上 下
196 / 236

196.

しおりを挟む
突然のことに驚いていると、彼女は目に涙を浮かべながら言った。
「よかった……無事だったんですね……」
その言葉を聞いて胸が締め付けられるような思いになった。
それと同時に申し訳ない気持ちが込み上げてきて思わず謝罪の言葉を口にしていた。
「ごめん……ごめんな……」
そう言いながら抱きしめると、それに応えるように背中に手を回してくれた。
しばらくそうしていたが、落ち着いた頃を見計らって離れると改めて謝った後で事情を説明したんだ。
話を聞いたアリアは怒るどころか逆に謝ってきたくらいだった。
その後、皆で今後どうするか話し合うことになったんだが、結論としては一旦王都に戻ることにしたんだ。
理由はいくつかあるが、一番大きな理由としては他の皆と合流するためだな。
あいつらにも事情を説明しないといけないし、何よりこのまま放っておくわけにもいかないからな。
そういうわけで早速出発することになったわけだが、その前に一つだけやることがあったんだ。
それは例の魔道具を使うということだったのだが、そこで問題が発生したんだ。
なんとあの水晶玉が全く反応しなかったんだ。
何度やっても駄目だったし、壊れてるんじゃないかと疑ったくらいだ。
だが、実際に使ってみたところちゃんと機能していたので一安心したよ。
ちなみに、どういう風に使えるかというと、単純に通信ができるだけのものではなく、映像を映し出すこともできる優れものだ。
しかも音声まで拾えるようになっているからかなり便利だと思うぞ。
ただ欠点もあって、一度に送れる人数に限りがあるという点と、相手が応答してくれない場合は使えないという点が挙げられるな。
なので今回は後者に該当するわけだな。
そんなわけで仕方なく一人で行くことに決めた俺は早速出発する準備に取り掛かることにしたんだ。
とは言っても持っていくものは殆ど無いに等しいんだけどね……着替えとお金が少しあるだけだしな。
あとは護身用の武器だけどこれは必要ないと思うんだよなぁ……何せ俺には最強の味方がいるわけだしな!
というわけで今回も彼女に同行してもらうことにしたんだぜ。
(うーん、どうしたものかなぁ)
そんなことを考えながら歩いているうちに目的地に到着したようだ。
そこは小さな村だったが、人口は100人にも満たない程度の規模であり、周囲を森に囲まれていることもあって外部から隔離されているような
雰囲気を漂わせていた。
村の周囲には柵が設けられており、入り口には見張り台のようなものが建てられていたが、
そこには誰も立っていなかったため簡単に中に入ることができた。
中に入ってみるとまず目に入ったのは大きな建物であった。
おそらくあれが村長の家なのだろうと思いそちらに向かうことにする。
すると途中で何人かの住民らしき人達と出会ったので挨拶を交わすことにしたんだ。
彼らは俺を見て驚いていた様子だったが、すぐに笑顔で応えてくれたよ。
やはりここが目的の場所だったようだな。
建物の前に到着すると中から声が聞こえてきたのでノックしてから扉を開けることにする。
するとそこには一人の老人が立っていた。
彼はこちらを見て一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに笑顔になると声をかけてきた。
「おや、お前さんは確か……先日この村に来た旅人さんじゃないかね?」
その言葉に頷き返すことで答えると、続けてこう言われたよ。
「そうか、ということは無事に辿り着けたようじゃな。良かったわい」
その言葉に苦笑しつつ答えることにする。
「ええ、おかげさまで何とか辿り着くことができました」
その言葉に老人は満足そうに頷いていた。
「うむ、ならば良いのじゃが、今日は一体何の用で来たんじゃろうか?」
そう言われてここに来た目的を思い出した俺は、さっそく用件を伝えることにしたんだ。
「実は、折り入ってお願いしたいことがありまして……」
そう言うと老人は不思議そうな顔をした後で尋ねてきた。
その内容というのが、この近くにあるダンジョンについての情報を教えて欲しいというものだったんだが、
それを聞いた途端渋い顔をされてしまったよ。
それでも諦めずに食い下がっていると渋々といった感じではあったが
教えてくれたよ。
ただし、条件付きでだけどね……。
まぁ、当然といえば当然だよなぁと思いつつ了承することにしたんだが、問題はその方法なんだよねぇ。
どうすれば上手くいくか考えていると突然後ろから声をかけられたので振り返ってみるとそこに立っていたのは見覚えのある顔だった。
その人物とは以前出会ったことがある人物だったのだが、名前は思い出せないままだったんだよね。
というのも以前に会った時には名前を聞く前に別れてしまったからなんだけど、まさかこんなところで再会することになるとは思わなかったよ。
向こうも同じことを考えていたらしく驚いた顔をしていたがすぐに笑顔を見せるとこちらに近づいてきたんだ。
そしてこう言ったんだ。
「久しぶりですね!」
その言葉を聞いた瞬間思い出したよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

勇者パーティー追放された支援役、スキル「エンカウント操作」のチート覚醒をきっかけに戦闘力超爆速上昇中ですが、俺は天職の支援役であり続けます。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
支援役ロベル・モリスは、勇者パーティーに無能・役立たずと罵られ追放された。 お前のちっぽけな支援スキルなど必要ない、という理由で。 しかし直後、ロベルの所持スキル『エンカウント操作』がチート覚醒する。 『種類』も『数』も『瞬殺するか?』までも選んでモンスターを呼び寄せられる上に、『経験値』や『ドロップ・アイテム』などは入手可能。 スキルを使った爆速レベルアップをきっかけに、ロベルの戦闘力は急上昇していく。 そして勇者一行は、愚かにも気づいていなかった。 自分たちの実力が、ロベルの支援スキルのおかげで成り立っていたことに。 ロベル追放で化けの皮がはがれた勇者一行は、没落の道を歩んで破滅する。 一方のロベルは最強・無双・向かうところ敵なしだ。 手にした力を支援に注ぎ、3人の聖女のピンチを次々に救う。 小さい頃の幼馴染、エルフのプリンセス、実はロベルを溺愛していた元勇者パーティーメンバー。 彼女たち3聖女とハーレム・パーティーを結成したロベルは、王国を救い、人々から賞賛され、魔族四天王に圧勝。 ついには手にした聖剣で、魔王を滅ぼし世界を救うのだった。 これは目立つのが苦手なひとりの男が、最強でありながらも『支援役』にこだわり続け、結局世界を救ってしまう。そんな物語。 ※2022年12月12日(月)18時、【男性向けHOTランキング1位】をいただきました!  お読みいただいた皆さま、応援いただいた皆さま、  本当に本当にありがとうございました!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...