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「大丈夫かい?」
「はいなんとか」
そう言って私は無理に笑うのだが内心は結構きついの。
「僕たちが代わってあげられたらよかったんだけどな」
そんな言葉に胸がキュンとなってしまう。
そんな様子を見られてはまた変な噂が立つかもしれないのでどうにか堪えるのだった。
「ありがとうございます。気持ちだけで十分ですよ。
それにこうなった原因はこちらにありますから気になさらないで下さい」
そう言った途端に表情が暗くなっていくバレッド様を見てしまった私は思わず笑みをこぼしてしまうのである。
すると不思議と彼の目つきが変わり頬を赤らめて照れていた。
それを見ていたバレッド様の妻達は嫉妬するかのように見つめていて、
そんな視線に気づいていないのか私は慌てて取り繕いながらご挨拶をするのだった。
そうして私達はしばらく世間話をしていたのである。
「そうだ、忘れるところだったよ。これを渡しておかないとな」
そう言いながらバレッド様は手紙を渡してきた。
差出人は国王陛下となっていて何が書かれていたのかと言うと
バレッド様はしばらく謹慎処分となり城から離れることになった。
それもあってマリアベルの面倒を見てほしいとの旨が書かれてあったのだった。
つまりバレッド様が戻ってくるまではマリアベルがバレッド様の代わりに公務を
行わなければならないということになる。
しかも私一人で、そんなの無茶すぎるしそもそも出来るはずがなかった。
「あの、やっぱりバレッド様が戻って来るまでの間、代わりに私が行かないとだめなんでしょうか?
正直言うと、とても厳しいと思います。私の経験不足が足を引っ張ってしまいそうですし、
第一、私は女性に甘いバレッド様とは違って男性が苦手で、あまり慣れていないので、
どうしても不安に思えてしまって……」
私は本音を吐露して弱気になっていたのである。
そんな私に対してバレッド様は優しく微笑みかけてくれた。
「確かに君は女性が相手となるとその性格が変わる傾向にある。
だが心配しなくても良い、君の傍には常に俺がいるんだ。どんな奴が現れても守ってみせる。
俺はそう約束したはずだぞ」
バレッド様がそう口にしてくれたので私は勇気を貰った。
私は決意を固めるとバレッド様が不在の間にしっかりと国を守り抜かなければ、
という思いを胸に秘めていたのだった。
そうして私達がこれからの生活についての話し合いをしている頃、私の実家で事件が起きていた。
私はそんな事は知る由もなくこれから先の生活に思いを馳せていたが、
バレッド様は何かを考え込んでいる様子を見せていた。
心配になって尋ねてみると彼はなんでもないと言って笑顔を向けて来る。
きっと私を気遣ってくれてのことだと思う。
「それよりもそろそろ帰ろう。体が冷えてきているしこのままでは君が風邪を引いてしまう」
そんなバレッド様に対して私は素直に従うことにした。
そうして帰り支度を済ませて馬車に乗り込むとゆっくりとしたペースで帰路につく。
その間もバレッド様が手を握り締めたまま離さない。
まるで逃がすまいと言わんばかりに強く握られていたのを感じながらも私は何も言えなかった。
すると突然彼が手を握る力が強くなる。
私は反射的に身構えると次の瞬間唇を重ねられた。
そうして舌を絡ませたキスを交わすのだった。
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