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「…………」
沈黙を貫くことで誤魔化すしかないのかもしれない。
それに……今の状況を考えればどうすべきかは理解できるでしょうねと
俺に向けて言ってくるわけなのです。
彼女の正体は結局のところ良く分かっていなかった。
俺はどうするべきなのだと思案していた時に彼女の方が先ほど俺に
何をしてきたのかという説明を始めようとしていたのだから。
「実はね、私は君と同じ世界に転移された元勇者である人間……つまりはこの世界の人間の体を
手に入れた魔王なんだけど……って信じられないか。
普通、こんなことを聞いてすぐに信じてくれるような人間はいる筈もないよね……でも本当のことよ。
貴方に真実を伝えにやって来たのだからしっかりと受け止めてください。
そうね……貴方に言える事はまず、貴方に会わなければならないと考えていたということ……そしてもう一つは
貴方の持つ不思議な能力と力が狙いだということ。
そして貴方が手に入れた力をどうにかしなければならないと考えてきたの……
それだけの事で……他には何もありませんからね」
そうやって語る女性の顔を見れば嘘は感じられず本当に言っているのだという事が良く分かる。
「だからお願い。その能力を消して貰う為にも……私の願いは叶ってほしいのよ」
こうして俺はこの世界で生き残るための戦いを行う事になったのである。
彼女との戦いが始まりました。
俺は彼女をどうやって倒せばいいんだろうと思いながら魔法を使った攻撃を仕掛けることにした。
そうした方が戦いは早く終わらせられると思ったからだ。
ただまあ、そんな簡単にはいかなかったのである。
当然と言えば当然のこと。
俺が使える程度の魔法の攻撃を何度も放っていればあっさりと防がれる事になる。
魔法を防ぐ技術を持っているという事もあって俺の攻撃が効かないという訳ではありません。
だからと言っても俺は魔法使いであるため接近戦が弱いという部分もありました。
「お前には悪いけど死んでもらうよ……」
そう言った後にナイフを投げつけられて腹部に突き刺さり血を流しながらも耐えていくしか方法が無かった俺。
ここで負けて死ぬのならまだしも良いかと思っていた。
妻達に被害を与えなければ何とかなったはず。
しかし、そんな余裕なんてものは無かったのだ。
俺はここで意識を失い倒れこんでしまう。
「……ここは?」
俺が目を覚ます頃には見知らぬ部屋の中で横たわっていたのだ。
見知らぬ天井を見上げている。
自分の置かれている現状を理解しようとするもなかなか理解出来ない状態だった為に
しばらく時間が経ち落ち着いてきてからのことだ。
ようやく冷静になり状況を整理できるようになってきた。
あの時、
「……俺の名前は……」
と言った後で倒れこんだんだな。
思い出していくうちに……。
「おや、起きたみたいだな。お前は随分派手にやられたじゃないか」
という女の声が聞こえてきまして誰だろうかと思ったところで目が開くようになって
上半身を起こすことに成功した俺は女の姿を確認する。
そこで見覚えのある顔だと思いだすも名前が出てこない状態になっているが
俺が知る限りは彼女は俺にとって危険な人物というわけではなさそうな気配がしているため俺は
特に焦ることも無く落ち着いた気分になっていたんだが、彼女は俺が倒れたときに
俺と一緒にいたという女の事を思い出す。
彼女も俺のことを気にしてくれていたという。
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