上 下
33 / 39

33.

しおりを挟む
「はい。申し訳ございません」
私は頭を下げて謝罪する。
すると男は満足そうな表情を見せたのでこれで大丈夫そうだと思ったのだがどうやら甘すぎたようだ。
なんと男がとんでもない行動に出たため私は驚きの声を上げる。
というのもその行動というのが私の胸を掴むというものだったので当然ながら抵抗したのだが全く歯が立たなかった。
そのせいで悔しくて涙を流す羽目になってしまう。
だけどそれだけでは終わらずに今度は服の中に手を突っ込んできて直接肌に触れてきた。
これにはさすがに我慢の限界を迎えたため私は思いっきりビンタしてやった。
その一撃は見事に命中したので相手は怯む。
その瞬間を逃すことなく即座に立ち上がるとそのまま逃走を図ったのだがあっさりと見つかられてしまう。
それでも逃げようとしたところで急に足を引っ掛けられてしまい転んでしまいそうになったところを受け止められると抱きしめられる形になってしまった。
そのせいで余計に混乱してしまう。
というのもあり得もしない展開に頭が追い付かなかったからに違いなく思わず固まってしまう。
しかしすぐに我に返って離れようとするのだが力が強すぎてなかなか振り払うことができない。
それどころかどんどん抱き寄せられていく。
その度に心臓が激しく高鳴っていくのを感じてしまう。
顔も真っ赤に染まっているような感覚を覚えたために慌てて顔を背けた。
「離してください」
そう言うのと同時に何とかして逃れようと試みるがびくりとも動かない。
むしろさらに強くなっていく一方だ。
そうしてしばらく時間が経過した頃になってようやく解放されると私は呼吸を整えながら相手をじっと見る。
その視線に気づいた相手が笑みを見せるので私は恥ずかしくなり俯いた。
しかしそんな時だ。
突然部屋の扉が開かれそこから一人の男性が姿を現したため私は驚く。
その人は銀色の髪をしており端正で綺麗な容姿をしている青年であった。
年齢はおそらく20代前半くらいであろうと思われる。
服装はかなり質の良いものであり身に着けているのはどれも一級品だ。
つまりかなり裕福な家柄の人間だということはすぐに分かった。
ただし彼の場合は少しだけ変わっている点があり右目に眼帯を付けておりその部分を隠すように髪の毛を伸ばしているために片目が隠れてしまっている。
そのためどのような瞳をしているのかは確認できなかった。
しかしその整った容貌を見て美しいと思うと同時にどこか懐かしいと思えたのでつい見惚れているとその人がこちらに近づいてくる。
そのことに気付くと共に慌てるも逃げる事は出来ずに見つめ合う形となっていきその事に戸惑いを覚えているうちにとうとう手が触れ合った所でピタリと動きを止める。
一体何をするつもりなのかと思っているとそれはとても不思議な光景であった。
その者がまるで魔法を使っているかのごとく空中に浮かんだ文字のような何かが出現したかと思いきやその文字のようなものが輝きを放つと同時に一瞬にして消えたのだ。
「これは……」
その様子を目の当たりにしたからこそ唖然としながら呟くしかできないでいる中で再び文字らしきものが出現したのでそちらに意識を向ける。
「えっと……君はいったい誰なんだい?僕の知っている限りこんな現象は一度も起きたことはなかったはずだよ」
「はい。私自身このような経験は初めてです。それよりも一つ聞きたいことがあります」
そう答えると男性は首を傾げる。
その様子を見て不思議に思ったことがあった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。 金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ! おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。 逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。 結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。 いつの間にか実家にざまぁしてました。 そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。 ===== 2020/12月某日 第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。 楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。 また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。 お読みいただきありがとうございました。

悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!

神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう....... だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!? 全8話完結 完結保証!!

【完結】私の婚約者(王太子)が浮気をしているようです。

百合蝶
恋愛
「何てことなの」王太子妃教育の合間も休憩中王宮の庭を散策していたら‥、婚約者であるアルフレッド様(王太子)が金の髪をふわふわとさせた可愛らしい小動物系の女性と腕を組み親しげに寄り添っていた。 「あちゃ~」と後ろから護衛のイサンが声を漏らした。 私は見ていられなかった。 悲しくてーーー悲しくて涙が止まりませんでした。 私、このまなアルフレッド様の奥様にはなれませんわ、なれても愛がありません。側室をもたれるのも嫌でございます。 ならばーーー 私、全力でアルフレッド様の恋叶えて見せますわ。 恋情を探す斜め上を行くエリエンヌ物語 ひたむきにアルフレッド様好き、エリエンヌちゃんです。 たまに更新します。 よければお読み下さりコメント頂ければ幸いです。

運命の選択が見えるのですが、どちらを選べば幸せになれますか? ~私の人生はバッドエンド率99.99%らしいです~

日之影ソラ
恋愛
第六王女として生を受けたアイリスには運命の選択肢が見える。選んだ選択肢で未来が大きく変わり、最悪の場合は死へ繋がってしまうのだが……彼女は何度も選択を間違え、死んではやり直してを繰り返していた。 女神様曰く、彼女の先祖が大罪を犯したせいで末代まで呪われてしまっているらしい。その呪いによって彼女の未来は、99.99%がバッドエンドに設定されていた。 婚約破棄、暗殺、病気、仲たがい。 あらゆる不幸が彼女を襲う。 果たしてアイリスは幸福な未来にたどり着けるのか? 選択肢を見る力を駆使して運命を切り開け!

「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です

リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。 でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う) はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか? それとも聖女として辛い道を選ぶのか? ※筆者注※ 基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。 (たまにシリアスが入ります) 勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗

【完結】私の婚約者を奪おうとした妹は、家が貰えると思っていたようです

しきど
恋愛
 妹が私の婚約者と一夜を共にしました。  もちろん純愛ではありません。  妹は私がお父様から継いだ財産を独り占めするため、婚約者はこの屋敷を乗っ取るために私より妹の方が組みやすしと考えたため。つまり、お互いの利害のための情事にすぎなかったのです。  問い詰めると妹は案外あっさり浮気の事実を認め、その代わりとんでもない事を言い出しました。  「アズライ様の事は諦めますが、その代わり慰謝料としてこの屋敷の所有権を頂きます!」  ……慰謝料の意味、分かってます?  戦術家として名を馳せた騎士の娘、男爵家の姉妹のお話。

処理中です...