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値段もそこまで高くないのでお財布に優しい。
私とバレッド様はそれぞれ好きなものを選び注文する事にした。
注文を終えるまでの間、私は外の様子を眺めていたが、やはり多くの人達が歩いていたり馬車に乗ったりする
姿が見受けられ、活気があふれているなと感じさせるには十分であったと思う。
「ここのスイーツはどんなのが出てくるのだろうか、楽しみだな」
と期待に胸を膨らませている様子でバレッド様が話してくる。
その顔を見るだけでも私は嬉しくなってくるのだが、それだけではない。
実は、今回行くお店の事を事前に調べてきたのだ。
何故そのような行動を取ったかというと、それはバレッド様が喜ぶ事をしてあげたいという気持ちが先行した
結果でもあるし、
少しでも彼を楽しませてあげたかったからというのもある。
「美味しいものを食べられるのでとても幸せな気分になりますね」
私が笑顔でそういうと彼もつられて笑う。
そんな風に他愛の会話をしていると、やがて私達が注文した品が届く。
バレッド様の方は苺やキウイといったフルーツを使ったロールアイスが運ばれてくる。
見た目からでもとても美味しそうなのが伝わってくる。
一方で私はモンブランにチーズタルト、ショートブレッドなどを食べさせて貰った。
どれを取ってみてもとても美味しかったし、バレッド様が喜んでいるのが私にとって一番うれしいと感じる。
(やっぱりバレッド様は可愛らしいです)
と思いながらも口にするのは止めておくことにする。
デザートを楽しんだ後は私達は店を後にして別の場所へと向かう事にしたのである。
その道すがらもバレッド様は私の肩を抱いてくると身を寄せてくる。
「こうやってマリアベルと一緒に居られる時間が楽しいよ。君が傍にいるだけで俺は安心できるし何だか
いつだって頑張れるんだから」
「バレッ―――んむぅ」
彼の名前を呼ぼうとしたところで私の唇は彼のそれに塞がれてしまった。
そのまま何度も重ねられているうちに、私は抵抗の意思が薄れていき大人しく受け入れるようになる。
そのまま舌を絡ませる濃厚なものに変わっていき、やがて解放された時にはお互いに顔が紅潮していた。
「可愛いよマリアベル。君の事は俺が守ってあげるから心配しないでくれよ。誰にも傷つけさせたりなんかする
ものか」
バレッド様はそのまま抱きしめてきた。
その言葉を聞いた瞬間に涙が溢れ出てきてしまう。
それを見られたくなくて顔を背ける。
それでも泣いていることはバレており、
「泣かないでくれないかな?  大丈夫だよ。例え誰が敵に回ったとしても絶対に負けないし君を傷つけ
させやしたりもしないもの。約束するよ」
バレッド様は私が落ち着くように背中をさすったり頭を撫でてくれる。
私は彼に身を委ねるようにしながら何度も泣き続けた。
そうしている間にいつしか夜になってしまい私達は泊まっている宿に戻ることになった。
夕食を食べると部屋に戻り明日の事を話す。
朝はゆっくりしようと言われた為に同意した後で眠りにつく、もちろん抱き合った状態で眠る事になる。
目が覚めると朝食を済ませた後で町中を散策していく、バレッド様が私の事を心配しているので何か欲しい
ものは無いのかと聞いてきたが、今の私はバレッド様と過ごせるのが一番なのだと言うとバレッド様も私と
同じようなことを考えているようで嬉しかったと言ってくれた。
バレッド様とならいつでも甘いひと時を過ごすことが出来る。
そう考えつつも私はこれからもずっと彼と仲良く過ごして行くことを心に誓ったのである。
それから、目的地に着くとそこには大勢の人で賑わっていて列が出来ていた。
人気のお店らしく、なかなか入れないのだろう。
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