上 下
42 / 56

42.

しおりを挟む
「今日は君に、伝えたいことがあって来たんだ」
それを聞いて嫌な予感がした私は、警戒するように身構えたものの、彼が話を続ける様子が無かったため、
ひとまず、聞くだけ聞いてみようと思い直した私が、続きを促すと、 それを聞いた彼は、嬉しそうに笑いながら頷くと、
とんでもないことを口にした。

実はあの時、君のことを見かけて一目惚れしてしまった僕は、どうしても君ともう一度会いたくて、つい声をかけてしまったんだ。
そして、そのままホテルに連れ込んで抱いた時に、君を妻だと勘違いしたこともあって、あの時は本当に申し訳なかったと思っているよ。
だからせめてもの償いとして、君の望み通りにしてあげようと思ったんだけど、まさか、あんなことになるとは思っていなくてさ、
でも、まあ、結果オーライってことで許して欲しいと思ってるから、これからもよろしくね。

それからというもの、毎日のように会いに来てくれるようになった彼は、私を優しくエスコートしてくれたり、
色んなところに連れて行ってくれたりと、様々なことをしてくれましたが、それはあくまで、
自分の子供や家族同然の人達にも同じことを行っていることを知り、そのことにショックを受けつつも、
何とか自分を納得させた私は、いつか彼が自分のことを愛してくれる日が来ることを願いつつ、今日も、彼の元へ足を運ぶのでした。

「ただいまー、今帰ったよー」
そう言って帰ってきた夫がいつものように抱き着いてきた私は、そんな彼を抱き締め返しながら、こう言いました。

「お帰りなさい、お仕事お疲れ様でした、今日は早めに帰れたんですね、良かったです」
そんなやり取りを交わした後で、夕食の準備をしていると、手伝いに来た夫が、私の肩を抱いてきて、こんなことを聞いてきた。

「ねえ、そろそろ子供欲しくないかい?」
突然の申し出に驚きながらも、私はすぐに答えました。

「そっ、そうですね、私もそろそろ欲しいと思っています」
と正直に答えると、それを聞いた彼は、嬉しそうな顔をしながら私のことを抱き締めてきたので、
戸惑いながらも、同じように抱きしめ返した私は、その後も、しばらくの間、二人で仲良く過ごしました。

そんなある日のこと、友人から電話がかかってきたので、何事かと思って電話に出てみると、いきなりこんなことを口にされました。
どうやら彼女は、学生時代からの付き合いがある親友で、同じ時期に夫と結婚した間柄なのですが、そんな彼女が、
最近になって子供を授かったという知らせを聞いた私は、そのことを喜びながらも、羨ましく思っていました。

というのも、私と彼女の間には、未だに子供がいないせいで、周りからは色々と心配されているのですが、
それに対して不満があった訳ではないものの、内心では、少しだけ寂しさを感じていたせいもあり、
そういった理由から落ち込んでいると、心配した彼女が慰めてくれただけでなく、今度会う時は、
三人で食事をしようという提案をしてきたことで、嬉しくなった私が了承すると、電話を切った後、早速、準備に取り掛かった。

そうして、約束の当日を迎えた私は、待ち合わせ場所に向かうと、既に到着していた彼女と合流して、一緒にショッピングを楽しんでいる間に、
昼食を済ませた私達は、その後は、のんびりと散歩をしていたのですが、その際に、ちょっとしたハプニングが起きてしまいました。
なんと、足を滑らせた拍子に転んでしまった私は、慌てて起き上がろうとしたものの、その際、足に痛みを感じたので、

顔を歪めていると、それに気付いた彼女が駆け寄ってきてくれたので、怪我をしていることを伝えると、突然、抱き寄せられてしまい、
驚く間もなくキスをされてしまったことで、さらに驚いてしまった私が何も言えずにいると、それに気付いた彼女は、
申し訳なさそうな顔をしながら謝罪してきたものの、その直後に、何かを考えるような仕草を見せた後で、こんなことを言ってきました。

確かに怪我をしたら大変だけど、もしもそうなったら、その時は、ちゃんと責任取ってあげるから安心していいよ、そう言った後で、
今度は、私のことを抱きしめてきた彼女の行動に戸惑った私は、どうしていいのか分からずにいたものの、
しばらく経ったところで、不意に名前を呼ばれたため、そちらを向くと、そこには、こちらに向けて手を差し伸べている彼女の姿がありました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。 職場で知り合った上司とのスピード婚。 ワケアリなので結婚式はナシ。 けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。 物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。 どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。 その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」 春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。 「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」 お願い。 今、そんなことを言わないで。 決心が鈍ってしまうから。 私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。 ⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚ 東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家 ⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

同居離婚はじめました

仲村來夢
恋愛
大好きだった夫の優斗と離婚した。それなのに、世間体を保つためにあたし達はまだ一緒にいる。このことは、親にさえ内緒。 なりゆきで一夜を過ごした職場の後輩の佐伯悠登に「離婚して俺と再婚してくれ」と猛アタックされて…!? 二人の「ゆうと」に悩まされ、更に職場のイケメン上司にも迫られてしまった未央の恋の行方は… 性描写はありますが、R指定を付けるほど多くはありません。性描写があるところは※を付けています。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

若妻シリーズ

笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。 気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。 乳首責め/クリ責め/潮吹き ※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様 ※使用画像/SplitShire様

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...