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ゲームでは聖女は異世界から召喚された存在であるという設定になっている。
しかし、ここに聖女は居ないやはりゲームの世界では無いのである。ならばヒロインはどうやってこの世界にやって
来たのかという疑問が残る。
その答えこそが"聖女の存在を知る者が呼び出したから"という仮説が成り立つ。
つまりはヒロインをこの国に呼び出すために、前世の知識を持つ人間が暗躍していたのだ。もしその事実をこの国の
誰かが知っていたなら、ゲーム通りに聖女を呼び出して国のために利用しようと考えるのは自然な流れと言える。
だからこそ警戒する必要があると感じた。
もしもこの国の中に黒幕がいるとすれば……。
(……絶対に許さない)
必ず見つけ出し、相応の報いを受けさせてやる。……そう心に誓ったのだが、この時の私はまだ知らない。
まさか本当に自分がゲームのシナリオ通り、断罪されてしまうことに―――。
屋敷に帰るなり、国王陛下から婚約破棄を言い渡された。
正直意味がわからなかった。
どうしてそうなった!? いやまぁ確かに今更感は否めないけども! でもいくらなんでも早過ぎない?
まだ1日しか経ってないよ!? 国王陛下も驚いていたけれど、それ以上にヒリス殿下の方が慌てふためいていた。
どうやら陛下に進言したのは彼らしい。……いや、待って。
おかしくないかな? だって私は婚約者だよ? 一応だけど、婚約者ですよ? ……いや、婚約者ではあっても
結婚を約束しているわけではないけれど。
それでも婚約者というのは特別な関係だと思う。少なくとも私はそう思っていた。
そんな相手を簡単に切り捨ててしまうなんて、普通ありえないと思う。
何か理由があるはずだ。
きっと私には言えない事情が。それに気づけないほど愚かではないつもりだし、何より納得できなかった。
だから私はもう一度王宮に出向くことにした。
今度は一人で。
本当はヒリス殿下も一緒に来てくれると言っていたが、断った。
彼にこれ以上迷惑をかけることはできない。
大丈夫、心配しないで欲しい。私は一人じゃない。
ちゃんとわかってくれる人がそばにいる。
私はそう信じて王宮に向かった。
だが予想に反して謁見はあっさり終わった。
陛下も困惑しているようだった。
そしてそのまま帰されることになった。
拍子抜けしたが、これで良かったのかもしれない。帰り際、ヒリス殿下が私に話しかけてきた。
最初は当たり障りのない会話だったが、次第にお互いの生い立ちについての話題に変わっていった。
私は養女であること、 そして彼が王太子であることを改めて知った。……そういえば今まであまり気に
していなかったが、 考えてみれば不思議な組み合わせである。
しかし、ここに聖女は居ないやはりゲームの世界では無いのである。ならばヒロインはどうやってこの世界にやって
来たのかという疑問が残る。
その答えこそが"聖女の存在を知る者が呼び出したから"という仮説が成り立つ。
つまりはヒロインをこの国に呼び出すために、前世の知識を持つ人間が暗躍していたのだ。もしその事実をこの国の
誰かが知っていたなら、ゲーム通りに聖女を呼び出して国のために利用しようと考えるのは自然な流れと言える。
だからこそ警戒する必要があると感じた。
もしもこの国の中に黒幕がいるとすれば……。
(……絶対に許さない)
必ず見つけ出し、相応の報いを受けさせてやる。……そう心に誓ったのだが、この時の私はまだ知らない。
まさか本当に自分がゲームのシナリオ通り、断罪されてしまうことに―――。
屋敷に帰るなり、国王陛下から婚約破棄を言い渡された。
正直意味がわからなかった。
どうしてそうなった!? いやまぁ確かに今更感は否めないけども! でもいくらなんでも早過ぎない?
まだ1日しか経ってないよ!? 国王陛下も驚いていたけれど、それ以上にヒリス殿下の方が慌てふためいていた。
どうやら陛下に進言したのは彼らしい。……いや、待って。
おかしくないかな? だって私は婚約者だよ? 一応だけど、婚約者ですよ? ……いや、婚約者ではあっても
結婚を約束しているわけではないけれど。
それでも婚約者というのは特別な関係だと思う。少なくとも私はそう思っていた。
そんな相手を簡単に切り捨ててしまうなんて、普通ありえないと思う。
何か理由があるはずだ。
きっと私には言えない事情が。それに気づけないほど愚かではないつもりだし、何より納得できなかった。
だから私はもう一度王宮に出向くことにした。
今度は一人で。
本当はヒリス殿下も一緒に来てくれると言っていたが、断った。
彼にこれ以上迷惑をかけることはできない。
大丈夫、心配しないで欲しい。私は一人じゃない。
ちゃんとわかってくれる人がそばにいる。
私はそう信じて王宮に向かった。
だが予想に反して謁見はあっさり終わった。
陛下も困惑しているようだった。
そしてそのまま帰されることになった。
拍子抜けしたが、これで良かったのかもしれない。帰り際、ヒリス殿下が私に話しかけてきた。
最初は当たり障りのない会話だったが、次第にお互いの生い立ちについての話題に変わっていった。
私は養女であること、 そして彼が王太子であることを改めて知った。……そういえば今まであまり気に
していなかったが、 考えてみれば不思議な組み合わせである。
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