑った。
そして空を見上げた。
……将来のことどころか、卒業した後もわからなくなる。
だけど……俺とアイテムハンターを目指そうと言ってくれるバディが、横にいる。
今は、その現状に甘えたい。俺を憎む義母と弟のことを、忘れていたい。
顔を戻すと、エドウィンに言った。
「疲れたし、早く寮に戻ろうぜ。衣類は出しとけ、一緒に洗ってやるから。あと、シャワーを浴びて歯磨きしてから寝ろ、わかったな」
「さっそくうぜーんだよ。わーったわーった、荷物は全部お前に預けてあっから、全部任せた」
「お前もやれよ! 他人任せにするな!」
「お前がやった方が確実だろ。俺は向いてねぇ」
「じゃあ、向くようになるまで徹底的にしごいてやるから。部屋に戻ったら衣類のたたみ方をみっちり教えてやる」
「やめろ、お前マジでやりそう」
マジで言ってるからな。教育してやるわ。
12
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。
光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。
ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…!
8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。
同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。
実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。
恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。
自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
男爵令嬢はつがいが現れたので婚約破棄されました。
克全
恋愛
商家上がりの人間種男爵家令嬢ヴィヴィアンは、王立学園入学式のダンスパーティーで、婚約者の人赤鹿種侯爵家嫡男クリスチャンから婚約破棄を言い渡された。
彼の横には人大豚種子爵家令嬢ブリーレが勝ち誇ったように立っていた。
なんとブリーレはクリスチャンの運命の番い(つがい)だと言うのだ!
その日からブリーレのヴィヴィアンへの虐めが始まった。
正義と冠されるほど貴族の誇りを大切にするはずの、オースティン侯爵家嫡男クリスチャンはそれを見て見ぬふりをした。
地獄のような学園生活になるかとおもわれたヴィヴィアンに救世主が現れた!
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる