元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

282.

アリアはその視線に気づいたようで
、俺と目が合う。
「どうしたんですか？ 」
「うん、リリスのことなんだけどな。リリスからは どうしても魔王の印象を感じないんだよ。俺が元いた世界に魔王はいたんだが、
それは冷酷非道な 奴らばかりだったけどな」
俺は少し懐かしむような口調でそう言う。
俺の脳裏にはあの勇者の顔を思い出すがすぐに振り払った。
俺はアリアの顔を見ると少し寂しそうな顔をしている。
どうやら俺の話の内容を理解してくれたようである。
アリアはリリスの方を見て少し複雑な気持ちになっているみたいだ。
（そりゃあそうだろう。自分が魔王だったことを思い出させてしまった訳だしな）
「でもアリアの事は恨んではいないと思うぞ。
俺が勇者の時の記憶ではリリスは俺のことが大好きだったからな。」
アリアはリリスを起こさないように俺に近づいてきて抱きついてくる。
俺はアリアを抱き締め返す。
アリアは俺の胸に顔を埋めると、小さな声で 泣いているように俺の耳は感じ取った。
そしてアリアの頭を撫でてあげた。
そしてしばらくアリアが落ち着くまで待っていた。
やがて落ち着いたアリアは、顔を上げてこう話してきた。
「私がリリスの母親だと言うことは変わりませんから、もしリリスが私を許してくれるならこれからも母親で居続けたいんです。」
俺の目には決意に満ちた瞳が映っていた。俺は黙ってその話を聞き入れるのであった。
「わかった、じゃあ俺も出来るだけの協力はしよう。俺がミレアとリリスにしたことの責任も有るしな」
俺がそう答えると、嬉しそうにしているアリアを見ると心が和んだ。
リリスの方を見ると幸せそうな顔をしている。俺は、その表情を見て、アリアに提案をしたのであった。
俺とミレアは二人でリリスの部屋にいた。
「俺が元の世界に帰る時に一緒に行きたいか？ 」
そう俺が尋ねると ミリアは俺に抱きついて泣き出してしまった。
「本当は貴方と一緒にいたいとずっと思っていましたが。私は、魔王の呪いを解いてくれましたから」
ミリアの話を静かに聞いていた俺は、
優しく彼女の背中を擦りながらミリアを
安心させたのだった。
（リリスの件もなんとかしないとな）
俺は改めて決意を固めると リリスと
アリアの二人と今後の事について話し合う為に、食堂へと向かった。
俺は二人を呼びに行く前にまず、リリスの部屋に寄りリリスを起こすことにした。
俺はリリスに声をかけるが、
リリスは目を開けずに眠ったままだった。
（まあ仕方ないよな）
俺はリリスをそのまま抱き抱えて
起こす事にした。
そしてアリアを呼ぶために部屋を出て
廊下に出るとちょうどミレアと遭遇した。俺はミレアを連れてアリアが待つ部屋に
向かった。
俺が部屋の中に入ると 既にリリスが
目覚めており ミレアとリリスで
会話をしていた。
俺に気づくとアリアが声をかけてきた。
「お待ちしておりました」
そう言うとアリアは自分の横に座って
くれと促してくる。
リリスの正面の席に座ろうとしたが
ミレアも隣でいいですか？
と尋ねてくるので
俺はもちろん構わないと言った。
そうするとアリアは微笑んで
ミレアと俺の間に座ってくる。
リリスに俺の膝の上に来る様に話すと
リリスは 少し戸惑いながらも俺の方を
向いて 嬉しそうに俺の膝の上に
乗ってくるのだった。
俺はそのままの体勢で皆に話し
かけることにした。
「さて今日は俺の大切な二人と
大事な話し合いをしに来た。
魔王のリリスをどうするかだ」
俺は少し厳しい目で 二人に向き合うと、
ミリアが恐る恐る 手を挙げて
こう質問をしてくるのだった。